マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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第6話

「私の家に来ない?」

 

 ある日、すずかが京に誘いを掛ける。

 これが今回の介入劇の始まりだった。

 

「断る。」

 

 即答で京は誘いを突っぱねた。

 

「ちょっとくらい悩んでくれても…」

 

「どの面下げて会いに行けばいいかわからない」

 

 すずかはいいとして、他の京を知る者達の印象はかなり悪いと京は思っている。

 初対面はスプラッターな光景の中での遭遇、それを作り出したのは京。

 そして月村邸に木のミサイルを放ち、その後会いに行こうものなら手荒い歓迎をしている。

 例えすずかを助けたとはいえ、見た目も怪しい自分を快く思っているとは思えない。

 それは自分の自業自得でしょうがない事だと受け止めている。

 

「大丈夫だよ。」

 

 律儀だなと苦笑いしながらも自信満々にすずかは言う。

 

「そうじゃないと毎日京くんのところに来れるはずないでしょ?」

 

「それは…そうだけど」

 

 ぐうの音もでないほどに反論の余地が無い。

 実際のところ京が思っているほどではないが月村家の京に対する印象はよくはなかった。

 それを説得したのはすずかである。

 今では京に会いに行くすずかを笑って送り出す程度には京の知らないところで印象は良くなっていた。

 

「ね?行こう?」

 

「むぅ…」

 

 何か腑に落ちないように声を出しながら返答に詰まっていた。

 

「友達のなのはちゃんとアリサちゃんを紹介したいんだ。」

 

 京はキョトンとした顔になり、次第に苦い顔になる。

 

「尚更断らせてもらう。俺の顔見てみろ、ダメなことくらいすずかにもわかるだろ?」

 

 ほら、と右目の複眼を指していう。

 引かれるどころか怖がられそうだ。

 

「そんなことくらいでなのはちゃんとアリサちゃんは嫌わないよ」

 

「自分の種族も教えてないのに?」

 

「ぅっ…」

 

 自分の事を棚に上げて何を言っているのかと攻める。

 それでもまだ諦めきれないのかすずかは唸る。

 

「だって、私だけじゃ寂しいでしょ」

 

それが本心かと、そしてそこまで考えていてくれていることに少し申し訳なく感じた。

 

「すずかがいれば十分だよ」

 

 ポツリと言葉が零れる。

 それをハッキリと聞いていたのかすずかの頬が少し赤くなった。

 それでも、それでも諦められないのかじっとこちらを見てくる。

 まだ諦めないのかと意思を込め見つめ返す。

 京とすずかの視線が交差する。

 じっと見つめ合い、視線がぶれることはない。

 一種の対決だった。

 意地の張り合いともいう。

 

 

「……………」

 

 

「…………」

 

 

「………」

 

 

「……」

 

 

「…」

 

 

「わかった…わかったよ!」

 

 折れたのは京だった。

 意地の張り合いで京がすずかには勝つことはない。

 それは決まっていることだった。

 すずかはおとなしそうに見えて芯は随分と強いのだ。

 

「わかったから…、ナイフと包帯貸してくれ」

 

「うん!でもなんでナイフと包帯?」

 

「顔の木全部ナイフで削り取るからだよ、あとは包帯で隠す。」

 

 一日で元に戻るだろうが適当に取り繕うには簡単な方法だ。

 ぱっと見で怪我くらいで見てもらえれば問題ないだろう。

 

「痛くないの?」

 

「痛みはない、やろうと思えば10秒かからないで元に戻る」

 

「わかった!下に車がもう待ってるから行こう!」

 

 そう言ってすずかは笑顔で早く行こうと促した。

 もう既にすずかの中では京が行くことは確定事項だったのだろう。

 廃ビルの入り口には見たことのある黒い車が控えていた。

 敵わないなと京は苦笑いしながら付いていくのだった。

 

 それから用意された車の中で顔の木を削り取り包帯で隠していく。

 出来を鏡で見ると意外と誤魔化せていることに驚きつつ、もっと早くやっていれば外にも出る事が出来たのにと軽く後悔するのだった。

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 月村邸に着く。

 一度は来た事はある。

 だが気絶中に運ばれ、そして夜に飛び立って逃げ出したこともあってわからなかったが改めてみると凄まじい豪邸だった。

 これなら木のミサイルを撃ち込んだこともそこまで問題はなかったかなと少し安堵する。

 

「ちなみに京くんが壊したところは改修中だから」

 

「…申し訳ない」

 

 さらりと考えを読まれたのか反省しろと釘を刺される。

 こればかりは反省する他ない。

 広い庭を歩いているとテラスのようなところに行き着く。

 そこには金髪と茶髪の少女が2人くつろいでいた。

 金髪の少女がアリサ、茶髪の少女が先の介入でも会ったなのはだ。

 

「おはようすずか、お邪魔してるわ」

 

「おはよう、そっちの子は誰?」

 

 2人の視線がこちらに向く。

 京は咄嗟に顔を背ける。

 

「少し前から仲良くなった子で京くんっていうの」

 

「…京だ。」

 

「…もう!」

 

 いつものようなそっけない態度にすずかが抗議する。

 京も本当はもう少し気が利いたことを言いたかったが本当に久しぶりのすずか以外との会話だったのでやや困惑気味だったのだ。

 

「ふ〜ん、すずかに男の子の友達がいるなんて意外ね?」

 

 こちらを値踏みするような目を向けるアリサ、正直居心地が悪い。

 

「もっと早く紹介して欲しかったよ、高町なのはです。よろしくね」

 

「アリサ・バニングスよ、ヨロシク」

 

「…よろしく」

 

 自己紹介を終え庭先で高そうな菓子を食べながら話に華を咲かせる。

 段々と打ち解けていき京もポツポツと喋っていた。

 

「ねぇねぇ、京くんとはどこで知り合ったの?」

 

「衝撃的な出会いだった。」

 

「ほぇ?」

 

 京が何気なく答える。

 それを慌てて取り繕うようにすずかが言う。

 

「え…えと、知らない人に襲われ(誘拐され)そうになったときに助けて(皆殺しにして)くれて、お礼に家に招待(拉致)したときに仲良くなったの」

 

 事実をオブラートに優しさで誤魔化しつつ説明していく。

 

「へ~、やるじゃない」

 

 アリサの京への視線が幾分か柔らかくなった気がした。

 すずかに一年半も自分達が知らない友達がいることに、しかも男だということに興味津々である。

 質問が絶えない。

 

「ねぇ、京はどこに住んでいるの?」

 

「○○丁のマンション(自家製)に住んでる」

 

 さらりと嘘を交えて答えていく。

 その時、アリサの目が一瞬光った。

 

「へぇ…、もしかしてすずかが毎日何かと理由付けてどこか行ってるのかと思ってたけど京の家に行ってたりする?」

 

「ちっ、違うよ!?」

 

 バレバレだった。

 すずかは嘘は苦手なようだ。

 

「仲がいいんだ?」

 

 からかい甲斐のある事を知ったようにアリサはニヤリと笑った。

 

「ほぇ〜」

 

 よくわからないリアクションのなのは

 

「………」

 

 真っ赤な顔のすずか。

 そしてポリポリと出されていた菓子を次々に口に運びつつスルーを決め込む京だった。

 和気藹々と過ごす。

 するとその時、突然なのはがびくりと反応した。

 なのはの肩に留まっていたフェレットが森の向こうに走り出していった。

 

「…」

 

 それをじっと京は見つめる。

 始まったかと。

 ジュエルシードが現れたのだろう。

 断った理由はこれが一番の理由だった。

 しかし京が折れてしまい、自分から出向いて何とかするという方法が取れなくなった。

 しかし京は焦らず紅茶を啜る。

 既に手は打ってある。

 後は仕込が上手くいくか見守るだけ

 

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

 

 なのはがいなくなり3人でのお茶会になる。

 アリサのからかい過ぎですずかが涙目になっている一方なのは達は…

 

「あなたは何でジュエルシードを取ろうとしているの!お話を聞かせて!」

 

 金髪の少女フェイトと熱い戦いを繰り広げていた。

 だが見たところなのはの方が不利になっているように見える。

年季の差だろう、幾分かフェイトの方が上手だ。

 

「それでね…」

 

 アリサとすずかの話に相槌をつきつつ、なのは視点で観戦している京。

 何故なのはの視点をジャックしているかというと前回木の暴走体をキノコ化した時、なのはとユーノにも魔法の煙は当たっていたのだ。

 先の戦いで得た京の新たな能力、何もかもをキノコにする魔法の力だ。

 その能力はただ煙に触れた全てをキノコに変えるだけではない。

 煙に当たった相手はいつでも現在位置を補足出来るようになる。

 また、視界も使えるようになるのだ。

 そしてキノコマンというキノコでできた化け物を宿主の魔力を媒介に出せるが大怪我は確実のためやる気はない。

 

 暫く観戦しているとなのははフェイトに敗れ気絶してしまう。

 実際よくやった方だと思う。

 魔法を覚え、たった少しの期間であれだけ戦えるだけ恐ろしいくらいだ。

 そしてフェイトは暴走体を沈静化しジュエルシードを封印しフェイトの手に持つバルディッシュに収納しようとする。

 完全に油断しきっていた。

 今が好機。

 そして周りの木々が突如として蠢きだしフェイトを襲い拘束した。

 

「ぇっ!?」

 

「フェイト!!」

 

 主の危機にアルフが助けようと動き出す。

 だがそれはさせないと標的をアルフに変更し再び襲い掛かった。

 

「鬱陶しい!」

 

 獣形態に変わり襲い掛かる植物達を切り裂き噛み千切るアルフ。

 だがここはちょっとした広さの林の中だ。

 辺りは緑で広がっている。

 つまり京の独擅場だ。

 襲い掛かる植物達は勢いを衰えさせるどころか急成長し、以前より増して攻勢を仕掛けてくる。

 

「クソっ、なんなんだ一体!」

 

 アルフはこの現状に訳がわからず動揺していた。

 

 現在の光景を眺めながら京はほくそ笑んだ。

 頃合だと次の手を講じる。

 

拘束する支配者(バインドドミネーター)

 

 近くのすずか達に聞こえないように告げる。

 その時、倒れ伏すなのはの背後から拘束する支配者が姿を現した。

 

「命じる」

 

 拘束する支配者が杭を構えた。

 

「こちらに来い」

 

 拘束する支配者から杭が放たれる。

 対象はジュエルシードだ。

 杭はジュエルシードに突き刺さり、命令を実行する。

 ジュエルシードは宙を浮き真っ直ぐ京に向かって飛び立った。

 

「ぁっ!」

 

 フェイトが消えていくジュエルシードに手を伸ばすがそれは届かず空を切った。

 ジュエルシードが京に向かって飛ぶ。

 そして京はそれを後ろ手にキャッチした。

 そしてそのまま手の平にジュエルシードを持ったまま口に手を当てた。

 

「ハァ」

 

 薄く煙を吐く。

 そしてジュエルシードがキノコと化すまでそう時間は掛からなかった。

 

「どうしたの?」

 

 京の行動を疑問に思ったのかすずかが聞いてくる。

 

「なんでもないよ」

 

 笑って誤魔化す。

 そしてキノコを握り潰し地面に粉々となったジュエルシードだったものを捨てたのだった。

 目的は終了しフェイト達を解放する。

 呆気にとられるフェイトだったがすぐに持ち直しジュエルシードの反応を追おうとするが反応がないことに肩を落とし帰還していった。

 

「ちょっとなのは見てくるよ」

 

 あとはなのはを回収して終わりだと立ち上がり探しに行く。

 その後、気絶したなのはを見つけ少しばかり騒ぎになったがどうでもいいことだ。

 そしてちょっと姦しいお茶会も終わり帰路につくことになった。

 

「楽しかったでしょ?」

 

「…まぁまぁ」

 

 京はそっけなく答えるが楽しそうに見えた。

 それをすずかは黙って見送る。

 

「そっか」

 

「…ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 介入は忍び込んでやろうと思っていただけに予想外だったが本当に楽しかった。

 本当にすずかには感謝してもし足りない。

 

 ふと気配を感じ目を向ける。

 だがそこには何もなかった。

 

「…」

 

 気になるのは最近不振妙な気配をいたるところで感じることだ。

 気配が薄過ぎて正確に把握できないのが口惜しい。

 アレトゥーサにすずか周辺の警戒を強める命令を下し帰路に着くのだった。




今回は能力追加は特にないです。
これから先怒涛の勢いで増えていくのでお楽しみに

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