マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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魔法先生ネギま!編、始まります。
よろしくお願いいたします。


魔法先生ネギま!編
第68話


 チクタク、チクタク、チクタク

 

 規則正しく、時計は回る。

 コンマの誤差もなく、それは刻み続ける。

 止まることはない。

 何故ならば、これが刻むものは時ではなく、心音なのだから。

 ドクンと波打つ心臓の代わりに、チクタクと刻む機械の心臓を持って、それは主を生かす。

 

 嗚呼、失敗してしまった。死んでしまった。

 

 失ったものは多い。

 この身は理解していた。

 死を越えて、生き返る。そこに代償が存在しないはずはない。

 だから失ってしまった。積み上げたものを彼は全て失う。

 それを彼は知る由もない。

 まだ目覚めてはいないからだ。

 しかしその喪失を本能は理解して、咄嗟に選んでしまった。

 力になりたいなとふと思ってしまったせいで、心の奥底の力はその思いに反応した。

 そして

 何もわからない精神で、突然沸いて出た言葉を口から零してしまう。

 

 

 

 

 

――――――         より     、         ――――――

 

 

 

 

 

 唱えて、定着させて、得てしまった。

 この世界と正反対のこの力を

 神秘を駆逐する科学の結晶を、その身に入れてしまった。

 それは本人の意思とは無関係に体が自動的に叶えてしまったのだ。

 鋼の心臓を得て

 

 心臓には意識や記憶を持つという。

 

 それならば、機械の心臓ならばそれはどうなるだろうか

 

 それは生の心臓と変わらず、意思を持つ。

 本来の持ち主の意思を以って、それは絶えず自らの希求(エゴ)を叫び続けるのだ。

 

 

 

――――――我求むは無限の均衡

 

      善に属さず、悪に属さず、我は中道の己を往く

 

      真理と愚想、孤高と調和、其は対極を諸共に掴む者なれば――――――

 

 

 

 聖人にして狂人のその精神を、心のあり方を叫び続ける。

 チクタクと刻む心音と共に

 

 願わくば、彼にその力が助けになることを願って

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

「んぁ……?」

 

 ふと、意識が覚醒した。

 くらくらと何か強力な攻撃を食らったように思考が落ち着かない。

 頭を押さえ、しばらくすると何となくだが落ち着いてくる。

 そして、ある程度余裕を取り戻すと周りを見渡した。

 見上げればそこには青空があって、何故か自分がいる場所に小さなクレーターが発生し、体がところどころ焼け焦げていた。

 正直、わけがわからない。

 

 チクタク、チクタク、チクタク

 

「あぁ、なるほど」

 

 感嘆の声を上げる。

 なるほど、こうなってしまったか、予想だにしていなかった展開だ。

 この現状に、今までの(・・・・)ことにある一定の区切りをつけ、全てを受け入れ、把握する。

 そう思っていると遠くから声が聞こえる。

 同時に人影が見えて、それが5人ほどいるということがわかった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「どうして何の力もないのに私達の修行の場に入ってくるんですか! 危ないでしょう! 現に焔の炎弾食らってるじゃないですか!」

 

「……馬鹿……?」

 

 そこには5人の少女がいて、自分の下に凄まじい速度で駆け寄ると各々違う反応で責めてくる。

 5人の少女達は少々特殊だった。角が生えているのが2人ほど、尻尾が生えているのも少なからずいて、耳などはエルフのように一様に長い。人の形はしているがそれは人間とは呼べない者達だった。

 京を知っているそぶりの5人の亜人の少女達。

 それに京はいつものように(・・・・・・・)笑って応えた。

 

「いえ、そろそろ食事の準備ができたので呼びに来た次第でして」

 

 今まで自分がしていただろうことを笑いながら説明する。

 そんな京に少女達は溜息を漏らした。

 

「はぁ……、いつも律儀なくせにどこか抜けてますね」

 

「それで大丈夫ですか?」

 

 そっと手を差し伸べてくれたのは角が生えた少女、記憶の中では調と呼ばれた少女だった。

 その手を取って、立ち上がる。

 

「えぇ、体は頑丈みたいですから」

 

 起き上がり、体についた砂を手で払って、帰らないかと告げる。

 

「まぁちょうどいい時間みたいだし、これで切り上げましょうか」

 

「そうね」

 

「……ご飯」

 

 そう言ったのはウェーブした金髪に長い耳をした少女、栞とそれを了承しさっき京に1発炎弾を食らわせたツインテールの少女、焔、そして同じく了承した無口気味で頭に巨大な角と尻尾を生やした少女、環だった。

 気心が知れる程度には親しくできている気がする。

 なるほど、自分は上手くやったようだ。

 先に歩いていく少女達を見つめながら、京は口を吊り上げて密かに笑った。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 一通りのことを終えて、夜になる。

 京は一人、与えられていた部屋に取り付けられたベットに横になった。

 そして一人思考に耽る。

 

 簡潔に説明しよう。

 自分は記憶喪失だった。

 そして、そのまま2ヶ月の時を知らないこの世界で過ごしてしまっている。

 

「なんだかなー」

 

 始まりはこうだ。

 どっかで倒れてたら拾ってくれて、記憶喪失だと知ったら面倒見てくれた、以上。

 ハッキリ言おう。出来すぎている。

 そして、この展開についていけていない自分がいる。

 だが記憶喪失だった自分はそうではなかった。

 異常なほどの順応で彼等に取り入った。少なくとも警戒心を持たなくされるくらいには関係性を築くことに成功する。

 拾ってくれた者達の名は

 

 完全なる世界(コズモエンテレケイア)

 

 と言う。

 大層な名前だが自分はそんなものは知らない。

 何かの組織なのだろう。

 もしも拾われたとき京に記憶があれば情報収集に入っていたに違いない。

 そして、記憶喪失だった自分は忘れた目的の為に最短の行動に移っていた。すなわち、その組織に取り入ること、前世界で拘束する支配者(ハインドドミネーター)による自分自身への命令、「最善を尽くすこと」、これを京自身は見事に実行して見せた。

 上手く立ち回り、着実に情報を収集する。

 ありとあらゆる手でなんとか組織に食らいついた。

 例え記憶がなくなろうとも

 自分は上手くやったのだ。

 それにより、少なくとも自身のいる世界の文化、常識、形態、その辺りは把握する。

 その後、偶々拾ってくれた少女の一人、焔が修行中に放った炎弾が京に直撃、偶然にも記憶を取り戻し今ここに至るわけである。

 

「なんだかなー」

 

 そして、重大なことが1つ。

 

 全ての能力を失った。

 

 非常に由々しき問題である。

 京が考えるには正確には失っていない。ただ能力が使用云々できる状態にないほどに不具合が発生しているか弱まっていると考えている。

 今の京は今までと変わらない風体、もしもこの状態で能力を失うとどうなるか、まず間違いなく死ぬ。

 自身の体には植物や人間ではない細胞が多く詰まっている。そして、能力がなくなろうものなら一部の内蔵を補強していた植物がなくなり内蔵不全確定、体の傷を埋めている血仙蟲が消えれば即死確定、能力によって生かされているとも言える京の体、死んでいないということは失ってはいないということだ。

 実際、木の左腕は動く。それしかできないが

 故に最低限度までしか今までの能力を扱えなくなってしまったと考えている。それは実際使えなくなったのも同じであり、戦力的には絶望的なほど弱体化したともいえた。

 原因はわかっている。

 

 アンリミテッド

 

 果てのない命を持つ者。神をも超える存在。京の得た因子の1つである。魔銃を得ると同時に副次的に得たものだがその力は強力だ。それは圧倒的な不死性、例え塵芥に砕け散ろうとも魂が消滅しようと復活することができる。

 が、そこまで都合よくはいかない。

 死に瀕したりなど、体を再構成する必要があるまでになると障害が生じることがあるのだ。

 記憶喪失や能力の障害、それらが京が負ってしまった代償だった。

 多少時間が経てば自然に元に戻るだろうがそれまでは京は現在、ただの人間と大差ないほどに弱かった。

 この世界で一般的な人体にあるエネルギー、魔力、気力、どれをとってもダメだ。

 魔力、ミジンコ以下。

 気力、ミジンコ以下。

 これほどに無害の塊だったのが取り入る切欠になったは京の知るところではなかった。

 

 そして、これが最後の問題。

 

「なんでこの能力を選んだのだか」

 

 自らの胸に手を当てる。

 そこにはチクタクと時計が刻む心音が胸の奥で響いていた。

 能力があると自覚して、初めてその力が発揮される。

 この世界で始めて発動した1つ目の、1つだけの能力。

 記憶がない時、ふと喉から零れた詠唱、それによって得られたこの力だった。

 偶然か、必然か

 少なくとも大本の能力は機能していることを知れただけよかったと思う。

 それはともかくだ。

 

「暴れんなよ、鬱陶しい」

 

 自分自身に言い聞かせるように自分の仲に語りかける。

 少しだけ静まった。

 チクタクと鳴らす鋼の心臓、それは自分の物のようで自分の物ではない。

 絶えず静かに叫んでいた。

 受け入れろ、それだけを叫ぶ。

 鬱陶しい、自分の中で叫び続けられる身にもなって欲しかった。

 

 それは中庸(ロウ)の精神、狂人の心だ。

 

 そして、今までの2ヶ月を振り返って、それを全て飲み込んでベットから降りた。

 

 かれこれ2ヶ月、しかし自分には前世界での戦いが昨日の事のように思い出せる。

 彼女は、メイシェンはどうしているだろうか、ただそれだけが気掛かり、しかし、それを知る術は京には無く、意味も無かった。

 自分のやるべきことはあの世界では全て終らせた。後始末を済ませ、失敗という結果にも悔いは無く、その代償も甘んじて受け入れる。

 だから、気に掛ける方がおこがましいというものだろう。

 彼女なら心配要らない。彼女の周りには多くの人がいるからだ。

 自分は自分でこれからのことだけを気に掛ければいい。

 白状だろうが、これが自分だ。

 後のことは追々と考える。

 

 さぁ、始めよう。

 

 どこにいようと自分のすべき事は変わりはしない。

 手を伸ばし、引っ掻き回す。それだけだ。

 そして、その足がかりは既に自らの手によってお膳立てられている。

 ゆっくりとドアを開いた。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

「やぁ、どうかしたのかい?」

 

「記憶が戻りました」

 

「そっちが君の素か、まぁらしいと言えばらしいかな」

 

 月明かりの下、テラスにてカップに注がれたコーヒーを片手に優雅そうな佇まいを見せる白髪の少年、彼に声を掛ける。

 フェイト・アーウェルンクス、彼の名だ。そして、自分を拾ってくれた少女達の主でもある。随分と信奉されていたのをよく覚えている。

 好きにすればいいと自分の滞在を認めてくれた組織の上位にいると思われる人物、見た目と実年齢は違うだろうと言うことは容易に想像がついた。

 少年、フェイトは京の言葉に大した機微も見せず、抑揚もなく返した。

 

「それで、記憶が戻ったということは出て行くということかな?」

 

「いや、できればそちらの手伝いをさせて頂きたい」

 

 そう言って京は黙って頭を下げた。

 それにほんの少しだけフェイトは眉を潜める。

 

「僕達が何をしているか知っていると? 彼女等には色々と言及していたはずだけど」

 

 それは見知らぬ誰か、記憶を失っている人間とはいえ警戒されることは当然であり、知られないことというのが最低条件だったのだろう。もしかすれば敵側の人間だった可能性も捨てきれないのだから。

 しかし、記憶を失っても京は抜け目なく動いた。所々の会話と、たまに怪我を負って帰ってくれる少女達、そして時折洩れる使命という言葉、彼女達の記憶喪失の無害な男という認識と立ち回りによる警戒心の低下により色々と察する程度なら楽なものだった。

 

「いえ、全く、だけれど何か危険なことをしているというのはわかってるつもりです」

 

「へぇ? 力の無い君が役に立つとは思えないけれど」

 

 そう突き放される言葉。

 それに対して、京は構えて、紡ぐ。

 自らの心臓の叫びを口に乗せて

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

「……なるほどね」

 

 溜息に近いものを吐いて、フェイトはそう零した。

 その目の前には奇妙な景色が広がっていた。

 京を中心にして、円を描くように右半分は凍結した氷の大地が、左半分には融解した炎の大地が広がっていたのだから

 

「君から魔力も気力も感じられない理由はそれか」

 

「それで、どうでしょう」

 

「……」

 

 顎に手を当て、目を瞑り、フェイトは逡巡した。

 そうすればよいかと、手を貸したいという得体の知れない相手をどうすればよいかと迷った。

 見れば力はそこそこにある。使えないわけではない。

 そして、決める。

 

「ついてきて」

 

 答えは保留、フェイトは自分よりも答えを見出せるであろう人物の元へ京を連れて行くことにした。

 その言葉に少しだけホッとして京はフェイトの後に付いて行く。

 地下に入り、コツンコツン、と2人分の足音が響いた。

 自分でもしらない場所、そこに足を向けている。

 そして、光が見えて、開けた場所に出た。

 

「テルティウムか、どうした?」

 

 そこには黒いローブを全身に包み、白い仮面を被った人物がいた。声と大きな体から察すればおそらく男だろう。

 そして、テルティウムと呼ばれたフェイト、その言葉を少しだけ心に留めておいた。

 

「うちに参加希望らしいけど、どうすればいいか迷ったから貴方にも伺いを立てておこうかと思ってね」

 

「ほぉ、その伺いとやらは後ろの男か?」

 

 仮面の男は京に目線を向ける。

 京はそれに黙って礼をした。

 

「戦力にはなると思うけれど」

 

「ふむ……」

 

 仮面の男は京のつま先から頭まで眺める。

 

「貴様」

 

「はい」

 

「何故に我等に組すると言う?」

 

「恩返し、では理由は軽いですか?」

 

「軽いな」

 

 京の言葉を仮面の男は切り捨てた。

 そう簡単にはいようこそという都合のよい展開になると思っているほど京の思考はお花畑ではない。

 しかし、それでも冷や汗が流れるのを京は止められなかった。

 

「我等には大儀がある」

 

「……」

 

「世界の救済、それこそが我々の使命であり、目的なのだ。そんな心積りで我等に与するなど片腹痛いわ」

 

 仮面の男の手が京の首に掛かった。

 その力は強く、息ができなくなる。

 だが

 

 チクタク、チクタク、チクタク

 

 鋼の心臓は何も動じず、規則正しくその心音を刻んでいた。

 全てを受け入れていると言わんばかりに

 同時に京もそれに合わせて仮面の男を見た。

 

「が、しかしだ」

 

 仮面の男は手を離す。

 

「今の我々は猫の手も借りたいほどの現状、それほどまでに恩返しとやらがしたいというならしてみるがいい」

 

 仮面の男はそう言った。

 それは了承と言う意味なのか、怪しいところだった。

 

「それは了承、ということですか」

 

「いや、仮だな」

 

 その言葉に引っ掛かりを覚えるが一定の目的は達したと見ていいだろう。

 仮、ということは真に認められてはいないということ、完全に取り入る為にはどうするべきかといったところだろう。

 そして、それは向こうからの要求にどう応えるかということでもある。

 

「テルティウム」

 

「なんだい?」

 

「次回の行動、奴を連れて行け」

 

 何がなにやらわからないままに話が進んでいく。

 それを京は黙って聞いていくしかなかった。

 

「使えるかどうか試すって?」

 

「うむ、使えないなら始末は任せた」

 

 そしてなにやら物騒な言葉も聞こえる。

 それきり話は終る。

 ふと、フェイトは地面を軽くコツンと蹴ると魔方陣が発生する。

 

「っ!」

 

 一瞬、京は息を呑んだ。

 そして、次の瞬間には、先ほどまでいたテラスだった。先ほどの京の偉力行為によって融解、凍結した床は元に戻っている。

 再び席に着いたフェイトはテラスに腰掛け、冷め掛けたコーヒーに口をつける。

 

「まぁ、始末といっても記憶を消すか石になるかだけどね。どちらがいい?」

 

「どっちもよくない」

 

 素で京は即答で返した。

 京の心境も知らずか、フェイトは更に言葉を続ける。

 

「聞いていたと思うけど、近いうちに旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)で行動を起こす予定でね。それで君もついて行ってもらうことになった」

 

「それで役に立って見せろと」

 

「その通り、役に立たなければそこまでだ」

 

 旧世界、地球のことであり、京のいる場所は魔法世界(ムンドゥス・マギクス)、火星であり魔法の発達した世界である。

 この世界における地球は京の知る地球と時代も技術もほぼ変わらないはずだと知識にある。ただ魔法という存在は隠蔽されているようだが。

 そして、この世界での初の任務、それに応えられなければ京は取っ掛かりを失う。

 なんとなくだがわかるのだ。物語の流れという奴が、それはここから、人物達から感じることができる。

 だから意地でもしがみ付こう。

 

「それで任務とはどんなものでしょうか?」

 

 そしてこれが本題。

 その質問にフェイトは少し笑って答えた。

 

 

 

「誘拐さ」

 

 

 

 こうして、この世界で京の悪の尖兵としての行動が始まったのだった。

 




と導入まででした。
ネギま!編のコンセプトは「魔法vs科学」、主に武器、たまにロボがメインで能力を使用していきます。都合上魔法も少し使います。
能力もリセットというわけではないですが制限を掛け、心機一転で行こうと思っています。
第一の能力はこの物語のメイン能力、主人公の持つ能力の中でも1、2を争うほど強力な能力です。

話の大筋は出来上がっていますがまだヒロインなど決まっていなく、もしかしたら不在のまま終るかもしれないです。

それでは次回も乞うご期待ください。
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