「ク、ハハ」
京は哂う。面白いくらいに事が進んだ。
この世界の地球がどの程度科学技術が進んできるかはわからなかったが京都と比べると明らかに異常だった。京の思う限りでは京の認識である現代と言って差し支えないはずで、それと比べてもこの学園は異常だった。
みればこちらを監視していた輩もいた様だし、良い目晦ましになった。
僥倖である。
「さて、どこからいきますか」
楽しい楽しい散策の開始だ。
どこから行こうかと思案する。候補は既にあった。
図書館島、何故皆疑問に思わないのか不思議なレベルの異様な場所だ。疑問に思わせない結界押して知るべしである。
何もないということはないだろう。無ければ詐欺だ。
そして、個人的に気になる場所。
それは
「学園といったら地下でしょう」
学園都市「麻帆良学園」、京は別に学園都市という存在を知っている。多足が付いて移動するという巨大な学園だ。大抵地下に何かある。調べれば電子精霊くらい出てくるかもしれない。
京の勘としては、地下になにかがあると踏んだ。
行動指針を決めると同時に京は駆ける。
誰かにとっては最悪の状況になりつつあるのだった。
………………
…………
……
「ほんとにあったよ」
地下が。
明かりが全く無い漆黒の世界、学園の地下を京は見つけてしまったのだ。
あまり当てにならない自分の勘だがまさか本当にあるとはと思う。
見つけられたのも一重に多数の索敵能力のお陰、神の目によって得られた電子情報と意識圏によって得られる周辺の詳細情報の為である。
京は辺りを見回した。
西洋風の若干古風な町並みと近代的な建物が混ざり合ったような地上とは違い、古ぼけた遺跡のような場所だった。遺跡などはあまり見たことがない京だがそれが相当に昔のものであるのは察しがつく。
通路は一直線、暗闇の中でも京の目の1つ、神の目は多数のセンサーを持つが故に暗闇でも鮮明に見ることができた。
あまり長居をするわけにはいかない。故にどこか触りだけでも物的なものか、誰か人物と会っておきたい。
「……っと」
物珍しそうに歩いていると突き当たりに辿り着く。
どこまで進んだのか、どんなものも見逃さないと周りを注意深く探していただけにどれほどまでに深く進んでしまったのかわからなかった。
突き当たりには扉があった。それも古い石でできたような扉ではなく、のっぺりとした半球体状の扉で薄っすらと縦に割れている。
「ふぅん」
上から下まで舐めるように眺めた。
どう見ても場違いな扉で、これから先にはなにかあるのだろう。
眺める京は扉のある一点に目を向ける。
一瞬、京の目が赤く光った。すると独りでに扉は開く。
「へ、ちょろい」
壊すまでも無い。本来のこの目の使い方はこれだ。
余裕綽々だと笑いながら扉の奥へと入っていく、そこには京の探究心を満たすものが広がっていた。
大量のロボット、どこかターミネーターを連想させる男型のロボットが数百、更に多足の戦車のような巨大なロボットも多数鎮座している。それらが綺麗に整列された広い空間、それが京の目の前に広がっていた。戦争でも始めようかというほどに迫力がある。
面白い、京の笑みは更に深くなった。
「ハ……、いいなぁ、これ」
こういうものを自分は探していたのだ。
地下のこれが果たしてなにを意味しているのか、防衛システムなどというのであれば既に敵である京と遭遇しているはずでこんないかにもな場所にあるということは秘匿されている類のもので、要はこれは京好みの物だ。
これを使って行われることに京はとても興味がある。
どうしようか、京は思案を始めた。
とりあえずこの辺りの機械から総当りを始めて面白そうなものが無いか探ってみるか、秘匿されているロボットならば今ここで地上の観客に披露してやってもいい。更に京が動きやすくなるだけだ。
そこにカタと足音が響いた。
とても小さな足音だった。普段なら聞き逃してもおかしくないほどに小さな、些細な音だった。
それを京が聞き逃すはずが無い。
「!」
京の行動は早かった。音の発信源に即座に襲い掛かる。
「問答無用か、少しは遠慮して欲しいネ!」
それに応戦しようと目の前の少々中国訛りの少女は構えようとしたが
容赦なく右手のガトリングが火を噴いた。
「わ! ちょっ! 待っ」
何もさせる気は無い。もう戦闘などで時間を取る気は微塵も無い。
ガトリングの牽制という名の猛攻、更に接近した瞬間、意思圏を少女を内に入れる形で閉じ込めた。
そして、逃げられなくした状態で更に肉薄、左手のレールガンが少女の額に照準された。
「こんばんわ」
「…………你好」
「俺は京、君の名前が知りたいな」
「結構有名なつもりだったのだが……、超鈴音ヨ。ただのいたいけな中学生ネ」
「あぁ、そう」
どこに銃口を向けられて平然としている中学生女子がいるのか、そこを突っ込む気は起こらなかった。
目の前の少女は真っ直ぐに京を見据え、その瞳がぶれる事は全くなかった。
この類の目は見たことが数多くある。決意とか何やら重そうなものを宿した目だ。自分とは無縁のものである。
「ちょっと聞きたいことがあってさ、悪いけど少し質問いいかな」
目の前の状況が拒否を許さないと語っているがそれでも京は問いを投げる。
「……あぁ、何なりと聞くがいいネ」
京の問いに鈴音は快く笑って答えた。
それが素直になったとは京はどうしても思えない。だがそれを確かめる術は今の京は失っているし、それに突っかかる気にもなれなかった。
「1つ目、あれ何かな?」
クイと空いた右手の親指で京の背後に広がるロボット軍団を指差す。
まずそれから、あれが何なのかそれから話は始まるのだ。
「T-ANK-α3、新型ロボット兵器ネ」
「それじゃ、あのでかいのは?」
「BUCHIANA、硬い装甲がウリの自信作ヨ」
「ふぅん……」
鈴音の説明を聞きながら横目でロボット軍団を見る。
自信作ということはあれは目の前の少女が作り出したということだろうか、驚くことは無い。年齢に見合わない化物というのは数多く見てきた。
「本題だ。それを使って何をする?」
そして、核心を問うた。
目の前の少女は、ニヤリと笑って答える。
「アナタと同じヨ」
「……何?」
その答えに一瞬京は目を見開く。予想外に過ぎる答えに京は困惑した。
それがどういう意味かわからないわけではない。だがそれが予想外だったのは確かだった。
「……」
京はそれ以上の問いに窮した。
とんだ地雷を踏んでしまった気分だ。
「そろそろその物騒な物を下ろして欲しいネ。そんな物を向けられたままではおちおち話もできないヨ」
鈴音の言葉に京はゆっくりと左手のレールガンを下ろした。同時に2人を囲んでいた意識圏も解かれる。
鈴音は内心ほくそ笑んでいた。
この状況が何を物語っているのか、それは今まさに対等の立場になったということである。
突然進入してきてた時は終ったと思った。だが諦めなかった。これが今を作り出している。
あちらはこちらを知らない。だがこちらには数少ないものの目の前の男の情報とそれから推察できるものがあった。
今まで行われていたのはただの脅迫に近い問いだ。これを交渉にもっていけるなら鈴音にはまだ挽回の余地がある。
そして、かました鈴音の当てずっぽうに近い答えは京に直撃し、一瞬動揺が見えた。
鈴音の推測はある種正解に近いということで間違いない。
これで京の関心はロボット軍団ではなく、自分に向いた。
これからが正念場である。
「お前は、何だ?」
かつて言われてきた言葉をまさか京自身が言うときがくるとは思わなかった。
思えば自分と同じ存在がいる可能性など露ほども考えたことが無かったのである。
「私は火星人、100年先の未来からやってきた人間ヨ」
「……なるほど」
突飛もない発言も京にはすんなりと受け入れられた。これくらいで動揺するほど馬鹿げたものには遭遇していない。
だが京の思っていたことは気鬱だったようだ。同じ存在ではなかった。それにホッとしたし、そして違う感情も抱いた。
「やはり、驚かないネ」
ボソリと嘆かれた言葉は京には聞こえなかった。
そして、鈴音がいった目的、それが自分と同じだと言った。目の前の少女は未来からやってきた未来人だという。となれば相場は決まっている。過去改変、それは意味合いは違ってもやっていることは定まった道を別方向に持っていくという点においては京と同じである。
なるほど、とこちらのことを良く調べているのか当たりをつけているのか、どちらにせよ核心に迫っていると理解した。
「そう言うアナタは同じかな?」
「凡そ間違ってはいない」
初めて行われた鈴音の問いに京は濁しながらも答える。
質問しそれを答えるだけの関係が崩れた。それがどういうことなのか京は理解できてい。
「お前はこれから何を変える?」
「私はあの悲劇を変えたいネ。その為に布石を打たせてもらうヨ」
ここにきて、決定的な答えが転がってきた。
結末とは京が最も知りたいことである。それがわからない為に前の世界でも散々後手に周ってきたのだ。
これから何が起こるかわかるのなら、やりようはいくらでもある。
聞きたい。聞き出したい。
京は再び左手の銃口を鈴音に向けた。
「あの悲劇とは?」
「……どういうことかな?」
そこで初めて鈴音が顔を顰めた。食いつくところが違う、と。
同時にある答えが彼女の中で浮かび、一笑した。
こちらの動揺、努めて隠していても鈴音には手に取るようにわかり、同時に薄ら笑いを浮かべ始めた。それは相手に対するものではなく自分に対して、自嘲だった。
「答えろ」
「随分と熱心ネ。目の色が変わったヨ?」
「御託はいいんだけどな」
鈴音の問いを撥ね退け、京はより威圧的に再度問いを投げた。
しかし、そんな威圧も飄々と受け流し、鈴音の笑みは深くなる。
「アナタのことがわからなくなってきたヨ」
「いい加減にして欲しいのだけどね」
「2つだけ聞きたいね。それに答えてくれればこちらも全て話すヨ」
本来、この質問など一笑してしまえばよい。だが飢えた獣の前に餌を差し出したの如く、京の目の前には特大の餌が転がっている。そこに慎重に事を運ぶという余地は無かった。
「……なんだ?」
それに京は食いつく。
薄ら笑いを浮かべ始めていた鈴音は笑みを消し、一層真剣な顔付きになった。そして、軽く息を吸い、告げる。
「本当に私の動機がわからないというのか? 10年後に起こる災厄を知らないと」
「知らない」
「最後ヨ。私とアナタは同類か?」
「そうさ」
鈴音はわかってしまった。京という存在がどういったものか確信を持った。
京の言っていることは嘘ではない、根拠はないが確信を持ててしまう。
「ハハ、これは冗談みたいな話ネ。最悪ネ。こんなものどうしようもないヨ」
今まで推察とか推測していた自分が馬鹿みたいだと自分を笑う。
これはもうどうしようもない。降って沸いたような突然の事故とでも言おうか、鈴音では、事前も何もこれは防ぎように無い。そういうものだ。
鈴音はわかってしまった。
つまり、こいつは、目の前の奇妙な男は、"イレギュラーか同類か"ではなく"イレギュラーで同類"なのだ。
例えるならどこからともなくやってきた侵略者、例外なく害意を与える余所者、通り魔という奴だ。
未来を知らないのだという。だが過去を変えるのだという。既に破綻している。そして、そうなるべくなるように理由無く、動機無く、そうなるであろう事を壊しに掛かってきている。ただ一点、過去改変という漠然過ぎる目的を持ってこいつは動いている。
機械の様な奴だ、そう鈴音は思った。
こちらとしてはいい迷惑、最悪だといっていい。
何故ならもう、この目の前の得体の知れない化物に目を付けられたから、餌をチラつかせてしまったからだ。
「さぁ、こちらに質問に答えてもらうよ」
幸いだったのは、京に交渉能力がなかったこと、鈴音ならば「あの悲劇」に対する質問をせず、あたかも知ってるいるように振る舞い、他の質問から外堀を埋めるようにそれを聞き出すべく動いた。
あちらは力関係が優勢とあってこちらに対する警戒も薄かったのだろう。それも現状に味方した。
ここまで着て、鈴音は京よりも上の立場に着たと言っていい。
「……嫌だネ」
それは拒絶の意を持って答えられた。
左手の砲が火を噴く、それは鈴音の脇を通り過ぎ轟音を発しながら着弾した。
「俺は舐められているのかね、それともお前が立場をわかっていないだけなのかな」
今の力関係は京が遥かに上である。もう聞くことはないと殺す気でいけば瞬く間に終らせられる。
そういう力関係だ。
だが、違う。
「その言葉そのまま返させてもらうヨ」
これは、この一連のやり取りはただの問答ではない。ある種の勝負だ。
互いのやり取りから相手の出方、考え、メリットデメリットを読み取り、上手に出ようとする。そんな腹芸である。
京としてはそんなつもりは微塵も無い。ただ力尽くで聞き出そうとしていただけに過ぎない。だがその相手は違う。敵の情報を持った上でこちらの土俵に引き吊り込もうと相手の一挙手一投足を量り、反撃を待っていたのだ。
「私の予想した存在とは少々違うようだが、そこは問題なさそうネ」
もう京が何者かという問題は捨て置いていい。ある程度の想像はできるが、それはもう妄想の範疇に入ってしまう。
何をしようとしているのか、何を求めているのか、それだけわかればあとはどうにでもなる。
自分が持つ未来の情報を京はどこまでも欲している。ならばもうこちらに手出しなどできよう筈がない。見ればこの男は非情ではない。先の連戦での言動をみればそれも一目瞭然だ。匙加減一つで危ないが、無理に聞き出すための拷問などはないだろう。
貴重な情報源に酷い手出しはできない。故にこちらからはもう1度アクションを起こすことができる。
「そう怖い顔しないで欲しい。少し保留させて欲しいだけヨ」
「……」
京の目が細く歪み始めた。
しかたない、そう一人呟き始め右手の甲に取り付けられた刃核がジジと音を発し始める。
京が行動を開始する前に、鈴音は切り出した。
「続けるネ。私の目的は過去改変、アナタの背後にあるロボット軍団もその布石、麻帆良祭で私は世界樹の魔力を用いた全世界規模の「強制認識魔法」を発動させるネ。これを以って私の目的が達成される」
「それを俺に話していいのか?」
できうる限りの情報を京に開示する。要所だけを語らず、これ以上の刺激を与えないように誠意を見せなければならない。
話していいかと言われれば、そんなわけがない。これで鈴音は後戻りができなくなった。
だが既に手遅れなのだ。京が麻帆良に現れた時点で鈴音は既に対処のし様がなかったのだから、こちらの相手にならない敵であって、更にこちらの中核に潜り込まれた時点で詰んでいる。
この一連のやり取りも最後の最後で首の皮一枚繋ごうと足掻く行為に過ぎない。
「とても危ないネ。私は1つ、アナタと交渉したいヨ。私に協力しないか? 報酬はこの先起こるであろう全ての未来情報ヨ、何より私とアナタの目的は同じはず」
これが鈴音の最大限、信用など鼻からしない。だから自分の手元に終始手元に、目の届く範囲に置いておきたい。
「断る。今俺の問いを跳ね除けたお前を信用しろとでも言うのか?」
「当然の判断ネ。だからこれを使うヨ」
そう言って鈴音はどこからともなく懐からある物を取り出した。
それは大鷲を模った天秤、それを見ても京は首を傾げるだけだった。
「これは鵬法璽、契約した者の言葉を絶対尊守させる魔道具ね、激レアヨ」
「そんなもの使っていいのか?」
「家で埃被ってた代物ね。問題ないヨ」
ネギの代から家にあった封印級の魔法具、何故そんなものが家になったのかは自分の先祖の破天荒な人生を見れば1つや2つと納得もする。
「それが偽物でないという保障は?」
「これは私から出せる最大限の誠意ネ。それを疑われるともうどうしようもないヨ。ただ私の計画はそれが終っても世界で混乱が起こるネ。それをできる限り調整したい私はアナタを裏切って敵に回してまで騙そうとは思わないネ」
「……いいだろう」
「決まりネ」
よし、と内心で鈴音は拳を握った。
これで計画が事前に破綻することはなくなった。
「コード┃|||┃┃┃|¦¦┃||||¦¦¦|、呪文回路開放封印解除」
突然鈴音は言葉にならない言語を発すると共に全身が白く発光しだした。
これは魔力だと、京は瞬時に察知する。
「なんの真似だ?」
ガチャリと両手の銃口が鈴音に照準された。
契約が纏まったところで何のつもりなのかと
「待って欲しい。この魔法具は普通の人間には扱えないレベルの代物、使えるように自分に小細工しないと私には使えないのヨ」
平然とそう語る鈴音の額に汗が滲んでいるのを見て、京はそれ以上の追求をしなかった。
そして、同時に鵬法璽が使用され、「計画終了時にその成功失敗に問わず未来の情報を開示する」という契約が為された。
「なんだかなぁ……」
ボソリと京は呟いて、空を仰いだ。そこには灰色の天井が広がっていた。
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
「なんだかなぁ……」
吉報と面倒事が同時にやってきた気がする。
結果としては最良だと思う。なんだかんだで京としては大きな前進であった。
だが今にして思えば上手いこと丸め込まれてしまった気がする。
「しょうがない」
そう割り切るしかなかった。
京は馬鹿ではないし愚かでもない。頭の回転も早い方だ。だがそれは消して凡人の域からは出ないもので、結局のところ自分は力だけが取り得の化物なのだ。
今にして思えばあそこはああすればよかっただとか、こう切り返すべきだったとか後悔すれば腐るほど出てくる。あの場でその判断ができないだけこれは自分の限界だ。
京は元来た道を駆け戻りながらそう結論を出して、これからのことを思う。
「さて、どうしたものか」
どうやって自分が麻帆良祭に行こうというものだった。
なんだかんだで京は魔法世界の住人である。そして、これから本拠地に戻り、フェイトに報告をするのだ。
そこで自分はどう切り出すべきか、どう取り繕って麻帆良に行こうか考えなければならない。
麻帆良進入の手引きや、そこからの行動などは鈴音がするという。それは既に決着がついていた。
憂鬱だ。
頭を悩ましながら自分が起こした学園に響く喧騒を尻目に夜を駆けた。
そんな時だった。
「アハ、アハハハハハハハハ!!」
忘れてた奴の声がした。
「……ぁー」
目の前の建物が1つ倒壊した。
何をしているんだと見てみれば、肌は黒く、なにやら黒いオーラを発した月詠が黒い刀を携えて狂乱している。
まさか今の今まで暴れていたのかと感心すればいいのか呆れればいいのかわからなかった。
明らかに暴走している。
周囲に倒れ付す敵がいる。丁度全ての敵を倒し終わったところのようだった。
「斬り甲斐ありそうな人発見ですー」
「はぁ……」
今度はこちらに襲い掛かってきた月詠に溜息を漏らしながら京は構える。
右手のガトリングが火を噴きながら銃弾が月詠に殺到する。
「神鳴流に飛び道具は効きまへんえー」
毎秒6000発という化物染みた弾幕の嵐、それを月詠は右手の黒刀と左手の小太刀でそれを全ていなした。
以前見たときはあれほど動けていたか、あれほど強かったかと思い。その原因はおそらく右手に握る一際黒いオーラを発した刀なのだろうと察しをつける。
月詠は深く笑みを深める。
だが京は呆れたように再び溜息をついた。
「でも足は止まるだろ?」
狂乱しているくせに小手先の技など無駄だ。
京の必殺のパターンから月詠も抜け出せはしない。
いくら弾幕の嵐を耐えようと足が止まってはどうしようもない。京を上回るなら弾幕を弾きながら接近する程度はしなければならない。
そうでもしなければ左の一撃に耐えられないからだ。
「作戦は終わりだよ」
瞬間、轟音と共にレールガンが火を噴いた。
直弾地点に月詠の刀が添えられ、切裂こうと振るわれるが残念ながら威力が違う。音速を遥かに超える速度の弾丸に刀を合わせたのは賞賛に値するがそれまで、とてつもない威力の弾丸に刀は弾かれ、その衝撃で月詠は後方に吹き飛び地面に沈んだ。
京は終わったと月詠の傍による
「おい、起きろ」
「ぁ、ンン……」
しゃがみこみ肩を揺さぶる。唸り声が聞こえるがそれを無視して更に強く揺さぶった。
「ぁ、京はん。おはようございます~」
「あぁ、うん、おはよう」
能天気に発せられた挨拶に京はつい返してしまう。
そして、それどころではないと立ち上がった。
「作戦は終ったよ。さっさと帰還しよう」
「そうですかー、了解ですえ~」
ニカリと朗らかに笑って月詠は立ち上がり、京に並んだ。
共に学園の外の最短ルートを通りながら駆ける。
「いや~、助かりましたわぁ」
そう切り出したのは月詠だった。
一体何なのかと京は目を向ける。
「ちょっと飲まれてしまって、危なかったですから」
「あの刀が原因?」
「はい~、京都から出て行くときに拝借しまして~、使いこなせるように修行中なのですよ」
なるほど、と京は納得する。
この襲撃も相手に知られていたものだったのだ。当然月詠にも敵は多数行っただろう。それを切り抜けるには少々キツく、未熟な切り札を切ってしまったといったところだろうか、京が月詠回収を後回しにしたのも悪かったかもしれない。
なんだかんだで自分にも否がありそうなのでそれ以上の追求を京はしなかった。
「ぁ、あそこですえ~」
ようやく学園の外に出ようとしたところで月詠が指を指した。
そこには見知った白髪の少年が見える。
「やぁ、久しぶり」
「……」
そういえば見捨てられたのだったかと思い出し苦い顔をする。
「ご苦労様」
そういうフェイトの顔にはなんの感情も浮かんでいなかった。
そんな上司だったと思いながら京は溜息をつく。
同時に地面に魔法陣が浮かび、3人は地面に沈んでいく、転移魔法だ。
最後に京は振り返り、学園を見た。
まだ夜になったばかりと言ってよさそうな光景が、かき回した跡が見える。
そして、最後に声を掛けた。
「それじゃ、また」
また戻ってくると声を掛けて、声の主は学園から消えた。
と、学園襲撃編おしまいです。
ここまで長くなろうとは思いませんでしたが無事終りました。
次回幕間を挟み、学園祭編に入ります。
乞うご期待ください。
以前20話前後の中篇と書きましたが、どう考えても20話で収まる気がしないので未定となります。
申し訳ない…。