マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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明けましておめでとうございます。
今年初めての投稿になります。
戦闘無しの前座のような感じですが楽しめたら何よりです。


第56話

 夕暮れの丘の上、目の前には大きな黒い木があった。

 大きな大きな黒い木。

 黒い木には黒い花が咲いており、靡く風に揺られている。

 

「……」

 

 それを見上げている一人の影、京がいた。

 見上げる花は目の前を黒く彩り、視界を埋め尽くそうとしていた。

 あと少し、あと少しだ。

 いくつの戦いで、いくつの想いを掲げたか、それを正確に覚えてはいない。

 ただそれはとてもたくさんだったはずだ。

 呆然と黒い木を見上げ、呆然と立ち尽くす京にもただそれだけはわかった。

 終わりが近い。

 

『…!』

 

 ふと、呼び声がした。

 振り返っても誰もいない。

 だがその声は確かに京を呼んでいた。

 しょうがないな、と丘を後にする。声のする方向に歩を進めた。

 最後に歩を止め、チラリと黒い木に目を向けた。

 

 夕焼けを背に黒い花を咲かせた黒い木が依然としてそこにある。

 満開は近い。

 全ての花が咲いた時、全てが終わっているのだろう。

 そして、その時、おそらく自分は……

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 目を覚ます。

 

「……っ!」

 

 ガバリと思い切り上半身を起こした。

 なにがあった。なにがおこった。どれだけの時間が経った。状況は。これからどうする。

 目まぐるしく思考が回り、混濁する。

 冷静に、冷静になることだと自分に言い聞かせ、深呼吸した。

 

「……」

 

 一瞬目を閉じ、再び開いたときには京の目から焦りの色は薄くなっていた。

 何があったといわれれば、自分は何者かの手によって気絶したということだろう。

 最後に見た無色の何か、あれに自分は見覚えがある。

 

 衝剄だ。

 

 武芸者が使う外力系剄技の中でも初歩の初歩、自らに巡る剄を体の外に放出するだけのエネルギー衝撃波、それが京を襲ったものの正体だ。

 本来、その程度の攻撃なら京にとってダメージにすらなりえない。しかし、今回食らった衝剄は文字通り桁が違った。

 練られた剄の圧縮率、純度、量、それらが全て規格外を通り越した冗談の域に達していたからだ。

 そして、そんなものを放つ輩がいればフェリがそれを見逃すはずがない。つまり、衝剄を放った者はあの老生体以上の射程から目視でそれを放ち、正確に京に着弾させたということだ。

 馬鹿げている、そう一笑してしまいたい。

 だがそれは違うともう既に頭で理解してしまっている。

 それが最後に見た場面からの京が導き出した推察だった。

 

「どうする?」

 

 老生体は倒した。だが更にイレギュラーが発生した。そう判断するしかないだろう。

 どうするか、どうするべきか、今はもうそれに尽きる。

 情報が足りない。

 そう思い立ち、行動しようと立ち上がったとき

 

「づっ!?」

 

 激痛が走った。

 冷静になったつもりがまだどこか焦りがあったのだろう。自分の状態もわからないほどに

 体中に包帯が巻かれ、赤く血が滲んでいた。

 傷が癒えていない。つまり、血仙蟲が枯渇したということ、あの一撃で、ふざけている。

 歯噛みする。自分のこの体たらくに

 そして、右手が引っ張られるような感覚を覚えてそちらに身を向けるとメイシェンがそこにいた。

 自分の右手をずっと握っていたのだ、今は寝ているようだが目元が赤くなっているあたり、泣いていたのだろう。

 

「メイシェン、メイシェン」

 

 肩を揺さぶり、起こす。

 

「ん、うぅ…」

 

 そこでメイシェンが目を覚ました。

 目を開け、起きている京を見ると抱き付かんばかりの喜びを見せる。

 

「京、よかった…!」

 

 メイシェンの言葉から言霊が見える。

 嬉しさ、困惑、悲しみ、そういうものが見える。申し訳なく思った。

 そして、メイシェンの持つ神精霊の宝玉が1つ消費されていることを確認すると助けたくれたのがメイシェンだったのかと同時に頼もしさも感じた。

 

「メイシェン、今どうなってる?」

 

 だが感傷に浸っている暇は今はない。

 現状の打破、それが今行うべきことだ。

 そこからメイシェンから事のあらましを聞くことになる。

 京はあの攻撃を食らい、数百mをバウンドするように横転すると気絶、足を無くしたレイフォンはその場で足止めされ、そこにメイシェンが神精霊によってツェルニまで運んだということだった。

 そして、ツェルニに到着すると同時に空から謎の人型汚染獣が襲来、今現在その対応に追われているということらしい。

 

「わかった、今から俺も戦線に加わる」

 

 あれだけの戦い、更に未知の汚染獣との戦いはもう既にツェルニの戦力ではどうしようもないレベルだ。

 ならばここは自分がと体が悲鳴を上げるのを無視して京が動き出す。

 

「そんな体じゃ無理だよ!」

 

 そう止めるのはメイシェンだった。

 

「そう言ってる場合でもない、拙いことになっているなら俺が」

 

「なら私がいくから!」

 

「汚染獣と戦う能力は教えていない、無理だよ」

 

「でも…」

 

 必死に止めようとするメイシェンの言葉も京の冷静な返しに勢いを失っていく。

 レイフォンが今は対応しているとの事だがその全てを守りきれているわけではない。ツェルニは人もツェルニ自身も削られていることに変わりない。

 

 そこに轟音が響いた。何かを突き破ったような甲高い音。

 

「っ」

 

 近い。

 それはとても近くから発せられているとわかる。

 何かあった。それはもはや見ないでもわかる。

 その場所に向かおうとした京が足を進めようとすると崩れ落ちそうになる。足に力が入らなかったのだ。

 そこをメイシェンが支えた。

 目を向ければ心配そうにこちらを見つめている。

 仕方がない、とゆっくりとそちらに向かうのだった。

 

 ……

 

「なにがあった?」

 

 それが京が発した第一声だった。

 シェルターの地下通路がなんとも悲惨に状況となっており、地下であるはずが上を見上げれば薄暗くなった空が見えている。

 周りを見ても汚染獣の姿はない。つまり、これをやったのは人ということか

 そして、そこには項垂れるようなレイフォンとニーナ、シャーニッドがいた。念威もあるのでフェリも見ていたのだろう。

 ここに何の偶然か17小隊は揃ったようだ。

 

「リーリンが攫われた」

 

「ふぅん?」

 

 リーリン・マーフィス、彼女かと思い出す。

 京自身にはあまり接点がないので親しみもなく、そこまで驚きはしなかった。

 ただ淡々と状況を飲み込んでいく。

 あろうことか槍殻都市グレンダンがこちらに突っ込んできた。

 それが今の現状を作り出している、らしい。

 ツェルニに衝突すかと思うほどに急接近したグレンダンは急停止、そこから複数の天険授受者が現れ、ツェルニを襲う汚染獣を駆逐、更にそのどさくさに紛れてグレンダンの王女がリーリンを掻っ攫って行ったということらしい。

 確かに女王は天険授受者より遥かに強いということはレイフォンから聞いていた。レイフォンがいて何もできなかったということはそういうことなのだろう。

 自分がいればと自惚れるつもりはないが自分がいればと考えてしまう。

 だって

 きっと自分を狙撃してくれやがったのはあの女王様なんだろうから

 

「で、どうする? このまま黙ってる17小隊でもないんだろう?」

 

「僕は……」

 

 きっと連れ戻してくる。そう言い放って飛び出すものかと思いきや意気消沈しているレイフォンに変わりはない。

 少し拍子抜けしてしまった。

 一体どうしたんだとシャーニッドに目を向けると苦笑いでそれに応えられた。

 連れ攫われるときにでもなにかレイフォンに突き刺さるやり取りでもあったのか

 それはレイフォンの嘆きから見える言霊でもわかった。

 動揺と困惑、それだけだ。

 レイフォンにリーリンが連れ攫われたという心配のようなものは少ない。何かの理由があってリーリンを迎えに来た。そう考えるのが妥当で、レイフォンも悪いことにはならないと確信染みたものを感じているのだろう。

 だが、それでは駄目だ。

 揺さぶられる程度の覚悟ではきっと助けに行ってもそれは変わらない。

 

「助けに、行きます」

 

 顔を上げるレイフォンには覇気が戻りつつあった。

 しかし、それはいつものレイフォンより弱弱しく、力強くはない。

 京はメイシェンを優しく振りほどきレイフォンに向かっていくと

 

「何を言われたが知らないが、まぁ、思うままに突っ走ってもいいだろ、たぶん」

 

 かなり適当な言葉を投げた。

 

「俺も色々と突っ込まなくてもいいことに頭突っ込んだけど、尻拭いは自分でやればいいから」

 

 前からもこれからも、そして今、自分のすることは、目的は変わらない。

 ありえなかったイレギュラーとして物語に茶々を入れる。

 自分がすることに比べたら思うままに任せて突っ走ってもさほど問題ない。

 

「だから」

 

 後押しくらいはしよう。

 

「一曲聴いていけ」

 

 京がレイフォンに助言や叱責をする、そんな資格もなければする気もない。

 それはどうやってレイフォンが生きていたか、それをよく知る者が言うべきものだろう。

 

「マーラー最終作」

 

 そして、周りの励ましによって己を奮い立たせるくらいなら、自分から立ち直ったほうが格好が付くというもの。

 思い出せ、自分自身を

 

「大地の歌」

 

 取り出した巨大なバイオリン、それを演奏する。

 それは重低音を繰り出し、辺りに音楽を響き渡らせた。

 それをこの音楽を聴くものにある場面を思い出させる。

 自らの死期を悟り、闘病と共に綴った最後の名曲「大地の歌」、それを聞いたものは自分の生涯で最も心に残るシーンを思い出すという。

 

「……」

 

 それは各々の心の中にのみ、己のみが知ることができる。

 レイフォンは何故刀を握ったのか、様々な事象に埋没した初心とは、武芸者を志すと決めた最初の気持ちとはなんだったのだろうか

 曲が終わると辺りが静寂に包まれた。

 

「…行って来ます!」

 

「上等」

 

 今だかつて見たことがないほどにレイフォンに活力が見られた。

 今のレイフォンなら心配するほうが無粋というもの、黙って送り出したほうがいい。

 

「私も行くぞ」

 

「あぁ、俺も行こうか」

 

 ニーナとシャーニッドもそれに続く。

 

「ありがとうございます」

 

 レイフォンは少し申し訳なさそうに笑った。

 しかし、それに付いていこうとしなかったものもいた。

 

「いってらっしゃい」

 

 シュタと手を上げて送り出しているのは後押しした京自身だった。

 

「オイオイ、この流れで付いていかないのはおかしいだろ」

 

「や、わかってるんだけどね」

 

 レイフォンと共にグレンダンに潜入する。それも悪くない。

 だが京は初志を忘れたわけではないし、やることがある。

 それに

 

「ちょっと、無理だ」

 

 壁を背にズルズルと座り込む京の息遣いは荒かった。

 ダメージは抜け切っていないし、ちょっと拙い。曲を奏でるのは意外と体力を使うのだ。

 そして他にも理由がある。

 

「それとやることがあるんだ」

 

 指を上に向けて、京はそう笑った。

 指を指す方向には空が見えて、夜空とはまた違った黒が空を覆い隠そうとしていた。

 それを意味するところを周りは知る由もなく、京も言うつもりはなかった。

 

「しゃぁないな」

 

 そう言ってシャーニッド達は向かおうとする。

 

「ぁ、それとメイシェンも連れて行ってくれないかな」

 

「ぇ…?」

 

「きっとレイフォンについていったほうが安全だから」

 

 こればかりは勘としかいえない。

 だがツェルニより余程マシなのは間違いない。

 足手纏いを追加するお願いにだが京は黙って頭を下げた。

 

「わかりました」

 

「ありがとう。できれば後で合流する」

 

 そして、それきり京の周りからは誰もいなくなった。

 最後にこちらを何度も振り返るメイシェンに苦笑したくらいだ。

 

「……はぁ……」

 

 バタリと床に横になる。

 一時休憩、そんなところだ。

 ピンチかといわれればそんなことはない。

 過去には今以上のダメージを負ってきたのだ。体から無数の木が突き出たこともあった。エアによって体を両断され、エクスカリバーによって体を真っ二つにされ、胸に大穴が空いた事だってある。ちょっと涙が出てきた。

 先に食らった衝剄は不意に食らったのが拙かった。食らうとわかっていれば気構えもできる。歯を食いしばれる。たが不意打ちはそれをさせずあっさりと無力化させてしまう。

 不意打ち、奇襲は自分の常套手段だと思っていたのに逆にされるとここまで苛立つものとは

 そう思いながら腕を上げる。

 

「植物と、豊穣と、生産の精霊王よ。木の葉に囲まれた男の顔よ」

 

 手につけたメイシェンからもらった腕時計を調節し、午後一時に合わせると詠唱を開始する。

 

「午後一時の『森のロビン(ロビン・オブ・ザ・ウッド)』!!」

 

 腕時計が輝くと同時に木の葉でできた男の顔が現れる。

 木でできた体と葉が京の体を覆うと回復を開始する。

 森のロビン(ロビン・オブ・ザ・ウッド)、緑を司る精霊王であり、それによって身体の回復力を極限まで高めるのだ。

 10分ほどで動けるくらいにはなるだろう。

 それが終われば、京の時間だ。

 まさか、向こうからやってくるとは、いや、そう思うのはもう筋違いというものか

 明らかにツェルニは何かに巻き込まれている。

 つまり、京は最初から、ツェルニに来たときから自らが望んでいたものの渦中にいて、それはきっとそういうことなのだろう。

 

「まぁいいさ」

 

 自分はやることをやるだけだ。

 月から降りてくるもの、その後ろに隠れるもの、そしてあともう1つ。

 それを叩く。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 レイフォン一行は騒ぎに乗じて、グレンダンの外延部に降り立っていた。

 都市と都市が戦っているわけではなく、どちらかといえば助けられているといえるツェルニとグレンダンの間には警戒は少ない。潜入は意外と楽だった。

 一部を除いて

 

「こんばんわ、レイフォン様」

 

 立ちはだかる様に一人の少女がそこにいた。白と黒が混じった髪を後ろに一纏めにした利発そうな少女、年齢的にはレイフォンやメイシェンと同じくらいだろうか

 そして、その体から発せられる剄の気配は圧倒的だった。

 

「……あなたは」

 

 その姿を気配を察した瞬間、レイフォンは構えていた。

 

「私のこと、覚えていらして?」

 

「クラリーベル・ロンスマイヤ、様。ティグリス・ノイエラン・ロンスマイアの孫娘、でしたか」

 

「そう、覚えていらして光栄ですわ」

 

 クラリーベル・ロンスマイヤ、古参の天険授受者の1人ティグリス・ノイエラン・ロンスマイアの孫娘にして天剣授受者候補に挙がるほどの強者でもある。

 天剣クラスの実力者ならレイフォン達の潜入はわかっているだろう。

 だがそのどれもが興味がないと無視を決め込んでいるだけで、そして興味があった唯一の彼女が今ここにいるという訳だ。

 

「一戦、交えてもらってもよろしくて?」

 

「……わかった」

 

 言葉を交わらせているだけでも時間が惜しいのに、こんなことに足止めを食っている暇は存在しない。

 

「えぇ、それでいいですわ」

 

 レイフォンは知らないだろう。グレンダンの同年代にとってレイフォンは目標の1つであり、戦いたがっている者は数知れないということを、ましてや本気の実戦を、そしてクラリーベルがその1人にして、恋にも似た何かをレイフォンに寄せていることに

 尊敬と猛烈な対抗意識、それがクラリーベルを突き動かし、ここに立たせている気持ちだ。

 

 しかし、それにちょっかいを入れる者もいた。

 

「ちょっと待つさ~、そいつはおれっちが先約済みさ~」

 

 2人に割って入るように間延びした口調でそれは現れた。

 

「ハイア…」

 

「よう、元ヴォルフシュテイン、久しぶりさ~」

 

 ハイア、かつて自分達に害しか齎さなかった奴がここにきて何の用か

 

「何のつもり、ですの?」

 

 レイフォン達の心情はクラリーベルが代弁した形となった。

 忌々しそうに水を差されたことにハイアを睨みつける。

 

「おれっちはハイア・サリンバン・ライア、サリンバン教導傭兵団の三代目団長さ~」

 

 明らかな怒気を受け流し、ハイアは続ける。

 

「こいつとの決闘は俺が先約済みだ。帰れ」

 

 立ち塞がるようにハイアは刀を構えた。

 そして、背後にいるであろうレイフォン達にハイアは言う。

 

「廃棄族がツェルニにあることをグレンダンに伝えた時点で、俺たちの仕事は実は終わってるさ、ついでに依頼で汚染獣からツェルニを防衛したけどもう終わった。あとは好き勝手にやってるだけさ」

 

 廃棄族をハイア達が取り逃がしたことはグレンダンに伝えられている。隊長として、自らの失態を隠すことはなかった。そして、グレンダンから来た連絡は任務の完了を伝えるものでその時点でハイアの仕事は終わっていたのだ。要は使えないからグレンダンで後のことはやる、とそう言われたわけだ。

 代々続いた任務、それを不本意な形とはいえハイア達は成し遂げた。これで廃貴族捜索という任は終わり、傭兵団も解散、あとはハイア自身のしがらみを終わらせるだけになった。

 1つはレイフォンと戦うこと、そしてあともう1つは

 

「悪かったさ」

 

「…ぇ?」

 

 突然出てきた謝罪の言葉、それを向けられたのはメイシェンだった。

 

「ちょっと焦りすぎた。無意味に攻撃したこと、謝るっていってるさ」

 

「……はい」

 

『彼、ずっと手助けできそうな場面が来るまでずっとこっそり伺ってたんですよ』

 

 そこに突然フェリ以外の念威が来た。

 フェルマウス、ハイアの隣にいた仮面の女性だったか

 

「余計なこと言うな!」

 

 それを聞いたハイアは顔を真っ赤にして虚空に怒鳴った。

 クスクスと念威で笑い声が聞こえる。

 

「いいからもういくさ!」

 

 気恥ずかしさを追い払うようにレイフォン達に先を促した。

 黙ってレイフォン達は、2人を後にする。

 

「この一件が終わったら、一度だけ試合うさ」

 

「あぁ、わかった」

 

 それを聞いてハイアが笑った。

 そして誰もいなくなる。

 目の前の怒りを膨らませるクラリーベルを除いて

 

「羨ましいですわね」

 

「別に、おれっちの後でやればいいさ~」

 

「私は今やりたかったのに」

 

 クラリーベルが赤い短剣を逆手に持ち、臨戦態勢に入った。

 

「あなた、ムカつきます…!」

 

「それは結構…!」

 

 同じく、ハイアも構える。

 瞬間、火花が散った。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

「我解くる前鬼の咒縛、破咒の印、秘咒の刃、封咒を断たん! 我が命にて鬼神力解放せよ! 破咒!

 金剛絶対帰命(ヴァジュラ・オン)! アーク!!」

 

 遥かな空、ツェルニ上空で京は唱えていた。

 体力は十分とはいかないものの動けるまでに回復した。

 ここからが京の仕事だ。

 

「鬼神前鬼、ここに現臨」

 

 体を一時的に超強化することでダメージを補う。

 見上げればそこには敵がいる。

 頭上は月明かりを遮り、グレンダンを何かが覆うように迫っていた。

 大きい、グレンダンよりも、一都市よりも大きい。

 出鱈目までに大きな汚染獣、それがグレンダンに迫ろうとしていた。

 だが京の狙いはそれでもない。

 おそらく、グレンダンはあれに負けなどしない。だから京は別に動く。

 

「超鬼神力! ヴァジュラ・マハル・サムスカーラ!!」

 

 そして新たに第4の封印を解く、制限が掛かっていたこの能力、能力数が40を突破したことでいつの間にか解除されている。

 

「超鬼神前鬼、ここに降臨」

 

 今までとは比較にならないほどに強化された。

 赤かった鎧は白と基調とした鎧に変わり、電撃が体を渦巻いている。そして、手には黄金の斧、金剛斧が握られている。

 黄金の斧を見たとき、一瞬だけノイズが走ったように頭に1つの映像が流れた。

 

 黒と赤のドレスに身を包み、黄金の冠と黄金の斧を振りかざす金髪の少女。

 

 それが誰だったのかわからない。ただそれが予知の一部であるのはわかった。

 なんだったのか考えている暇はない。

 京は飛び出した。

 月に向かって

 

「見つけた…!」

 

 京は斧を構える。

 目の前には1人の少女が見えた。

 淡い桜色の髪を肩までなびかせ、人形のような無表情の少女。

 おそらくは、下の巨大な汚染獣は囮、なのだろう。

 本命はきっと、あの少女の形をしたナニカだ。

 

 しかし

 

 京はそれをも見ていない。

 

 全速力で京は少女に向かう。

 

 京の左目はありえざるものを視る、第二視力(セカンド・サイト)、見破れないものなど存在しない。

 

 

 

 

「お前も……邪魔だ!」

 




と色々と始まってまいりました。
レギオスは完結していないため、自己予想的な解釈を交えています。
これからもどんどん進んでいきます。
乞うご期待ください。
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