銀河機攻隊マジェスティックプリンス 悪魔を操縦する者 作:ザルバ
待たせてしまってすみません。
世界会議での各経済圏が一致団結してウルガルとの最終決戦をするために各々準備をしていた。使える人員、資材、時間は限られている。何より問題なのはゲートまでの移動手段。移動するだけでも相当の時間がかかる上にそこから戦闘となると一苦労である。
そこにイズルの体調不調。ルーラとしては賛成できないものであった。
「どうかしたんですか?」
偶然にも医務室の前を通りかかったオルガが声を掛ける。医務室にはスズカゼもいた。
「実は・・・・・」
スズカゼは事情を話す。
「命・・・・ねぇ。俺らには縁もゆかりもないような言葉だったなー。」
オルガは頭を掻く。
「そんな・・・・」
「俺たちは
そんなことを言われてルーラは何も言えなくなる。
「でもイズルには生きてもらいてぇのは俺も同じだ。俺たちも、あいつに救われているからな。」
オルガはそう言うとその場を後にした。
ケイはアトラと話をしていた。
「前にアミダさんが言ってたんです。女が男の子を身ごもらせたら落ち着くって。」
「そう・・・・・でも生みたいって思うのは・・・・その・・・・アトラさんも同じじゃないの?」
「確かにそうなんですけど・・・・・・でも、ケイさんの方がしっかりしていて支えてくれそうな気がして。」
「それだったらアトラさんの方があっているわよ。掃除・炊事・洗濯って基本的なことが出来るじゃないの。私はお菓子作りと戦闘での情報処理以外何もできないの。今だってそう。何もできない。」
「そんなことないですよ!だっていつもアージーさんやアミダさんたちの助けになってるって私聞いてますから。」
アトラがそんなことを言うと二人は互いに笑った。
「おかしいわね。私たち互いに互いを押し付け合ってる。」
「そうですね。でもそれって・・・・・・イズルがそれほどの存在だからじゃないですか?」
「そうかもね。」
そんなことを言って二人はまた笑った。
病室でイズルは私服に着替えていた。
「まだ退院許可下りてないだろ。」
「でも戦うよ。だってあの白いのにまともに戦えるのって俺だけじゃん。」
そう言われると何も言えなくなるアサギ。
「それに、いくら事実上の兄だからって俺のすることにいちいち文句言ってたらうるさいって思うよ。」
「お前な・・・・・」
気にしていることを言われてアサギはお腹をさする。
アサギはデガワたちから頼まれてバルバトスに搭乗したがその時ジュリアシステムだけが一部動いた。そのことが気になったアサギはスズカゼに聞くと父親の方のDNAが同じである事実を告げられた。そのことでアサギは父親の方がシモン司令であることに気づいていた。もちろんそのことに出久も気づいていた。あの時の過保護なまでの勧め。
知っているなら合点がいく話である。
そんな時シモン司令が入って来た。
「ヒタチ・イズル、お前に話がある。」
アサギは部屋を後にし、二人だけが残った。
「ヒタチ・イズル、お前は即時退艦せよ。いいな?」
「は?」
「命令だ。」
「待ってよ。あの白いのに太刀打ちできる人間が他にいるの?確かにアサギたちが強いのは俺も知っているけどあの白いのは他とは次元が違う。他の対頂角なら鉄華団のメンバーでも勝てる。でもあいつだけは違う。あいつを誰かが足止めしておかないといけないんじゃないの?」
「次、アッシュに乗ったら命が危ないとしてもか?」
「おかしいんじゃないの。戦うのに命が危なくないことなんてないでしょ。」
そう言われるとシモン司令は何も言えなくなった。シモン司令は忘れていた。イズルは他のことは違いずっと子供の時から命がけの戦いをしてきた。だからこそいつも安全な戦いなどは無いと、決して生きて帰れる保証はないと知っていた。だからこそ彼は敵を確実に完全に殺して来た。慈悲なんてものを掛ければ死んでしまう。それが戦いであることを。
「・・・・・・・ゴディニオンへの搭乗を許そう。」
「ありがとう。」
イズルが礼を言うとシモン司令はその場を後にした。
作戦決行の数日前。スターローズは地上に向かうエレベーターへの行列ができていた。
GDFからの指示でスターローズにいる人すべてが出るようにとの指示が下ったのだ。その光景をイズルたちは高みの見物をしているとペコがイズルたちに駆け寄ってきた。
「みなさーん、ここにいましたか!今から今度の作戦の全体ブリーフィングが開始されます。それが終わってから皆さんはゴディニオンに搭乗になります。」
イズルたちはブリーフィングルームに移動するとそこにはスズカゼとモニター越しにいるアマネがいた。
「ではこれから、オペレーションヘブンズゲートのブリーフィングを行う。
この作戦の主たる目的は敵ゲートの破壊である。所定の時刻になり次第全艦隊はゲートへの移動を開始する。途中の戦闘に関しては適宜指示を行う。ゲート到着後は速やかに戦闘配置に着き、敵の攻撃に備える。艦隊の作戦については別途説明する。全繊維はMJP,チームラビッツが立つ。全体がこれを支援。」
モニターにはバルバトス5は映し出されていなかった。
「各アッシュにはストラグルレーザーを打ち込む際のマーカーを装備する。ブルー1、ローズ3、ブラック6は敵艦隊をかく乱しながらゲートに接近。ゴールド4は援護、パープル2は後方で支持を。状況に応じてマーカーを打ち込める状態になったアッシュを各艦隊が援護する。マーカーを打ち込んだら即座にストラグルレーザーを発射する。以上。」
内容は分かりやすく、そして的確な作戦だ。
「作戦の概要は理解した?」
「はい。」
「突っ込んでって、ドーン!」
「その通りよ。」
スズカゼが問うとアサギが返事しタマキが分かりやすい言葉で言う。
「俺は?」
イズルが問うとスズカゼはこう返した。
「あなたは私たちと一緒に待機よ。」
「俺も戦えるのに?」
「バルバトス5、できればあなたを置いていきたい。でも今度の作戦は失敗できない。あなたを出撃させるかもしれない。でもそれは最後の手段。いいわね?」
スズカゼが飴玉を差し出すがイズルは受け取らなかった。
ブリーフィングが終わってすぐの事。アンナがいなくなったとの報告が入った。イズルたちは無人となったスターローズの商店街を探す。しかしいくら探しても見つからなかった。
そんな中付き合いが長いアサギはアンナが行きそうな場所に心当たりがあった。
アンナと出かけるといつも立ち寄った公園。そこでいつもアイスクリームを食べたのをアサギはよく覚えている。
「おい!」
公園のベンチで一人荷物を背負い座っているアンナに空きを切らしたアサギが声を掛ける。
「なにやってんだよ?」
「・・・・・・・・最後にアイスクリーム食べたかったの。」
「さぁ、行くぞ。」
「いや!」
「アンナ!」
駄々を捏ねるアンナにアサギが注意する。
「私、おじいちゃんやお父さんと一緒にいたい!一緒に降りたって、誰もいないもん。」
悲しそうな顔をするアンナの心境をアサギは察した。今回の作戦は生還率が低い。たとえ作戦が成功しても生きて帰れるものは少ない。その中に自分に父や祖父が入るとなると彼女は一人ぼっちになってしまう。
「それでも連れて行けない。お父さんもおじいちゃんも、アンナを危険な目に遭わせたくないからだ。」
アサギはアンナと同じ視線に立ち、話す。
「お父さんたちの気持ち、わかるよ。それが家族なんだから。俺も危険な目に遭わせたくない。家族をな。」
「え・・・・・」
「なんでだろうな、不思議だな。同じDNAを持ているってだけなのに、なんでこんな・・・・・」
「アサギにも家族がいたの?」
「いたんだ。そいつが今度の作戦から外されて、俺はほっとしている。すごくほっとしている。」
「・・・・・・」
「だから行こう。」
アサギの言葉にアンナは頷いた。
そして公園の入り口には、みんなが待っていた。
そして地上に降りる最後の便のゲートまで一同来ていた。
「これが地上に降りる最後の便だって。」
「間に合ってよかったわ。」
タマキがそう言うとケイは安心する。
「ああ。アンナのお父さんたちも、安心してピットに戻ったよ。」
「これでこっちもゴディニオンに搭乗できるな。」
「さ、急いでください。」
しかしアンナは入り口の前で立ち止まると後ろを振り向きアサギの方に向かう。
「アサギ!」
「お前何やってんだよ!」
「なに言ってんだ!お前のお父さんたちに俺、なんて言えばいいんだよ!」
そんなアサギの言葉にアンナは首を横に思いっきり振る。
「でも、行くから!」
「おい!」
「地上で、一人で、みんなを心配して待ってるなんて嫌だから!」
その言葉に一同何も言えなくなった。戦う者は待つべき者のために戦い、待つべき者は戦う者の帰りを待つしかない。耐えられないものである。
「じゃ・・・・・・・・・・連れて行くしかなんじゃない。もう便行っちゃったし、アサギが胃痛で急変したのに時間取られたってことにすれば。」
そう口を開いたのは意外にもイズルであった。
「おい!なんで俺なんだ!」
「だってその方が辻褄合わせやすいし、尻拭いも兄の務めでしょ。」
「そんな役割聞いたことねーよ!」
そんな光景に、アンナは微笑んだ。
そして作戦まであと少しと言う時にイズルはバルバトスルプスの様子を見に来ていたが、すぐに出られないようにされていた。
「ロック掛けたの?」
「ごめんね。スズカゼ艦長からの命令で。その分整備はばっちりしたから。」
「イズルが勝手に搭乗しないようにって。」
デガワたちが事情を説明するとレイカが来る。
「見んなー、準備はオッケー?」
「あ、はい。」
「イズル君、君は作戦時に艦橋に行ってね。」
「・・・・・・」
「イズル君、貴方は戦うために生まれて来たんじゃない。リンリンもそう思ってロックを掛けたのよ。」
「じゃあ・・・・・・・」
「?」
「・・・・・・・・・・戦うしか生き方を知らない俺は、いったい何のためにここにいるんですか?戦って、殺して、生きて、飯食って・・・・・・・その繰り返しをしてきたのに。急に戦うな・・・・・・・・無理な話じゃない?」
イズルはそう言うとその場を去って行った。そんなイズルになんて声を掛ければいいか、誰もわからなかった。
スターローズのイズルの部屋。そこで一人イズルはベッドで横になっていた。
「・・・・・・・・・・」
戦おうにも戦えないジレンマに、何もする気力が沸かなかった。
「イズル、起きてる?」
「入るわよ。」
イズルの部屋にアトラとケイが入って来た。
「どうしたの二人とも?まあ座りなよ。」
イズルがベッドに腰かけると二人はイズルを挟むようにベッドに座る。
「ここでいいの?」
「うん・・・・・」
「今は・・・・・・ここがいい。」
そう言うと二人はイズルに体を預ける。
「ねえイズル、今度の作戦、私たち生きて帰ってこれるよね?」
「それ俺も戦えば・・・・・」
「ううん、そうじゃないの!」
ケイがイズルの言葉を遮った。
「私たちね、いっつも思うの。いつか急にいなくなっちゃうんじゃないかって。そりゃ、こんな戦いをしていたらそうなるのは分かってる。でも・・・それでも・・・・・」
二人が今にも泣きそうな顔になっていた。そんな二人にイズルは、強く抱きしめた。
「い、イズル!」
「きゅ、急にどうしたの!ま、前にこういう時は女の子を抱きしめるって言ったけどそれは・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・わからないけど、今は二人をこうして抱きしめていたい。いいよね?」
「「・・・・・・・・・・・・・うん。」」
そして次第に離れて行った影はやがて一つとなり、一つとなった。
翌日、イズルに背を向けながら二人は服を着ていた。
「「/////////////」」
二人は部屋から出るも顔はまだ赤かった。不意にお腹に手を当てる。そこにはイズルとのつながりが確かにあった。互いに顔を見あうと、摩りながら笑った。