とある一幕。
「いいか若造、私達の本来の強みは不老、この一点にあると言っていい」
「あぁ、うん、そうなんだ?」
エヴァンジェリンはそう若干偉そうに講釈を垂れた。
それに京は適当な相槌を打つ。
「ぁ、貴様ちゃんと聞いてないな!」
「聞いてる、ちゃんと聞いてるって」
ゲシゲシと蹴られながら、京は宥めようと必至に取り繕った。自分は一体何をやっているのだろうかと一瞬脳裏を過ぎる。
目の前の幼女は酔っ払っていた。高そうな包装の酒瓶をラッパ飲みしながらほのかに顔も赤くなっている。
エヴァンジェリンとの契約が成ったその翌日の夜、付き合えと呼ばれた果てがこれだった。自分がいかに偉大ですごい魔法使いかという話から始まり、その一通りが終ると今度は矛先が京に向き説教染みた講義が始まったのだった。
甲斐甲斐しくつまみを運ぶ茶々丸は京都の一件以来ご機嫌ですねと微笑んでいたのは余談である。
「なに、ちゃんした先人の教えという奴だ。お前は何だかんだで自覚がないようだからな」
そう言ってニヤリと笑うエヴァンジェリンだが酔っ払いに威厳もへったくれもなかった。
京は酒の席でもあるこの場、話半分に聞いてやろうと黙って先を促すように耳を傾ける。
「私やお前のように最初から規格外のポテンシャルを持っていてもたかが知れている。世の中力押しでどうにかなるほど甘くはない」
「それは、まぁ」
「ドラゴンが生まれてから既に最強なわけではないように私達にも同じことが言えるわけだ。どんな力にも裏を掻かれる隙がある。それを埋められるのが経験という奴だ。私達の強みとは永遠に積み重ねられる経験にある」
一理あると京は思う。
経験がいかに大事かというのは身に染みている。今でこそまともに動けているが昔では強かな相手や熟練者相手には裏を掻かれたことなど1度や2度では済まないほどだ。
正直に白状すればまだ足りない。幾重もの戦闘、様々な相手に様々な戦法、能力で戦ってきたがそれでも京は経験不足である。
今の京は多数の能力による圧倒、所謂初見殺しの奇襲攻撃の連続、そして相手の弱点を突く能力を即時追加することによってそれをカバーしているに過ぎない。もうそれが一種の戦法、自身の常套手段と化している為強みではあるのだがいざという時に足元を掬われてしまう。過去の敗北の記録がそれである。
もしそれが改善されたとき、もうそれはどうしようもないほどに強くなるだろう。
嘗ての能力を失ってもそれを使った記憶、経験は生きている。この先、遥か未来では弱点も隙も全てを克服した化物が生まれるのかもしれない。
「わかるよ。それが若輩の俺に足りてないってことも理解してる」
「いや、お前は理解していないよ」
それを身をもって知っている京はエヴァンジェリンに賛同するがそれは彼女自身によって跳ね除けられた。
「ほんの短い一時だが薄々とわかることもある。お前は割りと恵まれている方なんだろう、庇護者でもいたかは知らんがそれはお前自身の一部を停滞させている」
「……」
それは確かだった。
どれもが京に協力者、庇護者がいて、助けられながら好き勝手に動くことができた。
今はどうだろうか、完全なる世界の者達は仲間であっても協力者でもなければ庇護者でもない。京が利用しようとして、その戦力を見込まれて認められてという上下の差はあれど相互関係である。
エヴァンジェリンが言いたいことが何となくわかってきた。
「そう、私達には無限に積み重ねられる経験がある。相手に対処するための戦法、意表を突かれない戦闘勘、そういうものが養われる。が、それだけじゃない。経験が必要なものは戦闘だけではない。自身の立ち回り、生き方、それは私達化物にとって最も必要なものだ」
「それがないってことか」
「あぁ、全く、落第点だ。私たちは異物で、排除されるべき存在なんだよ。それを生き抜ける者が強者だ」
普通に生きるという事は許されないこの身、そして自分の目的を達成するためには、確固たる地盤を築き、時には戦闘以外での攻防を制し、生き抜かなければいけない。
化物は老獪でなくてはならない。そうでなくては討伐されるドラゴンと同じ末路を辿るのみだ。
それを語るエヴァンジェリンは600年もの時を生きているのだという。それは京の行動時間を遥かに越え、想像を絶するような経験をしてきたのだろう。故に彼女はあらゆる面において造詣が深い。
最強の魔女はこの永い時があればこその姿だと物語っていた。
「お前は元々1つの組織の下で動けるような奴じゃないだろ? どうせ隠れ蓑にしたいのか利用したいのか、その組織の目的自体はどうでもいいと思っているんじゃないか?」
「ぐっ……」
図星だった。隠れ蓑にもしたいし、情報が得られるまで利用するつもりだった。目的を手伝う気は恩返しという建前があるものの本心でもある。しかし、それを二の次三の次にする程度には優先度は低い。
「忠告しておいてやろう。お前のその組織にいる理由が解決したら、とっとと離脱した方がいい」
「それはあんたが決めることじゃない。俺がその時決めることだよ」
「あぁ、その通りだ。だから忠告した。上手く立ち回っているつもりでも、ボロが出るぞ。致命的なボロが出る前に消えた方がお前の為になる」
エヴァンジェリンの言葉は胸に刺さるものがいくつもあった。上手く立ち回ったのは最初だけだ。京都襲撃の一件から京はボロが出ている。元より自身の目的と両立させること自体が難しいのだ。そして、独自に、勝手に動く京は組織的行動とはあまり合わない。
彼女の言うことも尤もではあった。
「肝に銘じておくよ」
いつのまにか真剣な話になってしまった。酒の席なのにあまりに硬すぎる話だった。それも勢い余ってエヴァンジェリンから出てきただけだったのか、本当に京を慮っての忠告なのかはわからない。
きっとこの忠告は大事だ。
「ありがとう」
京は素直に薄く笑って礼を言った。
思えば自分の為に忠告などしてくれた者はいなかった。自分は結構排他的だったし、交友関係もけして広くない。
何故だか少し嬉しくなった。
「ちっ、酔いが醒めてきた」
エヴァンジェリンはそっぽを向いて空になりかけた一升瓶を呷る。まだその顔は薄っすらと赤みが差していた。
「ぁー、ぁー、年喰うと説教くさくなってイカン」
京はエヴァンジェリンの人となりの認識を改めた。傍若無人な人物かと思っていたがどこまでもお人好しで素直じゃない人なのだ。
悪の魔法使いの代表格とされる彼女の本性を知る者は限りなく少ないのだろう。
そんなお人好しな彼女が600年生きて、最強の魔法使いとしてここにいる。
敵わないなと京は思った。
「まぁなんだ、お前に簡単に死なれてはつまらん。あの時の戦いもお前はどこまでも本気ではなかったようだし、再戦もできればしたいからな」
それには私の封印が枷になるがと自分に掛けられた封印を鼻で笑った。
そう言うエヴァンジェリンの為に京は一つ礼がしたくなる。
「……アーベル-ルフィニの定理より」
後ろ手に出した数式本、ボソリと嘆くように呟かれた詠唱はエヴァンジェリンを対象にした効果を発揮させる。 悟られぬように本を閉じようとするが
「……ム、何をした?」
流石にそこまで上手くはいかないようだ。
即座に自分の変化に気付いたエヴァンジェリンはその張本人であろう京に煩わしげに目を向ける。
「なに、ちょっとしたお礼だよ。少し封印を緩めてみた」
「…………はぁ!?」
数秒の間を置いて固まったエヴァンジェリンは突如として素っ頓狂な声を上げて飛び起きた。
「ちょっと待て! するとお前は何か、私のあの忌々しい封印を解けるのか!?」
「ハハ、無理無理」
「嘘をつけ! 封印を緩めたと事は手を加えたということだろうが! 解除するより難しいわボケが!」
酒の席はどこへやら、喧騒とした場になってしまった。
しかし、当の攻められる本人はどこか楽しげでそれを笑って受け流していた。
「ええい! 契約変更だ! 今すぐ私の封印をとけ、今すぐ開放してやる!」
「いやぁ、今開放されても数日中はここに用があるから、別にいいよもう」
「お前立場忘れてるな!」
無駄に順応性の高い京はなんだかんだで幽閉生活にも慣れてきたようであった。
夜は更ける。
こうして一夜の語らいは終わりを告げるのだった。
「さっきからニヤニヤと笑いおって! 私の話を聞かんかぁっ!!」
数日後、京はエヴァンジェリンの忠告を思い知ることになる。
それが教訓になったのか、ならなかったのか、どちらにせよ京はまだまだ甘く、精進する必要があるようだった。
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「よくやった!」
「はぁ、えと、ありがとうございます?」
やっと帰ってきた本拠地、そのまま直行で報告を京は行っていた。
作戦中の経過などを報告していたところ、それを聞いていたデュミナスは満足そうに賞賛する。
しかし
「あの……、結果報告とかまだなんですけど……」
京は特にまだ何も目的の報告はしていなかった。
作戦がバレており、待ち伏せされ、これを撃退。その中にタカミチという一際強い奴がいたという経過報告中だったのだ。
「ん? あぁ、そんなのあったな」
「……おい」
心底どうでもよさそうな反応に京は思わず突っ込みを入れたくなった。
「うむ、あのタカミチに一泡吹かせたのなら僥倖、それ以上の報告はないな」
個人的な恨みでのあるのか、意外とフランクだったデュミナスの一面に呆れ半分で見つめた。
仮面の上からは表情を掴むことはできないが上機嫌であることは雰囲気から察せられて、大丈夫かこの組織とも若干の不安を覚えた。
報告が有耶無耶になりかけたところでフェイトが代わりにそれを受け持つと前に出る。
「続きを」
それに対し、京は簡潔に答えた。
神楽坂明日菜の魔法完全無効化能力の確認、エヴァンジェリン・A・K・マグダウェルに師事したことによりネギ・スプリングフィールドの成長は著しく、今後はもはや予測不可能だという事。
それにフェイトは頷いた。
「なるほど、まさかあんなところに姫御子が隠されていようとは……。流石に隠蔽には長けてるね」
「我等としてはこの段階で見つけられたのは僥倖だったな」
やっと帰ってきたデュミナスもフェイトの言葉に同調した。
彼ら、この組織の計画には彼女は重要なファクターなのか、やはり京が知らないところで色々と動いている。鈴音の情報は本当に必要なのだと改めて実感した。
「ふむ、だとすると姫御子の奪取は難しいか。あの能力は我々魔法使いには鬼門、仲間もいるならば厄介なことになりそうだ。報告に聞いた限り奴のアーティファクトは自分の能力を外部に発揮させる能力と見ていい。また面倒なものを」
神楽坂明日菜の能力は魔法使いには鬼門である。魔法による魔力攻撃は彼女に傷一つ負わせることなく、彼女の攻撃を止める手立ては限りなく少ない
そして、彼女の魔法無効化能力を外部にまで及ぼすあのハリセン型のアーティファクト、それは仲間の魔法使いとの連携においては更に厄介な存在になることだろう。
「それでも穴はあるようだけどね。魔法を付加した物理攻撃、そういう攻撃は付加魔力を消したりはできていないようだったしあまり問題はないよ」
フェイトはそう反論した。取るに足りない存在であることに代わりはないと。
彼女自身はそこまで強くはない。これからどうなるかはわからないが。
だが実際に相手をしようと思うと魔法使いで接近戦もこなせる万能型は稀である。そこまでの修行は想像を絶するものであるだろうからだ。
この組織内でも、ほぼ全員がまともにやりあえるだろうがこの先はわからないのだ。
「まぁ、僕等には君がいる。最悪彼女は君に任せることにするよ」
「……了解」
無効化能力系の弱点は無効化できない相手である。必然的に京は明日菜にとって鬼門となるのだ。魔法などほぼ使わない京は明日菜の能力を恐れる部分が全く無い。それは今までの戦闘が証明していた。
「最悪また襲撃を掛ける必要があるな。彼女の重要性を学園の奴等は理解しているだろう。自分の懐から出そうとはしまい」
京はふと気付いた。
これはチャンスではなかろうか、と。
「その役目、俺に任せては貰えないでしょうか」
2人の幹部の話し合いに今まで沈黙を貫いていた京は切り出した。
ぶっちゃけると攫う気は無い。そんな暇は無い。ただの口実だ。
こちらには明日菜誘拐の完全無視による失敗と同時に得られる未来の情報という特級の土産ができるのだ。今京が願い出た任務の失敗を打ち消してお釣りがでる程度には問題ない。
「ふむ、手筈は考えているのか?」
「はい、麻帆良祭という大々的な行事に乗じて……、今回の計画で一人協力者を得られましたので」
「ふむ……」
そう一言着いてデュミナスは黙った。どうするべきか考えているのだろう。
新参の言い出した戯言と一笑されてもおかしくはない。考えて貰えるだけ良い方向に転がっていると見るべきだ。後は一押しでも二押しでも京が粘るだけである。
しかし、ここで思わぬ助け舟が来た。
「僕はいいと思うけどね」
そうフェイトがそれを言い出したのだ。
否定はしないだろうと踏んでいたが助けてもらえるとは思っていなかった。
「正直なところ君に何が起ころうとこちらとしては痛手はないんだ。捕まるのは勘弁願いたいところだけどね。だから君一人が勝手に動くというのなら止める理由はないよ」
京は予定外に入ってきた戦力である。いなくなったところでこれからの計画に支障は出ない。成功するなら御の字、失敗しても捕まることで組織の情報が漏れるなどの問題が発生しなければ構わない。
そういう考えであった。
つまるところ下っ端だったのが幸いしたのだ。
「だが、こちらの戦力も困窮しているのは確かだ。まぁ無理のない範囲でやるがいい」
結局あっさりと了解を得られてしまった。これは巡りが良かったとしかいえないが僥倖である。
「お前の協力者というのは何者だ?」
最後に答えにくい質問がやってきた。
未来人というのは些か信じられないだろう。持ってくる未来の情報も即座に信じてもらえるとはいい難い。どちらもそれを証明するには時間経過による予知証明が必要だからだ。
「今はまだハッキリとは……、正確には彼女の計画に便乗する形で事を起こすつもりですので、私も任務時に偶然遭遇し協力を取り付けられた形なのでわからないことが多いのです。ですが我等の為になる情報を持っているのは確かです」
「ほぅ……」
「……」
何の情報もお前に開示していないのに組織の為になると断言できるのかとデュミナスは雰囲気で問うている。
それを京は沈黙で肯定した。
「まぁいい、以上だ。良い報告を待っている」
そうして胃の痛い思いで臨んだ報告は思っていたような困難な状況からではなく、どちらかといえば快く受け入れられた形になり取り越し苦労で終るのだった。
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「ふぅ……」
とりあえず一段落が着き、溜息を1つ着く。
完全に最初期からのスタートだったが終わりが見えた。これは非常に大きい。次の計画が終れば京は完全な方向性を持つことができるのだ。今までは組織の任務に乗っかりつつ密かに暴れていた訳だが目指すものがわかればそれも必要なくなる。自分の意思と行動で事を運べるようになるのだ。
やっと七面倒くさい柵から開放される。そう思うと溜息の一つも出ようものだった。
「まぁまずは目先の面倒事からかな」
そう彼女の計画だ。
彼女の計画は果たしてどうなるだろうか、成功するか、失敗するか、それが齎す結末さえわかればいい。
あぁ、でもこれはきっと
「手の出し甲斐があるんだろうねぇ」
これはおそらく分岐点だ。それほどに重要で、これから先の方向性を決められる1つの選択肢なのだ。
未来の情報、それさえあれば京は終りに向かうことができる。
しかし
これは1つの終わりにできるのではないのだろうか。
「ケハハ」
確か、協力するようなことを言ったか。
計画は彼女の悲願で、覚悟を持って挑む彼女の道。
我が身が刻むは傲慢の罪。我が手が宿すは暴虐の咎。
知ったことではない。
あぁ、どうしようか
「なーに悪そうな顔してるんですか」
ぐさりと後頭部に何かが突き刺さったような感覚を覚える。
「っつぅ~~~~~~!!?」
同時に京は頭を抱えて現れた激痛に京は頭を抱えてしゃがみこんだ。
不意打ちの激痛に若干涙目で振り返るとそこには良く知る少女達がいる。
「人が心配して待ってみれば当の本人はピンピンしてるし、とんだ取り越し苦労です」
「全くデス」
少女達の気持ちを暦が代弁し、それに京の頭をその大きな角で刺しのたであろう環が追従し、その背後にいる残りの3人も頷いた。
ちょっと考えてみれば心配されたのも無理はなかったのかもしれない。
傍から見れば偶々助けた人間が恩返しに手伝いと言い出して、いざ初任務と送り出してみれば魔法世界ではなまはげ的扱いを受けている化物に捕まり帰ってこないときた。
助けた側からすれば心配しない方がおかしい。京に下心と野心満載なのはこの際置いておく。
そして、安否が確認されたと同時に帰ってくると聞いて心配しながら待ってみればピンピンしていて、一体なんだったのだという心情と何となく察せられた。
「まぁ、なんとかなりました」
京はけして悪くない。だが状況と成り行きは悪かった。
ハハ、と笑う程度しか京はできない。それで彼女等の心労が晴れるかは違うが。
納得できないような顔をされつつ少女達は溜息を吐いた。
「私たちへの恩返しなどいいのですよ」
「探している物があるなど正直とって付けた理由にしか聞こえないです」
「あまり無理はするな」
そう言う彼女らの言葉に京は目を伏せる。
京にとって恩返しという建前そのものが取ってつけたような口実であるのだが彼女等はそこを間違えていた。
それは既に京が半ば裏切っている形なのに京自身は気付いている。
「大丈夫だから」
そう京は
薄く引き攣ったようにぎこちない笑みをした。
その笑みの意味に誰も気付くことはない。
「そういえば左腕は……」
そう誰かが気付いたように声を発した。
京の左腕の肘から下は無く、そこにはぺったりと地面に張りついた裾がある。
「中々生えなくて」
自分でも困ったなと右手で頭をかく。
頑張って腕の断面に花を咲かせるのが限界の京にはこれは当面の問題だった。
輝装時に取り付いた義手も解除した瞬間に光と消えている。
そこに調がそっと前に出て手を翳す。
グジュルと形容し難い音を発しながら木の腕が生えた。
「ぉ……、おぉ……」
それに京はハッとして新たに生えた腕を見る。
若干不出来な形ではあるがそれは正しく腕だった。形も削ればそれなりな形になる。
彼女はそういえば木精使役、植物を操れるのだと思い出した。
「次は治しませんからね」
「ありがとう」
調は少し強めの口調でそう言うと後ろに下がった。
「ふぁ、もう朝です。ちょっと寝直してきます」
「眠い」
そう言ってゾロゾロと皆帰っていく。それを最後まで京は見送ったのだった。
そして夜明けに一人、また取り残される。
京は誰もいないことを確認して、立ち上がった。
計画はもう少し先、それまではしばしの休養だ。
「ま、事の運び次第かな」
そう京は先ほどの考えを保留に回した。
そして、京もまた寝ようと自分の部屋に戻っていくのだった。
数週間後、麻帆良祭が開園する。
そこに異物が一人、紛れ込む。
鋼の心臓をチクタクと刻みながら、それは動き出す。
対するは誰か、それはまだわからない。
だが1つ、わかることがあるとすれば
回帰が近い、ということだった。
と、若干長くなりましたがここまでです。
次回、麻帆良祭編突入! 多数の能力の登場と埒外の決戦を予定してます。
乞うご期待ください。