マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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メリークリスマス(遅
聖夜は日高屋で一人坦々麺を食べていました。
寂しくなんてないんだからねっ


第54話

――――アーティストアクロよりスバル・シエル、言霊の詩(ワード・ソウル) …発動――――

 

 

 

 

 

「えぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!!??????」

 

 メイシェンの驚きの声が当たりに木霊した。

 あたふたと何がどうなっているのかとメイシェンは見回すもそこにはサムズアップしたシャーニッドと赤面する女性陣、ポカンとした他の隊員がいる。

 そして、目の前には京の顔があった。

 

「返事は?」

 

 突然そんなことを言ってくれる京。

 ミィにあんなことして、ちょっと怒って、直らなくて、悶々としていた矢先にこれだ。

 

「ぇ、えと! まだ1年生だし、私たちには早すぎ、じゃなくて! 正直嬉し……でもなくて! あぁぁあ、あわわわわわ」

 

 メイシェンは頭の中がゴチャゴチャになっているようだった。

 目はぐるぐると渦を巻き、過去最高に顔が真っ赤になって頭から湯気が出ている。

 あぁ、もう駄目だ。死んでしまいそうだ。

 それは嬉しさか、困惑か、それはわからない。

 だが京はその心情を察していたようだ。

 

「あわわわ……わわ」

 

 ついに頭がオーバーヒートしたのかその場で昏倒してしまった。

 口から半分魂が抜け出ている。

 それを京が抱きなおすと、目の前の都市ファルニールに目を向けた。

 

「準備完了ってね」

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 片手でメイシェンを抱えて、京は思う。

 あぁ、キツかった。

 今も自分達に釘付けな視線も恐縮するし、中には冷ややかな視線も混じっている。

 やらかしてしまったあの日からどうにか許してもらえないかと相談した相手がシャーニッドだった。というかシャーニッドしかいなかったのが運の尽きだった。

 あまり交友関係を持とうとしなかったのが悪かった。女連中には反省しろと説教されるだけで助けてはもらえず、残るレイフォンは論外、カリアンも拙いだろうということで白羽の矢が立ったのだ。

 

「まぁよ、不安なわけよ、メイシェンちゃんは、だから一言言って安心させればいい」

 

 正直、今思うと乗せられていた気がした。

 この状況を省みてもそう思う。

 そして、これは断じて告白ではない。

 ただちょっとした好意を言葉にして言い謝っただけでそういうものではない。

 あとは無理やり誤魔化す所存であった。

 

「ふふふ、けけけ」

 

 そして、このなんともいえない思いをぶつける相手はもう既に目の前にいる。

 京は空を見上げた。

 そこには巨大なナニカが渦を巻くようにうねり、球体を作り出していた。

 

「ぅゎぁ…」

 

 ちょっとした感嘆の声が漏れてしまった。

 でかい、想像以上にでかい。

 それは都市を半分覆い隠すほどの巨大なものだった。

 しかし、それに気づくものはいない。京以外にそれを視認できるものは存在しない。

 そこにフワフワと10cmほどの球体が京の目の前に下りてきた。

 そっと手を出すと留まる。

 それは嬉しそうな表情をした球体の生き物だった。

 それは言霊、声に内包された意志の力である。

 

「……」

 

 よく目を凝らせば空に浮かぶ巨大な球体は全てこの10cmほどの言霊によって構成されている。

 怒った顔のもの、悩んでいる顔のもの、嬉しい顔のもの、様々な言霊が渦を巻いてここにいるのだ。

 そして、何故ここまで大きいか、それは先の告白に起因する。

 この言霊たちはメイシェンの意思そのものなのだ。

 驚き5割、嬉しさ3割、疑い1割、戸惑い1割で構成されたメイシェンの叫びはそのままここに形になって現れている。

 最高のシチュエーションで、今のメイシェンの核心をつく告白をした。

 同じことなどはもう2度とできまい。

 そして、この言霊たちは京の能力のエネルギー源なのだ。

 

言霊の詩(ワード・ソウル)!!!」

 

 京の叫びと同時、武芸大会が始まった。

 先の衝撃でツェルニの部隊の行動が遅れてしまう。

 相手の放つ弾丸がこちらに殺到しようとしていた。

 

守りの壁(シールド)

 

 不可視の壁が全ての弾幕をカットする。

 言霊の詩(ワード・ソウル)、それは言霊をエネルギーとした技巧(スキル)である。

 京の頭上にある膨大なエネルギー、壁程度では減ったかもわからない。

 そして、これを全て攻撃に用いればどうなるか

 

「さぁ、受けてみろ」

 

 京の差し出す右手には魚を模った砲身が現れる。

 そしてそこから吐き出されるものは

 

「これがメイシェンの想いだ!!」

 

 そんなものぶつけるなよ、お前が受け止めろよという意見は聞かない。

 言霊、響く(クラッシュ)エネルギーは砲身に渦を巻いて収束されていく。

 その全てが収束されきったとき、この戦闘は終わりを告げるのだ。

 

 

 食らうがいい、これが乙女の嬉し恥ずかしい叫びの力だ。

 

 

響出砲(クラッシュショット)!!」

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 ツェルニの勝利に終わった。

 

「やりすぎだ阿呆!!」

 

 ニーナの叱責もいわずもがな、惨状が広がっていた。

 ファルニールの先端で弾幕を張っていた部隊は無残に蹴散らされ、倒れた敵部隊の面々がそこらに転がっている。

 そして、ファルニールを割るように深い溝が走り、その終着点にはフラッグごと折れた生徒会塔が無残な姿を晒していた。

 

「ごめんなさい」

 

 素直に京は謝った。

 しかし、見事なものだ。乙女の叫び、押して知るべしである。

 

「まぁ、レイフォンの衝剄って言えば何とかなるだろう」

 

「僕ですか!?」

 

 審判にもこの能力の正体がわかるはずもない、ルール上の違反を指摘されることはない。

 つまり、この勝利が取り消されるということはない。

 結果オーライだ。

 

「しかし…、これはあまりにあんまりだ」

 

 煮え切らないのはニーナだった。

 彼女は誰かに頼りきりになるということを良しとしない。

 ましてや一団となって戦うべき武芸大会を1人で終わらせたというのは彼女からすれば腑に落ちないものを感じるだろう。

 

「まぁ、楽して勝てたんだから良いんじゃねーの?」

 

 と気楽にするシャーニッドは笑ってそういった。

 

「お前はもっと武芸者として……」

 

 お堅いなぁと肩を竦ませるシャーニッドだがニーナの行っていることも間違ってはいない。

 廃貴族とディンの一件で手段を選ばず勝つという方法は第17小隊が否定したのだ。

 ならばここは京に非があるといえる。

 

「もう2度としないよ、できないしね」

 

 それに一撃で全てが終わるというのは京も予想外だったのだ。

 精々目の前の敵を一掃できればいいな程度だったのがこれだ。

 今回はしょうがないと諦めてもうほかない。

 

「わかってもらえれば、いい……」

 

 これ以上責める気はないのか重そうな足取りでニーナは終わりを告げた戦場を後にしようとする。

 この後も特に何もなかったが事後報告や何やらが詰まっているのだ。

 

「ん…、うぅ……」

 

 そこに我らがお姫様が目を覚ました。

 

「おはよう」

 

「ひゃっ!?」

 

 気恥ずかしさのあまり気絶して起きたらまた目の前に京の顔があればこの反応も当然かもしれない。

 

「ぇ? あれ? 武芸大会は…? あれ私…」

 

 混乱しているのだろう、時折思い出したように赤面したように忙しそうに百面相をしている。

 

「もう終わったよ、俺達の勝ちだ」

 

「でも時間があんまり…、それにさっきのは」

 

「気にしちゃいけない」

 

 どうせ後から知ることになるだろう。

 そして、後はこれだけだ。

 

「許してくれる?」

 

 全てこれだけが目的だったのだ。

 メイシェンは少し恥ずかしそうに目を逸らすと答えた。

 

「……許します」

 

 ホッと溜息をつく。

 これで元通りだ。

 またしばらくの平穏を送ることができる。

 そう思っていた。

 

 

 この時までは

 

 

「っ!!!」

 

 京は咄嗟に空を仰ぐ。

 

 一瞬、黒い影が目の前を横切り、凄まじい衝撃と共に都市を揺らした。

 

 何かが、飛来してきたのだ。

 

 それはちょうどツェルニとファルニールの目の前に墜ち、その正体を露にした。

 

 それは都市全員が忌避するもの、遭遇したくなかったもの

 

 汚染獣がそこにいた。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

「各員に通達!! 安全装置解除、戦闘配備! けして都市内に入れるな!」

 

 突然だ、本当に現実は非常、悪夢は突然やってくる。

 目の前に汚染獣が30数体、それがこちらに猛進していた。

 餌に群がる蟻のように

 

「レイフォン、どう思う?」

 

「おかしい、ですね」

 

 あくまでこの状況を京とレイフォンは冷静に判断した。

 この程度の数の汚染獣ならレイフォンか京1人で軽くいなせる。

 だがこうなった状況がおかしい。

 都市は汚染獣を回避する。

 その都市が2つ、汚染獣を認識できなかった。本来はありえない話、つまりそれはどういうことか

 不測の事態が起こったということだ。

 突然現れた汚染獣、しかも至近距離だ。

 一瞬見えた黒い影、あれが鍵だろう。

 そして汚染獣が現れた場所には割れた卵のようなものがあった、割れた卵の殻から蛆が湧き出したように汚染獣が飛び出してくる。

 

「老生体…か」

 

「間違いないと思います。それ以外に考えられない」

 

「それはまだ後だ。今からアレを片付ける」

 

 そして、飛び出すように京が前に躍り出る。

 ここは都市の最先端、要は最前線だ。

 京の姿が一瞬ぶれると本来の姿を取り戻し、外部に向かって飛び立つ。

 今の適任は京だ。

 レイフォンは都市外装備を付けていない。普通なら都市外の空気に触れただけで死のカウントダウンが始まるのだ。装備なしでの行動は今するべきではない。それに万一の保険は都市にいた方がいいだろう。

 

「京! 私も!」

 

 ついていく、メイシェンはそう言いたいのだろう。

 だが駄目だ。

 

「駄目だ」

 

 彼女には対人戦を追求した能力しか与えていない。

 だからこそ

 

「汚染獣は俺の範疇だ、シェルターにすぐに避難を」

 

 そう言い残し、汚染獣に向かって飛び込む。

 都市のすぐ目の前には既に汚染獣が迫っていた。

 その数、幼生体が30弱、だが問題はない。

 立ちはだかるように群れの前に出、左手を前に突き出す。

 

「デアボリック・エミッション、闇に、染まれ」

 

 汚染獣の集団の中央にデアボリック・エミッションを発生させ、大穴を穿つ。

 これによって半数の汚染獣を一撃の下に沈めた。

 しかし、これで手を緩める京ではない。

 同時に太陽に右手を向ける。

 

「これで!」

 

 光が収束されるように空が一瞬輝くと目に見えるほどの黄色い光が汚染獣に浴びせられた。

 汚染獣の固い表皮が溶解し、動きも大分鈍る。

 そして、取り出し済みの古式銃キャスターに「2」の刻印が刻まれた弾丸を装填し、トリガーを引いた。

 

「……ッ! ……ッ!」

 

 青白い閃光が汚染獣を襲う。

 苦しみに悶えながら汚染獣は塵も残さずに消し飛んだ。

 苦戦もない、余裕を持って対処できる。

 だが、これはきっと

 

「……ちぃっ!!」

 

 ツェルニの遥か上空、そこに黒い穴が見えた。

 それがなんなのか一瞬で判断し、汚染獣の残骸を後にすぐさまツェルニに戻ろうと飛び立つ。

 その穴は段々と大きくなる。否、それは近づいているのだ。

 巨大な卵のような球体、それがツェルニに向かって飛来してきている。

 気づいたのがわずかに遅い、目視からでは対応が遅れてしまった。

 このままではアレがツェルニに直撃する。

 

「させるか!」

 

――――――ゴッドリール技が一つ

 

「両断波ぁっ!」

 

 右腕の拘束具が外れ、黄金に輝く腕を縦に振り上げる。

 それは、黄金の闘気を纏いながら刃となり、卵のような球体に当たった。

 わずかに軌道が変わり、卵に亀裂が入る。

 

「レイフォン!!」

 

「……!」

 

 京の叫びにレイフォンは行動によって応える。

 疾剄によって残像が発生するほどの高速移動をしながら、落下地点へと向かっていた。

 京の攻撃によってわずかに軌道が変わったがそれでもまだ直撃コースから外れていない。

 壁を駆け上がり、ツェルニで一番高い生徒会塔の天辺に跳躍するとそこから卵に向かって一気に飛び掛った。

 

――――爆刺孔

 

 卵に剣を突き刺し、剣に伝わった膨大な剄を爆発させ、内部から破壊する。

 亀裂が入っていた卵は簡単に砕けた。

 しかし、内部から多数の幼生体が溢れ、都市中に降ろうとしている。

 レイフォンもそこまでわかっての対処だ。

 

――――竜旋剄

 

 体をコマのように回転させ、降り注ごうとしている幼生体に向かって無数の衝剄を放つ。

 それは1匹も逃すことなく、1体1体に直撃し、砕いていった。

 結果、都市に降り注いだのは幼生体の残骸のみとなったのだった。

 そこに遅れて京がやってくる。

 

「助かった」

 

「いえ、ここは僕に与えられた役割でしょう?」

 

「それも、そうか」

 

 フッと笑いあうも、現状において危機的状況にあるのは変わりない。

 辺りを見回せば慌しく防衛に周ろうとしているツェルニの生徒達の姿があった。

 そして、もう1つ、ファルニールが離れようとしていた。

 

「ちっ、薄情なもんだ」

 

 そう京は悪態をつくが都市としては当然の行動だ。

 汚染獣を回避する。それを忠実に守っているに過ぎない。

 では何故、ツェルニは動かない?

 

「……」

 

 まさか、とは言葉にはしなかったが都市を1つの人格としてみるならよくわかる。

 要はツェルニがファルニールを逃がすためにアレの対処を引き受けたのだ。

 1度しか会わなかったがあの優しそうな童女の電子精霊ならやりそうだなと半ば確信に近いものを感じていた。

 

「フェリ、聞こえるか」

 

 虚空に向かって京が語りかける。

 正確には空気中に漂っているだろうフェリの念威の端末にだ。

 

『えぇ、聞こえていますが』

 

「敵の本体、確認できないか?」

 

『全く駄目です。30キルメル以内には汚染獣の影も形も存在しません』

 

 京の植物による探知もそこに植物があるからこそできるもの、汚染獣以外の生物が存在しない大地を探索することはできなかった。

 汚染獣については京はまだ深く知っていない。

 できるだけ待ちに徹するのは避けたいが、行動の指針がないことにはどうしようもない。

 そして、万事休すのこの状態に更なる追撃を掛けんと空に黒い穴が3つ見えたのだった。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

「…ふぅ」

 

 6時間が経過した。

 敵の攻撃は今のところ第10波で打ち止めになったのか、攻撃の手が緩んだ。

 それともなにか別の行動に出始めたか

 少なくとも今のところは都市も隊員も全て無傷、ただ僅かな疲労が京とレイフォンに溜まりつつあった。

 そこに吉報が飛び込んできた。

 

『敵本体、補足しました』

 

「さすが先輩……フェリ」

 

 やっとかという思いと同時にこれで行動に移ることができるとレイフォンも胸を撫で下ろした。

 しかし、次の言葉でそれも霧散する。

 

『距離150キルメル、そこに敵本体が砲撃を仕掛けています』

 

 その距離に絶句した。

 150キロメル、京の認識で言うなら150kmだ。その距離を幼生体を内蔵した砲弾を発射している。

 それだけではない。その距離をほとんど誤差もなく照準し、狙い撃っているのだ。

 また冗談のような進化をした老生体、150kmなど京でもどれだけ時間が掛かるか

 

『兄から伝達です。繋ぎます』

 

 そこにカリアンから連絡が入った。

 

『活躍しているようだね、2人とも』

 

「できれば早く終わりにしたい」

 

「どうさせるつもりですか」

 

 2人の口から飛び出したのは指示の催促だった。

 現状、京とレイフォンの実力を踏まえ、且つ都市全体の現状を把握しているカリアンが合理的な指示を出せると判断したからだ。

 

『150キルメル、京君、君ならどれほどの時間でそこまで辿り着けるかね?』

 

「4時間、いや、3時間でいってみせる」

 

『結構』

 

 カリアンとその近くにいるであろうヴァンゼとのやり取りがかすかに聞こえてくる。

 一刻ほどの時間が経つ。

 

『決まった。京君、レイフォン君、君達にはこれから目標の老生体の殲滅を言い渡す』

 

「…俺達のどちらかでは不満か?」

 

「えぇ、どちらかが都市の防衛に回るべきです」

 

 カリアンの指示に2人は難色を表した。

 足がある京が単独で突入、それまでレイフォンが防衛でもそこまで問題はないはずだった。

 

『君は汚染獣についてまだ勝手はわからないのではないかね?』

 

「見つけて、潰すだけだ。不安要素があると言いたいのか?」

 

『2人のほうがより確実性は上だろう?』

 

 老生体1匹でも相応に苦戦した。

 それを踏まえての考えだろう。

 

「都市の防衛はどうする。俺達無しでどこまで守れる」

 

「誰か一人が残るべきです」

 

『君達は……』

 

 溜息と共にカリアンの声色が変わった。

 

『僕等を舐め過ぎではないかね?』

 

「……」

 

『もう半年前の汚染獣の脅威を知らなかった子供ではないんだよ。我々はそれを経験した。それに何も戦ってきたのはなにも君達だけではない。幼生体程度、何とかするさ』

 

 それに、とカリアンは不敵に続けた。

 

『君達がさっさと倒してくれればこちらの負担も減るだろう?』

 

「それもそうか」

 

 これ以上言っても無駄かと踵を返す。

 

「レイフォン、外延部で待ってる。都市外装備着込んだらそこで落ち合おう」

 

「わかりました」

 

 そこからの行動は早かった。

 レイフォンはすぐさま対汚染獣の錬金鋼の調整を済ませ、都市外装備を着こんで外延部に直行する。

 その間、京はしばしの休息を取っていた。

 そして、合流すると京はレイフォンに告げる。

 

「振り落とされるなよ?」

 

 そして人差し指と親指で輪を作るとそれを口に咥え、思い切り鳴らした。

 

「p-----!!」

 

 口笛が響き渡ると同時、何もない空間から炎と共に1台のバイクが飛び出した。

 ヘルバイク、久々の登場だ。

 それに京が乗り込み、恐る恐るといった感じでレンフォンが後部に乗る。

 そして、一気にアクセルにし、雷鳴のような疾走を開始するのだった。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 見えてきたのは獣のような汚染獣、狼とゾウを足して割ったような奇妙な姿だ。

 そして、その最もたるは背から生えた筒状の砲身、あれで幼生体内臓の殻を撃ちだしていたのだ。

 そして僅かにだが腹部からも筒状のものが地面に伸びているのを確認できる。

 

『わかりました。地下に雌生体がいます』

 

 連絡用の念威端子から目の前の概要が語られる。

 つまり、あの老生体は地下の雌生体の腹に管を突き刺し、幼生体を吸い上げ、殻で加工してから撃ちだしているということだ。

 

「どうする?」

 

 汚染獣と最も接しているレイフォンに聞く。

 

「これ以上近づけばもう戦闘は避けれられないでしょう。幸いまだ日が落ちきっていない。幼生体の吸い上げだけでも停止させたほう無難ですね」

 

「了解だ」

 

 互いに頷き合うと、揃って老生体に突撃する。

 それに反応したように相手方も動きを見せた。

 なにか反撃をさせる前に腹の筒を破壊してみせる。

 先手を取ったのはレイフォンだ。

 

――――焔切り

 

 滑り込むように老生体の腹に移動すると擦れ違い様に居合いと衝剄の二段攻撃を放つ。

 

「ちっ…!」

 

 レイフォンの舌打ちからは手応えを感じることができなかったのだろう、破壊の失敗を告げていた。

 しかし、老生体がレイフォンに注意をひきつけたことで更なる攻撃のタイミングを生み出す。

 

「天を突く、バケットホイールローダーの構え」

 

 しゃがみ、両手を合わせ下段に構える。

 

「ビックバケットサンダーヘッド!!」

 

 ドスン、と重低音とともに200m以上ある老生体の巨体が浮き上がった。

 

「いけぇっ!」

 

――――焔重ね

 

 レイフォンの更なる追撃、二の太刀が先ほど切り込んだ部分を寸分違わずに切り裂いた。

 

「オォォォォォォォオオオン!!」

 

 そこで初めて、汚染獣の雄叫びが聞こえた。

 雌生体とのパイプを切り裂かれ、自由になった老成体はその巨体とは似ても似つかない素早さでこちらに突っ込んでくる。

 ただの体当たり、だがその質量とスピードで直撃をもらえば体がバラバラになってしまってもおかしくはない。

 それに合わせるように京とレイフォンは両サイドに跳んだ。

 そして、老生体が横切る擦れ違い様、京は大剣「世界の墓標」と取り出し、レイフォンは剣を構えた。

 

――――閃断

 

「SLOW&ZOOM」

 

 老生体の両側面を思い切りきり斬りつける。

 だが返ってきたのは重い金属音で、その攻撃が外皮に弾かれたことを物語っていた。

 

「硬い」

 

「はい、老生体、それも5期以上、名付きレベルです」

 

 グレンダンでは一度で倒せなかった汚染獣には名が与えられる。

 今目の前にしている敵はそのレベルだということだ。

 これはカリアンの支持は的確だったのかもしれないと苦笑してしまった。

 

「どうします?」

 

「時間、稼げるか?」

 

「えぇ、いくらでも」

 

「上等」

 

 京は後方に跳躍、老生体と距離をとった、

 それを守るように京と老生体の間にレイフォンが立ち塞がる。

 

「前回と同じだ」

 

「……了解です」

 

 その言葉に何か納得したものを感じたのか、苦笑を以ってレイフォンは了承した。

 京は右手を構えを紡ぐ。

 

「ソイル……我が力!!」

 

 黄金のギブスに填められた青い水晶が光り輝き、側面からドリルとそれに付属した刃のようなプロペラが展開し、回転を始める。

 廻る、廻る、廻る。

 渦を巻いて発せられる魔力が螺旋を描き、収束していく。

 そして、黄金のギブスが一瞬眩い光を放つと金色の光の粒子となって分解、再構成を始めた。

 螺旋を描くように黄金の粒子は京の右腕い絡みつき、真の姿に成っていく。

 

「魔銃……解凍……!」

 

 ここに黄金の魔銃が姿を現した。

 

 そして、京はここから更に紡ぎ出す。

 

 

 

 

 

「ムシウタより薬屋 大助、かっこう虫    …発動」

 

 

 

 

 

 緑色に輝く、見た事もない虫が現れた。

 そして、魔銃の銃身の先端にとまると血管が通うようにビキビキと音を立てて魔銃との侵食同化を始めた。

 それと同時に、魔銃に更なる力が宿るのを感じる。

 

「グッ…ゥ…」

 

 苦悶の色を顔ににじませて、京は何かが今、ごっそりと削られた感覚を覚える。

 だがこれで準備は万端だ。

 少しだけふらついた足に力を入れ、魔銃を老生体に向ける。

 

 

「終わりだ」




とvs汚染獣死刑執行までの流れでした。
そろそろ第2章が終わりになりそうです。
次回も乞うご期待ください。
感想などもらえるととても嬉しいです。

原作名:アーティストアクロ
ジャンル:漫画
使用者:スバル・シエル
能力:言霊の詩(ワード・ソウル)
相手の声に篭る言霊、響く(クラッシュ)エネルギーを燃料とした技巧(スキル)
言霊が大きければ大きいほど威力は大きくなる。
また言霊の意味に指向性があればそれを暗示として相手に撃ち出し、意味に沿った暗示を仕掛けることができる。
最大の欠点は自分の声では言霊が生まれないこと、エネルギー源は全て仲間か相手に依存し、意思のエネルギー量も挑発や突発的なできごとで驚かせるなどで篭らせなければ威力が出ない。
非常に使いどころが難しいが言霊は相手に見えないので不可視の攻撃となり、非常に避けにくい。

とアーティストアクロでした。
様々な能力がかち合う能力者バトル漫画。
主人公が普通にロリコンなのが印象的でした。
手に取る機会があれば読んでみて下さい。

原作名:ムシウタ
ジャンル:小説&アニメ
使用者:薬屋 大助
能力:かっこう虫
火種一号指定の同化型虫憑き。
虫を自身の肉体や銃に同化させて、身体能力や銃の威力を大幅に上げる。
使用には代償が存在し、使い度に自身の夢が消費されていく、そして夢が虫に食い尽くされたとき、虫は成虫となって使用者は死んでしまう。
また虫を殺されても使用者は廃人となってしまうため注意が必要。

とムシウタでした。
主人公退場したような気がするんですがこの先どうなるんだろう。
虫という特殊な能力が魅力の小説。
アニメはなんだが成虫に魔改造が入ってる気がしますが面白いです。続編マダー。
面白いのでせひ読んでみて下さい。
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