マイナー能力者が往く異世界記   作:じろー

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第82話

「おぉ、間に合った」

 

 するりとさり気無く会場に戻ってくる。

 あまり時間も掛けずタカミチを潰し、会場に戻り見渡してみれば1回戦目の7番目、何気に余裕があったようであった。

 順当にいけば自分はこの次の次の次、2回戦目の2番目である。

 急ぎすぎたかと若干後悔する。

 更に一歩前に進もうとしたとき京の顔に翳りが差した。

 

「ムッ……」

 

 ズキリと鈍痛が脇腹に響く。

 あの戦いで一発だけ、特大の大砲を貰ってしまった。肋骨二本は粉砕されて、結構なダメージを負わされてしまった。

 だが京は特に気にした風ではない。

 これからの試合に支障が無いかといえば無いわけでない。だが特別問題視はしていなかった。痛みにはかなり耐性がある。あの一撃(スターライトブレイカー)を気合で耐え切った精神は伊達ではない。

 僅かに痛みが引いた時、ドッと会場が沸いた。

 

「ぉー?」

 

 舞台を見やれば刹那と明日菜が激闘を繰り広げている。

 前に見たよりも格段に強くなっているような気がするのは京の目の錯覚だろうか。もしそれが成長したというのならネギ並みの異常さだ。

 これは報告しておかないとなと心の片隅に留めながら、そのまま選手待合室へと戻っていく。試合内容など正直あまり興味がない。自分の仕事をするだけして、3日目が終るのを待つだけである。何事も無ければ、だが。

 待合室は誰もいなかった。試合観戦しないほど他選手に興味が薄いのも京くらいなものだろう。

 京はそこらにあった椅子に腰掛け、ホッと一息着いた。

 この次はどうしようかと少し考える。京はこの大会ではただの盛り立て役、途中で派手に負けて敗退するまでが仕事である。間違って正体不明の人物が優勝しようものならただでさえやらせっぽいのにそれに拍車が掛かってしまう。今回当たりが頃合かと、そう思う。

 そんなことを思っていると外から歓声が響いた。

 

「神楽坂選手の反則により桜咲選手の勝利です!」

 

 試合が終ったようであった。刹那の勝利によって。

 次が確かエヴァンジェリンの試合、それならすぐに終るだろう。ならば京の試合も近いということか

 そして再び沸く会場、そろそろ始まるのだろう。

 そんな時だった。

 

「こんなところにいましたか、探しましたよ」

 

 突然背後から声がした。

 気配も無く、それが声を掛けるまで全く気付けなかった。

 京はそれにゆっくりと振り返り、横目でその人物を見やる。

 そこには白ローブを着た男、フードの影で薄っすらとしか見えないがそれは微笑を浮かべこちらを観察するように見ていた。

 

「おかしいな、初対面のはずなんだけど俺に用でもあるのかな?」

 

「えぇ、少々」

 

 なんか変なのがきた。

 相手の用向きも皆目検討がつかない。

 白ローブの男、確かクウネルといったか。

 

「……」

 

「何か?」

 

 話しかけたのはあちらだというのにクウネルは切り出さず、京をジッと見ているのみだった。それに溜まらず京からその沈黙を破る。

 

「いや、キャラが被っているな、と」

 

 京は椅子からずり落ちそうになった。

 ちょこっとわかった。コイツは京の苦手な人種だ。

 若干不機嫌そうな目線をクウネルに投げる。さっさと話せと、初対面にして既に対応が悪くなりつつあった。

 

「久しぶりに会った友人をとびきりのネタで弄くってやろうと思ったんですが思いのほかリアクションが薄くてですね。その原因っぽい人に声を掛けてみた次第で」

 

「お前の性格が悪いのはよくわかった」

 

 全く全然話が見えてこない。

 京の顔もなんともいえない困り顔になりつつあった。

 クウネルはジッとフードの中を覗き込むように見つめてくる。

 

「ふむ……、なるほど」

 

 勝手に納得されても困る。

 突然出てきて、意味不明なことを言ってから勝手に納得している。こちらとしてはどう反応していいかもわからない。

 

「中々見ない人種ですね」

 

「はぁ……?」

 

「言葉通りの、人柄のことを言っているんですよ。中々いないですよ、あなたみたいな捻くれ者」

 

 今度は喧嘩を売ってきた。買えばいいのだろうか。

 

「一体なんなんだよ、もう……」

 

 だが怒りというよりは呆れが勝った。

 こちらに話しかけておいて会話する気が全く無い。

 

「キティも中々面白いものを見つけてくる。今はまだ興味があるといったところでしょうか」

 

「ん、それはエヴァンジェリンのことか?」

 

「おや、わかりましたか」

 

「なんとなく」

 

 キティという言葉から京が知る者達と関連付けて一番それっぽいのがエヴァンジェリンだった。

 あぁなんとなく、おちょくられて為すすべもなく憤慨しているエヴァンジェリンの図が容易に想像がつく。

 だが、本当に一体何をしにきたのだろうと、真意が掴めなかった。

 

「フフ、場合によっては面白くなりそうですね」

 

 完全に自己完結したクウネルを他所にもう付き合っていられないと京は席を立ち、その場を後にしようとする。

 そして最後に背に向かって一言投げかけられた。

 

「少し貴方に興味が沸きました。次の試合でお待ちしています」

 

「次があったらね」

 

 再び外で会場が沸いた。少ない会話の中でもう試合が終ったのか、エヴァンジェリンの圧勝といったところだろう。

 喧騒の中に混じり、京は消える。

 それをクウネルはどこか面白そうに笑う瞳で見送るのだった。

 

 

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 

「さて、2回戦2番目の試合はツキムラ選手対長瀬選手! 果たしてどれだけの波乱が待ち受けているのかっ!」

 

 エヴァンジェリンの後、クウネルの2回戦もあっさりと終了し、すぐに京の番が回ってきた。

 クイとフードの縁を引っ張り目深く被る。

 長身で糸目の男装の少女、長瀬楓、彼女もまた京に一手交えたことのある相手だったからだ。

 やはりというか、京を目の前にして、はて、と首を傾げる。

 

「む、貴殿どこかで会ったことはござらぬか?」

 

「ありません」

 

 流石に忘れてはくれないか、この距離だと勘でも気配でも思うところがないということはないだろう。

 京はそれに即座に否定で返し、2人は同時に構える。

 

「そうでござるか、試合間際に茶々を入れる結果になった。申し訳ない」

 

「いいよ、別に」

 

 その勘、きっと全部当たってるから

 そして、その会話から数秒後、戦闘は開始した。

 

「第十四試合、Fight!」

 

 京と楓、2人は同時に動き出していた。

 

「いざ!」

 

 楓は前に飛び出て、京は真後ろに後退する。

 先手を取ったのは京、まずは小手調べだと楓に指を向ける。

 それに反応して楓は片手を前に人差し指と中指を立て印の形を取った。

 

 

「 『跪け』 」

 

 

「――――忍」

 

 

 カッと楓の目が見開かれると同時、言葉の効果が圧し掛かった。

 だが

 

「へぇ」

 

 京は面白そうに笑う。

 その効果は楓に効果を及ぼさなかった。確かに届いた。これは耐えられたと見るべきだろう。

 やはり、種が見破られているか

 

「精神鍛錬を怠ったことはないでござる」

 

「そりゃご苦労なことで」

 

 京は一転、後退してからステップを踏み、今度は迎え撃つように前に出た。

 だが京のその行動は楓が攻勢に出るよりも僅かに遅かったようだった。

 京の周囲に現れる複数の楓の分身、それが同時に襲い掛かってきていたのだ。

 

「ちっ……」

 

 京はそこで初めて守勢に回る。

 ガードの上から楓の攻撃が入り、僅かに後方に飛ばされた。

 

「やはりこの手応えは京都の一件の御仁にござるな」

 

「バレるの早いなぁ。ま、そうだよ」

 

 距離が開いたことでお互いに停止、見合いの格好となる。

 お互いに様子見、同時に互いのことを知った事でどうするかという算段を考える時間でもあった。

 

「またここで事を起こすというなら拙者にも考えがござる」

 

 皆考えることは同じか、信用がない。敵に信用などと笑い話にもならないが。

 とりあえず、京はここで口止めをしておきたい。

 

「じゃ、こういうのはどうかな。この試合で負けたら俺は即ここから出て行くよ。ただし俺が勝てば事を起こすまで様子見に徹して貰う。とか」

 

 そこから京もまた動いた。

 襲い掛かったのは京、だが瞬時に楓はそこから消え、8人の分身が現れる。

 振るう拳は分身に触れ、空を切ると同時に掻き消えた。

 それと同時に四方八方から打撃が見舞われる。

 

「っ!」

 

 それに溜まらず、その囲いから逃れるように身を投げその場を脱する。

 

「その提案、乗ったでござる」

 

「上等」

 

 背後から声。

 正体がバレなければ派手に負けるつもりだったが負けられない戦いになった。

 こんなつまらないところで終っては堪らない。

 それに反応するように回し蹴りを京は放つが、それもまた分身、またも空を切った。

 

「あぁ、めんどくさいな。これ」

 

 京の周囲にいる楓の分身、それは8体、どれが本物なのかわからない。正確には違うか、今どこにいるか(・・・・・・・)わからない。

 これとほぼ同じ技を使う相手と戦ったことがある。サヴァリスだ。分身といっても幻覚であったり、同時に存在しているわけではない。あれはあくまで残像、超高速の同時攻撃、特殊な歩法によって成り立つ技なのだ。過去の戦い、サヴァリスが放った千人衝より規模も練度も遥かに劣るが厄介なことには変わりない。

 正直に見て、身体スペックで勝っていても一足の踏み込みの速さ、それに京はついていけていなかった。

 それに

 

「拙者にはその暗示は効かないでござるよ」

 

 それに京の手札の一部を見抜いている。

 やはりわかるか、この言葉に働く強制力を

 だが

 

「試してみるか……?」

 

 わかっていない。この暗示能力の真骨頂を。

 

 

 

 

――――ねじまきカギュー より二千恵衿沙、反偽薬効果音声(ノーシーポエコー)――――

 

 

 

 

 暗示など耐えられる者には耐えられてしまうものだ。

 固い意志、信念、鋼の心という奴に強制力は意味を為しはしない。

 だが、ほんの一瞬、刹那の間にだけ効果を及ぼすというなら、それは。

 

「よっ……と!」

 

 真後ろに跳躍。

 目の前にはこちらに直進する楓が8人。

 京は着地すると同時に地面を抉るように蹴り上げ、石礫を目の前にばら撒いた。

 一体一体が見破れないなら面攻撃で

 しかし、この石礫が如何程の威力を持つというのか

 楓はお構い無しに直進、気によって強化された体は小石如き弾くまでもないだろう。

 だから、こうする。

 

 

「 ズドンッ! 」

 

 

 効果音が辺りに響くと同時、楓の8体の分身は全て投げ出されるように後方に弾き飛ばされた。

 

「っ!」

 

 分身が消える。

 それに呼応して、京は接近、楓は腕を十字に防御の体勢を取る。

 周破衝拳(ヘルツェアハオエン)を右手に篭めて

 更に後押しを加える。

 

 

「 ドガンッ! 」

 

 

 次の瞬間、京の渾身の一撃を受けて楓は瞬く間に場外へと吹き飛んだ。

 

「おっとー! 長瀬選手が優勢かと思いきやここに着てツキムラ選手の一撃が決まったー!」

 

 二転する戦局に会場が沸いた。

 会場の観客席の天井まで吹き飛ばされ埋まっていた楓がむくりと起き上がる。

 

「いやぁ……、今のは…効いたでござるなぁ」

 

 内蔵を少しやられたのか血を吐いて、それでも悠然と立ち上がる。

 

「効いたろう?」

 

 どんなもんだと言わんばかりに京は口を吊り上げて笑った。

 

 反偽薬効果音声(ノーシーポエコー)、それは暗示効果を齎す特殊な声である。

 偽薬効果(プラシーボエフェクト)とは病は気からとも言うように良い方向に心を騙す効果。

 これはその真逆、反偽薬効果(ノーシーポエフェクト)、それは悪い方向に心に害を為す効果だ。

 こんな話を聞いたことはないだろうか

 冷凍室に閉じ込められた男が凍死した。しかし、その冷凍室に電源は入っておらず、常温だったという。その男は冷凍室に閉じ込められその事実と恐怖から凍死をいう結果を心で理解し、体にまで事実として反映させてしまったのだ。

 人は思い込みで死ねる。ならば、思い込みで体を傷つけるなど造作もないことではないだろうか。

 

「この暗示は破れない」

 

 この暗示の真骨頂とは物理戦で発揮される。

 命令などの強制力は確かに強力ではあるがそれは対象の精神力で如何様にもなってしまう。

 だから、一瞬だけ相手を暗示に掛ける。

 敵に攻撃し、当たった瞬間、効果音という名の暗示を行う。攻撃され、それが当たったという事実、それは刹那の瞬間に暗示を掛ける隙となる。効果音によって爆発的な威力という認識を後押しされ、敵は勝手に傷を負ってしまうのだ。

 全ての攻撃に威力など必要ない。刹那の間に暗示に掛かった心が勝手にダメージを体に反映させてしまうのだから。

 全ての弱攻撃が特大の強攻撃になる。それが反偽薬効果音声(ノーシーポエコー)の本領である。

 

「古菲がやられたのはその攻撃でござるか」

 

「そうとも」

 

 誰も彼もが効果音に聞こえている。

 会場でその効果音が人が発した声だというのに茶々丸とエヴァンジェリン程度しか気付いていない。

 暗示という言葉と2度にわたってこの攻撃を食らったことで楓も気付いたようだった。

 だが気付いたところでこの攻撃を防ぐ手立ては存在しない。

 全てのどんな些細な攻撃も受けず、当たらないようにしなければならないのだから相手としては厄介なことこの上ないだろう。

 瞬間的な素早さでは負けるがこと攻撃力という面において京は楓に勝っている。

 

「ここで問題の芽を摘むというのも拙者の役目にござる故、まだ終るわけにはいかないでござる」

 

「俺がいなくなったところで微塵も問題ないんだけどね。それは言っても無駄か」

 

 むしろ諸手を挙げて喜ばれるに違いない。

 楓の戦意は揺らぐことはなかった。こちらを危険な敵と認識している故に。

 未だ戦力は拮抗状態、京は楓を捉えることが難しく、楓は京を翻弄できても一撃でひっくり返される可能性がある。

 

「どうする?」

 

 それは自分に言った言葉なのか、それとも討って出る楓のこといっているのか

 それに楓は応えた。

 

「こうするでござる」

 

 楓てを前に再び印を切る。

 

「忍!」

 

 発生するのはかつてない程の分身、その数は16、先の倍だ。

 まだそれだけ出せるのかと京は呆れながら警戒を強めると同時に思案を始める。

 これはやるしかないか

 タカミチを封殺した能力の1つを開示するしかない。 

 できればあまり手の内は晒したくないのだがそう言ってもいられない状況だった。

 

「参る」

 

 次の瞬間、楓が目の前に移動していた。

 

「奴の移動術と同じかっ!」

 

 虚空瞬動、長距離に対応し、弱点であった小回りが効かない点を克服する厄介な移動術。散々タカミチに使われ苦労したものだった。

 視界には複数の影。

 既に京は楓の多重分身の囲いに囚われていた。

 

「っ!」

 

 真上からの攻撃が来たと思えば背後からも蹴りが、そこから脱しようとしてもそこに追撃が入るように待ち構えている。一対一なのに多勢に無勢、相手している京からすればやりにくいことこの上ない。

 だが、それは楓も同じ。

 

「硬いでござるな……!」

 

 16の分身にも代償があった。素早く動きすぎて一体一体の分身に掛かる力、密度が足りなくなっている。それは威力減少という形で現れていた。

 一発一発が軽い。そして京が異常に打たれ強く、硬い。

 だが分身を減らし最悪の一撃を貰う可能性を大きくしたくない。

 どちらもジリ貧、そう思った時だった。

 

「づっ!?」

 

 京のガードを掻い潜って楓の拳が脇腹に突き刺さった。

 フードの影から京の顔が歪む。

 ここで初めて京がダメージらしいダメージを負って体がくの字に折れた。

 その隙を楓は見逃さない。

 

「ふっ!」

 

 流れるように始まる連打の嵐、蹴り上げ、叩き落し、そこから一方的な展開が始まった。

 たった一人の連携攻撃、それは畳み掛けるように京を打ち据える。

 

「ガハッ!」

 

 胸倉を掴み、地面に投擲、小さなクレーターを作りながら京は地面に沈む。

 それに止めだと楓の16の分身は一斉に襲い掛かった。

 右手には自身の気を密集させた本気の一撃。それが計16体分。いくら一発が軽かろうと連続で受ければ一溜まりもない。

 そして、それを振り下ろそうとした時

 

 

 赤い3つの勾玉文様の目が楓を捉えた。

 

 

「っ!?」

 

 その場から京は今までのダメージがなかったかのように即座に動き出す。 

 右目の複眼、3つの目の内の一つは神の目、そして更にそのもう1つの目の文様が変化していた。

 

 楓の攻撃を左手で殴るように弾き

 

 虚空に向かって京は右手を振るう。

 

 ガシリと何かを掴んだ。

 

「捕まえた」

 

 京の右手が楓の顔面を掴んでいた。

 分身間の楓の軌道を完全に見切って、それは完全に破られたのだ。

 楓はその細目を見開く。

 目が、合った。

 

 

 手の平に現れた蛇のように縦に割れた爬虫類を思わす目。

 

 

 

 ………………

 

 

「 ドカンッ! 」

 

 京はそのまま楓の顔面を掴んだまま地面に叩き付けた。

 

「クゥッ!」

 

 全身を粉砕されるような衝撃が楓を襲う。

 京の全力の叩きつけ、それだけにダメージは少なくないはずがない。だが見た目以上に楓へのダメージは尋常ならざるものへと底上げされていた。

 

「終わりだ」

 

 叩きつけ、硬い地面をバウンドしたところで止めの一撃を京は放ち

 

「まだで……ござるっ!」

 

 空を切った。

 

「っ!」

 

 振るう全力の左が空回り、地面に突き刺さる。舞台が軋み、大きな亀裂が入った。

 大振りの渾身の一発、それを避けられたことで京には致命的な程の隙ができてしまう。

 それは互いに気付いていた。

 そして、それを逃すはずはない。

 今ここで流れが変わった。

 

「ち……ぃ……っ!」

 

 ミシリと京の体から軋む音が聞こえ、それと同時に苦悶の声が混じった舌打ちが漏れる。

 楓が京の脇を抜けると同時に渾身の一打を見舞っていたのだ。

 京の体の不調、怪我している部分を容赦なくピンポイントで打ち抜いた。

 

「終わりでござる」

 

 分身が本体を含み計4体、それが楓が最高密度で出せる最大数である。

 今しかないと決めに掛かる。

 

「まだ……まだっ!」

 

 苦し紛れに放たれる京の攻撃、だがそれは全て掠ることもできずに空を切った。

 いつからか、楓に都合のいいような流れが発生してしまう。

 この流れは変えられない。

 四方から楓の分身が京を滅多打ちにする。

 

「クァッ……!」

 

「楓忍法――――」

 

 全ての攻撃が京の急所を突き、動きを止めたところで必殺の技が完成する。

 四方に、分身は全くの同じに襲い掛かり

 

「――――四つ身分身・朧十字!」

 

 斬。

 その軌跡は十字を描く。

 高く高く京は宙を舞った後、ガサリと音を発しながら墜落した。

 

「む…ぅ」

 

 それを確認して、楓も限界だと膝を突く。

 強い相手だったと若干の余韻も感じながら体に力を入れなおし、勝者として立ち上がった。

 

「おおー! 二転三転する戦闘模様! それを制したのは長瀬選手! 準決勝進出決定だー!」

 

 試合の終りに会場が一斉に沸く。

 良かったと思いながら楓は倒れ伏している京に近寄った。

 

「終ったでござるよ」

 

「……みたいだな」

 

 今し方目を覚ましたのか事の状態を把握していた京は楓の言葉に短く返した。

 

「約束は覚えているでござるな? 提案したのはお主だ」

 

「あぁ、わかってるよ。すぐにでも出て行くさ」

 

 ムクリと京は起き上がり、若干苛立たしげに頭を掻いた。

 どうやら守る気はあるようだと、この一件は自分の中に仕舞っておこうと思う。この大会中に無粋な情報を入れるのもアレだろう。

 

「これにて一件落着」

 

 これからおきるであろう事件を未然に防いだ楓は最後にそう締め括った。

 

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……




と、vs楓でした。
ちなみに今回開帳した能力は1つだけです。

次回、ジャスト3分、乞うご期待ください。

作品名:ねじまきカギュー
ジャンル:漫画
使用者:二千恵衿沙
能力:反偽薬効果音声(ノーシーポエコー)
暗示の効果を持つ声。
相手に命令などを強制できるほどの強制力を持つが本領はそれではない。
効果音を模した声による打撃の威力増大、対物理戦で真価を発揮する。
相手が効果音を聞くことでそれが大ダメージだと錯覚し、本来なら大したことのない攻撃でも体が勝手にダメージを反映するために全ての攻撃が強打の一撃と化す。
弱点は、声が通らなければ無駄なこと、機械相手や無機物には効果は全くない。
そして、相手によってダメージが依存し、相手にとっての強打として認識されダメージを負うので打たれ強い相手なら凄まじい効果を発揮するが、打たれ弱い相手なら普通に殴った方が強い場合もある。

と、ねじまきカギューでした。
知ってる人は知っているトラウマイスタの作者の新作。
登場する女キャラ全てが怪物的ヤバイ系女子、色物揃いです。
キャラ1体1体が濃く、なにかめだかボックスを沸騰とさせます。
嗚呼、レギオス編の途中で出会っていれば南家螺旋巻拳を使ったのに……
非常に面白いので是非見てみて下さい。
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