「一体どこいった……」
疾走する。
以前よりも軽快に京は動くことができた。
輝装を纏ったことで身体能力も大幅に上がっている。
パワータイプの
輝装を維持したまま夜闇を駆ける。
タカミチ達を倒し、現在は行方知れずとなった月詠を探して奔走することになっている京、その顔からは余裕はあまりなかった。
京の索敵から見える敵、それは次第に数を増している。
こちらの位置はおそらくまだ把握されていない。敵の視覚、音声情報からはそう読み取れる。だが敵はこちらの位置に当たりを付け、次第にその包囲網が完成しつつあった。そろそろ網の目を掻い潜りながら進むというのが難しくなってくる。
初戦、次戦でそれなりの数を減らしていると思っていた京は一向に減る気配がない敵の数に辟易としていた。
こちらの手の内もかなりが把握されてしまっている。敵がいつ再び打って出てくるかわからない。おそらくその時は京に対する対策を講じられていることだろう。
京としては月詠を連れてさっさとここから出て行きたいところだった。
だが
「いや、いやいや」
違う。駄目だ。勿体無い。
京は突如として立ち止まり、自らの考えを否定するように首を横に振った。
現在京は久方振りにフリーの状態にある。敵陣の真っ只中にあり、今まさに追い込まれようとしているのだがここは一つのチャンスと見るべきではないだろうか、そう思う。
残念なことに京の本来の目的に達するための情報、この世界を取り巻く実態というのにまだ京は精通していない状態だ。その渦中にいる組織に属しているであろうことはわかっていても京はそう悠長に構えているわけにはいかない。
完全なる世界がここの調査を命じたということは相応の何かがあるということだろう。単なる勢力調査かもしれないがそれでも重要視していることは確かで無いよりは遥かにマシである。
そう思考が別方向に向いているとある少女の顔が脳裏を過ぎった。
「大丈夫さ、きっと彼女は上手くやってる。たぶん」
なんてことはない。月詠とて神鳴流の雇われ者、たぶん、きっと、おそらくどこかに潜んでやり過ごしているに違いない。そう京は自分でも思ってもいないことを結論付けて、月詠の事を頭の片隅に追いやる。
そして、全てを切り替え、顔を上げたときそれはいつもの不敵な笑みを浮かべた京だった。
「さて、さて、さて」
どうする。どう動く。一瞬で思案を巡らせる。
やはりというか、こう一人で勝手に動くほうが京には性には合っているようでやる気も頭の回転も早かった。
そう、まずは
「現状の打破」
こう周りに敵にうろつかれては探すものも探せない。
とりあえずは、ここら一帯掻き回してやろう。
走り回って、気付いたことがある。そして、この学園に対してよく機能する能力を京は用いることができる。
京は紡いだ。
「MIDNIGHT EYE ゴクウより風林寺悟空、"神の目" ……発動」
一瞬眩い光が漏れ、それは収まった。
紡いだ京自身に特に変わったところは見当たらない。しかし、ほんの微かに京に変化が起こっていた。
右目の複眼、その1つの目の奥に赤い光が灯っている。
それは今まで京に見えなかったものを視覚化し、捉えていた。
"神の目"それはある一面、この世界にも広く普及するある物に対して正に「神の御業」を可能にさせる目である。
そして、京の得た神の目は1つの物体を捉えたのだった。
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「どうネ? 彼の様子は」
「監視カメラの映像と追跡システムの情報から見ると囲まれてるみたいですねー、このままだと捕まっちゃうんじゃないですか? タカミチ先生無力化したくらいなので相当被害が出そうですが」
「もう少し拡大して欲しいネ」
「はい」
とある一室、多くのパソコンと大きなモニターが並ぶ大部屋でそれを眺める2人の少女がいた。
中国訛りの黒髪の少女、
カチャカチャと軽快にキーボードがタイプされ、程なくして大画面に京が大きく映し出された。
「なんだか怖そうな人ですね」
映し出された京の素顔にハカセはそう漏らした。京が聞けば苦笑いで目を反らすだろう。
間違いはないし、仕方はない。人間としての面影は半分以上残っているが残りは完全に人外の領域である。
「……」
「どうしました?」
それを黙って眺める鈴音の様子にハカセは不思議そうに尋ねた。
「この男、拙いヨ」
「ぇ?」
「放置すれば間違いなく我々の計画に支障をきたすネ、私の勘だけど」
ハカセの問いに鈴音は結論からいって答える。
それは京の行動や風貌、実力からいえるものもあるがそれとは別に鈴音から見て明らかにおかしい点があるからで、それを踏まえて彼女の勘が叫んでいた。
超鈴音は未来人である。そして同時に火星人でもある。
時代は今から約100年以上未来、ある出来事を未然に防ぐために過去へと渡ってきたのであった。
彼女はネギ・スプリングフィールドの血縁に当たり、事の発端、ネギを中心として起こった悲劇で幕を閉じるまでの話を大まかにまでだが知っている。
そして、それは既に明確に鈴音の知る歴史とはずれ始めていた。それは画面に映る彼が原因であるのは確かだった。
お前なんて知らない。
それが鈴音が思う全てである。
彼女が未来からやってきた時点で、それはもう彼女がいた過去と全くの同じにはならないだろうことは彼女自身わかっている。
実際、彼女が進める計画の為に地位を築き、資金を集めるために天才と呼ばれる己の頭脳を使ってそれらを手広く行った。それによって少なくとも学園内は相当変化している。
だがそれは表の世界の話だ。藪を突けば龍が出てきてもおかしくない裏の世界、鈴音はそれに極力手出ししなかった。それがいつ自分の計画に反動として返ってくるか測定不能だったからだ。
鈴音の計画は裏の世界で起こすもの、万全を期すなら、不確定要素を極力入れないならば表のみで動き、最後の最後で畳み掛けるように裏で事を起こす。それが一番だったはずなのだ。
それがどうしてこうなったのか
今目の前に映る男のような種別の者達こそを排除するために、発生させない為に鈴音は動いていたのに、これでは全くの無駄足だ。
そして、彼女としては気のせいであって欲しいが彼女の勘は言っていた。こいつは絶対に余計なことをする奴だ、と。
しかし、現れた不確定要素に取り乱されず彼女は思考を止めなかった。
発見できたのが計画実行当初でなくて本当に良かった。それだけを鈴音は安堵する。
何故ならそれは京を対処するまでの猶予ができたということ、幸い向こうはこちらの事を知らない。ならば彼に対する何らかの手を打つことも不可能ではないからだ。
ではあの男は何者か、そこから鈴音は考える。
鈴音が推察する京の2つの可能性
「ただのイレギュラーか、同類か」
こちらへの絡み方は、あの組織の一員としてこちらに手を出していると言う点。そして、何よりも京が使う数々の武装、それらは魔法を介在しなく分類で言えば鈴音側に属する類の能力であると推測できた。この時代ではありえない武装、未来兵器、それは鈴音に1つの考えを浮かばせるに易い代物だったわけだ。
目の前の男はこの時代の人間ではないのではないか、ということである。
10年後に魔法世界と共に消えた組織、完全なる世界、それらがしぶとく生きていてこちらに送り込んだというのはどうだろうか、ありえない話ではない。
時間逆行がどれだけ難しいかはそれを行った鈴音が理解してる。実際、この行為を行うことができたのは一重に鈴音の頭脳があったからだ。だが京の武装、あの力を見てしまえば自分以外に辿り着いたかもしれないと思ってしまうのだ。
それが当たっているのかいないのかはまだわかりはしないが、少なくとも降って沸いたようなイレギュラーではないと判断した。
「だとすればどうするか……」
鈴音の予測を踏まえて、そうだとして話を進める。
彼の目的、鈴音と同じく過去改変だとするならば手を貸し、共同戦線を張ることもできる。問題は鈴音の目的と食い違った場合だ。既に彼は学園と敵対する側に付いている。それが鈴音にとって吉と出るか凶とでるかは難しいところだった。
いずれにしろ見極めるにも時間がない。
計画まであと少し、計画の最中に現れ今回のように暴れられては鈴音の計画がご破算になりかねなかった。
行動を起こすなら今しかない。
排除するか、抱き込むか、そのまま放置するか、少なくとも放置はありえない。
「大丈夫ですか~?」
「ぁ、あぁ、問題ないヨ」
ぶつぶつと独り言を漏らしながら考え込んでいた鈴音をハカセが心配そうに起こし、それに鈴音は笑って大丈夫だと手を振って応えた。
そして、鈴音は選んだ。
「こっちのあの男の情報全部学園側に送るヨ、匿名で」
「捕まえてもらうって事ですか、でも学園に協力と言う形で私たちは関わっていますがあっちの領分には深入り禁止されてます。匿名にせよ私たちだって簡単に感づかれちゃいますよ」
「大丈夫ヨ。あっちも切羽詰ってるだろうし、このくらいのサポートは目を瞑ってくれるはず。それにこれ以上魔法先生達に怪我されても学園祭に支障をきたす可能性もあるからネ。不確定要素はその場で排除が確実ヨ……」
鈴音は敵の排除を、京の排除を決めた。
できるだけ万全な状態で事を進めたい。抱き込んでも信用できない。毒を飲む破目になるくらいならそのまま消えてもらうほうがいい。
「真名にも連絡するよ。狙撃して少なくとも半年は動けなくなってもらわないと」
「わかりました」
着々と京を追い込む話が進んでいく。
京の居場所など手に取るようにわかる。
鈴音以外にも技術力を持った人材が何故か多く在籍するこの学園は無駄に技術が進み、いつの間にかこの世界では他に類を見ないほどハイテクだったりする。鈴音が手を加えたのも大きく影響されているがそれでも異常と言って差し支えない程だった。
つまりはどこにいようが機械の目が、ありとあらゆるところに取り付けられた監視カメラからは逃れられないということだった。
「さぁ、どうするヨ……?」
学園で2番目に強いとされるタカミチを本気の状態ではないにせよ下しているのだ。一筋縄ではいかないだろう。
さぁどうすると、鈴音は笑う。年相応の少女が浮かべるものではないどこか老獪で悪巧みするような笑みだった。
そして、目が合った。
「っ!」
ゾッと背筋が凍るような嫌な予感がした。
画面越しに、京がこちらを向いたのだ。それは正しく監視カメラの方向を向きレンズの奥を覗き込むようにしていて、それを見る鈴音と完全に見詰め合うような形になった。
あちらからはこちらのことなど見えてはいまい。だがこちらを見つめる京は全く己と同種の笑みを浮かべていた。
それだけが気掛かりで、もう全てが手遅れだった。
変化が訪れたのは早かった。
パチンと音がして、部屋に明かりが灯った。
「あれ?」
それに不思議そうにハカセが首を傾げた。辺りを見回しても電気を付けた者はいない。
では誰が明かりを付けたのだろうか。
更に変化は起こり続ける。
プツン、プツンと周りのパソコンも同時に独りでに起動し始めた。
「超さん……」
「一体何が」
目の前で起こっていることはさっそくホラーの領域だ。それにハカセも不可解で鈴音に戸惑いの声を投げる。
それに対して鈴音も特定の答えを返すことはできなかった。
推測を上げるならば機械、機器を統括するシステムに異常が出たか、だがそんなはずはないと即座に否定する。
しかし、鈴音の思いとは裏腹に変化は刻々と広がっていった。
次は外から
「ぇ?」
既に深夜、明かり一つ無い夜闇に無数の機械の光が灯った。
全ての電灯、照明に明かりがつき、学園全てに光が差す。同時に全ての建物の窓からも黄色い光が漏れ、21時かそこらの時間帯と錯覚してしまいそうになってしまう。
そこでようやく鈴音は気付いた。
これはまだ初めの一手、更に最悪な二手目がくる。
「ハカセ! システムにアクセスするヨ!」
「は、はい! ぇ……アクセス拒否……? そんははず……っ!? ハッキングされてます!!」
ハカセはそれに即座に気付いた。
学園のシステムに侵入して勝手にいじっている奴がいる。この電源の入り方もこの今の町の光景も全てそれが原因だ。
勿論、それを行っているのは目の前の男、京だ。
画面に映る京は、踵を返し、こちらに手を振った。そして、次の瞬間、ブツンと暗転、接続が断ち切られた。
「舐めた真似を……」
こちらの領分を侵して来た。喧嘩を売ってきた。ならば買ってやろう。
「撃退します」
「……頼むネ」
こちらの持つプログラムは数世代先の超高度なプログラム、ハッキングされようものなら逆探知して乗っ取ることも容易だ。だがその絶対的な自身にも僅かな不安があった。
その時、外からジリリリとけたたましい大音量の音が響いた。
非常ベル、そしてこれが鳴ったということは
「そういうことか」
鈴音は京の魂胆を理解した。
逃げるためにこれ以上ない程この場を荒らす気なのだ。
魔法使いたちが恐れる魔法存在の露見、それを逆手に取った戦略がこれだ。この学園のシステムを乗っ取って全ての学園の機器、機械を作動、学園中に目が届くようにと明かりを灯し、更に学園に住まう全ての者を非常ベルによって外に導き出した。
これは魔法使い達にとっては致命的なほど痛い。
この学園に張られた認識疎外結界、それもこの学園で起こる摩訶不思議なことを大した疑問に思わせない程度の結界、それによって噂程度にまで事実は薄れてしまう。だが実際にその目で見ては流石に取り繕う隙も無い。今正に京は学園中にいる全ての者の目を外に解き放ったに等しいことをしたのだ。
これにより魔法使い達の行動は非常に制限される。そして、隠密行動重視だろうと人の目に触れることを禁忌としない京にとってそれは非常に動きやすい場となるのだ。
「学園警備システムメインコンピュータ……多層防御プログラム全て突破されました……」
「……」
やはり、その言葉は出てこなかった。
100年後の超未来のプログラムが軽々と撃ち砕かれた。
実際、無理も無い。
京の得た新たな能力、"神の目"、それはありとあらゆるセンサーを内蔵した機械の義眼、その最も強力な能力とは理不尽なレベルの強制ハッキング能力である。
末端システムから目視でシステムに介入、乗っ取るという理不尽極まりない対システム能力、これに掛かればどんな最先端のプログラムでも易々と突破されてしまう。
機械の神から与えられるという機械神の義眼、それはあらゆるシステムを支配下に置く神の目なのである。
特定状況下ではまさに無敵の能力であるが、実際のところ麻帆良学園がここまで技術的に進んでいなければこの手は使えなかった。学園全てを網羅するという最先端システムが敵にあったからこそのこの力、この地から一歩でも外に出れば途端にこの能力の使用は相当に制限されるだろう。
対科学の能力でもこの能力は対未来科学、敵の技術が進めば進むほどに強力になる能力なのである。
先手を打たれた。
まだ足りないと無人の路線電車は走り出し、大音量で音楽が流れ始める。
もう滅茶苦茶だ。京を捉えることはできない。
「……」
どうしようか、どうするべきか鈴音は考える。
さっそくもうどうしようもない状態、こちらの目を潰され身動きが取りようにない。こちらが手を出す前に先手を打たれそのまま畳み掛けられた形になってしまった。
敵の退路は確保された。あとは残りの仲間であろう者を回収して悠々とこの場を去るだけだ。
このまま黙って見過ごすか、違う。そういう意味ではない。
果たしてこのまま去るだけで終るだろうか、そう思う。
この事件、ネギと神楽坂明日菜を廻る襲撃、それは鈴音は知っていて様子身を決め込みつつ放置は既に思考の余地無く決定事項だ。何故ならこの襲撃はネギ一行が敵を撃退したことで幕を閉じるはずで余計な手出しは不要なのだ。
しかし、もう決定的にずれはじめている。つまり、この先撤退で終るかも怪しい。
この騒動は退路の確保も含めているのだろう。だが別の意味合いも含めるはずだ。何故ならここまでやる必要はもうないはずだから、あれだけの実力があるならば力押しの突破でも支障は無い。なら敵はどう動くのか。
京都襲撃、学園襲撃、そしてその次は
「……ちょっと出てくるネ」
「えと、どこにですか?」
どうしようもなくなったシステムを躍起になって回復させようとしているハカセを他所に鈴音は徐に出かける旨を伝えた。それにハカセは怪訝な顔をせず、鈴音がやろうとしていることをサポートしようとその行動の先を聞こうとする。
「地下回線、物理的に切断してくるヨ」
「……わかりました」
こちらの存在を気取られる可能性を限りなく低めるためには鈴音としてできることはもうこれしか残っていない。
排除はほぼ不可能、抱き込みは裏切られる可能性が大きすぎるために却下、あとは論外としていた放置しかなく、計画時の対策を更に講じる必要できてしまったのだった。
手遅れになる前に、もしもこちらの存在に、地下にある無数のロボット及び計画を知られ余計な手出しをされる前にその手段をとらせないようにしなければならない。
手遅れで地下から大量のロボット軍団が出てこようものなら鈴音はもう首を括るしかないからだ。
警備システムと鈴音の管理する回線は別、だがいつこちらに気付くかわからない。
「それじゃ、後は任せたネ!」
そう言って鈴音は駆け出した。
と前半でした。
本来2つに分ける気も長くする気もなかったのですが、自分でもよくわかっていないです。
きっと勢いがいけない。
原作名:MIDNIGHT EYE ゴクウ
ジャンル:漫画&アニメ
使用者:風林寺悟空
能力:神の目
機械の神から与えられるという機械の義眼、眼球型の小型端末。
ありとあらゆる高性能センサーを内蔵し、暗闇や水中などでも高度な視野を確保できる。
その最も強力な能力はありとあらゆるコンピュータに対する強力無比なハッキング能力、目視でシステムに介入し乗っ取ってしまう。
現代での科学水準ではできることが多くない。
とゴクウでした。
有名なコブラの作者の漫画。
ノリと雰囲気は完全にコブラそのもの。
コブラが好きな人は普通に楽しんで読めるのではないかと思います。
お手を取る機会があればどうぞ。