アラガミトレーナー 作:✳︎✳︎✳︎
※主人公は10歳です。
この地域のポケモンはどうやら、自分の知る常識に当てはめる事が出来なそうである。
ビル街を歩き回る事数時間、陽も落ちてきた所で野宿をする事にした。と言ってもこんな廃墟世界で採れる食料など無いので、携帯食ぐらい食べ物はしかないが。
少年はキンキンに冷えた『サイコソーダ』を片手に、先ほど捕獲した新種ポケモンいや……『アラガミ』という謎生物の事に考えを回す。
そもそも、コレは何なのか。
アラガミとは一体なんだ?
ポケモンではないのか?
何が起こっているんだ?
少年にそんな疑問が芽生えたのは、ポケモン図鑑のせいであった。
幾ら新種の疑いがあるとは言えちゃんとスキャンしたら既存のポケモンの変異種でした、なんて事は良くある。
新種を発見したならば捕獲後スキャンポケモン図鑑を起動して直接スキャンを実行しろ。ナナカマド博士にも言われた事だ。
少年は言われた通りに、モンスターボールをポケモン図鑑に接続して、オートスキャンを実行した。
ポケモン図鑑の画面が点灯した。エラー、エラー、という明らかに可笑しい危険信号が発せられ、一瞬だけ少年の頭はパニックに成り掛ける。
そして、
『……オウガテイル。鬼面獣アラガミ。
鬼のような形相に力強い筋肉質の二脚が特徴の獣型のアラガミ。比較的小型だが群れで行動する為注意が必要。
今地球上で最も多く生息しているアラガミである』
意味の分からない情報が表示された。
そこに出たのはポケモンなんかの情報などでは無く『アラガミ』という、謎多き生物の情報であった。しかしそれのイメージ画像には、先ほど捕まえたばかりの新種ポケモンが映っていた。
故に、少年は混乱していた。自分が捕まえたのはポケモンでは無く、アラガミという謎生物。
ポケモンと通常生物しか研究されてないはずのポケモン図鑑に載っているという、不思議性。ついでに起動直前のエラーについても気になる。
意味が分からない。少年はオウガテイルというアラガミの入ったハイパーボールを見た。
そもそも、アラガミという謎生物がモンスターボールに入る事も不思議だ。何故ならモンスターボールは、ポケモンにしか効果が無いはずだからだ。
モンスターボールの構造は基本的に、ポケモンの特徴を流用したものである。ポケモンは生来的に瀕死になると数十分の一にまで収縮するという能力がある。
これを使ってモンスターボールはポケモンの収縮を実現しているのだ。
しかし、オウガテイルという生物はポケモンではなく、アラガミという別種なのにも関わらずモンスターボールに入れた。これはおかしい。
そもそも、『アラガミ』という新ジャンルでポケモンとは分け隔ているのにも関わらず、モンスターボールに入れるのは、分けた意味が無いのでは無いか。モンスターボールに入れるのならば、ポケモンでいい筈だ。
しかし、実際にはわざわざ分けてられている。何かしらの違いがある筈だ。明確に定義出来るほどの、大きな違いが。
……このビル街に来てから、変な事ばかり起こっている。
そもそもこのビル街はマップ外だし、この場所に来れた方法も謎。しかもアラガミという生物が徘徊しており、ビルなどの建物はほぼ全て崩壊済み。
ポケモンセンターもフレンドリショップも見当たらないし、今後の生活が非常に厳しくなるだろう。
少年は未来について考え、絶望した。このビル街の中人っ子一人にすら出逢わなければ、私物を啜り続ける事になり、最終的には物資不足で餓死する可能性が。
これは早く文明社会を見つける必要がありそうだ。
少年はバックの中を漁って中からオレンの実を取り出した。木の実とは言え、食料源としては十分だ。
モンスターボールから待機メンバー主要メンバー含め、6体のポケモンも取り出す。みんなしてガタイが良いので消費が激しいが、彼らにもオレンの実を幾つか渡した。
さあ、楽しい楽しい食事会の始まりだ。
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翌日。少年は自身が昨日張った3角テントの中で起きた。隣にはお気に入りのピカチュウ枕が握られている。どうやら気分良く寝れたようだ。
背伸びをして、軽く身体を柔らかくする。『謎の場所』2日目の開始である。
バックの中身を漁ってオレンの実を取り出してふと……ある物を目にした。ハイパーボールだ。
ああ、そう言えば。少年はある事を思い出した。
彼はアラガミについての特徴というか、この場所での特殊な現象を発見したのだ。それは元のシンオウ地方では絶対にあり得なかった事。
ポケモンが7匹以上持てるようなのだ。
いや、その7匹目と言うのがアラガミだという条件はつくのだが。それ以外にも幾つか制約がつく。それは後で話そう。
発端は昨日の事だ。夜の食事会には自分のポケモンみんなを外に出して、楽しんでいた。みんな笑顔だった。
そこで少年はふと思った。この廃街に来て新たに、オウガテイルという仲間が出来た。こんなに楽しい食事会をしているというのに、彼だけ除け者は如何な物かと。
そこで彼はバックからオウガテイル入りのハイパーボールを取り出したのだが……ポロッと、落としてしまった。
普通ならば、それを拾えば良いだけの話だ。どうせ7個目のモンスターボールは開けない。それが当たり前で、モンスターボールに掛けられた制限の一つなのだから。
しかし……ハイパーボールは地に堕ちるとパカっと開いて、中からオウガテイルが出て来てしまった。
彼は外に出ると犬の遠吠えのように吠えた。傷付いた身体に目が行くが、今はそれどころでは無い。
どういう事なのだ? 少年は疑問に思った。7匹目のポケモンが出て来れる筈がないからだ。それは以前、シンオウ地方を旅していた時にも確認した。
しかし、現実として彼は外に出ている。これは紛れも無い事実だ。
となると、否定は出来まい。モンスターボールの制限に掛からないのは不思議だ。もしかしたらそれがアラガミの特徴なのかもしれない。
少年は細かい事は気にしない事にした。だからオレンの実を与えようとバックを漁った所で……違和感に気付く。
ドータクンがいないのだ。
どこに行ったのか。先程まで嬉しそうにオレンの実を食べていたと言うのに……。目を落とし顔を伏せる。するとそこには、腰のベルトにはポケモンが入ったモンスターボールが一つあった。
疑問に思いそれを取り外して、空中へと放り投げる。
ドータクンが出て来た。
疑問である。彼は何故かモンスターボールに入っており、出て来ると出て来るで周りをキョロキョロしている。まるで「ここはどこ? わたしはだれ?」だ。
すると待たしても、とあるポケモンの姿が見当たらない。ドータクンを外に出した瞬間だ。
ああ、そう言う事か。少年はある仮説を立てた。オウガテイルを外に出した瞬間、他の一匹がモンスターボールに入っていると言う事は。
詰まる所、ボールに戻されたのだ。モンスターボールには、持ち歩けるポケモン入りのボールは6個までと制限されている。7個目以降のポケモン入りボールは開けないようになっているのだ。
しかしどうやら、この世界では違うらしい。七匹目以降のポケモンは問題なく、開けるらしい。
その際の制限として、現在の手持ちポケモンが先頭から一匹ずつ、ボール中に入っていく。これは順番にポケモンを出していった事で確認済みだ。ランダムではない。
他にも、アラガミには基本的に此方から与える食事はいらないと言う事が分かった。彼はオレンの実を美味しそうに食べていたが、暫くすると近くに生えた雑草のような草木や、驚く事にビルの残骸を食べていた。
また、傷自体も食事をするとすぐに回復していた。恐らく、代謝機能が素晴らしいのだろう。故に腹が減りやすいと言うのを考慮すれば、仮説とは言え付近を徘徊しているアラガミが食事ばかりしているというのも納得がいく。
他にも色々と特殊な生態がありそうだ。
少年はハイパーボールをチラリと見て、笑顔になった。
こんな崩壊世界に来てしまったものの、暫く無かったワクワク感が蘇って来ている。最近マンネリ化していたからだろう、自分は退屈していたのだ。
だが、この世界は自分も知らない、未知の世界だ。各地を旅していた時のように、新たな発見に胸を踊らせれるかも知れない。
サイコソーダを飲みながら、ニヤリと笑った。
まずやる事はオウガテイルの育成と、他のアラガミの捕獲だろう。此処へ来るまでにオウガテイル以外にも色々な種類のアラガミを目にした。
地面に埋まったディグダのような性質を持ったアラガミ。
ムックルのように空を飛行するアラガミ。
レントラーのように電気を放射していた比較的大型のアラガミ。
彼らを是非とも捕獲して、鍛えて見たいものだ。
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しかし、まずやるべきなのはオウガテイルの育成だろう。最初にやるべきなのは彼が何が得意で、何が出来るかを定めなければならない。
場所は変わって広めの平地。オウガテイルを捕獲した時と同じような場所だ。此処ならば、アラガミから発見されやすいだろう。
となれば、餌が自分に対して全力ダッシュしてくるわけだ。経験値稼ぎには十分である。
ほら、噂をすればなんとやら。
此方の姿に気が付いたオウガテイルの群れが此方に向かって走って来ている。数は4匹と言ったところだ。
群れが少年にドタドタと近付いてくる。少年はそれを見てニヤリと笑い、腰のベルトから二つのボールを放り投げる。
一つは紅白のボール。
一つは黒白のボール。
対立する二つの色のボールは空中へと投げ捨てられると赤いレーザー状の光が発信。地上へと激突した光は形を成して、二体の生物へと姿を変えた。
片方は恐竜のような姿の、オウガテイル。
片方は銅鐸のような鉄塊、ドータクン。
二体の生物(+金属)は地へと舞い降りると同時に、威勢良く敵へと吠えた。殺る気は十分のようだ。
その威嚇を受けてオウガテイルの群れは狼狽えた。浮遊金属を見てなのか、同族が敵に回っている事からなのか、はたまたそれらを従えている少年に対してなのか。
しかしそんな事はどうでもいい。少年は相手が大勢を崩している中すぐさま指示を飛ばす。
——ドータクン、奴らをサイコキネシスで拘束しろ。
瞬間、オウガテイル達の身体にピンクのオーラが纏わり付き、彼らの身体を制限する。そのうちの一体は浮遊して少年のオウガテイルの前へと引っ張られた。
——やれ、オウガテイル。"ひっかく"だ。
グルァァア!! という唸り声と共にオウガテイルは敵の肩を強靭な脚部で切り裂いた。凄まじい威力だ、少なく見積もっても小型ポケモンの三倍の威力はある。
しかし、相手は拘束されていると言うのに、再生はするようだ。昨日考察した超速代謝だろう。このままでは数秒で傷は埋まってしまう。
そうはさせまいと続けて指示を飛ばした。
——再生の隙を与えるな、肩を引き千切れ。
オウガテイルは指示通りに鬼の様な顔面で肩に齧り付き、肩をビリっと引き裂いた。引き裂かれた肩はゴクリと飲み込んだオウガテイルの腹の中だ。
敵のオウガテイルは苦痛に顔を歪める。当たり前だ。皮を肉ごと奪われたんだ。痛くない訳がない。
だが、そんな事は関係ない。それでは情けを掛ける理由にはなりはしない。
少年はドータクンに指示を出した。
——そいつの身体を広げろ。
金属は指示通りソイツの身体を大きく広げた。それを見て少年はオウガテイルの数々の技を試す。
踏みつける、叩き潰す、牙棘、引っ掻く、噛み砕く。どれもが大きなダメージを発揮させていた。
ある程度技の効果を試していると、サンドバックの体力は限界に来ていた。身体の至る部位は奪われ、再生する暇も無く連続の攻撃。もはや意識は飛んでしまっていた。
それを見てオウガテイルに、介錯の指示を出す。
——ソイツを喰べろ。
オウガテイルは指示通りにソイツを貪り始める。
脚、頭、尻尾。色々な部位を食すオウガテイル。残虐な殺され方をする仲間を見て、群れのオウガテイル達は唸り始める。自分もアレと同じ運命を辿ると直感したのだろう。
感のいい奴らだ。ニヤリと笑った少年は、彼らに死刑宣告を告げる。
——ドータクン、次だ。
彼らの絶望は、まだまだ始まったばかりだ。
〟\°∀゜/〃「こんなの、僕の知ってる主人公君じゃないッ!!!」