マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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第76話

 面倒なのが出てきた。そう京は思う。

 時間はそこまで掛けなかった。ならば必然だったか、こちらの襲撃がバレている以上、ここまで成果を出せたのはむしろ成功の部類に入るかと自分を納得させる。

 何より京が面倒な相手だと思うのは京が攻撃を避けざる得なかったこと、目の前に映る男、その手前には大穴を空けられた意識圏がそこにあった。

 意識圏が破られた。

 それだけで目の前の相手が尋常ではないことはわかってしまう。

 

「魔族かい? ここは許可も無しに来ていいところではないよ」

 

「それは重々承知してるよ。だからそろそろお暇させてもらう」

 

 薄ら笑いを浮かべて両手をポケットに入れて佇む男、隙は見せられなかった。アレが男の戦闘態勢だ。

 

「タカミチ……」

 

「説教は後にしよう。ここに君が来たのは確かに勇敢だ。だが君が狙いというのがわかっていてわざわざ出向くのは無謀というものだよ。わかるね?」

 

「……でも」

 

「まったく、やっぱりあの人の息子ということかな」

 

 男の名はタカミチというらしい。

 余程信頼されているのかネギとタカミチの間には相当な信頼関係が見えた。

 だがそんなものは京としてはどうでもいいもの、その隙にと全力で後方に跳躍する。

 しかし

 

「逃がさないよ」

 

「ちっ」

 

 白い閃光が京に向かって真っ直ぐに向かっているのが見えた。

 今度は見切れた。注意をタカミチのみに向けていたため、その動向を追うことができる。

 意識圏を突き破り、京に直撃する寸前のところで振るう空断によって閃光は切裂かれた。

 目に映るタカミチは先と全く同じ体勢、あれが1種の構えであり、攻撃は神速の拳であることはわかった。

 

「それじゃ、これならどうか…なっ!」

 

 更に京は空断を3回振るう。

 衝撃波の刃が別方向に飛んでいく、方向は倒れ付すネギと小太郎、夏美と呼ばれた少女だった。

 

「っ!」

 

 この場でこの攻撃を防げるのはあの男だけ、ならば防がれているうちにさっさと逃げさせてもらおう。

 京はそのまま反転、何度が刃を放ちながら逃走を開始する。

 

「"意識圏(ケイジ)"最大効果範囲」

 

 京の周囲に円球のフィールドが張られる。それには人の輪郭が白く映り、それが発している会話、場所の位置が正確に表示、発せられていた。

 その表示に目を配りながら京は時たま曲がり、立ち止まり、周囲にいる敵を避けながら進む。

 このまま脱出すれば任務完了だ。

 

「まぁ、上々かな」

 

 京としてはよくやったほうかと思う。前よりは余程上手くやった。

 だが、それは京だけが思っているだけで

 

 

『おい、なにをしている』

 

 

 その言葉で京は立ち止まった。

 意識圏に映し出される白い輪郭、その効果領域ギリギリの範囲で彼女はいた。2人の人形を連れて、それはこちらを見据えている。

 エヴァンジェリン、高みの見物を決め込んでいるのはわかっていた。だがやはりというか、それには不機嫌そうな気配が見える。

 わかっている。わかっているとも。できればこのまま逃げ出すつもりだった。それは許さないと、契約違反だというのだろう。

 京は上手くやった。ただ1つ、彼女の出した条件だけは遂行していない。それだけだ。

 

「わかってるよ」

 

 そのまま降参だと、空断を握る右手を上げ、そのまま思い切り地面に振りかぶった。

 ズン、と轟音を上げて京の真横に巨大な切裂き跡が残る。

 その音に反応して、複数の人間が此方に寄ってきていた。

 

『展開準備完了』

 

 胸中で電子音の声が響いた。

 丁度辺りを見渡せば人影が1つ、2つと増えていき、仕舞いには数えるだけでうんざりとするほどになる。

 そして、背後にスタリと着地音が聞こえた。

 振り返ればやっと追いついたのかタカミチが周りを率いるように立っている。

 

「君には聞きたいことがそれなりにあってね、今度は逃がさないよ」

 

「そういうわけにはいかないんだ。今度こそ逃がさせてもらうよ」

 

 対峙しあう2人の宣言は微妙に食い違っていた。しかし、それを追求する猶予も空気もそこにはありはしない。

 にじり寄る様に包囲が狭くなってゆく。直に一斉に掛かってこられて終わりだ。

 それに焦りを京は見せなかった。それはこの状況を突破するだけの手があるということ。だが京の表情はそう余裕があるものではなく、苦い顔をしていた。

 

「まったく」

 

 どうしてこうなったのか

 彼女の言った事、契約の『自分』とはおそらくこれだろう。ハッキリいってしまえば今までも、そしてこれからも使う必要が無い。もう一方の武装で事足りるからだ。そしてなにより胸糞が悪くなる。それでも由とした。

 故に。

 

「今回限りだ」

 

 これっきりにさせて貰おう。

 京は右手に持つ空断を引き絞り、円を描くように放った。

 周囲に広がり続ける円となって衝撃の刃が辺りを襲う。

 そして、追撃とばかりに更なる攻撃を放った。

 

「r=αθ!!」

 

 宙には本があって、パラパラとページを捲り指定のページが示される。それは極座標螺旋方程式、京を中心とし白刃の刃がうねるように展開される。その質量は敵を一時足止めするにはこれ以上ないほどの障害物だった。

 敵は白刃を砕きながら京に迫る。

 そして、全ての障害を排除し対峙したとき、それはもう今までの彼ではない。

 

 

「―――起動(ジェネレイト)

 

 

 内側の扉を開く。

 

 チク、タク、チク、タク、チクタク、チクタク、チクタクチクタク、チクタクチクタク……

 

 刻む心音の動悸は血流を早くするように刻む早さを増していく。

 本当に、真に起動した。残留思念ではなく己の心を起爆剤として、それは形を創る。

 

 

『認証―――汝が希求(エゴ)を問う』

 

 

 電子音声が響く、希求を、コードを求めている。

 扉を開ければそれはそこにいる。鋼の仮面を付けた黒い影を漂わせる白い死神。

 それを黙って、受け入れる。

 自らの有様を口に乗せて

 

 

「我が身は空なり、我が心は無なり」

 

 

 初めの始まり、自分は生まれ変わったのかと言われれば否と答える。何故なら何も無かったからだ。自らを新生したと言うべき構成物が何も無かったから、あえて言うならあの何もない空間で生まれたというのが正しい。

 何も無い自分、それが初めだった。

 

 

「空にして無なる者として生まれし迷い児なり、されど我、我たるを欲する者なり」

 

 

 そして、契約した。自らの行動原理となるものを求めた。契約と同時に力と指針を得た。

 介入、改変、破壊、己には徹頭徹尾それしかない。

 目の前に手を加えられるものがあるならば手を出す。それが何であれ、どういった結果を齎したとしてもだ。

 かつて、初めの世界で安易な偵察がバレたことがあった。それは本当にバレないこと前提ではなくその逆だったとしたら、それは己として丁度いい取っ掛かりだったことだろう。

 無意識でエントリー・モードが作動した。初めからどこでもいい。そういう舞台さえあればいい。だから自動で決まった。

 

 

「踏破し、介入し、蹂躙するを道とする者也」

 

 

 それだけの傍迷惑な存在、それが己だ。

 そして、もう1つの指針としているもの、嘗ての少女との約束、嗚呼、別にそんなもの―――。

 

 

「我は、我を肯定する者なり―――!」

 

 

 そして、それを己は許容している。由としている。

 疑問もない。罪悪感もない。躊躇もしない。

 それが己であるから、それだけでいい。

 

 

『受諾――素粒子生成』

 

 

 それは完遂される。

 叫びと共に閃光が舞った。

 青白い粒子が辺りに蔓延する。

 

 

『輝装展開開始』

 

 

 素粒子が舞う。

 この力は、武装は、この粒子を最も効率的に運用できる武装、その前身。

 それは己に相応しい武装としてここに顕現する。

 

 

「心装!」

 

 

 右手に盾を、左手に剣を―――

 

 右手に銃を、左手に砲を―――

 

 闘争の為の形態へと結晶する。

 

 それは騎士であり、それは狙撃手である。

 

 全貌、真の内を隠したままそれは形だけを再現した。

 

 

 

 

「輝装・白漠葬牙(ホワイトホロウ・レクイエム)

 

 

 

 

 それは姿を現した。

 顕現するは鋼の両腕。左腕も一時的に構成される義手によって繋がれる。しかし、それは天秤の双腕の様な篭手ではない。

 確固たる武装として、右手には腕から手首を覆うように重厚な盾が、左手には勇壮な剣が握られている。

 

 その時、白刃が破られ、タカミチが目の前に現れた。

 両手をポケットに突っ込みながら、それでも拳を振るう時、腕がぶれる程度にしか見えることはない。

 だがそれよりも早く。

 盾が火を噴く方が僅かに速かった。

 

「! 避けろ!」

 

 京の盾に取り付けられたもう1つの兵装を見たタカミチは周りに知らせるように叫びを上げた。

 しかし、京を護るように展開していた白刃は未だ半分が健在、白刃に隠れて京の行動を察せなかった者は多かった。

 京の右手が水平に添えられ、そこから連続する爆音が聞こえた。

 無造作にそれを真横に振るう。

 盾から放たれるは何千という鉛玉、それは全て京の盾から放たれていた。

 

「グァッ…!」

 

 自らが発生させた白刃を自らの攻撃が砕きならそれは取り囲んでいた敵を貫く。

 右手は盾だ。しかし、盾の下、腕から伸びるように凶悪な兵装が首を覗かせている。

 

 三門砲装回転式連装機銃(ガトリングガン)

 

 弾は無限、一瞬のうちに弾幕を発生させるほどの鉛の雨を発生させる凶器。それが盾に取り付けられたもう1つの武装だ。

 1発1発がもはや人に向けることも憚られるほどの威力を有し、早速それは一個人の武器としては規格外である。

 

 敵は何とかそれを凌いでいた。弾幕を浴びながら、それでもと尚後先考えない全力の魔法障壁、数発食らうだけでそれには亀裂が入った。更に更にとその前に新たな魔法障壁を張り巡らせる。

 だが押しているのは京だ。戦列は崩れ、敵は後退を余儀なくされる。

 タカミチもその鉛の弾幕を前に攻めあぐねていた。しきりに瞬間移動かと思うほどの短距離移動をしながら京の砲身の射線に入るまいとしている。

 このまま攻撃していても敵を削りきれる。だがその前に策を弄される可能性のほうが大きい。

 幸いにして彼等の、傾向、特徴はわかってきた。

 

「防いでみせろよ」

 

 辺りに撒き散らせれる鉛の弾幕が止む。しかし、京の右手は1つの標的に標準しようとしていた。

 

「……っ!?」

 

 それに気付いた者は多かった。

 京の砲身の先、そこには先に弾を受けて転がる一人の男がいた。

 

「お前達はどうせ」

 

 容赦なく放たれる鉛の暴風、それは一点に注がれることによりその暴虐性を増させた。

 そして、それは京の予想通り

 

「助けるんだろ……?」

 

 皆が助けに入って倒れる男を守るように複数の魔法障壁が展開、それを防いだ。

 そう、そうしてくれなければ困る。

 間に合うように(・・・・・・・)撃ったのだ。

 

 見捨てればいいのに、気にせず京に突っ込めば一人を犠牲として鉛の弾幕を掻い潜ることを回避できたのに。

 それでも守ろうとするから、援護しようとするから

 こうなる。

 

「ハッ!」

 

 それを鼻で笑いながら、もう1つの武装、剣が敵に向けられた。

 そう、これもただの剣ではない。

 これは銃剣(ブレード)だ。

 

 その射線上、その場の皆を護るようにタカミチが立ち塞がり、神速の拳を振るった。

 それと同時にニヤリと笑いながら京は左手の引き金を引く。

 雷鳴のような銃声が辺りを震撼させた。

 無音拳と評させる彼の高速の拳、だがそれよりも機能として特長として左手の剣に備えられた砲は速い。

 

「グ……」

 

 タカミチの右腕がだらりと下がった。亀裂のように拳から二の腕まで一直線の赤い亀裂を残して、そこから血が噴出する。

 威力そのものはギリギリまで抑えられたのか、複数の魔法障壁を貫通し、その余波で吹き飛ばされ昏倒する複数の敵がいるだけだった。

 

 電磁加速砲(レールガン)

 

 超未来兵器、音速の10倍という驚異的な速度とそれに伴う窮極的な威力を有する魔弾である。

 それこそ、この剣の矛先に、射線に入れば即狙い打たれる。避けられなどしない。

 

 タカミチは後方を尻目に、誰も死者がいないことに安堵の息を漏らしながら目の前の敵を、京を睨み付けた。

 それは憎さではなく、やり難さからである。

 タカミチは正しく理解していた。

 この兵装の脅威を、何が最も恐ろしいものかということを

 

「来ないのか?」

 

「よく言う」

 

 京の挑発にも似た物言いにタカミチは返す。

 タカミチは動かない。京の動向に逐一集中を巡らせ、それに対応しようとしている。

 少し違うか、動かないのではなく、動けない(・・・・)

 未だタカミチも右腕をお釈迦にされただけだ。問題ない。

 だが京に対して動くことができない。

 おそらく全て対応される。

 それがタカミチの考えることだった。

 

「なら、こちらからいく」

 

 右腕の機銃が火を噴く、それに合わせて、瞬動、超速移動の技法を持ってタカミチはその場から消え、弾幕から逃れた。

 しかし、それを追尾するようにタカミチに向かって右手が向けられ続けている。

 

「退がれ! 的にしかならない!」

 

 できれば的確な指示が出したかった。

 京に対する最低限の対処法、少なくとも瞬殺されない方法を。

 

「―――! ―――!」

 

「止めろ! 動け!」

 

 負けじと詠唱を開始する敵、そしてそれを守り剣を構える者、障壁を張るもの、成程魔法使いとしてセオリー通りだ。

 しかし、京には致命的に相性が悪い。

 悠々と矛先が詠唱される魔法使いに放たれた。

 やはりというべきか、それは守ることもできず障壁を易々と貫通、全てを吹き飛ばす。

 狙いを僅かに逸らし、巻き込んだだけに死にはしていないが戦闘不能だろう。

 タカミチ以外の敵も何が言いたいのか察したのか退がった。

 

「へぇ……!」

 

 この能力の真価に気付くか、そう思い京は笑う。

 タカミチは僅かに円を描きながら弾幕を掻い潜り、京に接近してきていた。

 そして、仲間の魔法使いからの援護攻撃を弾幕で掻き消した隙を見計らって、京に肉薄する。

 これなら機銃も砲も使えまい。

 

「わかってるさ、ここも安全圏じゃないんだろう……!」

 

「そうさ」

 

 肉薄し、放たれる左の拳、だがそれは京の兵装としての本来の形、騎士の形としてそれは盾によって防がれる。

 同時に左から振るわれる白刃の銃剣、防御はできない。ならばと後方にステップすることでそれを避けるがそれと同時に京も後方にステップし距離を空けていた。

 

「フッ!」

 

 タカミチもこの状況は理解していたのか着地すると同時に瞬動、そこには無数の弾丸がめり込んだ。

 

「これほどやり辛いのは久しぶりだ」

 

 これほどまでにタカミチという歴戦の兵が攻めあぐねるのは珍しい。

 それは京の武装、最大の特徴が齎すものだからだ。

 

 全距離(オールレンジ)対応。

 

 それこそがこの兵装の真価である。盾と剣、弾幕を貼る機銃、一撃必殺の高速砲、それら全てがセットで全てをカバーし隙を作り出す。

 武装構成に隙がなく、卒がない。集団戦も個人戦も全てをこなし、どんな相手にも真っ向勝負ができる。

 近距離ならば鋼の盾と剣が対応し、中距離ならば機銃で蜂の巣、遠距離ならば狙い撃ちだ。

 戦闘構成も隙がない。

 近距離で近づいても盾と剣でいなされ、少しでも離れれば近-中距離の機銃を避ける暇すら与えられない。

 中距離ならば蜂の巣、例えそれを防御できたとしても足を止めればレールガンで狙い撃ちだ。

 遠距離なら尚更、浴びせられ続ける弾幕の中、潜むこともできずレールガンの前にはどんな距離も関係ない。

 これを倒すとなれば、余程の力量差があって一切の攻撃を受け付けないか、互角の戦いに持ち込んで隙を狙うしかない。後者は壮絶な集中力を要するだろう。

 

 白漠葬牙(ホワイトホロウ・レクイエム)、それは万能を体現した能力なのである。

 

「もうそろそろ、いいかな」

 

 ボソリと京が口から零す。

 放つ弾幕と魔弾、それらによって大半の敵は狩りつくした。

 そして、もう彼女も満足だろうと

 

「そろそろ終りにさせてもらうよ」

 

「あぁ、こっちもそう思っていたんだ」

 

 敵側としても削りに削られ敗色濃厚、ならばここは一気に決めるべきだろう。

 京としてもさっさとけりを付けたい。

 

 先手は京だった。

 右手の機銃(ガトリング)が火を噴く。適当に右手を振って、その範囲の移動を制限、瞬動を封じようとする。

 滅茶苦茶に撃たれる弾幕、瞬動とてただの高速移動、移動先に弾幕があればそれは死にに行くようなものだ。

 タカミチの攻め手を封じようとするが、また彼も京の主兵装を封じようとしていた。

 レールガンを避ける方法、それは引き金を引くタイミング、よくある手だ。だがそれを為すのにどれだけの集中力を削るか、タカミチは額に脂汗を滲ませながらそれを行い接近していく。

 そして、京がタカミチにのみ集中が向いたとき、それらは動き出す。

 

「今だ!」

 

 全包囲から、魔法弾が殺到した。

 超々遠距離から虎視眈々と狙っていた者達、京の認識外から外れ、それを狙っていた者達。

 全て防がれようともタカミチが決める。

 だが

 

「あまいよ」

 

 京とて何も狙わずにセオリーをする気はない。

 京が発動しているのは白漠葬牙(ホワイトホロウ・レクイエム)だけではないということ、あまりの変化に忘れてはいないか

 もう1つある。それは京の強み、複数能力の同時発動という強みがあるのだから。

 意識圏(ケイジ)、弱点は盾に守られその万能さを増させた。右手にはたてと同時に空断というナイフがある。

 これで零距離にも対応、更に強力な防御力と索敵能力も有することになった。

 相性は最高の部類だ。

 全包囲から放たれる魔弾は全て意識圏に防がれ、完全な個人戦(タイマン)の様相を叩き出した。

 これで隙は作れない。どうするか。この距離なら移動はできまい。

 しかし

 

「あぁ、あまいね」

 

 背後に回りこむようにタカミチがいた。

 虚空瞬動、初めて見た京にはそれが予想外だった。短距離限定だと思っていた。思わされていた。それも京が短距離限定の移動術と見て弾幕を張っていたのを見抜かれたのことだった。

 互いの懐の探りあい。それに一歩京が負けたところだった。

 

「……」

 

 タカミチが超速の拳を振るおうとして

 

「っ」

 

 止まった。

 京の左手から、一瞬だけ黒い影が漏れて、それが形を作り、もう1つの左手となってその剣がタカミチに振るわれたからだ。

 完全な不意打ち、その剣を受け入れるしかなかった。

 避けようと後退してもそれはタカミチを捉えていて

 それは

 

 通り過ぎた。

 

「幻影……」

 

「いや、そんな能力はないさ」

 

 タカミチの呟きに京が機銃を放ち、戦いは終った。

 無数の弾丸はタカミチの足に数孔を開け、動けなくする。

 

「それじゃ、行かせてもらうよ」

 

 答えは聞かず、京はその場から離脱するように離れた。

 互いに本気、全力ではなかった。

 微かに次段階の能力を引き出して、あの奇襲に打ち勝っただけに過ぎない。

 懐の深さなら京が段違いだから、それを全て把握されれば京の負けは硬いだろう。

 

「これで満足かな」

 

―――及第点だ

 

「あぁ、はいはい。もう二度とやらないよ」

 

―――それはどうかな

 

 こちらを見ていたであろう彼女に話しかけて、その答えが帰ってきたような気がした。

 こうして、京の撤退はほぼ完了するだとう。

 しかし、忘れてはならないものがある。

 

「月詠、どうしたかな」

 

 きっとまだどこかで暴れているか、捕まっているか。

 どちらにせよ京はおそらくフェイトから課せられたであろうストッパー役としての行動を開始するのだった。

 




と随分とお待たせして申し訳ないです。
次回で学園襲撃編は終わりとなります。

次回、未来人と異世界人、乞うご期待ください。

新しい能力はまだまだどんどん出していく予定です。
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