マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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VSレヴァンティン


第57話

「金剛斧 烈破斬!!」

 

 始まりの一撃。

 雷を纏わせた金剛斧を巨大化させ、ただ力任せに振り下ろす。

 単純だが強力だ。巨大な質量と遥かに増した京の膂力、更に全てを灰にするかのごとき雷の力、並大抵の力では受け止めることなどできない。

 

 そう、並大抵の力では

 

「……」

 

 ギシリ、と鋼の軋むような音がして、それは目の前の少女の右手にいとも簡単に受け止められた。

 斧に纏わされている雷が少女を焼いていることだろう。しかし、少女はそれに眉をひそませることすらしない。それは彼女に全くの効力を為していないということだ。

 

「だろうさ」

 

 しかし、京にはそれは予見済みだし、予知済みだ。

 前に戦った老生体、名付きクラスの老生体、そして目の前のそれよりも強いであろう都市を覆い隠すほどの巨大な汚染獣、その後ろに控えるようなこの少女が弱いわけがない。

 

「轟け雷鳴、光れ雷光」

 

 だから、手加減無用で

 

「金剛拳雷撃破!」

 

 こちらは全力で向かわねばならないということだ。

 斧を握る右腕はそのままに、雷を纏わせた異形の左腕を少女に振り下ろす。

 威力だけならば先より上、さぁどういった出方をするか

 少女がそれを受け止めようと左手を伸ばす。

 だが前よりも甘い攻撃ではない。

 

「SLOW&ZOOM」

 

 左腕が拡大され、スロー再生になる。それは少女の左手を砕く様をゆっくりと映し出した。

 そのまま本体ごと消し飛ばす。その心算であった。

 だが

 

―――MACHSPEED

 

 突如として、京は全ての攻撃を停止、高速稼動を以って上半身を仰け反るように逸らす。

 京の目の前に見えたのはは少女の背から生えた白い茨の1本が寸前を通り過ぎているところだった。

 あのままなら頭を串刺しにされていた。

 そして息をつく暇もなく、少女本体が目の前に現れる。

 

「っ……!」

 

 なんの躊躇もなく、少女は左腕(・・)を振り下ろす。

 体勢が拙い、咄嗟に避けられるものではないと瞬時に判断、左腕をガードに回した。

 そして直撃、凄まじい衝撃が発生する。

 ギリギリで受け止めるも、左腕にはあちこちに罅が入り、今にも砕けそうだった。

 

「その力を私は知らない。あなたは何者ですか?」

 

 一切の表情の変化もなく、それを繰り出している少女は京に問いを投げた。

 

「そういうお前は何者だ。こちとら結構真面なんだけどな」

 

 そう返しながら京は少女から発せられた言葉からやはりそうかと納得に似たものを感じていた。

 彼女から発せられた言葉、その言葉に内包される言霊、それが無かった。

 言葉に意思が篭ってない。どんな人間であろうと言霊は宿る。心を殺されていようと意思を封じられているいようとそれには何らかの意味を内包するもの。

 あれは人の形をした機械だ。

 それによって目の前の敵に対する有効打の内、1つの選択肢が無くなった。

 そして、破壊したはずの左腕が再生している。同時に右手に握っていたはずの金剛斧が半ばから消失していた。

 

「ナノセルロイド・マザーI・レヴァンティン、私の名です」

 

 少女、レヴァンティンが名乗った。

 炎の聖剣、害を為す魔法の杖、成程、仰々しい名をつけるだけはある。

 

「京、だ。残念ながら大層に述べる肩書きも何も無い」

 

 瞬間、左腕が砕かれた。

 そのまま京の体に突き刺さんとするところで、京の姿が消失する。

 

「これならどうだ」

 

 腕が砕かれた瞬間、京はテレポートし、レヴァンティンの背後に回りこんでいた。

 そして右手に持っているものは古式銃キャスター、装填される銃弾は「4」の刻印がされたとっておきの1発である。

 躊躇も無く、引き金を引いた。

 同時に極太の赤い閃光が放たれる。

 

 

 しかし、それは避けられ、4本の茨に貫かれる。

 

 

 それが京の視た予知だ。

 

千手天衣(せんじゅアーマー)!!」

 

 背後に回りこんでいたレヴァンティンの繰り出す4本の茨を18対の手が押さえ込む。

 更に銃を放棄、大剣「世界の墓標」を手に取る。

 そしてそのまま

 

虚次元斬断(ゼロ・ジーザ・ソード)!!」

 

 斬りつけた。

 その危険性を察したのか、凄まじい反射神経でレヴァンティンは両腕を交差させ、それを受け止める。

 だがそれでは駄目だ。

 この攻撃は防御を突き抜ける。

 虚次元斬断(ゼロ・ジーザ・ソード)虚無場(ゼロフィールド)を剣に収束、纏わせて放つ斬撃、その攻撃は威力もさることながら例え受け止めても斬撃場が貫通し、本体に直接攻撃を与えるものである。

 予知によって相手の反撃を隙に変え、カウンターとして必殺の攻撃を加えた会心の一撃。

 

 

 鮮血が舞った。

 

 

「な……に……?」

 

 世界の墓標を振り下ろした態勢のまま京は嘆いた。

 何故、いや、何が起こった。

 何故、今の攻撃によって目の前のレヴァンティンが無傷なのか

 どうして、今攻撃したはずの自分が斜めに裂かれているのか

 飛び散った血潮は京のもので、食らったものは虚次元斬断(ゼロ・ジーザ・ソード)の斬撃そのもの

 反射された。不意を討ったあの一瞬で、どんな攻撃かもわからないはずなのに

 

 今はいい。考えるな。この状態は拙い。

 避けろ。避けろ。避けろ。

 

―――クロックアップ

 

 血を吐き出しながら京は剣を盾にするかのように様に構えた。

 あの一撃で流れが変わった。予想外の一撃に一瞬固まったのは京、そして目の前の敵はきっとそれを見逃しはしない。

 一瞬で思考を高速化、80倍まで遅くなった世界で、それはもう目の前にいた。

 轟音と共に衝撃、相手の攻撃を紙一重で防御する。

 

「ぢぃっ!」

 

 片手ではまともに攻撃を受け止められない。徐々に押され始めていた。

 60秒、加速時間の中でそれが京に残された時間である。

 強い。

 目の前の敵、レヴァンティンは自分より強い。何が強いといわれれば単純に素のスペックが違う。運動能力、反射神経、攻撃力、防御力、再生力、それらが自分よりかなり上だ。

 奇策に走りがちな自分とは違い、そのままの単純な力であれは強い。

 勝つ手段があるのかといわれれば、ある。しかし、それを今実行できる自信はない。

 単体火力として今までの攻撃はかなり最上位に分類されるものだ。それ以上の攻撃はある程度の溜めを必要としている。

 攻撃を溜める隙を作ることができるか、当てることができるか、難しいといわざる得ない。

 この至近距離、2,3打は食らうことを覚悟しなければならないだろう。それは同時に死を意味する。

 新たに現状を打破しえる能力の発動も難しい。あれも少なくないタイムラグがあるからだ。

 今持ちえる力で、戦うしかない。

 目の前にはレヴァンティンがいる。

 京は最良の一手を打った。

 

「かぁぁぁあああ!!」

 

 思い切り、魔法の煙を吐き出す。同時に風を発生させ、風に煙を乗せ、レヴァンティンを取り囲んだ。

 なにもかもをキノコにする魔法、どんな防御力であろうとこの攻撃は触れただけでアウトだ。天剣授受者すら避けることはできなかった。

 このままキノコの群生に変えてやる。

 

 しかし、それでも

 

「……興味深い物質ですね」

 

 それは有効打となり得なかった。

 取り囲み、襲い掛からんとしていた煙は文字通り霧散した。

 消失、いや、分解されてしまった。それは先の斧のようにあっさりと

 京には見えていた。黒い煙が徐々に消えていくところを

 

 だが、まだ、まだだ。京の攻撃は終わっていない。

 

 煙に触れればお終いなのは変わっていない。うっすらと残る煙、それはまだ周囲に存在して、この場から動けないことに変わりは無い。

 

「金剛臨ルドラ!!」

 

 自身の全呪力を消費し、最大最高の雷を招来させる。

 衝撃によって2人の距離が開いた。

 眩いほどに白く発行した体から白い電撃がレヴァンティンを襲う。

 

 そこまでになってレヴァンティンが動いた。

 

 虚空に向かって手を出すとそこには剣が生成されていく、それは正しくその名に相応しいもので

 

 振り下ろされた剣は

 

 雷を裂いた。

 

 

「真・直翅目蹴撃(ライダーキック)!!」

 

 

 正義の必殺技。

 その攻撃に乗じて京が最後の攻撃に移った。

 

「SLOW&MACHSPEED&ZOOM」

 

 加速世界の中でその時間を削って更に加速、同時に京の突き出した足には2つの推進装置が取り付けられていた。そして、雷を纏わせることで更に威力を上げる。

 極限まで威力を上げられた正義の必殺技。

 

 しかし、それは虚空を蹴り穿った。

 

「……はは」

 

 京の口元が吊り上り、笑い声が出た。

 それと同時に胸から剣が生える。

 

「カフッ」

 

 血の塊を吐き出して、京は悲鳴に似た嗚咽を漏らす。

 背後には剣を突き出したレヴァンティンがいて、加速時間の中を更に加速した京を上回る速度でアレは移動したということだった。

 正義の必殺技が破られた。

 そして、同時にクロックアップの状態が切れる。

 

 詰みだ。

 

「なるほど、今の攻撃は私を倒し得た。しかし、残念ですね」

 

「あぁ、残念だ」

 

 何故、こんなことになってしまったのか

 京に過信はあったか、油断していたか、目の前の敵を通過点と切り捨て過小評価したか、どれもそんなことはしなかった。

 この状況は必定だった。そういうことだろう。

 目の前の化け物のことを知らなさ過ぎた。それが敗因だ。

 どちらにせよ、京は目の前の遥か先を通る黒い影を捉えることはできなかったというわけだ。

 

「次は……、いや、いい」

 

 負け惜しみのようで格好が付かないから二の言葉は言わなかった。

 ギリと歯を食いしばる。

 レヴァンティンの手の平がこちらに向けられる。

 

 そこから放たれる衝剄に似た衝撃波を食らいながら、京は吹き飛ばされていった。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

「最近、思うんだ」

 

「はぁ」

 

「やたらと死に掛けたり、情けない姿が多い」

 

「もっと頑張ればいいんじゃないですか?」

 

「至言だ。心に刻んでおこう」

 

「それで、何であなたがここにいるんですか?」

 

「うん、話すと長いような、長くないような。まぁとりあえず一言いっておかないといけない事がある」

 

「それは」

 

「レイフォンが来ているよ。一度会って上げて欲しい」

 

 豪華な一室に京は沈んでいた。

 天井を突き破り、落下してきたのだ。

 そして、何の偶然かその隣には目を丸くしているリーリンと見知らぬ黒尽くめの美少女がいるのだった。

 それにしても

 

「生きてた、かぁ」

 

 自分でもびっくりの生命力だ。ゴキブリ並みと言っていい。

 この世界で無駄に新造細胞などを取り入れていたおかげだ。変身していたことも幸いだったのかもしれない。

 しかし、それでももう限界だ。

 自分の姿を見れば怪我がないところなどどこにも無い。反射された虚次元斬断(ゼロ・ジーザ・ソード)の傷口は特に深く、今でもドクドクと血が流れている。

 まぁ、生きていれば次がある。次に勝って、死ななければいいのだ。

 

「二度目、か」

 

 負けたのは

 一度目はギルガメッシュとの初戦で完膚なきまでに、そして今、これも全ての攻撃が効果にならず、敗北した。

 究極の一を持つもの、または全てが高次元にある上位者に対して自分は負ける傾向にある。

 次は、それも参考に勝ちをとらせてもらおう。

 最高の手札(のうりょく)を用意して、自分にできるのはそれしかないから

 

「あの……」

 

「あぁ、いや、ごめん。邪魔かな、しばらく動けないんだけど」

 

 感傷に浸っていたところにリーリンが声を掛ける。

 それにハッとして、京は苦笑いしながら応えた。

 

「いえ、その、大丈夫ですか?」

 

「見ての通り、生きている。問題ない」

 

 それは大丈夫とは言わないのではないか、リーリンはその言葉を飲み込んだ。目の前の重傷者は割と満足そうに笑っていたからだ。

 なんともいえない空気が一室を満たした。

 そして、それを破ったのは黒い少女だった。

 

「あなたは、何と戦っていたのですか?」

 

 そこに静かに控える少女は美しかった。

 病的までに白い肌とそれとは正反対の真っ黒な髪、青い瞳を輝かせて、彼女は精巧な人形のようだった。

 

「ナノセルロイド・マザーI・レヴァンティン、そう名乗った」

 

「月は、陥落しましたか」

 

 一瞬だけ、少女は悲しそうに目を伏せたような気がした。

 事実、彼女から見える言霊は悲しみと若干の動揺を含んでいたから

 

「君は、何だ?」

 

 その言葉は自然と京の口から出た。

 何者だと言わなかったのは彼女が人ではないとなんとなく気づいたから

 

「……」

 

「答えられない問いかな」

 

 問いは沈黙によって返された。

 しかし、京も引いていられない。

 

「知れば、逃れられなくなります」

 

「大いに結構、俺はその事情に茶々を入れたい。なに、悪いようにはしないさ」

 

 しばらくの沈黙のあと少女は口を開く。

 

「あなたの目的は何ですか?」

 

「言った通り、君等の事情にちょっかいを出したい。それが目的でもある。その先は知らない」

 

「可笑しなことを言いますね。あなたは方法が目的だというのですか」

 

「あぁ、それによって得られる成果というものが俺にはある。それは君等には微塵も関係ない事柄だろうけど」

 

「…………いいでしょう」

 

 京は全てを正直に話した。ある程度暈してあるとはいえ、大筋の内容は全て正しかった。

 

「あなたがこの戦いに参加することが良い変化を生むと信じて、話しましょう」

 

「感謝する」

 

 偶然か、必然か、京はこの世界、物語の中核を担い、全てを知る者に遭遇した。

 そして、知ることになる。

 

「願いが叶う場所、ゼロ領域、というものが存在します」

 

 遥か昔、この世界が存在しないほどの昔、地球という星があった。

 その星は末期だった。資源の枯渇、人口の増加、汚染、戦争、様々な事象が折り重なり、人は破滅の一途をたどろうとしていた。

 しかし、そこに救いの手が差し伸ばされるように全てを解決するものが誕生した。

 亜空間増設装置、それが救いの手の名だ。

 亜空間、オーロラ・フィールドと呼ばれ、その空間内は0から無限に資源や物資を生成することができた。

 争いは消えた。人々は挙って亜空間を増設し続けた。

 しかし、そこで問題が起きた。増えすぎた亜空間は互いに干渉を起こし、絶縁してしまったのだ。それにより、亜空間内の人々は亜空間の中に縛られ、他の亜空間に行くのが非常に難しくなってしまった。地球上全ての国の国交が断絶したようなものである。

 だがそれによって起こる害は特に無い。交流がなくなっても資源は無限に生み出せる。各国の亜空間は更に広がり続け、独自の文化が育っていった。

 奇しくも今の様々な特色を持った都市が地上を徘徊する世界のように。

 

 そんな世界がかつて存在した。

 これが全ての発端となる世界であり、原因となる。

 

 一人の青年がいた。

 名をアイレイン・ガーフィートという。アイレインは絶界探査計画の一員だった。

 絶海とは絶縁空間、亜空間と亜空間の間が絶縁し、その間にできた謎の空間を指す。

 彼は絶縁空間に踏み込み行方知らずとなった妹を探し、探査計画に志願したのだ。

 そして、アイレインは絶縁空間の中で妹によく似た少女と出会うこととなる。

 

 それが全ての始まり。

 

 少女の名はサヤと言った。

 絶縁空間は別名でゼロ領域と呼ばれ、その空間内にはオーロラ粒子と呼ばれていた。オーロラ粒子には「人の思念に反応して新しい世界を形成する」というありえない効果を持っていた。

 サヤはアイレインの妹を助けたいという思念によってゼロ領域を彷徨っていたある装置が変異した妹の模造品だった。

 本来、オーロラ粒子によって願いを反映されたものは消滅する。人の願いなどというものは整合性が無い歪なもの、完璧でない願いを突きつけられたものは文字通り消える。

 アイレインの願いは妹を助けたいというもので、妹の姿に変じたサヤは装置としての役目を果たしたいと願った。2人の願いは共鳴し、偶発的に消滅を間逃れたのだ。

 そして、アイレインはサヤを連れ絶縁空間を脱出することに成功する。

 しかし、そこに待っていたのも苦難の連続だった。

 絶縁空間から脱した興味深い資料、そしてサヤ、研究対象となってしまったことでそこから逃げ去った。

 道中、アイレインはリグザリオという亜空間増設装置を作り出したアルケミストの1人と出会う。

 彼女は長い間使用され続けていた亜空間増設装置の修理を行っていた。

 しかし、多くの亜空間増設装置は疲労を向かえ、手が足りなくなり、ついには暴走を引き起こす。

 そしてオーロラフィールドとゼロ領域が一瞬繋がったことにより、ゼロ領域を彷徨っていた一人の男を呼び寄せてしまった。

 名をイグナシスという。

 ゼロ領域で消滅しなかったものは自身の願望が創造した世界の法則を宿した異民として特殊な能力を得る。

 イグナシスは能力を使い。自らの目的の為に行動を開始した。

 目的とは魂の証明、ゼロ領域とは何か、ゼロ領域で消滅したであろう人々の行方。

 イグナシスの行動によって亜空間は崩壊した。

 そして亜空間内にいた人々は全てゼロ領域に溶けてしまう。

 そこでサヤの装置としての力が発現した。

 装置のしての役目とは崩壊する亜空間から避難するというもの、サヤはゼロ領域に溶けてしまった人々の魂を自身に収容、リグザリオの持つ亜空間増設装置を使い新たな亜空間を創造するに至った。

 

 それこそがこの世界、鋼殻のレギオスの世界である。

 

 その世界を許さないものがいた。イグナシスである。

 彼は全ての人間をゼロ領域に落とし、新たな亜空間の道を作り出したかった。それにはレギオス世界は邪魔で彼はとアイレイン達は戦いを始める。

 イグナシスの配下はナノセルロイドというナノマシンの集合体である機械、マザーIレヴァンティン、分離マザーIIカリバーン、分離マザーIIIドゥリンダナ、量産型のポーン。

 それに対し、アイレインは力を使った。

 アイレインもゼロ領域を脱したことで能力を得ていた。

 「眠り姫を守るイバラ」としての異世界法則、魔眼"茨の目"、イバラの輪に囲まれた十字が刻まれた眼球は見つめただけで相手を眼球に変え、取り込んでしまう。

 そして、最後に彼はイグナシスとナノセルロイドを自身ごと茨の目によって封印、月として空に上がることとなる。

 だがイグナシスもただではやられなかった。

 月から発せられる憎悪は空中を漂うオーロラ粒子を汚染物質へと変じさせ、汚染物質には大地にいたナノセルロイド量産型ポーンを汚染獣へと変えさせた。

 それに対抗するようにアイレインも月から自身の因子を降らせる。それを受け取ったものは特殊な器官を得た。武芸者のことだ。

 封印は完全ではない。

 封印が解かれ、イグナシスとその配下が地上に降りたとき、最終戦争が幕を開ける。

 

「その戦争を担うのが私達というわけ」

 

 全ての話が済んだとき、そこに声が響いた。

 砕かれた天井からこちらを見ているのはアルシェイラ・アルモニス、グレンダンの女王であった。

 

「アイレインの因子を収束させるべく、強い因子を持ったものと交配を繰り返し、アイレインを擬似的に作り出す。それによって生まれたのがこの私」

 

「そして、この世界の生みの親とも言える私を守るためにアイレインの肋骨から生まれたのが天剣」

 

「私はアイレインの因子を収束させた。でも足りないものがある。それは茨の目、それは何の偶然か王家の中で駆け落ちして生まれてしまったリーリンに発現してしまった」

 

 つまり、ここにはサヤを守る守護者として、骨と目と意思があるということだ。

 それがここまでを取り巻く話というわけだ。

 なるほど、壮大すぎて理解が追いつかない。

 

「サヤがあなたを認めて、話したから殺しはしないでやるわ、さっさとここから消えなさい」

 

「……わかった」

 

 殺す気満々だった癖にとは言わなかった。今言って死にたくはないし、軽い攻撃一発で死ぬ自身が京にはある。

 大事な力を持つリーリンを攫ったような形になった京を警戒してのことだったのだろう。

 だが理不尽だ。と心の中で思っても罰は当たらないに違いない。

 

「最後に、アレはなんだ? ナノセルロイドとかいうのの1つか?」

 

「はい、分離マザーIIIドゥリンダナ、おそらくはあなたが戦ったレヴァンティンを密かに逃がすための陽動かと」

 

「その点はあんたはよくやったわ~、来るとわかってるものならやりようはあるからね」

 

「それはどうも…」

 

 シッシッと手を振りさっさと消えろとジェスチャーしている女王様を尻目に重い体を起こし、足を引きずりながらその場を後にする。

 向かう場所は決めている。

 ナノセルロイドが非常に厄介だというのは身に染みた。

 アイレインの意思達がここにいるということはきっと空にいるアレは倒せるだろう。だがその全てが無事とは限らない。

 ここはグレンダンで、そこには守ると決めた人がいる。

 レイフォンがいるのでツェルニより安全なのに変わりは無いが、危険というのは違いない。

 

「なに、まだまだ」

 

 そう自分に言い聞かせて、京は歩を進める。

 その後には血の痕が点々としていた。

 

 

 終わりは近い。




と世界観をダイジェストでお送りしました。
相当深いので説明不足のところもございますが追々と話の中で語らせていただきます。
第2部もあと1~2話で終了の予定、長かった。本当に長かった。

次回、vs分離マザーIIIドゥリンダナ(予定)、レギオス編最大最強の能力発動です。
乞うご期待ください。
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