「月に?」
タシロ提督や他の将校が集まる中、アキトの発言が注目を浴びる。
「はい。現在ネルガル重工で新型ナデシコのロールアウトを行っています。後は乗り手の準備だけです」
「アキトは私達にプレゼントまで用意してくれていたのね!さすが旦那様!」
「それとヴァルヴレイヴ隊への補給物資、アルドノア搭載型カタフラクト等が準備されています」
「さっすがアキトね!皆の事までちゃんと見てるぅ!」
将校達が呆れ顔で見ているのを無視してマイペースを貫くユリカはアキトにくっついたまま。
対するアキトは気まずそうな表情で続ける。
「ですが万丈が受けた鉄華団の援護依頼、地球圏内にいる敵勢力の討伐もあります」
「既に目の前に地球があるわけだしな。地球外縁軌道統制統合艦隊とて、彼等の言う通り連邦軍の登録がある機体なら降ろせるはずだ」
黙っていたエルエルフが口を開く。
「部隊を二手に別けるのなら部隊構成を任せてほしい」
手早く端末を操作して、表示する。
「まず地上部隊に機動性に特化したMS隊。黒部部隊、騎士ユニコーンに界塚、網文。万丈もだな」
特に異論が出ない。
「ナデシコの受領には旧ナデシコクルー、エステバリス隊、ヴァルヴレイヴ隊、ファフナー隊、トップ部隊、それに銀仮面……スレインとリッツ」
「ファフナー隊も一緒に?」
伊奈帆がエルエルフに尋ねると、横にいた総士が。
「ファフナーは連邦に登録されているが、ザインとニヒトは拿捕される危険性がある。それに真矢が軍の上層部に目をつけられているらしくてな」
「正規ルートを通りたくはないのですね」
「それに、ボゾンジャンプで突破出来れば波風立たせずに済む」
再び伊奈帆は質問する。
「スレインにリッツさんを同行させるのは理解できます。ですが彼を月に行かせる事、皆さんは大丈夫なのですか?」
「火星騎士の残党との接触ですね」
「えぇ。アセイラム姫に認められた騎士の一部が月にいることは彼に隠していますが、それも時間の問題だと思っていました」
伊奈帆は心配していないが、やはり部外者の意見が気になった。
するとエルエルフが。
「問題行動があるようなら俺が対処する。それに、騎士ユニコーンを別行動させたのもこれが理由の一つだ」
「まぁ杞憂でしょうけどね。それより私はアキトと一緒にいられるだけで幸せ!」
ユリカがその場の空気を和やかにした。
地球への降下部隊についての編成を聞かせれた韻子は、軽く真矢や指南に挨拶してから由希奈達の所にいく。
「戦艦で降りられないのに皆はどうやって降りるのかな」
「普通に降りればよいのではないのか?」
剣之介は韻子の疑問が理解できなかった。
「クロムクロは単独でも降りれるけどね、普通は地球に入るとき大気の摩擦熱で燃え尽きちゃうんだよ」
「ま、摩擦熱?」
「メドゥーサとGAUSも大丈夫のはずなんだけど、落下速度と機体の重さのバランス的に危ないかも知れないんだよね」
クロムクロの性能のお陰で、経験はあっても実感しなかった剣之介が首をかしげるのをスルーしながら由希奈は。
「韻子ちゃんたちはエルトリウムにある突入用シールドに乗って降りれるみたいだよ。クロムクロとダイターン3はそのまま行くから、そしたら鉄華団と合流だね」
そんな気の抜けた会話から数時間後にエルトリウムから機体が出撃し、地球外縁軌道統制統合艦隊の許可のもとで地球へ向かう。
伊奈帆は地球外縁軌道統制統合艦隊の司令官が苛立たしげなのが少し気になった。
彼等が無事に突入を開始したのを確認してから、エルトリウムは月に進路をとる。
総士と一騎が地球を眺めながら。
「奴が俺達を見ていたな……」
「ジョナサン・ミツヒロ・バートラント……マークレゾン。それにベイグラント」
「総士。そろそろあれも気になる」
「アルタイルだな。早く島との連絡手段を確保したい」