翌日。
「さてと」
作戦開始はまだ少し先、特にやることはなかった。
拠点の近くの草むらでのんびりと横になる。
日の光を浴びるのは趣味に近い。例え能力を失ってもそれは半ば習慣と化していた。
横なりながら思考に耽る。
たとえ戦闘要員に立場が昇格したとはいえ、末端のしかも仮所属、組織としての信頼は皆無だ。
故にこれからの立ち回りが重要になる。
だから今のうちに考えられることは考えておかなければならない。
常に思考は止めずに行動を続ける。
まずはこれまでに得た情報のまとめだ。
京がわかっているだけでも極めて小規模な組織、京が知らないだけで実は大きかったということはないだろう。
巨大な組織であれば突然現れた不信人物ともいえる自分を組み入れるのに悩んだりなどしない。不安要素がある者をあえて取り込む必要などないからだ。第一、デュミナスと呼ばれた仮面の男自身がそれを認める発言をしている。つまり、意外と切羽詰っている。
そして、この組織が真っ当なものでないことも明白、誘拐などを企てる組織がまともというのは些かおかしいだろう。
更にこの組織が掲げる大儀とやらが世界救済ときた。もう胡散臭いこと請け合いである。
「可能性としては2つかねぇ」
世界救済という理想を掲げたテロリスト、もしくは悪の組織の残党、この2つくらいしか思いつかない。
この拠点も10人も人数がいない組織にしては大き過ぎるし京の予想は当たらずとも遠からずといったところか
そして、世界救済という組織の目的、それが言葉通りの意味であるとは流石に思わない。
世界平和などを目指すのならばもっと公の大きな組織であろうし、漠然とした目的でもないのだろう。確固とした結末のある未来、それを目指しているように見える。
世界征服とか、ありえそうな気がしないでもない。なんだかぴったり来るからだ。
「これ以上考えても仕方がない、か」
それ以上の思考は判断を鈍らせる材料にしかならない。
だがどちらにしろ悪事、問題を起こす側であるこの組織、云わば悪の組織である
最悪の場合、京の目的と食い違うか、京の目的の標的になった場合、敵対することになるだろう。
それもこれもこれからの展開次第だ。
ただ個人的な意見を言ってしまうのなら
「敵対はしたくないなぁ」
全ての世界で言えることだが京一人で今までの目的を達成させることは不可能だった。
すずかに助けてもらえなければ木の化物になってしまう可能性もあった。
ライダーと協力して、桜がマスターとして動かなければあの結末はなかった。
メイシェンいなければそもそも死んでいて、更にそこから巻き込むような形で最後まで着き合わせた。
今の京があるのは誰かの庇護、協力があったからこそともいえる。
戦闘面でしかあまり役に立たない自分には必要なものなのだ。
今回も重大な欠陥を負った状態で降り立ったこの世界、魔法技術を基盤とした独自の文明であり、非常に現実的でシビアなこの地に放り出されていれば記憶が戻るまでキツイことになることは間違いなかった。
物語というものがある以上、それには制限時間というものがあるのだから
故に恩があるあの少女達と敵対はしたくない。
この世界では人間の他に亜人、獣人、魔族など様々な形の異なる種族がいるので当然と言えば当然だが初見の自分に分け隔てなく接してくれるというのはそれだけで京の彼女達に対する高感度は高くなる要因となる。我ながら甘い気がするがどうしようもないことだ。
それも踏まえてできるだけ行動したい。
「ここにいましたか」
「ん……?」
自らの考えを一纏めにしたところでふと頭上から声が掛かった。
見上げてみればそこには見知った少女がいる。
「調さんですか、どうかしましたか?」
長い髪に特徴的な角、常に目を閉じた少女、調がそこにいた。拾ってくれた5人の少女の仲の1人であり、その最年長であろう人だ。
京はそれに普通に答える。
何故声を掛けたか、何が聞きたいかというのは大体予想がついていたから
「先日、私達のお仲間になったと聞いて」
「耳が早いですね」
「えぇ、少人数ですから」
それは勿論、京が組織に仮加入したことについて
フェイトから聞かされたのだろう。気になって当然だ。
「記憶が戻ったらしいですね」
「お蔭様で」
「では、帰る場所があるのではないのですか?」
「あるにはあるけれど、行けないくらい遠いからなぁ……」
遠い昔の約束だ。何か忘れている気もするが気にしないことにした。
「そうですね……、魔族の方では早々帰れはしませんか」
「へ?」
何かすごい勘違いをされている気がした。
魔族、角が生てたり骨だったりするあの種族か、確かに種族内で容姿にかなりの差がある種族で
「なにか?」
「いや、なんでも……」
俺人間ですと言っても冗談は顔だけにしろと言われそうで訂正は諦める。
京の様子に調は不思議そうに頭を傾げたものの気にせず、続けた。
「それで何故、仲間に入ると言い出したのですか?」
「魔族は義理堅いのですよ」
「そんな話は聞いたこともないですが」
知っている。今でっち上げた。
恩返しではやはり理由としては軽いか、そう思いながら言葉を探す。
そして、少しだけ自分の本当を開帳することにした。
「……探し物があるんですよ、ここにいれば色々な場所に行きそうだし、裏のことも知れそうじゃないですか」
「なるほど、貴方なりに理由があるんですね」
「それは勿論、恩返しというのも多大に含んでいますよ?」
それに調はクスリと笑う。
「貴方を助けてよかった」
それはどこか嬉しそうな表情だった。
「何故助けてくれたので?」
1つの気掛かりはこれだ。
何故ここまでしてくれるのか、目が覚めたなら捨ててしまっても自分は恨みはしなかったというのに
「自己満足です」
京の疑問を調は予想外の一言に切って捨てられた。
「私も、私達も危ないところをフェイト様に救っていただきました。それの真似事がしたくなってしまったのかもしれませんね」
そして、と調は続ける。
「そして、そんな貴方が私達と同じように力になりたいと言った。それはとても嬉しいことです」
要は彼女は、彼女達は京を自分達と被らせたのだ。
助けられた自分達と同じように危機に瀕していた京に手を差し伸べて、京はそれに力を貸したいと恩を返そうとした。それを嬉しく感じている。
なるほど、自己満足だ。
だが、それが何だという。助けられた事実はなんら変わることなく、彼女達の善意は確かだ。
そう、少し照れくさそうにした調に対して
「まぁ、後悔はさせませんよ」
京は笑って答えた。
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「ウチラの目的は近衛木乃香の誘拐、それを使ってのリョウメンスクナノカミの召喚や」
そう言ったのは天ヶ崎千草、今回の計画の立案者でもあり実質的なリーダーでもある。
ここは京都、旧世界での作戦はもう始まろうとしていた。
「あぁ、あとついでに関東魔法協会と関西呪術協会の和解の親書を消しておきたい」
千草の口から計画の目的が告げられていく。
近衛木乃香、止む事無き続く名家の生まれの少女であり、その内に潜む魔力の量は旧世界、魔法世界を探してもそれを超える量の人間はいないのだとか
その少女を誘拐し膨大な魔力を利用して飛騨の大鬼神、二面四手の巨躯の大鬼"リョウメンスクナノカミ"を召喚、関東魔法協会に一泡吹かせるのが最終的な目的だそうだ。
それを促させたのはフェイト、イスタンブール魔法協会から日本に研修に来ているという設定のフェイトが千草にある程度の情報を流し決起させた。ちなみに自分は助手という扱いである。
近衛木乃香が関東の学園から修学旅行で京都に訪れる。そして、関西呪術協会は偶然に戦力の殆どを各地に任務により散らしてしまっている。要はザルであり、絶好の機会なのだ。
そして、和解の親書、20年前の魔法世界での戦争で東西で対立し恨み合っていた2つの組織に一定の区切りをつけてしまう物、それを通してしまえばいがみ合いは時間とともに消え、魔法使いも流入してくることだろう。それは魔法使いに恨みを持つ千草にとっては我慢ならないものであり、同時にこれが最後のチャンスとなるわけだ。
彼女には悪いが完全なる世界の人形同然である。西洋魔術師への恨みというわかりやすい動機とそれに連なる予測しやすい行動、立案は彼女ではあるがその全体像を把握しそのような方向性に持っていったのはフェイトであり、裏で手を引くのは完全なる世界だ。悪である。
その為にこちらが公に西洋魔術を使用できないという制約も掛かっているのだがあまり問題ではない。
「それと初の顔合わせになると思うから紹介しとくわ」
そんなこちら側の思惑を知らず千草は意気揚々と話を進め、フェイトと京とは別に千草が用意した助っ人を紹介し始めた。
千草の背後の影から小さな2人の影が現れる。
それは年端もいかない少年と中学生ほどの少女だった。
「どうも~~、神鳴流、月詠いいます~~、おはつに~~」
「犬上小太郎や、よろしゅうに」
そう2人とも人懐っこそうな笑みを浮かべて挨拶した。
とてもではないがこれから誘拐に加担するという者達には見えない。
だが京はなんとなく察することができた。
その笑みがどっかの馬鹿と重なったから
ぁ、こいつ等ってば
合点がいったし、関わらないようにしようとも思った。
特に少女、月詠の方は何故か
「フェイト・アーウェルンクスだ、よろしくね」
「助手の京だ」
そういうフェイトはいつも通りの黒めの学生服を来て、その背後に控えるように黒いローブにその身をすっぽり包んだ格好の京がそれに答える。
フードを深く被り、そこからは表情すら見えない。もう完全に不審者だが素顔を晒すよりははるかにマシで妥当な対処だった。
「顔合わせはもういいやろ、あとは計画の説明に入るわ」
顔合わせの挨拶のようなものが終ると作戦概要の説明に入る。
「……とこんな感じや、質問は?」
それに誰も質問することはなかった。
これで作戦?とでもいうような単純なものだからだ。
千草が近衛木乃香の宿泊している施設に潜入、奪取しその場から逃走、その後予定された逃走経路を通りながらそれを追ってくるであろう守護者達を京達で足止めする。
相手の戦力がこちらを圧倒的に越えていなければ有用な作戦、最も重要で難しい役目を千草がやると言っている以上、それに反論はなかった。
「決行は夜や、以上」
そう言って千草は消えた。
後は各々の判断に任す。そういうことだろう。味方の実力もよく知らない状況なら各自の采配に任せたほうが無難なのは確かだ。
「失敗することも十分にありえるし、これで終わりというわけじゃない。まだチャンスは多くある。だから僕は様子見しているよ。
「……了解」
そう言ってフェイトも溶けるようにそこから消えた。
残されたのは3人、そのどれもが呆けたような表情になっている。
「みなさんつれないわ~」
「こっちはこっちで適当にやるしかないやろな」
そうして、残った3人も散り散りになる。
さぁ、これからが始まりだ。
「やりますかね、っと」
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双眼鏡を覗き込みながら、旅館を見張る。
ふと、思ってしまった。
「なにやってんだろなー」
覗きこむ先には和気藹々と、姦しい光景が広がっている。
対象、近衛木乃香の通う学園は女子中学だ。
当然目の前に映るのは女、女、女。ちょっとうんざりしてくる。
ああいう空気は自分には合わないなと遠めに見る空気に当てられながらそんなことを思ってしまう。
が、これも任務は任務、手を抜けない。
誘拐という目的に加担させるというテスト、恩返しなどという軽すぎる動機に対して、どれだけの覚悟を持って悪事を働けるかという判断材料にはもってこいだ。
これは自分のこれからに対する重要な一歩になるのだから
「……」
だが京にも思惑というものがある。
どうしてやろうかと考えるのだ。
「兄ちゃん真面目やなぁ」
「……なんでお前がここにいる」
そこには小太郎がいた。
10代前後であろう背丈とニット帽を被った少年だ。
「ジャンケンで決めたろ? 先陣は俺だ」
「わかっとるって、ただ暇なんよ。俺がここにいたって問題ないやろ?」
京の非難がましい視線を飄々と流しながら小太郎は京と共に旅館を眺めていた。
「ちなみに、そこにいると危ないぞ」
「へ? ぅぉっ!?」
次の瞬間、風を切る音がした。
咄嗟に頭を下げたその先の木にはクナイと弾丸が銃痕がある。
京の覗き込むその先には何事もなく動いている長身の少女2人、彼女等があれを放ったのだ。
「怖いねぇ」
女子中学生の中に明らかに場違いな強さを持った奴が数人いる。
この作戦、中々に難航しそうだなと幸先が悪い感想を覚えた。
「んで、大丈夫か?」
「もっと早く言わんかい!」
「忠告はしてやった。問題ない」
そんなやり取りを繰り返していると、視線の先に1つの影が見えた。
「きたか」
双眼鏡を放り投げ、影を追って疾走する。
その隣に小太郎も並ぶように走っていた。
「俺ちょっと兄ちゃんの力が気になるわぁ、動きも機械染みて気持ち悪いし、ちょっとここは俺も一抜けて見物させてもらうわ」
そう言って小太郎は手を振ると消えた。
小太郎が気になったものとはおよそ生物らしくない京の動きに興味を持ったからだった。
走る速度に一寸の起伏もない。動きが単調で、正確なのだ。まるでその動きだけしかない機械のように正確すぎる動作、ある程度武術をたしなんでいる者ならわかるその違和感、それが小太郎の琴線に触れたようだった。
「もっと協調性を持てというに」
各々の判断に任せた結果が半数の様子見とはこれはいかに
協調性とか京にも言えたことではないがそれでも酷かった。
だがこれは同時にチャンスでもある。
足の進む先、そこにはもう目標がいた。
京は割り込むようにそこに降り立った。
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「ほな、さいなら」
「ま、待てーーーっ!」
千草が一人の黒髪の少女を抱え、跳躍した。
サルのきぐるみのようなものを着て、なにやら身体能力が上がったのか凄まじい距離を跳んだ。
それを追うように杖を持った小太郎くらいの少年と、刀を持った少女、無手の少女が追いかける。
そこに割り込むように京は立ちはだかった。
「ここから先は行かせない」
全身を黒いローブで隠した不審な人物、それに少年達は足を止めた。
なんとなく不気味な雰囲気が発せられていたから
「な、何よあんた」
「お仲間で、足止め役さ」
無手の少女は恐る恐る聞き、京はそれに素直に答えた。
それを聞いた少年達に焦りが生まれる。
早くしなければと、という焦燥感のようなものを感じた。
「あぁ、そこの剣を持った人、行っていいよ」
くい、とジェスチャーでさっさと行けと促して、京は道を開けた。
「何のつもりだ……!」
「へぇ、それを聞いている余裕があるとは流石だね、早くしないと手遅れになると思うけど」
有無を言わさぬ問いかけであった。
つまり京はこういっているのだ。
一人で助けに行くか、皆で自分を倒してから追いかけるか
得体の知れない相手にどれだけの時間を食うか、ならば一人で行ったほうがいいのではないか、それともこれは罠か、そんなことが刀を持った少女の中では渦巻いているのだろう。
そして、決め手は少年の言葉だった。
「行ってください! 僕たちもあの人倒してからすぐに追いつきますから!」
少年の叫びに少女は跳躍、京を飛び越えて千草の後を追いかけていった。
後に続こうとする無手の少女の前に立ち塞がって、笑う。
「自己紹介といこうか、京って言うんだけど、君達は?」
「……ネギ・スプリングフィールド」
「……神楽坂明日菜」
ビンゴ。
京の目的はお前達だ。
「僕の生徒に何をするつもりですか!」
「さて、悪いことじゃないのかね」
少年、ネギの言葉に嘲笑で返して、一触触発の状態に発展した。
互いに動かず、京は出方を伺う。
「兄貴! あんな奴さっさと倒して助けに向かうっスよ!」
この均衡を崩したのはネギの肩に乗るオコジョだった。
それにネギも頷いて、行動に移る。
「
明日菜と呼ばれた少女に黄色い光が纏わされる。
「……上等」
それを向かい討つように京は構えた。
敵、明日菜はこちらに向かって人間とは思えない速度で走り出す。
なるほど、先のは強化か
「だが」
こちとら人間はとっくに辞めている。
京の目には正確に捉えられている。その動きが、挙動が見えていた。
ならばそれを避けることも容易。
「せいっ!」
打ち出される蹴りを半歩後退して避ける。
更に続けられる拳を右に、左に避け、受け流した。
「っ! この!」
焦りから、苛立ち気味に繰り出された拳を避け、腕を掴み、足を引っ掛ける。
「きゃっ!?」
自らの勢いによって横転した明日菜を置いて、京は地を蹴る。
目指すはネギ、狙うならまず彼からだ。
しかし、ネギも準備はできていた。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!
小さな杖を構えながらネギは詠唱を完了させていた。
だがワンテンポ京が速い。
振るわれる拳はネギに当たり、その寸前で止まった。
「……!」
次は自分だといわんばかりに振るわれる杖と共に魔法が発動する。
「
「づっ!」
辺りの木を薙ぎ倒さんかという強風、それを至近距離で受けて京は吹き飛ばされる。
瞬時に体を捻り、着地、地面をスライドするように後退した。
強風が止み、息を吐きながら考える。
なるほど、と魔法について知ると見るとではだいぶ違う。
ネギと明日菜は典型的な魔法使いとその護り手役、魔力を自身のパートナーに注ぎ強化、後方に控える魔法使い自身も魔法障壁を発生させ、物理攻撃をカットしてくると来た。そして、放っておけば特大の魔法を撃ち込んでくるのだろう。連携次第では非常に厄介だ。
「
そして、パートナーとなっているということは契約時に発生するアーティファクトと呼ばれる武器、様々な能力を持ち強力なパートナーの力だ。
明日菜の手に巨大なハリセンが現れる。
「これただのでかいハリセンじゃないの!?」
自分もそう思う。
「いっちまえ姐さん! なにか力があるはずだ!」
「あー! もう!」
半ば自棄になりながら明日菜がハリセンを持って襲い掛かる。
武器があるとないとではだいぶ違う。回避が難しくなり、何度が攻撃が掠る。だが実際それほどにダメージはない。なにせハリセンだから。
そろそろか
「
そして、来る。
準備が完了したネギから放たれる11の白い光の風、それは明日菜と戦っている京に向かった。
咄嗟に明日菜は後退、風の全ては京に食らいつく。
「む……」
風は京の体を縛り上げ、拘束し、光の縄上となって、地面と結びつき、張り付けた。
体を動かそうとも体の隅々まで縛り上げた風はそれを許さない。
「へへーん! どうだ兄貴の魔法は!」
「……初めて受けたにしては興味深いよ」
まだ魔法について多くは知らない。
どんなものがあるか目にしておきたがったが、少々遊びすぎたようだ。
「確認作業は終わりだ」
全ての能力の基盤となるこの体、どこまで動けるか試しておきたかった。
機械的な感覚が未だ慣れないから慣らしも含めて、それが今の準備運動だ。
「負け惜しみ言いやがって!」
オコジョは勝ち誇るようにそういう。
そう、確かに遊びが過ぎたとはいえしてやられた。
だから
「まだ、行かせはしないよ」
力任せに拘束を振りほどく、なんてことはない。
こんなものだ。
再び立ち塞がって、構える。
そろそろ始めよう。
――――――Zero Infinity -Devil of Maxwell-より超人・秋月凌駕、刻鋼式心装永久機関――――――
チクタクと心音が響いた。
刻鋼式心装永久機関、それは人が追い求めた科学の夢の1つ永久に力を生み出す究極の技術体系、その1つ。
人体に埋め込むことで初めて永久機関として完成する悪魔の機関にして、自らの精神によって無限の力を発生させる神の利器でもある。
それを埋め込まれたものは人ではない。
改造人間、サイボーグ、その名は
これこそが科学の到達点、幻想など一切含まない純正科学の結晶体にして完全体。
"科学"という名の神は幻想を駆逐する。
幻想を踏みにじり、法理を打ち立て、ここに在る。
これこそが力だ。
――――――起動準備完了――――――
胸の置くから電子音の音声が脳髄に響く。
カチリ、と心臓の歯車が嵌まる音が聞こえた。
無機質な
「―――
内側の扉を開く。
チク、タク、チク、タク、チクタク、チクタク、チクタクチクタク、チクタクチクタク……
刻む心音の動悸は血流を早くするように刻む早さを増していく。
起動したことにより、心臓の秒針はかつてないほどに回転を始めるのだ。
『認証―――汝が
電子音声が響く、希求を、コードを求めている。
扉を開けば、そこには京ではない。本当の心臓の持ち主がいた。
今だけ、受け入れてやる。
心臓の叫びを口に乗せて
「我、天秤を持ちて端境を往くものなり」
中道を往く者。
それは"中庸の怪物"、その前身に過ぎない。
「この手が求めるは禍福のいずれにも非ず。この足が目指すは善悪いずこの地平にも非ず」
幸せがあれば不幸を欲しがり、不幸な身なら幸せを欲する。どちらも欠けてはいけない。
自分はプラスマイナスゼロがいいのだ。
バランスと取っていたいのだ。
「我求めるは、揺るがざる中道の世界なり――!」
全てに属さない中庸、中道、中点でありたい。
それを何よりも望む。
『受諾――素粒子生成』
それは完遂される。
叫びと共に閃光が舞った。
青白い粒子が辺りに蔓延する。
『輝装展開開始』
青白い粒子、素粒子は収束、両腕に集まっていく。
それは心臓の叫び、願いを基にした武装を顕現させるのだ。
「心装」
それは肘から先を覆う無機質な塊。
ダークブルーに輝くそれは腕を包む手甲。
オーバーテクノロジーを結集した科学の結晶体。
対極の両天秤を宿す人外の魔拳。
その名は…
「輝装・
と京都編幕開け、メイン能力お披露目まででした。
第一段階目、これ以降の戦闘から他の能力も出して行こうと思います。
次回も乞うご期待ください。
原作名:Zero Infinity -Devil of Maxwell-
ジャンル:ADV
使用者:超人・秋月凌駕
能力:刻鋼式心装永久機関
人体に埋め込むことで完成する永久機関の一種。
埋め込まれることで
また自らの精神によって真の力を発揮し、精神を武装化した殲機と呼ばれる武器を顕現させることができる。
いくつかの段階に分かれており、段階が増すごとに飛躍的に強くなってゆく。
・
初期段階、自らの主兵装を顕現させる。様々な形態があり、その形は人によって違う。
・
二次段階、強力無比な形態や特殊機能を授かる。
・
最終段階、自らの心にある真理を身に宿し、自身が1つの法則となる究極の段階。
・????段階
存在しないはずのもう1つの最終段階、真理を握り潰した果てのその段階とは…
とZero Infinity -Devil of Maxwell-でした。
SF版Dies irae、設定などが大分似通っている感じの厨二全開のゲーム。
何故あんまり人気がなかったのか…、やはり最終段階がダサ……ダサいって言った奴前に出ろ
中々に熱い展開でDiesを思い出します。
詠唱など熱くはあるので是非やってみてください。