マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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第4話

 月村家から無茶をしながらも逃げてきた京。

 住処である廃ビルに帰ってくることができたが問題が山積みだ。

 

「…はぁ」

 

 溜息を一つ。

 拙い状況から脱する事が出来たこと、そしてこれから起こるであろう厄介事について考える。

 もうこの廃ビルにはいられないだろう。

 自分を知り、ここを知ってるいるものがいつ訪ねて来るかわからない。

 その時の対処は先と同じ、逃走、それ以外に無い。

 そしてここにいる限りそれは延々と繰り返されるということだ。

 不毛である。

 

「なぜこんなことに…」

 

 嘆くように独り言ちる。

 勝手にこの世界に飛ばされたまでは諦めがついていた。

 だが早々に化け物として日陰者の立場を強いられ、そして誘拐された少女を助けてみれば住処を追われることとなりつつある。

 管理者はこれから一切の干渉はしないと言ったがここまでくると出来すぎていると思う。

 勿論悪い方向に

 理不尽ではないかと憤りたくなるが、もはや諦めの境地に至りつつあった。

 ベットに飛び込む。

 この騒動で得た唯一の戦利品だ。

 今日はもう何も考えたくないと目を閉じる。

 そうして騒がしい一日が終りを告げるのだった。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 次の日。

 ベットの上で胡坐をかき、目を閉じ、まるで瞑想をしているかのように微動だにしていない京の姿があった。

 植物人間の能力は大きく分けると3つある。

 1つは体の隅々まで植物が侵食することで身体能力などが大幅に上がるというもの。

 2つ目は動物の死骸を媒介としたアレトゥーサの生成。

 3つ目は植物を自在に操る能力、ありとあらゆる植物はリミッターが掛かっており、やろうと思えば小さな雑草でも急成長することで強力な武器と化す。また植物は1つ1つがある種の繋がりを持ち、地球の裏側だろうと情報を手にする事ができる。植物1つ1つを回路と見立て地球全体の植物を使いスーパーコンピュータ何万台もの演算をすることも可能だ。

 現在、京は鳴海市内全域の植物とリンクし、どこか自分の住めそうな場所がないか漁っていた。

 ものの数分でそれは終る。

 京の額に一筋汗が流れた。

 

「…ない」

 

 どこにもなかった。

 それは勿論、住めそうな場所がだ。

 考えればわかること、廃屋などそうあるものでもない。

 都合よく、偶然に、京がここを見つけたというだけのこと。

 鳴海市外はあまり行きたくは無い、介入するのに遠ければ問題だろう。

 頭を悩ませているとこちらに黒い車がやってきているのが見えた。

 窓から見えるのは運転しているメイドと後ろにはすずかいる。

 

「…」

 

 早速のご登場、昨日の今日で来るとは忙しない。

 こちらはそれどころではないのに、と心の中で愚痴る。

 今から逃げるのは容易、だが今は昼間だ。

 あまり外に出たくはない。

 そして新たな住まいもまだ決まっていない。

 ならばどうするか

 

「手段は…ある」

 

 この現状を打破する考えと手段、思いついていた。

 静かに京は紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビッグオーダーより星宮エイジ、拘束する支配者(バインドドミネーター) 発動」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 左手の平に目をモチーフにした不可思議な模様が浮かぶ。

 そして背後からヒトガタが現れる。

 全身に白い包帯を巻き、縄が地面に杭で固定され、そのまま拘束するように縄がヒトガタに巻きつき地面に縫い付けられている。

 名を拘束する支配者(バインドドミネーター)という。

 完全なる支配者の力を宿す者。

 そして、拘束する支配者の能力、領土内の全ての物理支配が発動する。

 自身を中心とした直径30kmの範囲内で無機物有機物例外なく命令ができるというものだ。

 原作ではDAISYによって支配域を押さえられていたがその拘束はない。

 

「命ずる」

 

 京の命令によりビクリと拘束する支配者が動き出す。

 

「月村家、高町恭也をここに近寄らせるな」

 

 拘束する支配者が地面に縫い付けられている杭と縄を抜く。

 そして、拘束する支配者から何百何千という縄のついた杭が放たれた。

 それは電柱や車、果てはガラス片などゴミのようなものにまで突き刺さる。

 ここに近付こうものならありとあらゆる障害が待ち受けているだろう。

 

「…」

 

 静かにすずかの乗る車を眺める。

 一定距離まで近づいたことで支配され、命令されていた器物達が行動を開始する。

 車の前に立ちふさがるように電柱が倒れこむ。

 車は急停止し衝突は避けられた。

 だがまだこちらのテリトリーに踏み込んだままだ。付近に転がる石などが車に殺到する。

 それを見てメイドは車を急発進でバックさせ避け、そのまま引き返していった。

 それを見て上々だと満足そうに笑みを上げる。

 京はここに居座ることにした。

 だから近寄らせない。

 近寄ろうものなら器物達が相手になると

 少々強引だとは思うがメイドと恭也の戦闘能力は異常だ。

 念を入れれるに越したことはない。

 これでもう安全だと視線を外し戻るのだった。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 翌日。

 いきなりの轟音で目を覚ます。

 外を見てみると車が壁に衝突しており、近くに少女が尻餅をついていた。

 見覚えのある少女、月村すずかだった。

 手にはなにか包みを持っている。

 すずかは車が無人であることに驚きつつ車を後目に廃ビルに向かってゆく。

 近付こうとする度、電柱が突然折れ、すずかに向かって倒れてくる。

 そしてそれを避ければバイクが宙に浮き突進してくるなど過激だ。

 咄嗟に命令を変更し対応を下げ、できるだけ怪我を負わせないようにする。

 尚もすずかはこちらに進んできていた。

 その時、すずかの手前で地面が割れる。

 すずかはそれに躓き手に持っていた包みが割れ目に落ちてしまった。

 すると諦めたのかトボトボと見ただけでわかるような悲しいオーラを発しながら帰路についていった。

 

「…」

 

 悪いことをしたと思うが関わる気がない以上、割り切るしかない。

 少々の罪悪感に苛まれながらもこれ以上関わり合いにならない為だと自分に言い聞かせるのだった

 

そして次の日。

 

「またか」

 

 すずかはまた来ていた。

 当然のように器物達の手洗い歓迎を受けトボトボと撤退していく。

 だがそれで終らなかった。

 すずかは諦めない。

 次の日も、その次の日も毎回何かの小包を持って廃ビルに近づこうとする。

 そのため毎回器物達の危ない歓迎を受け傷が絶えない。

 それでもやってくる。日に日に絆創膏や包帯が増えて痛々しいことこの上ない。

 京も毎回それを見ているうち、すずかの行動をハラハラと見つめるようになっていた。

 すずかが何をしたいのか、なんとなく察しがつくがここまでされて近づくのに疑問も感じていた。

 そして

 追い返す日々が10日続いたとき、ついにすずかは廃ビルの入り口にたどり着くことに成功した。

 

「…っ」

 

 それを見て京は焦る。

 廃屋に入るまではあくまで牽制のようなものなのだ。

 これ以上近づくなと。

 これ以上の進入は先の比ではない歓迎が待っている。

 だがそれを知らないすずかは意気込むようにビルに入っていこうとする。

 そしてすずかは廃屋に一歩踏み入る。

 その時

 ガチガチと何か音が辺りから聞こえる。

 前方から無数の釘、瓦礫、捨てられた工具がすずかに殺到する。

 

「っ!?」

 

 すずかは突然のことに動けない。

 このままではすずかは奇怪なオブジェになってしまうだろう。

 そこに京が現れた。

 

「命じる、全て止まれ」

 

 宙に浮いている器物達は操り人形の糸が切れたように地面に落ちる。

 それを京は苦い顔で見つめ、すずかに向き直った。

 

「負けたよ」

 

 意地の張り合いに

 10日間、自分が仕掛けたとはいえ年端もいかない少女が傷つくのは見るに耐えなかった。

 数日で諦めるだろうと高を括っていただけにすずかの粘りは予想外だった。

 そしてここにきて京が折れる形になるとは自分でも思いもしなかった。

 

「ぁ…あの、ちゃんとお礼もしていなかったし…お返しもしたかったし…」

 

 しどろもどろになりながら答え小包を差し出してくるすずか。

 受け取り小包を開けてみるとかわいらしい弁当だった。

 

「こんなところにいたらちゃんとしたご飯も食べれないと思うし…」

 

「俺は水と日光があれば生きていける。」

 

「で…でも…」

 

「…まぁありがたく貰っていくよ、ありがとう」

 

「うん!」

 

 すずかは満足そうに微笑んだ。

 正直、半年以上何も食べていない京には願ってもないことだった。

 黙って食べ続ける京、それをニコニコ笑って見ているすずか。

 

「ご馳走様…」

 

「うん、それでね…、またここに来てもいい?」

 

「…なんで構う?」

 

 正直自分はそうまでされる者ではないと思っている。

 確かにすずかを助けはした。

 だがその後は家に木のミサイルを撃ち込み、そして廃ビルに近づこうものなら過激な排斥行動に出ていた。

 すずかの腕や足に巻かれている包帯がそれを物語っている。

 とてもじゃないが助けた以上に害を与えている自分にそこまでする理由が感じられなかった。

 

「少し前にね、苛められてたとき助けてくれた子がいたの」

 

 すずかは語る。

 

「あの時は嬉しかった。だからその子みたいに力になれたらって」

 

 自分には必要ない、そう言おうとしたが遮るようにすずかは言葉を続けた。

 

「それに、なんだか寂しそうだったから」

 

 京が完全に折れた瞬間だった。

 寂しい、そんなことを自分は思っただろうか。

 希薄になりつつあった精神はどこかでそう感じていたのだろうか。

 何故か、違うと断言できない重さがあった。

 

「…好きにすればいいよ」

 

「うん!」

 

 これ以降ほぼ毎日すずかは何か食べ物をもって廃屋に訪れるようになった。

 すずかは京について何も聞かない。

 そして、今日はなにがあった。戦闘民族高町家末女と仲良くなったなど、取り留めも無い話をする。

 京はただ頷くだけだったが、どこか楽しそうにそれを聞いていた。

 そして同時に人との交流によって希薄になりつつあった精神も元に戻りつつあった。

 ふと思う。

 

「餌付けされてる?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「…なんでもない」

 

 気にしてはいけない気がした。

 

 そしてそれから1年半の餌付け廃ビル生活を経て物語が始まる。




能力第4弾、スタンド能力
の巻きでした。
一応すずかがヒロインです。
ハーレム的なものはあまり期待しないでください。

原作名:ビックオーダー
ジャンル:漫画
使用者:星宮エイジ
能力:拘束する支配者 (バインドドミネーター)
自身を中心とした半径30kmの領土内全てのものを物理支配する。
領土は自分が歩いた範囲で決まり、歩けば歩くほど自身の領土は広くなる。
有機物、無機物全てに命令を下すことができ、車を飛ばすなど物理法則を無視した命令も可能。
一見万能そうではあるが欠点が多くある。
支配できるのはあくまで物理的なものに限られるため相手の肉体は操られても心などの洗脳は不可能である。つまり思考などのトリガーで攻撃するものには無力。
また領土が30kmととてつもなく広いが自分の視界内でなければ漠然とした命令しかできない。
そして、命令を下すにはまず命令を口頭で発し、拘束する支配者の釘で対象を刺すプロセスを踏まないといけないため、接近されるとたちまち不利になる。

とビッグオーダーでした。
ラスボスが持っていそうな能力ですが主人公の能力です(笑)
「未来日記」で有名な作者の作品、現在連載中です。
前作の未来日記と打って変わってスタンド能力者対決、上手いこと能力の特性を使うところは流石の一言。
結構面白いと思うので是非見てください。
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