竜が辿り着いた幻想郷・外伝   作:ベヘモス

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今回は魔女っ子アルト姫様の『幸運E-のIS学園生活』とのコラボです。
魔女っ子アルト姫様、今回のコラボ有り難う御座いました。

そして今回の話も長くなった。分かっていた事だけど、日常系の話だと如何しても長くなってしまうね。ま、戦闘系の話はキャラを如何動かすかで悩むから、どっちのが楽って事はないんだけどね。


外伝その6

生き物の気配を感じない深い森の中を歩く二つの影があった。

一人は身長が180を超える長身の男性<衛宮(こころ)>と、もう一人は狐の様な耳と尻尾の生えた桃髪の少女<キャスター>。

心が自身が通う学園の敷地内をランニングしていた所、突如として景観が変わり、気が付けば人気のない森の中を歩いていた。

異変に気が付いた心は急いで来た道を引き返そうとしたが、後ろを振り返っても道はなく、広大な森が続いている。

クラスカードとして心の懐に潜んでいたキャスターも、何時、どの様にしてこの世界に迷い込んでしまったのかは分からなかった。

話し合った結果、二人は此処が何処なのか探るために森を抜けようと試みているが、一時間ほど歩いても未だに森から抜け出せず、今もこうして歩き続けている。

 

「……一時間ほど歩いたがまだ森から抜け出せないのか」

「はい。ご主人様と二人っきりと言う状況は嬉しいのですが、こう草が多いと(わたくし)の珠の様な肌が草で被れてしまいます」

 

そう言いながらキャスターは木々の葉に何度も触れた自身の肌を労わるように撫でる。

キャスターの衣服は肌を露出している面が多く、背中に関しては大きく肌蹴ている。

前を歩く心がキャスターに気を遣って草を踏み締めたり、木々の枝を折ったりしても肌に当たってしまう。

 

「やっぱり今からマントを作るか? それを羽織れば草木は気にしなくて済むだろ」

「お心遣い有り難う御座います、ご主人様。ですが、この程度でご主人様のお手を煩わせるのは(わたくし)としては心苦しいですので、そのお気持ちだけで十分です」

「そうは言うけどな……」

「ご心配なく。(わたくし)の珠の肌はこの程度の事では傷付きません。……あ、でも、もし被れてしまいましたら、その時はご主人様がやさし~く手当てしてくださいね?」

「……そうくるか」

 

おどけた様に笑うキャスターを見て、心は内心呆れながらも優しげな眼差しで微笑んだ。

心の微笑みに心打たれたキャスターは彼に抱き付こうとしたが―――

 

―ガキーンッ!―

 

―――遠くの方から甲高い金属音の様な音が聞こえてきた。

遠くから聞こえてきた金属音に二人は驚きながらも、心は脇目も刳らずその音が聞こえた方へと走り出していく。

キャスターも遅ればせながらも心の後を追いかけて森の中を走っていると、二人は何時の間にか森の出口へと辿り着いていた。

心は森の出口へと辿り着いても直ぐに森から出る事はせず、近くの茂みの中に身を潜め、キャスターもそれに習い茂みの中に隠れる。

茂みの中に隠れている二人が見たものは、実体の無い光る大剣を握り締めた空の様に青い髪の青年が、川辺で全身を鱗に覆われた大柄で二足歩行の亀の様な化け物と戦っている光景だった。

心は亀の様な化け物を見たとき、怪談なので聞く河童を連想させたが、キャスターは別の存在の名を口にする。

 

「あれは水虎(すいこ)? 随分と珍しいですね。てか、まだ存在してたんですか」

「水虎? 河童じゃないのか?」

「いえ、違います。確かに河童と同じ様に川などの水辺に住む妖怪ですが、元々は大陸の方に住んでいた妖怪です。大陸の方の水虎はおとなしく、悪戯をしてくる子供に噛み付き返す程度の妖怪ですが、あの風貌からして恐らく日本の水虎(・・・・・)のようです」

「日本のって事は、大陸と日本の水虎になにか違いでもあるのか?」

「かなり大きな違いがありますね。大陸から渡った際に水虎は河童と混同されました。それが原因なのかは定かでは有りませんが、日本に住む水虎は獰猛で人の命を奪う危険な妖怪となりました。場所によっては相手の生き血を吸い、その霊魂も食べるとか」

「人の命を奪うか……。だとしたら一人で戦うのは危険だな、見知らぬ相手とは言え誰かが血を流す所は見過ごせないし、ここは彼の手助けをしよう」

「わーッ! ご主人様、ストップストップ!」

 

キャスターは心を制止しようと声を挙げるが、心は止まらず、手の中で黒塗りで艶のない洋弓と一本の剣を作り上げる。

剣を矢に変換してつがえ、茂みの向こうで戦いを繰り広げている水虎に狙いを定めようとしたが、青髪の青年が戦いの最中にも拘らず心たちの居る茂みをジッと見詰めていた。

見られている事に驚いた心は弓矢を構えるのを止め、茂みの中で息を潜めるが青年の視線が外れる事はなかった。

戦いの最中で余所見をしていれば当然隙ができ、水虎もそこを突いて虎の様に鋭い爪を青年に振り下ろす。

完全に隙を突かれていて、アレは回避する事は出来ない。心は茂みから見ていてそう判断したが、青年は一瞬の内に姿を消し、水虎の後ろに回りこんでそのまま水虎を蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされた水虎は小石を撒き散らしながら地面を滑るが、直ぐに立ち上がり敵意を剥き出しにして青年の事を睨みつける。

 

「そんなに睨んでも俺の仕事は変わらないし、以前に大人しく山に引っ込めと警告もした。それを聞かずに里の人間に手を出したのはお前の方だ。……なら、退治されるのも覚悟の上での行動だろ」

 

水虎が剥き出しにしていた敵意をなかった事にするかのような威圧。その圧倒的な威圧を目の当たりにし、キャスターの尻尾の毛が全て逆立つ。

青年は握り締めていた光の大剣を消し、空いた腕を前に伸ばすと、何もない空間から刀身に雲を纏う片刃の大剣が出現する。

一切の装飾が施されていない無機質で無骨な剣。だが、心は青年がが取り出した剣から目が離せなくなってしまう。

聖剣・魔剣問わず数多くの剣を内包する心だが、青年の剣は聖剣とも魔剣とも違う輝きを放っている。

装飾のない無機質で無骨な剣である筈なのに、その存在感と輝きは名だたる聖剣や魔剣にも勝るほどのものだった。

心は無意識の内にその剣がなんであるか解析するが、青年が取り出した剣の創造理念に頭を抱え、基本骨子に目を丸くし、構成材質に驚愕し、製作技術に感銘し、成長にいたる経験に絶句し、蓄積年月に唖然とする。

二つの剣を分解し、一つの剣として再構成された神造兵装。多くの剣を見てきた心からしたら、それは余りにも異質過ぎる存在だった。

そんな心の驚きを他所に青年は剣を握り締め、水虎へと走り出したかと思えば、青年は先ほどと同様に一瞬にして姿を消す。

キャスターは消えた青年を探すように茂みの中から辺りを見渡すが、青年は何事もなかったかのように水虎の後方へと姿を現した。

そして付いた汚れを祓うように剣を振った次の瞬間、水虎の身体は十字に切り裂かれ、バラバラになって地面に崩れ落ち、そのまま消滅していった。

 

「……矢も通さないという水虎の鱗を易々と斬り裂くなんて、とんでもない剣ですね」

「まぁ神造兵装ならあの位出来ても不思議じゃないが、一体何の冗談だ。アレが天叢雲剣だと?」

「あの剣が叢雲ですって? ご主人様、幾らなんでもそれはありませんよ。だって、(わたくし)の知っている叢雲とは形が違いますもの」

「俺だって自分の言っている事が信じられないけど、解析したら叢雲だと解ったんだ」

 

心自身も自分の言っている事が信じられないのか、解析して出た結果を鵜呑みに出来ずにいる。

そんな中、妖怪退治を終えた青年は大きく背伸びをした後、心たちが潜んでいる茂みをジッと見詰める。

視線を向けられた二人は茂みの中で縮こまり、なんとかやり過ごそうと試みるが、青年は面倒臭そうに溜息を吐く。

 

「おい、そこで隠れている二人組み。水虎退治は終わったからもう出てきていいぞ」

 

青年は面倒臭そうにしながら、茂みに隠れている心をキャスターに出て来るように促す。

心は青年の催促にどう対応しようか考えたが、現状を鑑みればここは茂みから出るのか最良と判断する。

二人で森の中を彷徨い続けたが、未だに此処がどこなのか分かっておらず、帰る手段も見つかっていない。

そんな中で、言葉が通じる相手と巡りある事が出来た。ここは姿を現し、情報を集めるべきだと心はそう判断した。

心は握り締めていた弓と矢を消し、武装を解除してから姿を現し、キャスターも心に続いて茂みから出る。

青年は茂みの中から姿を現した二人をジッと見据えた後、物珍しい物を見たような顔になった。

 

「ふむ……狐の妖怪と人間か。その狐に憑かれてこんな所を彷徨っていたのか?」

「さらっと酷い事を言ってくれますね。(わたくし)はご主人様に取り憑いてなどいません。纏わり憑いているのです!」

「いや、それはそれでどうかと思うけどな。とりあえずキャスターは少し黙っていてくれ」

「あぁん、ご主人様ひどい」

 

キャスターは傷付いたような素振りを見せながらいじけるが、心はそれを無視して青年に話しかける。

 

「見ての通り俺達は森の中を彷徨っていた者だが、アンタに幾つか尋ねたいことがある」

「なんだ? まぁ格好から見て幻想郷の住人じゃないようだが……」

「幻想郷……。それがこの地の名前か。それについても幾つか聞きたいけど、それ以上に聞きたいのはどうしてアンタが天叢雲剣を持っているのかって事だ。それも別の剣を混ぜ合わせて再構成した物だなんて」

 

心は青年にどうしても気になっていたことを尋ねてみるが、聞いてはいけない事を聞いたのか、青年の顔が険しくなる。

 

「お前、一体何処でその事を知った」

「そんな事は如何だっていいだろ。それよりも重要なのはどうしてアンタがその剣を持っているのかだ。天叢雲剣と言えば、大蛇の尾から出土し、幾人の神々や人の手に渡り歩いた剣だ。今は何処かの神社で保管されてるって話だけど、少なくともこんな所にあっていい剣じゃ―――」

 

心は青年の事を更に問い質そうとするが、言葉を言い切る前に青年は心の喉元に剣を突き立てた。

剣を突きつけてきた青年は警戒心を剥き出しにし、鋭い眼差しで心の事を睨みつけている。

油断していたとは言え、心には戦いの心得がちゃんとあり、そこらに居る相手なら剣を突きつけられても反応する事は出来る。

しかし、今のには反応する事が出来ず、気が付けば剣を喉元に突きつけられ、ゴウっと言う風を巻き上げる音が聞こえてきた。

 

「ご、ご主人様!? 貴方、いきなり何をするんですか?!」

「……お前、この剣の事を一体何処で知った」

「なに?」

「大抵の奴はこれを叢雲だとは気付かない。銘を教えても信じない奴が多い中でお前はこいつの名を言い当てた。それだけならまだいいが、この叢雲が他の剣と混ざっている事も知っている。その事を知っているのはごく一部だけだ。……お前、一体何者だ」

 

心が尋ねた素朴な疑問。それを尋ねられただけで青年は心の事を警戒し始める。

質問をした心からしたら大した事では内容ではないが、青年の方からしたら心は今までにない異様な相手に見えてしまう。

この剣の銘を言い当てただけではなく、剣の作られ方まで言い当てる輩など過去に一人も居なかった。

それがましてや此処が幻想郷だと知らない外から来た人間となれば、心の事が異様な相手に見えてしまっても仕方がない。

この剣の事は一部の神々と青年の近しい者しか知らないのだ。警戒するなと言うほうが無理がある。

しかし、そんな事など知るはずのない心たちからすれば、いきなり剣を突きつけられて脅されているような状況。どうしてこうなったのか分からず困惑してしまう。

全く反応できずに剣を突きつけてきた事を考えると、下手に動くと一瞬で喉が切り裂かれてしまうの目に見えている。

キャスターは心を助けようと、服の袖から呪符を取り出そうとするが、青年に睨みつけられて身が竦んで動けなくなってしまう。

青年は心に剣を突きつけながらも、キャスターに対しても警戒を怠らず、その一挙手一投足にも目を光らせている。

このままでは如何する事も出来ない。そう判断したキャスターは肩の力を抜き両手を上に上げた。

 

「……なんの真似だそりゃ」

「見ての通り降参ですよ。今の(わたくし)では貴方に勝つ算段が付きませんし、下手に抵抗してご主人様が貴方に斬られる所なんて見たくありませんから。……そう言う訳ですのでご主人様もその方に本当の事をお話しに為られたほうがよろしいかと」

「……そう、だな。あまり自分の力を喋りたくはないが、此処で死ぬ訳にはいかない」

 

そう言って心も両手を上に上げ、抵抗する気がない事を青年にアピールする。

二人が手を上げるのを見た青年は暫しの間二人の様子を観察したあと、突きつけていた剣を引いて心から距離を取った。

 

「それで? お前は叢雲の事を何処で知ったんだ?」

「一つ誤解してるみたいだが、別に俺は何処かで誰かからその剣の事を聞いたんじゃない。ただその剣を解析しただけだ」

「叢雲を解析しただ? そんな事でコイツの製造法が分かるとは思えないんだが……」

「まぁ確かに普通なら無理だな。でも俺が投影は普通じゃないからな」

「……さっぱり話が見えないが、俺をおちょくってるなら力尽くで吐かせるぞ」

「別におちょくってる訳じゃない。俺は投影という自己のイメージからそれに沿ったオリジナルの鏡像を魔力によって複製する魔術が使えるんだ」

「オリジナルの鏡像って事は、簡単に言えば贋作を作り出す魔法ってことか」

「魔法じゃなくて魔術だけど有体に言えばそう言う事だ。俺が投影を行うときは、創る物の創造理念を鑑定し、基本骨子を想定し、構成材質を複製し、製作技術を模倣し、成長にいたる経験に共感し、蓄積年月を再現する。その為にはオリジナルを解析しなくちゃいけない。叢雲の事を知ったのはそれが理由だ」

「……俄かには信じがたい話だな。創造理念を鑑定してから蓄積年月までも再現するって、普通に考えたらありえないだろ」

「確かに普通の魔術師はここまでしないな。それに普通は創造理念を鑑定なんてしないで、設計図から入って材質、性質、年月を再現するんだ」

「普通はって事はお前が使う投影とやらは普通じゃないって事か。ま、今の話を聞けば納得出来るけどな」

 

心は自分の力の全てを話したわけではないが、嘘を付いているわけでもない。

厳密に言えば心が使う投影は大本となっている魔術から零れ落ちたものに過ぎない。だが、その事まで青年に話す必要は無いと感じ、心は大本に在る魔術の事を黙っている事にした。

現に叢雲の事を知ったのは解析をした為であり、青年もそれで納得している為これ以上の事を話す必要はなかった。

 

「物を複製する魔法か。今までそんな魔法の話は聞いた事なかったが、面白そうな魔法だな。なぁお前、叢雲を解析したんなら、コイツを投影する事って出来るのか?」

「だから魔法じゃなくて魔術だって。それとその剣の投影は無理だ」

「あ、なんでだよ?」

「その剣は神造兵装だ。そんな物を投影したら自滅する。……俺には帰らなくちゃいけない場所があって、帰りを待たせている人たちがいる。こんな所で命を無駄にするような事は出来ない」

「いや、俺だって命を捨ててでも叢雲を複製しろとは言わねぇよ。でも、投影とやらには益々興味が出て来たし……。一つ聞くが、叢雲じゃなかったら投影できるのか?」

「叢雲っていうか、神造兵装じゃなかったらな。まさか今度はあの光り輝く剣を投影しろとか言うんじゃないだろうな」

「アレは俺自身の力を剣の形で具現化させてるだけだから無理だろ。実は家にもう一本剣があるんだが、ちょっと変わった剣でな。そいつを投影してみてくれないか?」

 

さっき警戒していたときとは違い、気さくそうな笑みで青年は心に頼んでくる。

その笑みを見て心はよく表情の変わる奴だと呆れつつ、彼の頼みを聞くかどうか決めかけていた。

投影の事を話したのだから、実際に創るところを見せてしまっても良さそうなものだが、そんな事をしても自分には何のメリットもないのではと考えてしまう。

だが結局は、青年の言うちょっと変わった剣に心も興味を持ってしまい、条件付きで彼の頼みを聞く事にした。

 

「……投影するのは構わないが、代わりにコッチの頼みも聞いてくれないか?」

「ん? 俺が頼んでるんだし、それは別に構わないが……あまり無茶な事は言うなよ?」

「無茶かどうかは分からないが、俺達は元居た場所に帰りたいんだ。その為の手段や方法を教えてくれ」

「元居た場所に帰りたい? それだったら俺の家に来るしかないぞ。てか、この幻想郷から出る方法ってかなり限られてるから、うちの神社に来るか、八雲の奴を見つけて頼み込むしかない」

「そ、それ、本当か!?」

「あぁ。武器を投影してもらったら送り返してやるよ」

「……そうか、そうかッ!」

「良かったですね、ご主人様! これで皆さんの元へ帰れますよ!」

「あぁ!」

「それでお前ら一体何処から来たんだ? 狐は兎も角、お前は外から来た人間だろ?」

「キャスターも俺も同じ所から来たんだ。IS学園って言う所だが、アンタも名前くらいは知ってるだろ?」

 

心は運よくもとの場所に帰る手段を見つけたと内心喜んでいたが、青年は〝IS学園〟と言う名前を聞いてもピンと来ないのか、不思議そうな顔で首を傾げている。

 

「あい…えす? 変わった名前だが一体何処の事を言ってるんだ?」

「いや、アンタこそ何を言ってるんだ? IS学園だぞ。日本に設置されたIS操縦者育成用の特殊国立高等学校だ。行った事なくても名前くらいは聞いた事あるだろ」

「いや全然。外の世界には釣りの為にちょくちょく行くが、そんな学園なんて聞いた事も見た事もない。……もしかしてお前ら、外から来たんじゃなくて並行世界から来たのか」

「並行世界って、俺たちは第二魔法は使えないぞ」

「お前達が使える使えないに関係なく並行世界の住人がやって来るんだよ。ったく、一番面倒臭いパターンだなコレ」

 

青年は心底面倒臭いと言いたげに深い溜息を吐く。

そんな青年の様子を見て、心は帰る方法はあるが、あまり取りたくない方法なのだろうと察した。

 

「面倒臭いんですか?」

「回りくどい方法を取らないと帰してやれないからな。ま、その辺りの事は歩きながら説明してやるよ。どうせ此処からだと神社まで二時間くらい掛かるし」

「に、二時間?! ……ご主人様~、(わたくし)歩くのに疲れちゃったので、おんぶして欲しいな~なんて思っちゃったり」

「キャスターはクラスカードに戻れば歩かなくて済むだろう」

「そんな~。ご主人様のいじわる~」

「どうでも良いけど、さっさと行くぞ。此処で何時までも喋ってたら家に着くのが夕方になっちまう」

 

そう言って青年は出していた叢雲を消して自分の家だと言う神社へと向かって歩き出す。

二人に背を向けて先へと歩いていく青年を見て、二人も慌てて彼の後を追いかけて歩き出し始めた。

 

「ち、ちょっと待ってくれ。案内してくれるのは嬉しいが、まだアンタの名前を聞いてない」

「あん? ……そういやまだ名乗ってなかったか、俺の名は『リュウ』。ただの竜だ」

「俺は衛宮心だ。宜しく頼む、リュウ」

(わたくし)はご主人様の良妻サーヴァントのキャスターです。以後お見知りおきを。……ところで、貴方ほどの方が〝ただの竜〟と名乗るのは如何なものなのかな~って(わたくし)思います」

「んな細かい事は気にするな」

「いえ、細かくはないと思いますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

空色の髪の青年<リュウ>が暮らす神社へと向かって歩き続けること二時間。三人は漸く博麗神社へと続く山道を昇り始めた。

山道に辿り着くまでの道すがら、リュウは二人に幻想郷の事や元の世界に帰るための方法などを説明する。

心たちが幻想郷から元いた世界に帰ろうとした場合、時差が出来てしまい、帰ったらどの位時間が進んでいるのか分からないと言われた。

その上、何時に為ったら元の世界に帰れるのか保障も出来ないと言われ、心はリュウに食って掛かろうとしたが、寸前のところでキャスターに止められ、渋々ながら心は拳を引っ込めた。

リュウの話を聞いてキャスターはすんなりと受け入れる事が出来たが、科学技術が発展した世界で生きる心にとってリュウの話は俄かには信じがたいものだった。

 

「……忘れられたモノが辿り着く郷か。俄かには信じられないな」

「お前さんが信じられなくても此処はそう言う場所だ。お前が如何思うとそれは変わらない」

「……………」

「ところで、お前らはウチの神社に泊まるつもりなのか?」

「話を聞く限りだと直ぐに帰れる訳でもないみたいだし、泊まらせてくれるとありがたいが……何か問題でも?」

「いや、俺としては里にある命蓮寺って寺の厄介になってもらいたいんだが、此処まで連れて来ておいて用が済んだから寺に行けってのも流石にアレか。……面倒臭い」

 

神社に二人を泊まらせるのが嫌なのか、リュウは心の底から面倒臭そうな溜息を吐く。

 

「おやおや、随分と深い溜息ですね。そんなに(わたくし)たちを泊めるのが嫌なのですか?」

「嫌というか、食料の調達が面倒なんだ。基本的にウチは貧乏だから、大量の食材を買い込んだりしないで必要なときに必要な分だけ買う。一日二日程度なら気にしないが、お前らみたいに何日滞在する事に為るのか分からない相手となると、それなりの量の食材が必要に為ってくる。でもそれを買うだけの金がないとなると……如何したらいいのか、お前らに分かるか?」

「そうですね……お金がないのなら、野山を駆け回って食材を探すしか在りませんね。これだけ自然が豊富なら食べられる野草だけではなく、肉や魚も豊富にあるでしょう。……あ、つまりはそう言う事ですか」

「そう言う事だ。理解が早くて助かる」

 

キャスターはリュウが面倒臭がっている理由に合点がいったのか、納得した様に一人で頷く。

リュウはリュウで正解を口にする事無く、ただただ面倒臭そうに溜息を吐くが、心だけがリュウが面倒臭がっている理由を分からないでいた。

 

「……キャスター、一人で納得してないで俺にも分かる様に説明してくれ」

「説明も何も、本人が言っていたではないですか。食材の調達が面倒だと。自然が豊富だと言っても採れる野草の量にも限りはありますし、肉や魚を獲るのに時間が掛かります。リュウさんのご家族が何人居るか分かりませんが、(わたくし)たちの分を含めてとなると結構な量が必要に為りますからね」

「つまりリュウは食材の調達に掛かる時間と手間を面倒だといっているのか。でも、その位なら俺も手伝うぞ。突然押し掛けて泊まらせて貰うんだ。多少は手伝うぜ」

「バーカ、そんな事頼めるかよ。友人だったら問答無用で手伝わせるが、客人にそんな事できるか。……零児の奴が居れば、魚を安く(ゆず)ってもらうんだがなぁ」

 

リュウは空を見上げながら小さな声で「一体何処で何してるんだか……」と呟く。

余りにも小さな声に、リュウの呟きは山を吹きぬける風の音の前に掻き消されてしまう。

 

「ですが、食材の調達が面倒だから寺に行って欲しいと言うのが本音でしょう?」

「まぁな。あそこは完全平等主義を掲げる住職が切り盛りしている寺だからな。お前らみたいな連中も快く受け入れるだろうし、飯の心配もしなくて済むだろう」

「まぁ確かに狩りに出かけたからと言って必ず獲物が獲れる訳でもないですからね。長期間滞在する事になるのなら、リュウさんの言うお寺の世話に為ったほうが良いかもしれません。……ところで完全平等主義って如何言う事です?」

「端的に言えば人も妖怪も神々も等しく同じであるって考え方だよ」

「うぇ、なんですかそのとんでも主義。そんなのがまかり通るならこの世に差別なんて生まれませんよ」

「本人たちも無理言ってるのは自覚してるさ。自覚した上でそれに殉じようとしてるんだ」

「ある意味凄い方なんですねぇ……。でも(わたくし)、その方たちと仲良く出来る自信はありません。なのでご主人様、ここはご飯が食べれないかもしれない事を覚悟の上で、リュウさんの神社に泊まらせてもらいましょう」

「そうだな。此処まできて寺まで引き返せって言うのは流石に辛いものがある」

「いや、流石に米と味噌はあるから、最悪でも白米と野草の味噌汁と漬物くらいは出るぞ」

「思った以上に少ないな。……おかわりは出来るのか?」

「それは霊夢がどの程度作るのかによるな。……っと、ウチの神社が見えてきたぞ」

 

リュウが二人にそう告げると、山道の先に赤い鳥居が見えてくる。

三人はそのまま山道を上り切り、赤い鳥居の下までやって来た心とキャスターの前に堂々とした神社が建っていた。

人気のない寂れたような神社ではあるが、本殿は中々に立派な佇まいで、境内も毎日綺麗に掃除してあるのか、ゴミ一つなく清潔感が保たれている。

この神社の御神体を祀っているであろう本殿の戸は閉じられているが、戸は格子状になっていて中の様子を窺う事ができた。

本殿の奥には大きな木彫りの竜の像が祀られていて、初めて訪れた二人はあの竜に睨まれているのではないかと言う錯覚を覚えてしまう。

しかし、本殿に祀られているのは木彫りの像。生きている筈などなく、只の勘違いだと気を持ち直した。

本殿に祀られている竜の像に驚く二人を他所に、リュウは境内の中を見回し、不思議そうに首を傾げる。

 

「あっれ? 霊夢の奴居ないな。買い物にでも出かけちまってるのか?」

「霊夢? さっきもその名前が出たが、一体誰なんだ?」

「俺の奥さんの名だ。……ま、ただ昼寝してるって可能性も有るし別に良いか。とりあえず俺は例の剣を持って来るから、お前達は境内で大人しくしててくれ。直ぐに戻る」

 

そう言ってリュウは二人を境内に残し、本殿の横を通り神社の裏手へと向かっていく。

残された心はリュウの言う通りに境内で大人しく待つ事にしたが、キャスターはこの神社にあるものが物珍しいのか、物色はしないものの、しきりに辺りを見渡している。

 

「……落ち着けキャスター。一体如何したって言うんだ?」

「いえ、この神社は随分と珍しい神を祀っているんだなーって思いまして」

「珍しいって、あの本殿に祀られている竜の事か?」

「はい。竜神信仰自体は古くから存在する信仰ですし、農耕が盛んなこの辺りの地域では祭られていても不思議ではありませんが、祀られている竜の像のデザインが珍しいのです。一般的に竜神信仰で祀られる竜神と言うのは東洋の龍……所謂、蛇の様な姿をした龍ですが、この神社に祀られている像は西洋の竜、ドラゴンと呼ばれるトカゲの様な姿の竜です。西洋の竜を祀る神社なんてそう滅多にありませんよ」

「なるほど。それでキャスターが珍しがっているのか。普段の言動から忘れがちだが、一応巫女だし、そっち方面に詳しいキャスターが珍しいって言うんだ。この神社に祀られている神様は相当マイナーなんだろ」

「ですね」

「ちょっとアンタ達、ウチの神社に何の用よ」

 

突然後ろから声を掛けられた二人は、驚いて後ろを振り返るとそこに居たのは凛とした佇まいの気の強そうな黒髪の女性だった。

女性の手には竹細工の大きな買い物籠が握られており、その中には沢山の野菜が入れられているところから見て、買い物帰りなのは誰の眼から見ても明らか。

ウチの神社と言っていたところから二人は彼女がこの神社の関係者だと直ぐに察する。

世間一般的な巫女服とは違うものの、赤を基調にしたその服が巫女服の様に見えない事もない事から、この神社の巫女さんなんだろうと心は考えた。

 

「……ふ~ん、狐に取り憑かれた外来人ね。幻想郷に迷い込んだ挙句、その狐に取り憑かれて困っているのなら追い払ってあげても良いけど、ウチは高いわよ?」

「なんかリュウさんも同じ様な反応でしたが、違います! (わたくし)はご主人様に取り憑いてなどおりません!!」

「ご主人様って事は、その狐アンタの式神? それだったら悪い事を言ったわね。仕事の依頼じゃないのならただの参拝客かしら? それだったら素敵な賽銭箱はあそこにあるわよ」

 

そう言って女性は完璧な営業スマイルで二人に本殿にある賽銭箱に行くように促す。

巫女が営業スマイルでお賽銭するように促すのは如何なのだろうと、心は彼女の笑顔を見ながら思わずそんな事を思ってしまった。

 

「……悪いけど俺達は参拝客じゃない。リュウって奴に案内されて此処まで来たんだ」

「リュウに? ……アイツ、帰りがやたらと遅いから何処で油売っているのかと思ったら、あんた等を案内してたの。それは帰りも遅くなるわね」

「ところで貴女は誰なんだ? ウチの神社と言っていたから、この神社の関係者なんだろうけど……」

「私? 私は……そうね、この神社の先代の巫女で、今は巫女代行をしている霊夢よ」

「巫女代行ですか? 随分と変わった肩書きですね。先代の巫女と仰るのであれば、当代の巫女はどちらにいるのです?」

「あの子は所用で家を空けてるのよ。だからと言って神社を無人にする訳にもいかないから、代わりに私が色々とやってるの」

「巫女が神社を空けなくちゃいけない理由って一体……」

「他人のアンタに話すわけないでしょ。何考えてるのよ」

 

心は素朴な疑問を口にするが、黒髪の女性<霊夢>はそれを冷たく一蹴する。

そのキツめの口調に心はまるで自分に感心が無いんじゃないかと思ってしまう。

リュウは霊夢という名前の女性が自分の奥さんだと言っていたが、もし目の前に居る人が彼の言っていた霊夢なのだとしたら、彼はよく彼女と結婚できたなと心は妙な感心をしてしまった。

 

「なんか境内が妙に騒がしいが、一体何事だ……って霊夢、帰って来てたのか」

「あ、リュウ!」

 

鞘に納められた剣を持って境内にリュウがやって来ると、霊夢は彼の姿を見て嬉しそうに顔を綻ばせてから彼の元へと走っていった。

さっきまでとは違う態度に二人は呆気に取られ、驚きの余り二人の方を振り返る。

 

「ちょっとリュウ、幾らなんでも帰ってくるのが遅いんじゃない? 水虎程度の妖怪、アンタなら一瞬で片付けられるでしょ」

「悪い悪い。水虎退治自体は難なく終わったんだが、途中で面白そうな奴を見つけてな。連れて来るのに時間が掛かったんだ」

「面白そうな奴って後ろのどっちかの事? まぁリュウが狐を面白いと感じるわけないし、男の方かしら」

「あぁ。アイツ、見ただけで俺の叢雲を解析した上に、魔力で物を複製できるって言うんだ。この幻想郷でもそんな能力を持っている奴なんていないだろ」

「確かに私も聞いた事無いわね。……でも、それはそれ、これはこれよ。余りに帰りが遅いから買い物がてら迎えに行こうと里にいったら、慧音からまだ来てないって言って気にしてたわよ」

「……あ、そう言えばまだ上白沢さんに仕事の報告してなかったな」

「全くちゃんとしてよね。アンタの事だから心配は要らないって言っておいたけど」

「心配掛けちまったか。悪いな霊夢」

「バカね、この程度の事で謝るんじゃないの。私はリュウの事信じてたから、心配なんてこれぽっちもしてなかったわよ」

「言ってくれるなぁ」

 

おどけた様にリュウは肩を落すものの、直ぐに二人して楽しそうに微笑む。

コレと言って中身のない他愛ないではあるが、そんな話でも二人は楽しそうに笑っている。

先ほど見た営業スマイルとは違い、心とキャスターにも今の霊夢の笑顔は本当に楽しいと思って笑っているのだと感じる事ができた。

自分たちと接していた時との態度の違いに驚くが、恐らくはアレが彼女たちの素なのだろう。

心は遠目から見てそう感じ取る事が出来たが、当の本人たちは心とキャスターの事を放置して、すっかり自分達の世界を作り上げていた。

 

「……なんでしょう、この何ともいえない感情は。あの二人を見ていると、物凄く羨ましくて堪りません! ご主人様! (わたくし)たちもラブラブ~でアツアツ~でイチャイチャな事をやりましょう!!」

「なんでさ……。とりあえず落ち着けキャスター」

「これが落ち着いてなどいられますか! よくよく考えてみればここには箒さんや、鈴さんなどのライバルも居ないわけですし、誰にも阻まれる事無くご主人様と契りを交わせるじゃないですか! この期を利用しない手はあるでしょうか? いいえ、ありはしない!!」

「自己完結するなよ!? てか、俺は止めるからな!」

 

リュウと霊夢の仲の良さに当てられたのか、キャスターが暴走を始めて心に迫り始める。

キャスターの形相に心も今回は本気なんだと察するが、流石に人の家でキャスターがやろうとしている事をする訳にはいかない。

かと言って、今のキャスターを言葉だけで止まられはしないだろうし、ここは力尽くで止めようかと心が考え始めたとき―――

 

「……お前ら、神社の境内で何しようとしてるんだよ」

 

―――冷めた瞳でリュウと霊夢が二人の事を見ていた。

二人の冷たい視線を受けてキャスターも気が削がれたのか、無理に心に迫るような真似はしなかった。

 

「むぅ……。流石にこれでは迫れませんし、今回は大人しくしましょう。それに、直ぐに帰れる訳じゃないですし、チャンスはまだまだありますものね♪」

「すまん、助かったよリュウ。今のお前は凄く輝いて見えるぜ」

「いや、それは別にいいんだけど……ほどほどにしろよ、狐」

「は~い」

「……するなとは言ってくれないんだな」

「それはそうと、これがお前に複製してもらおうと思った剣だ。受け取れ」

 

そう言ってリュウは心に向かって一振りの剣を投げた。

心は投げられた剣を受け取り、鞘から抜いてその剣を抜いてみる。

リュウが渡したのは黄金の柄に青い宝石が埋め込まれた両刃の大剣。大剣ならではの重量が心の手にズシリと伝わるが、その剣の事を知って心は眉を顰める。

 

「これはノートゥング? いや、その名を冠した別の剣か? でもこれは……」

 

心は叢雲の時と同様に見ただけで渡された剣の銘を言い当てる。

霊夢は心が剣の銘を言い当てた事に感心するが、当の本人はそんな事気に為らない位に渡された剣を不思議に思っていた。

 

「リュウ、お前この剣を一体どうやって手に入れたんだ?」

「昔骸骨の騎士を斬り捨てて、落ちてたものを拾ったんだ。……あぁ、ちゃんと霊夢にお祓いして貰って、清めてあるから安心しろ」

「いや、別にそんな心配はしてないけどなんでこの剣が此処に在るんだよ。ノートゥングって言えばニーベルングの指輪って楽劇に登場する剣だ。北欧神話でいうところのグラムやバルムンクに相当する。あの楽劇が作られたのは近代だから、名前だけで実在しない剣だと思っていたんだが……」

「そんな細かい事私たちは知らないわよ。ただこの幻想郷にはそういった良く分からないモノが沢山流れ着くの。里の貸本屋にネクロノミコンとか言う本もあるしね」

「ね、ネクロノミコンってそれ本物なのか?」

「知り合いの魔法使いや店の奴が言うには本物らしいわよ。私たちはその手の物に関してはさっぱりだからよく分からないけど」

 

如何でも良さそうに言う霊夢の言葉に心は思わず絶句してしまう。

ネクロノミコンと言えば、魔術師でない一般の人間でも一度くらいはその名を耳した事があるであろう本。

貸本屋というのが何のか心には分からなかったが、言葉の響きからその店が如何いう店なのか見当は付く。

そんな店にネクロノミコンほどの本を取り扱っている事に、心は改めて幻想郷の出鱈目っぷりを思い知った。

 

「ネクロノミコンの写本程度で驚くなよ。紅魔館って屋敷の図書館に行けば、あれと同じ位ヤバイ魔導書が何冊かあるだろしな」

「アレと同格の魔導書が他にも存在するのか……。本当にとんでもない世界だな、此処」

「別にそれ程でも無いさ。そんな事よりも、そいつの投影は出来るのか?」

「あぁ。この剣は神造兵装じゃないから可能だ」

「そうか。ならお手並み拝見といこうか」

「あんまり人前で見せるようなモノでもないんだけど、まぁいいか。それじゃ始めるぞ。―――投影(トレース)開始(オン)

 

心はあまり乗り気ではないものの、元の世界に帰る為の交換条件として自分の力を二人の前で披露する。

短く紡がれた言葉を合図に、心は自身の魔術回路に魔力を通し、リュウに渡された剣をイメージする。

創造理念を鑑定し、基本骨子を想定し、構成材質を複製し、製作技術を模倣し、成長にいたる経験に共感し、蓄積された年月を再現し、幻想を紡いで一振りの剣を創り出す。

心の手の中に集った魔力は心がイメージした通りの形となり、何も無い所から渡された剣を瓜二つの剣を創り上げた。

手の中で創り上げられた剣に、その出来栄えから霊夢も感心したような顔になる。

会心の出来……とまではいかなくとも、心自身の中で納得の行く一品を創り上げる事が出来た。

 

「……うん、中々の出来だな」

「へぇ~……。本当に魔力で剣を創り上げちゃった。一体どういう原理なのかしら? 天目一箇神(あめのまひとつのかみ)の加護でも受けてるの?」

「あめの……なに?」

天目一箇神(あめのまひとつのかみ)ですよ、ご主人様。日本神話に登場する製鉄・鍛冶の神様です」

「そんな神がいるのか。初めて聞いたな」

「結構古くから居る神様なんだけど……。この分だとあの神様の力も大分弱くなってそうね」

 

古くからいる神であるにも関わらず、その知名度が失われつつある事に霊夢は「その内あの神様も幻想郷にやって来そうね」と呟き、呆れた様子で肩を落とす。

三人がそんな話をしている中で、リュウだけは心が複製した剣の事をジッと見詰めている。

 

「……衛宮、お前が創った剣ちょっと貸してくれないか」

「別に構わないが、如何するつもりだ?」

「ちょっと確かめたいだけさ」

 

そう言ってリュウは何をしようとしているのか語りはせず、心は不思議そうにしながら自身が投影した剣を手渡した。

リュウは渡された剣をマジマジと観察した後、剣の刃に自身の指を軽く押し当てて自分の指を軽く切る。

突然のリュウの行動に心とキャスターは驚くものの、剣を振り抜いたわけでもなく、軽く動かしただけでそれほど大きな傷が出来る筈はないと心は考えた。

しかし、リュウの指に出来た小さな傷は急に裂け、リュウの指から赤い血が流れ出す。

突然傷が裂けた事に心とキャスターは驚きを隠せないが、霊夢だけはやれやれと言った様子で呆れていた。

 

「お、おい、大丈夫なのか?」

「あぁ。この程度なら如何ってことは無い。……それにしても驚いたな、まさかここまで再現できるとは」

「いや、コッチとしてはリュウの指が裂けたことに驚いているんだが」

「……お前も存外鈍い奴だな。その剣を創る時に解析もしたんだろ? だったら如何してこうなったのか見当がつきそうなもんだが」

 

剣を複製し、リュウの指の傷が裂けるところを見ても、自分が何者なのか気付かない心にリュウは心底呆れ果てる。

心は何故リュウに呆れられているのか分からず首を傾げるが、リュウはやれやれと言った感じに溜息を吐いた。

 

「気付かない奴は気づかないものよ。……それにしても今回は他に適任がいないからって、態々自分の身体を使って試す事無いでしょうに」

「他の竜がいたとして、力を確かめたいから試し切りさせてくれなんて言えるかよ」

「ま、それもそうね。…それじゃ、見たいものも見れたんだし、さっさと慧音の所に行って来なさい。今回の仕事の報酬をふんだくって来なくちゃ」

「ふんだくれる様な仕事でもなかったと思うけどな。ま、これ以上報告が遅れる訳にもいかないし、さっさと行って来るか。帰りは遅くなるかもしれないが―――」

「それだったら大丈夫よ。今日は沢山買い物をしてきたから、明日の昼くらいまでなら持たせられるわ」

「―――流石は霊夢。よく分かったな」

「今日は何となく沢山買い込んでおいた方が良い様な気がしただけよ。褒められるほどの事じゃないわ」

「相変わらず勘のいい奴。……それじゃ行って来る」

「えぇ、行ってらっしゃい」

 

霊夢が優しげな笑みで微笑んでリュウの事を見送ると、リュウは心に剣を返してから何の道具も使わずに空飛んで行ってしまう。

そのありえない光景に心とキャスターは唖然としながら見送るが、霊夢は自身の手を数回叩いて二人の意識を自分の方へと向けさせる。

 

「はいはい、リュウの後姿を見てないでアンタ等は私と一緒に来なさい。今日から暫くの間、神社に泊まっていくつもりなんでしょ」

「え、えぇ、そのつもりですが……どうしてその事を知っているんです? リュウさんは先ほど、(わたくし)たちが泊まるなんて仰ってませんよね?」

「確かに言ってないけどそのくらい分かるわよ。こう見えても結婚して二十年以上経つんだから、言葉にしなくても伝わるものは伝わるわよ」

「へぇ~そうなんですか。…………って、二十年?」

「そうだけど、それがどうかした?」

 

なんでもないかの様に霊夢は言うが、二人には霊夢の言葉がどうしても引っ掛かった。

霊夢の見た目は20代前半といった位で、幻想郷ではない外の世界から来た二人からすれば、霊夢はまだまだ若い女性にしか見えない。

そんな彼女が結婚してから二十年以上も経つと言うのには、流石の二人も違和感を覚えてしまう。

幼少の頃から付き合いがあって、それが二十年以上になると言うならまだ納得は出来る。これなら見た目通りの年齢なんだと思えるが、霊夢は〝結婚して〟二十年以上になるといった。

幼少の頃から結婚していたとは考えられないし、例え許婚であったとしてもその様な言い方はしない。

霊夢の容姿を嘗め回すように見ていたキャスターは、いくつかの考えを経て一つの結論に辿り着く。

 

「れ、霊夢さん、一つお伺いしても宜しいでしょうか」

「なによ。てか、人の事をジロジロと見るんじゃないわよ」

「あの、ですね……霊夢さんは、今お幾つなんでしょうか」

「いきなり何を聞いてくるかと思えば私の年齢? そうね……私も自分の年を数えるような生き方はして無いから、はっきりとは言えないけど……多分四十は超えてる筈よ。子供を産んだのが二十四、五の時で、今あの子達が十七の筈だから」

 

霊夢の返答に心は目を丸くし、キャスターは信じられないモノを見た様に驚きを顕わにする。

 

「そ、その容姿で四十越え?! 幾らなんでもありえませんよ、どんな若作りですか、貴女!?」

「うっさいわよ駄狐。私は色々とあって人間を止めちゃっただけで、早苗みたいに若作りなんてしてないわよ。失礼しちゃうわねホント」

「あの霊夢…さん、俺も一つ質問が有ります」

「今度はなによ。てかアンタ、さっきと口調が違うわよ?」

「それは気にしないで。そんな事よりも、リュウって今幾つなんですか」

「今度はリュウの年齢? そんなの私だって知らないわよ。アイツ、昔あった事故の所為で過去の記憶をなくしちゃってるからね。ただ、最も古くから付き合いのある龍神が言うには、アイツとは数千年来の付き合いだとか」

「す、数千年って……もしかしてアイツ人間じゃないのか?!」

「え、そうだけど、まさかあんた気付いてなかったの? アイツは名前の通り竜族よ」

 

あっさりと自分の夫が人間ではないと認める霊夢に、心は驚いてキャスターの方を振り向く。

その向けられた視線から心が何を言いたいのか察したキャスターは、少しだけ申し訳無さそうにしながら口を開く。

 

「え~っとですね、一応(わたくし)は気付いていましたよ。水虎を威圧したときに(わたくし)の尻尾の毛が逆立ち、その時に〝あ、この方人間じゃないな〟って気付きましたし。ご自身も自分の事を〝ただの竜〟と仰っていましたから」

「そ、そうだったのか……。全然気が付かなかった」

「アイツの自己紹介の仕方も悪いし、あの姿じゃ気が付かないのも無理ないわよ。それより質問はもう終わり? それじゃアンタ等が泊まる部屋に案内してあげるから着いて来なさい」

「は~い。……ところでお部屋は相部屋ですか? それとも別々ですか? 出来れば相部屋を希望します」

「ウチは別に構わないわよ。部屋さえ汚さなければね」

「……チッ。あ、でも、部屋さえ汚さなければ良いんですよね? ご主人様~、今日からは一緒のお布団で寝ましょ?」

「キャスター、流石に家の人に迷惑を掛けたくないから、寝るときはクラスカードに戻ってくれ」

「あぁん、ご主人様のいけず~」

「……なぁにやってるんだか。ほら、さっさと行くわよ」

 

霊夢は二人のやり取りを見て呆れ果てながらも、先導して二人を母屋の方へと歩いていく。

心とキャスターは先を行く霊夢のついて行き、本殿の横を通って霊夢とリュウが暮らす母屋へと向かう。

心はこれから帰るまでの間、この神社でお世話に為るのだし、出来る限りの手伝いをしていこうと思いながらも、横で何か良からぬ事を考えていそうなキャスターをどうやって止めようか、真剣に考えていた。

 

 

 

 

 

 

………

……

 

心とキャスターが博麗神社に辿り着いてから大分時間が経ち、日も暮れてすっかり夜となっていた。

二人に振舞われたの夕食は、水虎退治の報酬が思いのほか多かったからか、霊夢が奮発して中々に豪華な夕食となった。

心は夕食を作るのを手伝おうとしたが、霊夢に「客人は大人しくしてる」と言われ、何も出来ないまま台所から追い出されてしまう。

量が多いだけに出来上がるまでに多少の時間が掛かったが、手間を掛けたものに見合うだけの料理が出来上がった。

テーブルの上に沢山の料理が並べられたのを見て、リュウはその料理の多さに呆れながらも「張り切りすぎだろ」と笑っていた。

そして四人は夕食を食べ終わり、後片付けも終えて、今は何かをする訳でもなく各々が好きな事に時間を使っている。

 

「それにしてもよくリュウさんと結婚できましたね。普通、竜と結婚だなんて周りに反対されそうなものですけど」

「確かにアイツがただの竜だったら反対されたでしょうけど、アイツは守護竜の類だもの。幻想郷で巻き起こった異変を何度も解決したし、この地に根強く残っている竜神信仰も後押しして、誰からも反対されなかったわ」

「はぁ~……。巫女が化け物と結婚するのは問題でも、巫女が神様と結婚するのは誰も反対しないと言うわけですか」

「そう言う事ね」

「でも、リュウさんの実年齢は不明で、最低でも数千年の時を生きてるんですよね? それなのに霊夢さんみたいな若い方と結婚って……もしかしてリュウさんって、ロr―――」

「アイツの事をロリコンなんて言ったら魔界の僻地に封印するわ。……それでアイツがなんだって?」

「―――ろ、ろ……碌な趣味してないですね。……イッタイッ!?」

 

なんとか封印を回避したキャスターだが、NGワードを避けようとする余り霊夢に軽く喧嘩を売ってしまう。

叩きつけるように札を額に貼り付けられたキャスターは、酷い頭痛に耐えるかのように悶えている。

普段は妖怪退治に使っている札を貼り付けられ為、妖弧であるキャスターにはそれなりの苦痛なのだろう。

心はそんな二人のやり取りを少し離れた所で眺めていたのだが、今の彼は暇を持て余してしまっている。

普段自分が暮らしている寮とは違い、この博麗神社には心が暇を潰せそうなものは何も置いていない。

テレビやゲームと言った家電製品は勿論の事、好きな漫画や雑誌などもなく、誰かに電話を掛けようにもその相手は元いた世界、幻想郷から見れば異世界にいる。

持って来たISを整備しようにも、碌な機材が無い此処では簡単な整備しか出来ず、こんな時間から始めるのは家の者に迷惑を掛けてしまう。

共にこの世界に迷い込んだキャスターは霊夢と談笑しており、その輪の中に入るに入れずにいる。

性格は全く違う筈なのに、何故かキャスターと霊夢は馬が合うのか、お風呂を上がってからずっと二人で話している。

心は何度か二人の会話に混ざろうと試みたが、二人の会話のペースについていけず断念してしまった。

このまま此処に居ても仕方がない。そう思った心は、二人には何も言わず居間を後にする。

居間を出て何か暇を潰せるものがある訳でもないが、あのまま居間に居てもする事がないため、結局は居てもいなくても同じ事。

とりあえずリュウに話し相手になってもらおうと、慣れない家の中を歩いていると、居間から離れた一室で電光の明かりとは違う灯りが燈っていた。

蝋燭の火と思われるオレンジの灯りがする部屋を覗くと、部屋の中でリュウが叢雲の手入れを行っていた。

神剣の手入れだと言うのに、使われている道具はどれもこれも特別な物ではなく、極々普通の道具で行われている。

淀みなく行われる剣の手入れに、心が感心しながら眺めていると―――

 

「……そんな所で見てないで入ってきたら如何だ」

 

―――呆れた様子のリュウに声を掛けられる。

声を掛けられた心は一瞬、如何したものかと躊躇ってしまうが、元々リュウに話し相手に為ってもらおうとしていた為、引き戸を開けて部屋の中へと入っていった。

 

「邪魔させてもらうよ」

「邪魔すんなら帰れ」

「来たばかりなのにいきなりそれはないだろ!?」

「あぁ、悪い悪い。知り合いにお前と同じ様な事を言ってやって来て、本当に邪魔して帰っていく奴が居るから、ついな」

「酷いな。一体どんな奴だよ、それ……」

「金髪白黒の魔法使いだ。……それで俺に何か用か? ま、大方あの二人の話についていけず、暇を持て余したって所か」

「……正解。あの二人の会話にはどうも混ざれなくて」

「だろうな。俺もアレには混ざれねぇわ」

 

疲れた顔で心が頷くと、リュウは笑いながら彼の意見に同意した。

心はリュの作業の邪魔に為らないよう、開いているスペースに腰を下ろし、彼の天叢雲剣を改めて観察する。

 

「それにしても、何度見ても凄い剣だなそれ。神剣と言うだけはあって、聖剣とも魔剣とも違う輝きだ」

「ま、神代三剣の一振りだからな。そこら辺の剣と同列に見られても困る」

「……神代三剣?」

 

あまり聞き慣れない単語に心が首を傾げると、リュウは呆れた様子で心の事を見る。

 

「ノートゥングや叢雲に関しては色々と知ってるのに、三剣の事に関しては知らないのか」

「悪かったな、知らなくて。……それで神代三剣ってのはなんなんだ?」

「簡単に言えば神代の時代から日本に伝わる三つの剣の事だ。この叢雲の他に、布都御魂、天羽々斬がそうだ。……流石にこの二つは名前くらい聞いた事があるだろ」

「そりゃ日本では有名な剣だからな。天下五剣と同じくらい有名なんじゃないか? ……そんな剣がなんで此処に在るのかがホントに分からないんだが」

「ま、昔にちょっとあってな。そん時にこの姿に為る前の叢雲を拾ったんだ」

「いやいや、道端に転がっているような剣じゃないだろ?!」

「外の世界じゃそうかもしれないが、この幻想郷じゃよくある事だ。この神社の周りを散策していると、色んなモノが落ちてたりするからな。絶版した本とか、幻と言われるアンティークとか」

「……ホントに凄い世界だな。その内、残り二つの神剣もやって来そうだな」

「そうかもしんねぇな」

 

可笑しそうに笑いながらも、リュウは「それはありえない」と否定する事は無かった。

恐らく本人もその内やって来るだろうと思っているのか、もう既に幻想入りしてしまっているのか、心にはそれ以上の事は分からなかった。

リュウは笑いながらも、叢雲を手入れする手は決して止めず、心と話しながらも手入れを続けている。

手入れにより磨き上げられた刀身は、灯篭の灯りを反射してキラリと煌く。

リュウは磨き上げられた刀身の状態をジックリと眺め、一人で納得したかのように頷いた。

 

「……うん、上々だな」

「随分と丁寧に手入れしていたな。やっぱり神剣だからか」

「いや、別にそんな事はねぇよ。この剣が神剣だろうが、無名の刀だろうが変わりはしない」

「……さっき、そこら辺の剣を同列に見られても困るとか言ってなかったか?」

「それは剣としての格の違いだろ。俺が言いたいのは、無名だろうが神剣だろうが俺の大切な愛刀である事に変わりは無いってことだ」

「……その剣、余程大事なんだな」

「一番古い友が俺の為に創り直してくれた剣だからな。……でも、この剣ちょっと困った奴なんだよな」

「困るって何が困るんだよ。それ程の剣の担い手なら誇りはすれど、困りはしないだろ」

「お前はコイツを振るった事が無いからそう言えるんだ。……衛宮、お前ハンカチみたいな薄地の布は創れるのか?」

「ハンカチ? その位簡単だけど、言ったい如何するつもりだ?」

「細かい事は気にするな。とりあえず創ったハンカチを叢雲の上に落としてくれ」

「…?? よく分からないが、まぁやってみるよ」

 

心が頷いて承諾すると、リュウは叢雲の刃を上にして刀身を心の方に向ける。

そして心はリュウに言われた通りハンカチを投影し、叢雲の上からハンカチを落とす。

普通の剣ならハンカチを落としても切れずに乗っかるものだが、リュウが持つ叢雲は普通とは違っていた。

上から落とされたハンカチは、叢雲の刃に触れると乗っかる事無く切り裂かれ、真っ二つになって畳みの上に落ちる。

投影で出来たハンカチはそのまま霧散して消滅するが、心は目の前で起こった事に驚きを隠せなかった。

 

「……何もしていないのにハンカチが切れた? り、リュウ、もう一回試しても良いか?!」

「あぁ、好きにしろよ」

 

リュウの許可を得た心はもう一度ハンカチを投影で創り出す。

創ったハンカチを今度は上から落とすのではなく、そっと被せるように置こうとするが、ハンカチは刃に触れた部分から真っ二つに切り裂かれ、霧散した。

心はこの叢雲を解析したときに、この剣の創造理念を鑑定している。

リュウの力を受け入れる器。究極の切れ味を持つ剣。そんな馬鹿げた創造理念の下でこの剣は創られた。

頭ではその事を分かっていても、実際にどれほどの切れ味なのか見てはいない。

その剣の切れ味を謳う伝承と言うのは多くあれど、触れただけで切れてしまう様な伝承などそうあるものではない。

伝説に名だたる剣たちよりも鋭い切れ味を持つ剣に、心はただただ目を見張るばかりだった。

 

「……見ての通り触れただけで色んなモノが斬れる。だから取り扱いには注意しないと、こっちの指が飛びかねないんだよ。ったく、使うのが俺だからって武器の危険性を度外視するなよな」

「いや、軽く言ってるけどトンでもない事だろ。なんでそんな危険なモノを使ってるんだよ」

「なんでって言われてもなぁ……。まぁ幾つか理由は有るが、俺にとってはコイツ以上の剣は存在しないからだ。友が創ってくれた剣だし、俺が竜の力を解放しながら使っても絶対に壊れない。切れ味に関しては、俺が取り扱いを間違えなければいいだけだしな」

「……その言い方だと、切れ味よりも壊れない事の方が大事みたいだな」

「実際に大事だからな。普通の剣だと俺の力に付いてこられずに壊れちまう。壊れる度に新しい剣を買っていたら出費が馬鹿に為らないからな。……ま、武器を幾らでも創れるお前には分からない悩みか」

「それは皮肉ってるのか、それとも羨んでるのかどっちなんだ」

「さて、どっちだろうな」

 

心の問いをはぐらかしたリュウは、出していた叢雲を何処かへと消し、手入れに使っていた道具を片付け始める。

その動作は普通の人間と何も変わらず、彼なんの種族なのか忘れてしまいそうになるほど。

何処から如何見ても普通に人間にしか見えないリュウに、心は本当に彼が竜なのか疑ってしまう。

 

「……そういえば、リュウは名前の通り竜種なんだよな?」

「まぁな。それがどうかしたのか?」

「どうかしたのかって、幻想種の頂点とされる竜種がこんな所にいれば、魔術師なら誰だって驚くぞ。千年クラスの幻獣・聖獣の類はその神秘性から存在そのものが魔法と同格になるって聞くし、数千年の時を生きるアンタなら、その神秘性は計り知れない」

「へぇ~そうなのか。そりゃ知らなかった」

「知らなかったって随分と暢気な事をいうなぁ……」

「だって、この幻想郷じゃ龍族なんて俺以外にもいるからな。普段は龍の世界にいて、滅多に人前には姿を現さないけど」

「お、お前以外にも竜がいるのか。……叢雲といい、アンタといい、ホントにとんでもない郷だな」

 

心は何度目に為るかも分からないが、この郷の出鱈目さを知り、呆れ返ってしまう。

魔術師にとって竜種というのは、幻想種の最高位であり、竜を模したモノは分類に関係なく最良種としている。

そんな存在がこの郷には他にもいると聞かされれば、驚きを通り越して呆れるしかない。

道具を片付けながらも呆れる心を見てリュウは、この郷には竜以外にも妖精や鬼が多数いるのだと教えたらどうなるのか、少しだけ気になった。

 

「ま、この世界じゃお前の言う幻想種って括りはあまり意味が無いだろうがな。此処は幻想郷、元よりそういった奴等が集まる郷だ」

「この郷で暮らすリュウはそう思うかもしれないけど、迷い込んだ側からすれば驚きしかないよ」

「このくらいで驚いていたら身が持たないぞ。此処には妖精やら妖怪やら神様が居るんだからな」

「……そこまでくるともう何も言えないな」

「思ったよりも薄い反応だな。つまらん」

「アンタ、俺の反応を見て楽しんでたのかよ!?」

「別に楽しんじゃいないさ。ただ、どういう反応をするのか少し気になっただけだ」

 

悪びれる様子もなくはっきりと言うリュウに対し、心はこれ以上何を言っても無駄なのだと悟る。

暇つぶしの為にリュウと話をしに来た心だが、彼と話して色々と驚かされた所為か、此処にきて疲れがどっと出た様な気がした。

月が昇り始めているこの時間に、まさかこんなにも疲れるとは。心はそう思いながら疲れ切った様子で肩を大きく落とした。

 

「なんだ、もう疲れたのか? まぁ慣れない世界に迷い込んでしまったんだから、疲れるのも当然か」

「……いや、俺の疲れの原因の三割はアンタの所為だからな」

「そうか? 今までそんな事を言われた事も無かったが、何かしただろうか?」

「リュウが特別何かをしたって訳じゃないけど、なんかもう疲れたからいいや」

「若いくせに情けない事を言う奴だなシャキッとしろ、シャキッと」

「アンタが年寄りの癖に元気すぎなんだよ。……その見た目で年寄りってのも凄く違和感があるけど」

「この世界には見た目と実年齢が一致しない奴は何処にでもいる。見た目に騙されている様じゃ、この世界を渡り歩くのは少し危険かもしれないな」

「危険って、流石にそれは少し言いすぎだろ」

「言い過ぎかどうかは身をもって体験しないと解らないだろうな。……でも、お前は神社の敷地から出ない方が良いだろう。なんか、無用なトラブルを引き起こしそうだし、そうなったら後始末をするのは俺らだ。俺は兎も角、霊夢は現役を引退した身だってのに……」

 

やれやれと言いたげにリュウは呆れた様子で小さな溜息を吐く。

リュウ本人はトラブルが起こっても特に気にしない様子だが、現役を退いた妻にまで仕事をさせるのは忍びないと思っているのだろう。

だから心に無用なトラブルを引き起こして欲しく無いから、神社の敷地から出るなとリュウは言っているのだろうが、その言葉に心はある事を思い出した。

 

「そんな事を言うんだったら、現役の人は何処に居るんだ? 霊夢さんと初めて会った時、彼女は自分の事を先代の巫女で今は巫女代行をしてるって言ってぞ」

 

心が思い浮かんだ素朴な疑問。この神社の母屋に上がらせて貰い、家の中を少しだけ拝見したが、この家にはリュウと霊夢、そして押し掛けた自分達しか居ない。

他の家族の姿は見当たらなかったが、誰かが使っているような痕跡のある部屋は幾つか見つけ、霊夢からも「ここは家族の部屋だから入らないように」と言われている。

なのに、この時間になっても家に誰かが帰ってくる様子もなく、今母屋にいるのは心たち四人だけ。

だから心は不思議に思った。他にも家族が居るのに、その家族は今何処で何をしているのだろうと。

そんな心の質問にリュウは少しだけ言い辛そうにしながら口を開いた。

 

「あ~……竜華の事か。アイツは今、修行のやり直しで祖母の下に居るよ。能力はあるんだけど、性格に難ありでな。最近仕事を全くして無いから、ついにあの人が切れちまって鍛え直してる。厳しい修行に耐えかねて夜逃げしないように衣玖も一緒に行かせたが、どうなってる事やら」

「修行のやり直しって……それで引退した筈の霊夢さんが巫女の代行をやってるのか」

「まぁそう言う事だ。アイツは能力だけなら歴代最高峰らしいんだが、弟が好き過ぎてなぁ……」

「弟が好きって……えぇッ?! もしかしてその竜華って子、ブラコンなのか!?」

「お前の世界でそう呼ぶならそうなんだろ。アイツは実の弟の事を一人の男として見てるくらいに好きだ」

「……………」

 

リュウの話を聞いた心は、彼になんて声を掛ければ良いのか分からず絶句してしまう。

他人事と言ってしまえばソレまでだが、実弟を異性として見ているなど早々あるものじゃない。

 

「一人の男として見てるって、重度のブラコンだな」

「親としては頭の痛い話だけどな。小さい頃から子供達には、結婚する相手は本当に自分が惚れた相手にしろと言って来たんだが、まさか娘の好きな相手が実の弟になるとは……」

「……まさかとは思うが弟さんの貞操を狙ったりしてないよな?」

「狙ってなかったら俺らも此処まで頭を抱えないんだが、アイツは自重する気は無いらしい」

「……なんて言うか、弟さんの苦労が偲ばれるよ。俺も女性関係で色々と苦労してるからな」

「そうなのか? 別段そう言う風には見えないが、誰かと結婚する時は身のまわりの整理をキチンとしてからしろよ。でないと後ろから刺されるからな」

「刺されるのは勘弁してもらいたいな~……。でも、そんな事を言うって事は、もしかして経験談か?」

「お前には俺がそう見えるのか?」

「……いや、全然。昼間のリュウと霊夢さんを見た限りだと、とてもそんな奴には見えなかったな」

「女性の知り合いは多いが、アイツ等と浮気なんてしないからな。俺は昔から霊夢一筋だ」

「一途だなぁ~。それに比べて俺は、俺は……ッ」

 

自分とリュウを比較してしまったのか、心は酷く落ち込んだ様子で肩を落とす。

突然の落ち込み具合にリュウも戸惑ってしまい、一体何事かと片付けの手を止めて心の顔を覗き込む。

 

「お、おい、一体如何したんだよ」

「いや、実は……その、俺は今、とある女性二人と付き合っていてな」

「マジか。その上でキャスターに迫られているって、見かけによらず随分と爛れてるな」

「それに三人とは別の女性との間に二人の子供が……」

「う、うわぁ……」

 

端から見ればとても爛れている心の女性関係に、今度はリュウの方が言葉を失ってしまう。

リュウは心の詳しい事情は聞こうとはしなかったが、もしこの場に閻魔が居ればまず間違いなく黒と判決されて、罰せられていただろうと内心そう思った。

 

「俺、一体如何したらいいんだろう。やっぱり一人に絞ったほうがいいんだろうか」

「いや、その状況なら下手に一人に絞るほうが危険だと思うぞ。女性達はお前が浮気…もとい、他の子と付き合っているのは知っているのか?」

「うん。それは知ってる」

「だったら今の関係を崩さないで続けた方がいいんじゃないか?」

「そんなんで良いのか? なんか余計に駄目そうな気もするんだが……」

「俺からしたら二人の女性と付き合ってる時点でアウトだ。てか、子供がいるのに他の女性に手を出すなんて女の敵だな」

「そこだけ聞くとそうかも知れないけど、子供に関しては知らなかったんだ! あの人が俺の遺伝子を使って勝手に人工授精してたんだよ!!」

 

リュウの見も蓋もない一言に心は声を荒げながら即座に反論するが、リュウには大した効果はなかった。

 

「じんこう…受精? なんかよく分からんが、どうであれお前の子である事に変わりは無いんだろ? だったらちゃんと認知してやれよ」

「言われなくてもそのくらい分かってる。あの子達は俺の子だ」

「認知した上で、他の子にも手を出したのか。……心サイテー」

「ちゃんと俺の話を聞けって!! てか、順番が違う!!」

「順番が如何であれお前が他の子に手を出した事に代わりは無いだろ。とりあえずお前は神社の敷地から絶対に出るな。俺の友人たちに手を出されても困る」

「人を色魔か何かと勘違いしてるんじゃねぇー!!」

 

夜の神社に心の叫び声が響き渡るが、リュウはただ可笑しそうに笑っていた。

それを見て心は自分はリュウにからかわれただけなのだと知り、恥かしさと悔しさから握り拳を作る。

拳を震わせながら力一杯握り締める心だが、その拳をリュウにぶつける様な事はしなかった。

この拳をリュウに叩きつけても意味が無いし、からかわれる様な話をしたのは自分の方だ。からかわれるの嫌なら最初からこんな話をしなければ良い。

それに無理を言って泊めて貰っていると言う事も相まって、リュウに拳を繰り出す事はできなかったが、帰るまでの間にリュウをからかえる様なネタを探してやると、心は密かに決意する。

しかし結局この日の晩はリュウにからかわれるだけで過ぎていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

心とキャスターが幻想郷に迷い込んでから幾日か経ったが、二人は今も博麗神社のお世話に為っていた。

リュウが友人を通じて八雲紫とコンタクトを取ってから既に八日。八雲紫が神社を尋ねてくる事も無く、二人の前に元の世界へと通じる道が出来る事も無かった。

心も最初はその内帰れるだろうと考えていたが、何時まで経っても元の世界に帰れない事に段々と焦りの色が浮かび始めている。

キャスターは平時と何も変わらない様に振舞っているが、心の表情に焦りが浮かび上がるのを見て、出来るだけ彼の傍に居てメンタルケアに勤めていた。

一度気晴らしに神社を出て辺りを散策したりもしたが、その時に妖怪に襲撃されて思わずIS使ってしまう。

その時の写真を撮られてしまい、新種の妖怪現るなどの見出しで新聞に掲載され、大々的に幻想郷中にばら撒かれたりもした。

その事でリュウと霊夢にジト目で睨まれるが、高速で動き回っていたお陰で顔が割れたりはせず、リュウ達も心に説教をしたりはせず事なきを得た。

そんな退屈で平凡な日々の中、心の胸には日に日に望郷の念が強くなっていった。

神社に居てもする事がなく、心は今日も母屋の縁側で暇そうに外の景色を眺めていると、食料調達に出たリュウが大きな魚を担いで空から降り立った。

 

「今戻ったが、まぁ~だ八雲の奴は来ないのか」

「あぁ、まだ来てない。……本当にその人に連絡を取ってくれたのか?」

 

未だに神社に居座っている心にリュウは呆れた様子で溜息を吐き、心は疑うような視線をリュウに向ける。

 

「連絡を取ったのは俺じゃなくて龍神の奴なんだが、未だに来ないとなると……なんかの仕事が立て込んでいるか、幻想郷に居ない可能性があるな」

「居ないってなんだよ。それじゃ何時まで経っても帰れないじゃないか!」

「そう言われても、こればかりは巡り合わせが悪いとしか言え無いからな」

「……その位分かってる。お前に文句を言ってもしょうがないもんな」

 

何時までも帰れない焦りからか、心は思わずリュウに八つ当たりの様に怒鳴ってしまう。

本人もそんな事をしても仕方がないと分かっているが、連絡一つ無く姿を消した事に故郷にいる者達にどれだけ心配を掛けているのだろうと、ついつい考え込んでしまう。

故郷にいる者達を想い、考え込んでしまう心を見てリュウは小さな溜息を吐くと、直ぐ傍で何か嫌な気配を感じ取った。

気配がした方に顔を向けると、何もない空間に隙間が開き、そこから疲れた顔の金髪の女性が姿を現す。

空間に開いた隙間から上半身だけを出す女性に心は目を丸くするが、リュウは呆れた様子で溜息を吐いた。

 

「……久し振りね、龍神さん」

「やっと来たのか八雲。てか、随分と疲れたような顔だが如何した?」

「貴方の娘の修行を手伝ったり、結界の綻びを修復したりで休んでないのよ。……零児が居なくなった位で仕事を放棄するなんて、完全に誤算だったわ」

「そりゃ自業自得だったな、八雲。アイツを他の世界に放り込んだお前の落ち度だ」

 

リュウはまるで喧嘩を売るように隙間の女性<八雲紫>を煽るが、事実なだけにただ悔しそうにリュウを睨み付ける事しか出来なかった。

とても親しい間柄には見えない二人に心は暫し呆然としていたが、次第に状況が飲み込めてきたのか、心の表情が明るくなってくる。

 

「あ、貴女が八雲紫さんか?! 神社に着て早速で悪いけど―――」

「言われなくたって分かってるわよ。貴方たちを送り返して私もさっさと眠りたいしね」

 

投げ遣り気味そういうと、紫は何もない空間を指で縦に撫でるように動かすと、心の目の前に無数の目玉が浮ぶ紫色の空間が現れた。

隙間を開いたように現れた空間の異様な雰囲気に、心は飲み込まれそうになり、無意識の内に唾を飲み込んでいた。

 

「……はい、帰り道を開いてあげたわ。あとはその空間を真っ直ぐ行けば貴方の世界に帰れるわ」

「あ、ありがとうございます、紫さん」

「別にお礼なんて良いわよ。それじゃ私は帰るわね。ふあぁ~……」

 

仕事の疲れが溜まっているのか、紫は人目も気にせず大きな欠伸をして隙間の中に潜った。

紫が姿を消しても心の前に開かれた隙間空間はそのまま残り、心がその中を通るのを待ち構えている。

仕事を済ませそそくさと帰ってしまった紫を、心は呆然と見送っていたが少しして気を持ち直し、大慌てで立ち上がって帰り支度を始めだした。

 

「おい、キャスター! 帰り道が出来たから、もう帰るぞ!」

「え、もう帰っちゃうんですか? 折角ですからもう少しいましょうよ」

「そう言う訳にもいかないだろ。ほら、早く準備してくれ」

「もう、強引なんですからご主人様。……でも、(わたくし)はそんなご主人様も大好きです」

「あ~うん、ありがとう。それじゃ早く準備してくれ」

 

帰り支度を急かす心は、キャスターの言葉に適当な返事をし、急いで自分も支度を整え始める。

しかしキャスターは、心の返事に気分を良くし一人で喜んでいる。

 

「聞きました、霊夢さん! ご主人様がありがとうですって! これはもしや(わたくし)にも春が来たんじゃないですか!?」

「そんな訳ないでしょ。莫迦な事を言ってないで、アンタも早く身支度を整えなさい」

 

心の言葉に浮かれるキャスターだが、霊夢に背中を押され渋々ながら身支度を整える。

二人はこの世界に着の身着のままでやって来た為、元々荷物が殆ど無く、神社で世話に為っている間に来ていた着物から、元の服装に戻るくらいで済んだ。

着替えを終えた二人は母屋の縁側で合流し、そのまま直ぐに隙間空間を通って帰るかと思いきや、心とキャスターはリュウと霊夢に深く頭を下げた。

 

「リュウ、それに霊夢さん。この八日間、色々とお世話に為りました」

「なんだ急に。別に大したことはしてないだろ」

「いえいえ、リュウさんに出会えなかったら(わたくし)たち、元の世界に帰れませんでしたよ。なのできちんとお礼を言わせてください。……お二人とも、本当に有り難う御座いました。お返しをすることが出来ないのは心残りでは有りますが―――」

「そんなの別にいいわよ。こっちは見返りが欲しくてあんた等の面倒を見ていた訳でもないし、そう言う堅苦しいのは性に合わないのよ。分かったらさっさと行きなさい。そうやって頭を下げてたら何時まで経っても帰れないわよ」

「そう…ですね。それじゃリュウ、霊夢さん。色々とありがとう」

「お邪魔しました。お二人とも、何時までもお元気で仲睦まじい夫婦で居てくださいね」

 

別れを告げた心とキャスターは、紫が開いた隙間空間へと入っていき、そのまま幻想郷から姿を消した。

二人が通った後、隙間は音もなく閉じていき、リュウと霊夢の前には何時もの景観が戻る。

心とキャスターが帰った後、リュウは疲れた様子で溜息を吐き、自身が獲ってきた大きな魚に目を向ける。

 

「……これ、如何する? 流石に二人じゃ食い切れないよな」

「幾らなんでもその大物を二人では無理よ。たっちゃんや天照が来てくれたら良いんだけど、こっちが来て欲しいときに限ってこないのよね」

「そうなんだよな……。あの二人今日も居るものだとばかり思って、こんなデカイの釣ってきたけど、余らせて腐らせるのは勿体無いよな」

「そうね。……しょーがない。今晩はその魚を持って母さんたちの所に行きましょうか」

「それしかないか。この魚を持って行ったら、先代はどんな顔をするのやら」

「……流石に怒りはしないでしょうけど、嫌な顔はするでしょうね」

「差し入れを持って来たんだから、そこは喜んで欲しいけどな」

 

そう言いながらも、リュウは絶対に喜ばないだろうなと心の中でそう思った。

霊夢も同じ気持ちなのか、二人は顔を見合わせて呆れたように小さな溜息を吐く。

 

「ま、ここで愚痴を言っていても仕方が無いわ。嫌な顔をされるのを覚悟の上で母さん達の所に行きましょう」

「そうだな。そんじゃ軽く準備だけしていくか」

「えぇ」

 

そう言って頷き合った二人は、頭を切り替えて下拵えなどの準備を始める。

幻想郷に迷い込んだ心とキャスターと同じ様に、リュウと霊夢もこうして何時もの日常へと戻って行った。

 




今回も後書き座談会はありません。ご了承下さい。終盤の方は駆け足気味だったかなとちょっと反省。
そして書き終わった後だから言いますけど、心ならアンフィニは無理でもカイザーくらいの竜なら勝てると思う。
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