「さて、ようやく集まったか。――おい、遅刻者」
「は、はいっ」
臨海学校二日目。
一日全てを自由時間に使って遊んだ1日目と違って、二日目は朝から晩までIS操作の実習、各種装備試験運用と、データ取りの一日だ。特に専用機持ちは各国から専用のパッケージが送られてきているので、大変なはずだ。
とは、言っても俺には専用機が無ければ何処かの国のパイロットでは無いから全く持って関係ないんだがな。
そんな事を思いながら、たった今断頭台に立たされたボーデヴィッヒを見やり、少なからず同情する。
「そうだな、ISのコア・ネットワークについて説明してみせろ」
「は、はい!」
ボーデヴィッヒの言葉は続く。
コア・ネットワークとは、広大な宇宙空間での通信システムとしてISのコア間でネットワークを形成しているシステムで、基本的に全てのISが持っているものだ。オープン・チャネルやプライベート・チャネルなどの機能もこれの一部だ。操縦者同士の意識が共鳴し、
何処ぞのニュータイプ会話だよ。
まぁ、実際に体験した訳じゃないから何とも言えないが、正直言うと全く興味無いな。
「以上です」
「ふむ、流石に優秀だな。今回のことは不問にしよう」
織斑先生のその言葉に胸を撫で下ろすボーデヴィッヒ。
「さて、それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員迅速に行え」
はーい。と元気に返事をして、各々の班に分かれて作業を始める。俺も加わろうと思ったら、織斑先生に止められた。
「ああ、篠ノ之と鉄。お前たちはちょっとこっちに来い」
「はい」
「あ、はーい?」
何か、あったのか全く分からなかったが一応指示に従って、一夏たち専用機持ちの所に集まる。
と言うか、マジで俺何かあったか?
「篠ノ之、お前には今日から専用――」
「ちーちゃ~~~~~~~~~~~~ん!!!」
全員が集まり、箒について告げられた織斑先生の言葉を遮る様に何処からかキーの高い声が聞こえてくる。
その声の方向を探すと、ドドドドドッ!と言う効果音と共にこの海辺にはとてもミスマッチな女性が崖を直下に駆け下りて来た。その光景に、織斑先生は頭を抱える。
そして、俺は直感的にその人が俺の大嫌いなタイプだ。
「いやっとぅ!」
坂を駆け降りた反動で大きく跳躍すると、ある一点に向かって飛び込んでいく。同時にゴキッという関節をならす音が聞こえた。
普通なら関節を鳴らした時になるような音ではない。
だが俺ははっきりと聞いてしまった、見てしまった。こちらに飛び込んで来る獲物をジッと睨みつけながら、左手を鳴らし殺気を露わにする織斑先生の姿を。
「やあやあ! 会いたかったよちーちゃん! さあハグハグしよう! 愛を確かめ――ぶへっ!?」
飛んでくる人物を射殺さんばかりに睨む織斑先生に飛び込んだかと思うと、狙いを定めた織斑先生が眼にも止まらぬ速さで手を伸ばして相手の頭を掴む。すると間抜けな声をあげて、その人物は止まった。
「ふっ、相変わらず容赦の無いアイアンクロー……ちょ、ちょっと待ってちーちゃん! 本気で痛くなってきたよ!」
「ふっ、そのままお前の脳内お花畑を潰してやろうか」
「おおう、脳内変革ってやつ? いいねぇ、束さんすごく興味があるよ。ちーちゃんのお堅い頭も一度あばばばばばば!?」
明らかに危険な状況であるが、俺には全くもって助けようとは思わない。
簡単な話だ。あの女性はただの人じゃない。
「た、束さん?」
束と言う名前を聞いて、この世の中で思いつくのはたった一人。
篠ノ之束。稀代の天才にして天災。この世に究極兵器、ISを生み出した張本人。
そして、俺が最もこの世で関わりたくない