「処刑まで何日だ……」
革命家気取りのテロリストマフティーとして数々の地球軍基地を攻撃した彼、ハサウェイは投獄され目を塞がれ椅子に縛られていた。
「……!」
体のあちこちが傷む。
全身が火傷や裂傷、さらには汗の臭い。
数日前クスィーガンダムで地球軍基地に向かった際に罠にかかり、味方から孤立。
エース機体を数機同時に相手をしていた。
傍受した通信から何人かの名前は記憶している。
ペーネロペーのレーン・エイムは何度も戦っていたし、自分を捕縛したのは彼だ。
手早く罠を設置していたのはアレイオンという量産機の二機。界塚ユキと鞠戸孝一郎。月面での火星騎士討伐戦により多大な功績を残した二名だ。
市街戦だったのにも関わらずビルを次々と斬り倒し、進路を潰し続けたエフィドルグ製大型グロングル、オーガでクスィーを追い詰めたトム・ボーデンとリュウ・シェンミー。機体性能もあるが、二人乗り独特の状況判断と戦闘実行能力の早さと強さが厄介だった。
「……後の祭りか……」
後悔も戦闘の評価も、今となっては意味がない。
最早これまで。
せめて、誤って戦いを挑んでしまったナデシコ部隊への罪滅ぼしを。
そして、裏切ったきた家族に……。
「悪いがお前を拉致させてもらおう。」
いきなり現れハサウェイの目隠しを外したのは小型ガンダム。
世界各地で彼等のような姿をした生命がうろうろしているのは小耳に挟んでいたが、何故自分の目の前に。
そして地球軍の基地に?
「俺の名は太陽騎士ゴッド。ハサウェイ。お前の力も思想も、ここで失っていいものではない」
ハサウェイは応えない。
「お前が間違えて攻撃を仕掛けたナデシコには俺の仲間がいた。力がありながら自らの罪に対する責任から逃げることは許さん」
「わかっているのか……俺をここから出すということは、地球軍と敵対する事だぞ」
「興味がないな。それにお前の居場所を教えてくれたのは、その地球軍のお偉いさんだ」
驚くハサウェイを無視して太陽騎士は素手で牢の壁を殴り壊し、ハサウェイを外に出す。久々の明かりに視界がボヤける。
「マクギリス・ファリドという名に心当たりは?」
「……聞き覚えがある程度。面識はないはずだ」
「その男にギギという女が依頼し、今に至る」
ハサウェイは思わず涙を流す。
「そうか……彼女が……」
「……行くぞ」
うまく身体を動かせないハサウェイを担ぐ太陽騎士。
ハサウェイはふと気になる。
ゴッドとやらは騎士を名乗りながら剣も盾も持ち合わせていないではないか。
そして監守や衛兵はどうした。
「……大丈夫だ。誰も殺してない」
「ならどうやってここに」
「己の拳を奮っただけだ」
視界の片隅に倒れ伏す兵士の姿が映る。
全て殴って気絶させたのか。
人間業ではないが、そもそも人間ですらない。さすがに笑える。
数週間後基地から連れ出されたハサウェイはファリド公爵と面会。
医療施設での療養を終えてから月基地に向かった。
「どうにもわたしはガンダムの名に運命を感じてならない。君のクスィーもその一つさ」
「機体の改修には感謝します。ですが何故そこまで」
「わたしは君と同じ思想の中にいる男だよ。腐った連邦を改革するためなら手段を選ぶ気はない」
ハサウェイはテロリストとして外部から連邦を壊そうとして、マクギリスは内部から壊そうとしている。
「改革の中には犠牲も付きものです。その中に家族や友人がいれば、あなたは」
「生憎と家族はいない。素敵な婚約者はいるが……友人か。彼を切る覚悟ならある……」
それ以上の言葉はいらない。
ハサウェイは判断して気になっていた事を口にする。
「……彼は?太陽騎士ゴッドはどこに」
「既に地球に降りたよ。例の’烈‘の八卦ロボの探索に協力してもらいつつ、フェストゥム討伐をしてもらっている。」
「そうですか……彼には借りを返したいのですが……あなたにもね」
「ならば頼み事がある。ナデシコ部隊や鉄華団を影ながら支えてやってほしい。もちろん君の判断で動いてくれて構わないが」
ハサウェイとマクギリスが話していると通信が入る。
月面のレクイエム発射口付近で戦闘があり、地球軍の戦艦が不可思議な集結の兆しを見せていると。
二人はナデシコ部隊の援護に向かうためMSに搭乗する。
先に発進したクスィーガンダムを見送りながら、数秒後にグリムゲルデを出すマクギリス。
(すまないねハサウェイくん。君には一つ隠していたが、わたしのカードは’太陽‘だけではないのだよ。’王‘は暫くアルミリアの側から離す気はない。真なる敵のための切り札は味方にもギリギリまで見せない。それがわたしのやり方なのだから)