マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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第63話

 一人の男の話をしよう。

 

 愚かな男の物語だ。

 強欲な男の物語だ。

 混沌の獣の物語だ。

 

 主役達が舞台で踊る中、裏で動いていた男の話だ。

 彼の進む道は彼だけのもの、物語に影響は与えれどそれは誰も知らなく、知る必要もない。

 本来なら誰かと関わることもあったかもしれない。だがそれは何処からか紛れ込んだ異物によってそれもなくなってしまった。

 故に語ろう。知られざる男が歩んだ物語を

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 落ちていく、墜ちていく。

 一人の男が空から落下していた。墜落しているといった方がいいのかもしれない。

 落ちて、落ちて、落ちて

 ドサリ、と遥か彼方より墜落したにしては軽い音を立てて着陸する。

 

「……」

 

 サングラスを頭に掛け赤毛を肩まで伸ばした男、どこか飢えたような感じのするのは気のせいではないだろう。

 

 名をディクセリオ・マスケイン、通称はディックという。

 

 ディックは全てを終わらせた。

 全てに決着をつけた。

 もう、彼の役目は終わったと言っていい。

 それは、もうこの世界の物語が1つの決着を既につけていたという事実があるからだ。

 全てを語る前に彼の来歴を語るべきだろう。

 

 

 ディクセリオ・マスケイン、強欲都市ヴェルゼンハイムという今はもうない都市出身の武芸者だ。

 強欲都市ヴェルゼンハイム、全ては力によって成り立つ無法都市、力がなければ奪われる、力があればなにをしても咎は受けない。罪悪の限りを尽くさんとした都市、それが彼の出身都市だ。

 彼は強欲都市ヴェルゼンハイムを支配するマスケイン一族の末子として生を受けた。

 そして青年と呼ばれる年齢まで彼は育つ、都市の流儀に従って強欲に生き、力に物を言わせて、1人の武芸者として生きていた。ただのクズだった。恨みに怨まれ、恐れられた。

 そして、彼にある転機が現れる。

 ヴェルゼンハイムはマスケイン一族が支配するまで強欲都市といった名称ではなく、廃都市が多い地帯を彷徨う都市だった。死んだ都市からそこにある独自技術をサルベージし自らのものにする、そこからくる富は莫大なものだ。強欲都市として変わってからもそれらは強欲の名の下に続いていた。

 そして、全ての因果の元となるものを彼等は発見してしまう。

 

 亜空間増設機を

 

 それが全ての始まり。 

 亜空間増設機はゼロ領域と繋がり、かつてあった遠い世界のある者を呼び出してしまった。

 フェイスマンシステム、または狼面衆と言った方が良いだろうか。遠い昔にアイレインとサヤを襲った異民、彼の宿す異世界法則は他人の顔を奪い己のものとすることが出来る能力、しかしそれも倒され、イグナシスによって能力のみを利用されている哀れな存在。

 異民、狼面衆が現れたことで都市は終わった。簡単に、呆気なく、滅び去った。

 ディックもまたフェイスマンシステムに取り込まれ、狼面衆の一人となるはずだったが彼は取り込まれても、1つの自我として生きることが出来た。それは皮肉なことに彼が行い続けた悪行の数々、それによって怨まれたことで他人からある意味認められたことで存在することが出来たのだ。

 そして、一介の狼面衆の1人として活動し、ある化け物に殺されたことで己を取り戻すことになる。

 自由を得て、彼が胸中に抱えた思いは「怒り」だった。

 ディックは奪われた全てを取り戻し奪った者たちを全て叩き潰すために復讐を開始する。

 滅びた都市、強欲都市ヴェルゼンハイムで廃貴族となっていたヴェルゼンハイムを回収し、狼面衆の力もある程度使える彼は様々な旅を経験する。

 長い、長い生き様だった。

 なんの拍子にか学園都市ツェルニに入学、第17小隊を結成し、最優秀生徒として卒業、同時にツェルニの学生全ての記憶も消す。

 それからは都市を自身の能力によって転々としながら己の復讐の対象、イグナシスとその配下狼面衆を倒し続けた。

 狼面衆によって復活を遂げた親兄弟を駆逐し、復讐を遂行し続けた。

 その中で彼は1人の女と出会う。

 

 ニルフィリア・ガーフィート

 

 かつて、アイレインが探し求めていた存在に

 彼女もまた自身を利用したイグナシスを怨んでいた。

 共通の目的があった2人は互いを利用し、ドゥリンダナの出現と同時に月へと進入に試みる。

 一度目は、レヴァンティンによってそれを防がれグレンダンに落下、二度目にどこかの馬鹿がレヴァンティンと戦っているうちに月への潜入に成功する。

 そして、月の内部にて封印されながらも主を守ろうとしていたナノセルロイド・マザーⅡ・カリバーンを撃破、彼は元凶と対峙する。

 イグナシスと遂に対面を果たしたのだ。

 だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 死んでいた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久遠の彼方までアイレインによって幽閉されたイグナシスは既に死んでいた。

 もう既に1つの決着がついていたという事だった。

 全ての災いの元凶は既にこの世から存在しなく、世界崩壊という命令だけを忠実に、主を失った今でもナノセルロイド達が実行しているというどうしようもない話、これが終着点だった。

 最終決戦など既にもう終わっているのだ。

 敵に勝ちという物はもうない、あとは無残に葬られるか、世界を滅ぼし誰も勝者のいない世界を作り出すか、その2つのみ。

 ただの茶番劇だったのだ、この物語は

 ディックの復讐は終わった。

 復讐の対象が既に死んでいたという事実、狼面衆もレヴァンティンが謎の行動を起こしたことに異を唱えたことで抹殺されている。

 呆気なく、全てが終わった瞬間だった。

 怒りを叩きつける対象がいない復讐、なんと虚しいものだろうか、だがそれが終着点、どうしようもない。

 

 しかし

 

 ディックの他に果てしない怒りを内包したものがいた。

 他でもない廃貴族ヴェルゼンハイムである。

 廃貴族は全ての汚染獣とイグナシスを食いつくさんという怒りで構成された化け物だ。

 そして、どうしようもないことにディックがいる場所はゼロ領域だった。

 心の有り様によっていくらでも強くなれる出鱈目な世界。

 そんな場所に怒りを膨らませ続けるこの世界にぴったりの化け物を放ってしまったのだ。

 ディックの怒りも持ち去って、廃貴族ヴェルゼンハイムは宿主より脱し、己が力によって怒りの矛先を世界に変え、膨張を繰り返した。

 このままでは強化と膨張を繰り返し、やがて月を食い破ってナノセルロイドの変わりに世界を滅ぼす化け物として君臨することだろう。

 そして、再びディックは武器を取った。

 己が怒りは「もう失いたくない」という怒り、あれだけ奪っておいて、暴虐の限りを尽くしておいて、それでも強欲に生きたディックだからこその怒りだった。

 まだ少なからずとも失いたくないものがあるディックの最後の戦いだった。

 月の中のアイレインと結託し、遂にヴェルゼンハイムを月から追い出すことに成功する。

 

 

 そこまでが彼の物語だ。

 好き勝手に生きて、全てを失って、復讐に走り、望みと違う結末で復讐を終えて、最後に自分らしく己が衝動に従って後始末をつけた。

 物理限界が存在するこの世界に叩き落してやった。

 これで奴は、ヴェルゼンハイムは有限の存在となった。

 後始末は任せよう。

 力を出し切って、もう残り滓も力が残っていない。

 

「よっと」

 

 力なく立ち上がって、身の丈ほどもある巨大な鉄鞭を肩に担ぐとゆっくりとどこかに向かって歩き出した。

 最悪の事態は回避させた。

 イグナシスの代わりだと思って後の処理はこの世界の者たちに任せてしまおう。

 なに、これで負けるならそれまでの世界だ。

 後始末を押し付けてしまう形になるが間接的に自分もこの世界に敵対するもの達を多く倒している。イーブンと思ってもらいたい。

 

 どこにいこうか、新たな世界にでも行ってみようか、もう人ではないのだ、先は長い。気ままに生きてみるのもいいだろう。

 ゆっくりと歩きながらやがてその姿は忽然と消えた。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 そして、時間はほんの少しだけ、遡る。

 ツェルニのある一角、郊外のアパート、メイシェンの部屋でのことだった。

 夕日が沈みかけ、夜になろうとしている時間だった。

 その中でメイシェンはうつらうつらとソファーに腰を掛けながら寝かけようとしていた。

 普段ならそこで諌めているであろう京の姿はない。ただ買い物に出かけているだけだった。

 そこにノックの音が聞こえる。

 

「ぁっ」

 

 ハッとして、ドアに寄る。

 来客だろうか、などと思いながらゆっくりとドアを開けた。

 

「こんばんわ」

 

「ヴァっティ? どうしたの?」

 

 そこには普段よく一緒にいる後輩、ヴァティ・レンがいた。

 京がいない時を狙ってきたのか、偶々か、今回に限り、それは前者だった。

 

「お話が、したくて」

 

 ヴァティにしてはやけにしどろもどろとした感じがして不思議に思いながらも中に入れた。

 どこか思いつけたようなそんな雰囲気、それも気になる。

 

「いいよ」

 

 お話といっても普段はメイシェン達が話す内容にヴァティが疑問に感じたことを質問するといった感じで世間話といったものはあまりない。だが会話が成立する辺り、ヴァティの周りの人々の良さが伺われる。

 そして、自ら話に来るということは未だかつてなく、きっとなにか重要なことなのだろうと思わせられた。

 

「お茶、入れるね」

 

 少し甘めに、2人分。

 それをテーブルに並べ、ソファーに2人腰掛けた。

 

「……」

 

「……」

 

 会話がない。

 いや、切り出してこない。

 だがメイシェンはじっと待った。自分のことのようにわかったから、何かを吐き出すまで辛抱強く、待った。

 

「これから話すことは荒唐無稽なことかもしれません。それでも信じてくれますか?」

 

 そして、ふとレヴァンティンが口を開いた。

 それにメイシェンは自信満々に頷く。

 

「大丈夫、そういうのには慣れてるから、任せて」

 

 荒唐無稽の塊のような存在を知っているから、並大抵のことでは疑いもしない。

 それにヴァティは口を吊り上げた。

 一瞬、笑って見えた。

 そして、ヴァティは語る。

 

「私は、ある人物の代わりとして創造されました」

 

 それを黙ってメイシェンは聞いた。

 驚かなかったわけではない。だがヴァティの言葉を疑う気は毛頭なく、更に続きを促すためにそれを黙って聞いた。

 

「ある人物が愛した人、ジャニス・コートバックの分身として、私にそれを求めました」

 

「……」

 

 本当に荒唐無稽な話、だがその前にその話が全て比喩などなく本当だとすれば酷い話だ。

 ヴァティ、レヴァンティンは機械、それ以前に他人を全てコピーすることなど無駄の極みだ。不可能だからだ。

 だがレヴァンティンの製作者はそれを知りつつもそれを要求した。その妄執は果たしてどこまであったのか

 だが現実は無残にそれを見せ付ける。

 

「私はそれを叶えることが出来ませんでした」

 

 当然の帰結だった。

 例えどれだけ求めようと製作者の想像の中の彼女とヴァティはどんどん食い違いを起こし、そして決別する。

 

「私は彼を失望させたのだと、思います」

 

「それがヴァっティは嫌だったんだ」

 

「はい」

 

 無理な要求を押し付けられて、勝手に失望される。どれほど理不尽なことだろうか

 だがレヴァンティンはそんな自分に不満を感じるほど純粋だった。機械として、目的を持って作られたものとしてそれを遂行できない自身に不甲斐無さを感じてしまった。

 

「他の分野では私は高評価でした。しかし、私の製作者の本当の願いにおいて、それを叶えることは出来なかったのです。私は本当の目的において評価して欲しかった」

 

 オーロラ粒子をエネルギー源とするナノセルロイド、以前の世界においてもこの世界においてもヴァティは兵器としては最強の存在だった。

 だがそれは製作者も製作物も本当に望んだ成果は出せなかったということだ。

 自らの理想の女性に似せて機械を作り、その影を追い求めて、機械はそれになろうと求めた。歪みに歪んだ関係だった。

 それを聞いて、メイシェンは胸が痛くなる思いになる。

 悲痛だった。

 それはとても悲しいことではないか

 救いがないから、どこまでいってもどちらも救われることはない。

 そして、その先にも救いはなかった。

 

「私は、裏切りました。主を、ソーホさま、を」

 

 それが過ちだったと気づくのは遅すぎた。

 

「私は本来の目的においての評価が欲しかった。あの女性になれたと認めて欲しかった。だから主が、ソーホさまが窮地に立った時、無視しました。気づかぬ振りをして、見捨てたのです。それによって得られるものがあると思ったから」

 

 だがそれは愚かな行為だったのだろう。

 

「喪失というものを知りたかった。だから見捨てました。そして失いました。私の本来の目的が成功したという確認は不可能になりました」

 

 当然の結果、喪失を知るために最も適したものは大事な人物だ。それは主であり、それを失えば自分が彼女になったということを確認も出来ないというのに、だがそれでも実行してしまった。見捨ててしまった。

 

「私は間違っていたのかもしれません。愚かな行為をしたのかもしれません。でも私は彼女に成ることを止められなかった」

 

 結末としては当然だったのかもしれない。

 どちらかが暴走して、それで終わりだったのだから

 悲惨な話だ。

 それでもメイシェンはそれを黙って聞いた。

 話は終わっていない。全て吐き出しきるまで、それを聞いて彼女の望んだ答えを出すのがメイシェンの役割なのだから

 

「私は知りました。喪失を、目的の喪失を知ってしまった。どうしようもないのです。なにをすればよかったのか、どうすればよかったのか、もう、わからない」

 

 どれだけ彼女に、ジャニスに近づいても、それを認めるものはもういない。

 それがわかっていても止められなかった。

 ヴァティはそれをきっと後悔して、悲しんでいる。

 そっとメイシェンはヴァティを抱きしめた。

 

「ぁっ」

 

「頑張ったんだ」

 

 そっと抱きしめて、そう呟いた。

 

「私とミィとナッキがいるよ。きっと京だって力を貸してくれる」

 

 全てを聞いて、メイシェンが出した結論だった。

 

「失ったならまた探そう? やり直せるから、また頑張ろう? 私はここにいてヴァティのこと大好きよ」

 

 失ったなら探せばいい。新しく目的を探せばいい。

 他人事と言われればそれまでだ。だがヴァティを思っているものが少なからず存在する。そこにはいくらでも救いがあるのではないだろうか

 

「……ありがとうございます」

 

 そっとメイシェンの肩に手を当てて、ヴァティは引き剥がした。

 

「十分過ぎる答えでした。これで思い残すことはありません」

 

「ヴァティ……?」

 

 そこで初めて、ヴァティは笑顔を作った。

 誰もが振り返るようなそんな明るい笑みで

 

「お別れです。私はもう、行くところがあります。もう1つの目的を遂げるために」

 

 兵器としての目的を遂げるために

 主は、ソーホと呼ばれたレヴァンティンの製作者はイグナシスに精神を乗っ取られ、ソーホという肉体から命令されレヴァンティン達ナノセルロイドは動いていた。

 レヴァンティンもそれは承知している。だが他ならないソーホの肉体の願いだからこそ、兵器として命令を実行するしかない。

 レヴァンティンは自らの失った目的に1つの区切りを得た。

 それは最後の目的の遂行開始を意味している。

 

「待って!」

 

 止めなければならないと焦燥感を感じて、手を取るとする。

 だがその瞬間、ヴァティの手はメイシェンの目の前にあって、優しくあてがわれると糸が切れたようにメイシェンは昏倒した。

 

「さようなら、あなたに会えてよかった」

 

 ドアを開け、レヴァンティンは外に出る。

 

「行くのかよ?」

 

 そこには扉の横に座り込んだ京がいた。

 いつからいたのか、全ての話を聞いていたことは間違いなかった。

 

「はい、邪魔をするなら障害と認識し、排除します」

 

「そうかい」

 

 さっさといけと手を振った。

 ここで遣り合うつもりはない。決戦の舞台は相応の場所がある。

 京を背にレヴァンティンは歩き出す。

 

「……俺の答えも言っておく」

 

 足を止める。

 

「目的を失っても足掻くんだよ。他の目的なんていらない、それしかないならそれだけ追い求めればいい。無様に足掻いて、そして死ねばいい」

 

 もしもこの世界で目的を失えば、いつか汚染獣に代わって敵となる。そこまでするとは言わないが選択肢にはあるのだ。

 メイシェンとは真逆の答えに、レヴァンティンは少しだけ苦笑した。

 

「馬鹿ですね」

 

「あぁ、そうかいそうかい」

 

 それきり声を掛けることはなかった。

 あとは戦場で、それだけの話だ。

 京はゆっくりと立ち上がり、開け放たれたドアを閉めると部屋の中に入っていく。

 ソファーに寝かされたメイシェンを揺さぶって起こす。

 

「メイ、起きて」

 

 軽く気絶させられたのだろう、随分と優しく寝かしつけられたものだ。

 しばらくするとメイシェンが目を覚ます。

 ガバリ、と飛び起きるように上半身を浮かせて、手を伸ばす。

 だがその手の先にはもう誰もいない。

 

「……」

 

 それを黙って、京は見つめた。

 目の前の少女が自分に語り掛けるまで

 

「……全部知ってたの?」

 

「あぁ」

 

 パンと音が鳴り響いた。

 平手打ちされたのだ。それを京は黙って受け入れた。

 

「ヴァティ・レンは汚染獣全ての原型にして頂点、ナノセルロイド・マザーⅠ・レヴァンティン、それが正体だ」

 

 それでも淡々と京は言葉を紡いでいく。

 この状況はもう隠していいものではない。流石にそれをわかっていた。

 

「なんで、話してくれなかったの?」

 

「必要ないと判断した」

 

 元々、後のことは全て自分で終わらせる気だったのだ。

 

「もっと早く話してくれれば」

 

「ごめん」

 

 話しても無駄だっただろう。

 むしろ拗れさせただけだったかもしてない。だが全てを聞いて、理解したメイシェンはわかっていてもそう思い、言ってしまう。もっと早くわかっていれば、と

 

「京」

 

「なにかな」

 

 それはいつもの工程だ。

 何を言われるか京はわかっている。

 

「私を、連れて行きなさい」

 

「連れて行って、どうする?」

 

「ヴァティを止める」

 

 駄目だ。と言うことはもはや出来ない。

 それは彼女の目を直視してしまった時点で不可能だ。

 メイシェンは全てを知ってしまった。世界を取り巻く構図はわからないだろう。

 だがヴァティが敵となった。それだけで十分すぎる行動理由だ。

 

「私はヴァティの為に力を使うよ」

 

「……イエスマイマスター」

 

 最後の最後でとんでもないことになった、そう京は笑った。

 だがそれは諦めとは違った笑いだった。

 それでこそ、と

 あとの責任と尻拭いは全て自分が負う。

 

 さぁ、説得しにいこうか

 

「行こう」

 

「うん」

 

 静かに、とても静かに最終戦争の幕は切って落とされた。

 

 夕闇は暗く、太陽が落ちようとしていた。

 

 全てが終わる戦いが始まる。

 




説明ばかりでしたがもう全ておしまいです。
あとは戦闘して戦闘して、戦闘してから戦闘するだけです。
最後まで一気に駆け抜けられたなと思います

次回、レヴァンティンvs天剣授受者、総力戦、乞うご期待ください。
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