銀河機攻隊マジェスティックプリンス 悪魔を操縦する者   作:ザルバ

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 通信衛星再設置の失敗はニュースで取り上げられていた。ウルガルに勝ったと思えばすぐに敗北に終わった。だが一部からはあそこまでよく持ち応えたという意見もあった。

 理由はあの隊長機である。他とは違い高速で動き、そして反撃おも許さないような攻撃。それに対しイズルは応戦して見せたのだ。

 世間のヤジ馬どもは馬鹿にするばかり。しかしその放送に怒りをあらわにする者もいた。

「なんだよこいつら!イズルさんの活躍をちっともわかっちゃいねぇ!」

「まあ落ち着けよ。こいつらは対岸の火事って思ってる奴らばっかなんだからよ。」

「しかし、いざ地球が襲われたらこいつら手の平を簡単に返すんじゃないのか?」

「そん時は知るかって話だな。ろくに現実を見る気もしねぇのに、偉そうな口ばっか言うんだからな。それよりお前らの機体の調整は間に合いそうか?」

「はい。イズルさんたちが作戦を開始した後くらいには調整が終わる予定です。その時に何も起きなければいいんですけど。」

 宇宙のある一角に停留している宇宙船で数人の男と子供がイズルのために準備を進めていた。

 

 一方その頃チームラビッツは健康診断を受けていた。激しい戦闘の跡であるため、体に異常がないか診断するのは当然である。

(アイツ・・・・)

 イズルの脳裏には苦戦した白い隊長機が焼き付いていた。

(簡単にあの高速で動いて俺に武器を壊した。メイスなんかの重い武器よりも軽くてアイツを倒せる武器がいる。・・・・・・・いや、それよりも俺自身がバルバトスをうまく操縦できないといけない。もっと昔のように操縦できないと・・・・・)

 イズルは深刻な顔でそんなことを考えていた。

 

 健康診断が終わりイズルたちは解散となった。

 医務室でスズカゼは軍医であるルーラ・チャンから診断結果を聞いていた。

 彼女の見解では任務よりも休息が必要であるとのことだ。

 彼らは宇宙に適応するために作られた存在。故に一部の才能は特化している。

 アサギは総合力、ケイは空間把握能力、タマキは強いGへの耐久力、スルガは一部の記憶能力。そしてイズルは集中力である。バランスとしてはバラバラである。

 しかし彼らの唯一の共通点。それは生存本能である。特にイズルは一番高かった。

「あの子に何があったの?情報を得ようにも制限がかかっていたわ。」

「・・・・・・いいわ。三年前のあの事件を覚えてる?」

「あの事件?それってヒューマンデブリとして人身売買する組織がGDFに潰されたっていうあの?」

「ええ。でもその情報は間違いなの。その組織を壊滅させたのは他でもない、イズルよ。」

「なっ!」

 ルーラはそのことに衝撃を受ける。

「ちょっと待って!いくら彼の戦闘能力が高いからと言ってもそれは無理があるわ!第一どうやって――――」

「バルバトスよ。まぁ、正確にはルプスのベースとなった機体なんだけどね。彼は他のガンダムフレームの機体と一緒に遥かに凌ぐ戦力を倒したわ。私もその場に居合わせたの。たった数位での圧倒的戦力を押し倒す力に当時のGDFは驚きを隠せていなかったわ。一部では阿頼耶識を使おうって話もあったの。でも無理やり阿頼耶識を埋め込まれた子供たちを見てその意見は棄却されたわ。ましてや成功率が極めて低いシステムですもの。

 なのに彼はそれを三回も受けて生き残った。奇跡としか言いようがないわ。」

 スズカゼはそう言うとキャンディを口に加えた。

 

 次の作戦があるまでチームラビッツにはひと時の休暇が設けられた。

 が、イズルだけは戦闘シュミレーターを行っていた。

「ねえねえイズぴょん。」

「なに?」

「どうしてイズぴょんはバカンスに行かなかったの?」

 バルバトスを整備しているマユがイズルに尋ねる。

「俺の阿頼耶識って背中に出てるでしょ?」

「うん。」

「これを見ると、『バケモノが居る』って、皆が怖がるから。」

 マユはその言葉を聞いて言葉が出なくなった。そんなマユにデガワが肩に手を置き話しかける。

「仕方ない。実際、義手義足を見て軽蔑視する輩も少なくないからな。全く、自分たちで起こした出来事に都合よく蓋をする連中がいるものだよ。」

デガワは深く溜息を吐いた。

 

 流石にずっとシュミレーター漬けなところをレイカに見つかったイズルはしぶしぶチームが泊まっているコテージへと足を運んだ。

「あ・・・・」

 ケーキ作りをしていたケイがイズルに気づいた。作っているクリームは青色をしていて独特であった。

「来たんだ。」

「行けって言われて仕方なく。それより他の皆は?」

「スルガは寝てる。あの二人はバカンスするって言ってた。」

「そっか。ケイ。」

「なに?」

「クリーム付いてるよ。」

 イズルはそう言うと左のほほを指さした。ケイは手でそれを拭う。イズルがそこから離れようとするとケイは呼び止める。

「イズル。」

「なに?」

「ケーキ、もうすぐ焼ける。食べる?」

 ケイが作ったケーキはどれも独特の色をしていた。そしてその独特の色の分とてつもなく甘かった。

「どう?」

「んぐんぐ・・・・俺はケイのる作ケーキ好きだよ。」

「そう。・・・・・・・ねぇ、聞いてもいい?」

「なに?」

「なんで私たちはここにいるんだと思う?」

「どういう意味?」

 イズルはケイの言いたいことの意味が分からなかった。

「ついこの間まで学生で、いつか戦場に出るかと思っていたけど、こんな急に、次々に任務を与えられて、休暇取るのも命令されて・・・・・・・・・・だけど私たち他に何も選べないのよね。戦うために生まれてきて、養成所に入る前の記憶を消されて、行けと言われたら戦うしかなくて、時々たまらなくなるの。私は何なの?自分では何も決められないの?って。」

 ケイの言葉にイズルは共感はできなかった。養成所に入る前の記憶は今も持っている。そして戦うことが自分が生きている証だと今でも思っている。

「イズルはどうなの?」

「・・・・・・・正直、俺は戦うことが当たり前だって思ってる。これ、本当は誰にも言うなって言われてんだけど、俺養成所に入る前の記憶持ってる。」

「え・・・・ええ!」

 ケイは椅子から立ち上がって驚く。

「と言っても覚えてるのは戦いの記憶ばかりだよ。自我が芽生えた頃にはどっかの傭兵に売りに出されてた。違法な労働にまともじゃない食事、そんでいっつも殺し合いのための訓練をされていた。MW|≪モビルワーカー》って知ってる?」

「え、ええ・・・・・阿頼耶識を搭載している人にしか操縦できない代物よね。今はタービンズ商会が阿頼耶識を搭載しなくても動かせるのを開発しているって話を聞いているわ。」

「そ。俺はそのMWで傭兵の仕事をしていたんだ。でもMWにも勝てないものがある。MSだ。MSにMWの火力じゃ傷一つけられない。俺たちはそれで何度も仲間を失った。今日生きている奴が明日生きているかどうかなんてわからない。けど俺たちにとっては自分の命の方が大事なんだ。だから明日を生きるのに精いっぱいだった。俺たちは宇宙ゴミって呼ばれていたけどそんなことはさほど気にしなかった。

 けど、オルガだけは違った。」

「オルガ?」

「俺の・・・・・・恩人みたいな人。オルガはゴミみたいに捨てられていく俺たちの待遇に納得がいかなかったんだ。だから俺たちは徐々に力を蓄えて反抗を起こした。けどあっちの方が戦力は多かった。俺はバルバトスを使ってみんなが逃げれるように時間を稼いだ。けど一人じゃとてもすべてを殺すことはできなかった。もう死ぬなーって思ってたらGDFが駆けつけて俺は保護された。

 流石のGDFでもこいつだけは取り除くのはできなかったみたい。んでグランツェーレ都市学園に入るために記憶を消そうとしたみたいだけどどうも上手くいかなくて、俺だけ記憶があるってわけ。」

「そうなんだ・・・・・」

 ケイはイズルの話に何を言っていいのかわからなかった。普通ではありえないほどの経験をイズルはしてきている。ウンディーナでの活躍も納得ができた。

「けど、俺もオルガも思ってるんだ。俺たちが生まれたからには意味があるって。決して無駄死にするために生まれてきたんじゃないって。だからみんなで俺たちの居場所を探そう。」

 イズルの言葉を聞いてケイは微笑んだ。

「ええ、そうね。」

 

 休暇も終わったチームラビッツはスターローズ内に設置されているブリーフィングルームに集まっていた。

「GDF参謀次長コミネ大佐よ。敬礼。」

(つぶれたシュークリームだな。)

 イズルは敬礼をしながらコミネに対しそう思った。

「楽にしてよろしい。」

「今回の作戦に関しては参謀次長自らが指揮に当たられます。」

「それだけ重要な作戦と言うことだ。いままでGDFは防戦する一方だった。だが、新型アッシュの完成、そして君たちのような精鋭乗組員を得てようやく積極的な攻撃を展開することが可能となった。ウルガルの侵略行為を阻止するために今回のことは非常に重要且つ―――」

「次長、お話の途中ですが彼らにあいさつをさせてもらってもよろしいでしょうか?」

 コミネの言葉を中断するかのようにアマネが割って入る。

「・・・・次長副官のアマネ大尉。」

 コミネは簡潔に自己紹介をする。

「今回の作戦の説明を。」

 コミネがそういうとモニターに作戦宙域が映し出され、アマネが詳細を説明する。

「木製軌道第三小惑星グリッドB25~27の位置にウルガルの定期航路が発見されました。これは補給ルートであると高い可能性があります。」

「今回八個を叩く。現在極めて強力な太陽嵐が活動中で、間もなく当該作戦地域が非常に強力なCMEと高電子荷電粒子で覆われる。これにより、多くの電子機器トレーダーが使用不可能になるはずだ。その隙に、混乱した敵につき入り叩き潰せ。」

 要約すると奇襲作戦である。

「あなた方は強化シールドを展開した小惑星の背後で太陽フレアの通過を待ちます。」

「シールド一から敵予測位置まで喘息で24秒。敵システム回復まで推定40秒。この16秒ですべてを破壊、離脱せよ。」

(無茶苦茶な作戦。この人本当に脳があるの?)

 イズルは正気を疑った。仮にマシンガンで20個ある的を16秒で狙い撃つとしても1個につき約1.2秒。目視からの小銃を合わせてからの発射までに数秒掛かるとしても無理がある。また正確に狙い打たなければ当然弾も外れる。弾薬が空になればマグを装填しなければならない。交換していればあっという間にタイムオーバーである。

「この作戦は時計のような正確さが必要だ。そこで、作戦開始の指示と囲碁の指示は私が下す。君たちはまだ学生上がりの新人だ。潜在能力はあっても、圧倒的に経験不足。前回のような無様な姿をさらすようなことがあってはならん。わかっているのかね?アッシュだけではない。君たちにも相当の予算を割いてきたのだ。その予算に見合った働きをしてくれなければ、君たちを作った意味がない。」

 イズルはその言葉に若干ではあるが顔をしかめる。

「次長、彼らにそろそろ出場の準備を。」

「アッシュの整備も終わってますので、よろしければご計画を。案内させていただきます。」

「うむ。」

 コミネが去るとイズルは口を開いた。

「お前のみたいな奴がいるから俺たちが無駄死にさせられるんだよ・・・・・・」

 ドスが利いた声に一同恐怖をした。

 

 ゴディニオンがスターローズを発進。その間にイズル隊は重装備をした機体に乗っていた。

「結構な装備だね。」

「参謀次長が指揮するから重装備にしたかよ。」

 イズルは装備に驚きスルガは皮肉を言う。

「焼肉屋のシールがない。」

「中継されないからでしょ。もしくはもうスポンサーを降りたか。」

「絶対失敗しませんように。今度は絶対失敗しませんように。」

 ステッカーのことに驚くタマキにケイが説明し、アサギは腹を押さえながら自分に暗示をかけていた。

 

 ゴディニオンは作戦宙域に到達する。

「ピット艦、発進準備由。」

「ピット艦、全機発進。」

 ジークフリートとジュリア―のが経過報告をする。

「全機発進!・・・・・・ありがとう。」

 アマネが指示を飛ばすと小声でレイカに礼を言った。不測の事態に備えてフル装備させるように頼んだのである。

「ポイントD7にウルガル反応。」

 その瞬間アラームが鳴り響いた。

「攻撃態勢。全機フォーメーション。」

 コミネが指示を飛ばす。ケイが小惑星の陰から偵察をする。

「画像入ります。」

 パープル2のモニターには補給ではなく戦闘部隊並みの戦力を有しているウルガル軍の姿があった。

「補給部隊!これが!?」

「なんだこれは!」

 そのことにコミネも驚いていた。

「補給部隊ではないようです。」

「だったらなんだ!」

 スズカゼの言葉にコミネは食い掛る。

「強攻偵察部隊だと思われます。」

「補給ルートじゃなかったのか?」

「それは推測であって、そう判断されたのは参謀次長です。」

 コミネの言葉にアマネは返した。

「・・・・・・」

「接触は避けたほうがよろしいのでは?」

「ここまで来て成果もあげずに帰れというのか?ジュリアシステムはこういう時に成果を発揮するんじゃないのか?オペレーションナイトブロ開始。」

 ほとんどヤケの状態で始められた作戦である。

「ミッション開始。一応フル装備させてあります。何とぶつかるかわからなかったので。」

 スズカゼがそういう陰でレイカはコミネをゴミを見るような目で横目していた。

「攻撃命令だって。行ける?」

「アッシュがビビってる。」

「それはお前だろ。」

 アサギとスルガの機体は恐怖して動けなかった。

「俺が先行する。アサギは取りこぼしを倒して。スルガは後方支援射撃をよろしく。」

 イズルはバルバトスルプスを先行させる。すると付いて行くようにブルー1とゴールド4も付いて行く。ゴールド4はスパイクを小惑星につけ足場を固定させると攻撃を開始するがその攻撃は避けられてしまう。

「こいつ・・・・」

 バルバトスルプスは腕部200mm砲、ブルー1はISキャノンを放つが避けられてしまう。

「偵察部隊じゃない・・・・・精鋭部隊!」

 ケイは敵の動きを見てそう確信した。

「右前方から攻撃。」

 ケイのアシストで二機は回避する。スルガは後方支援射撃をするが敵はそれを避けてしまう。

「おお、結構速ぇ・・・・」

「次来る!」

 ケイのアシストもあって何とか応戦する二機。しかし敵は展開が素早く、連携もうまく取れていた。

「無理です、撤退を。」

「できるか!」

「状況は明らかに不利です!」

「意見を言うなら具体的に言え。どう不利なのだ?」

「この状況を見てわからないのですか!」

 コミネとアマネは言い争う。

「くっ!当たらねぇ・・・・」

 ゴールド4は乱射するように打ってはいるが一向に当たらない。

「ローズ3、何をしている!突っ込め!」

「へ!?」

「何をしている!全速力で突っ込め!」

「え!あっ!はい!」

 ローズ3は言われるがまま戦場へと突っ込む。

「待ってタマキ!ローズ3、シールド展開!」

 ケイは急いでローズ3のシールドを展開する。

「タマキ!引き返せ!」

 イズルはタマキにそういうが走り出したローズ3は止まらなかった。

 ウルガルの中型艦から新たに枢機ウルガル機が発信しローズ3に攻撃をする。

 ビームが強力であるためローズ3のシールドはすぐに壊された。

「シールドが!」

 そのこにタマキは驚く。

 そして容赦のない攻撃がローズ3を襲った。

「うわぁあああああああああああああ!」

「タマキ!」

 無能な情感によって危機的状況が訪れようとしていた。

 

「おい、作戦宙域までどんくらいだ?」

「あと五分は必要です。でもそれじゃあイズルさんたちが・・・・・」

「待ってください。クタンを使えば二分で追いつけます。団長、支持を。」

「・・・・・・・・よーし、シノ、ライド、昭弘。あいつのところまで全速力で行ってこい!他の奴はクタン参式にあいつらの機体を搭乗させろ!待ってろよ、イズル!」

 

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