No likeness and Sameness   作:細胞男

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初めまして。あまり上手い文章ではありませんが、楽しんでいただけたのなら幸いです。


1.それはまるで磁石のように

 昼の少し前くらい。街を歩く人は少ない。きっとほとんどの人は、学校や職場で自分の仕事に励んでいるのだろう。

 そんな人通りの少ない街の中を、私は全力で走っていた。

 

「バカバカバカ!目覚まし3つもかけたのに!」

 

 何を隠そう、現在絶賛遅刻中。起床して時計を見たら入学試験が始まっている時間。幸いなのは、入試会場が家からまぁまぁ近いところ。今から走れば、試験が終わるまでには間に合うはず……!

 

「急げ……急げ急げ!」

 

 猛スピードで駆けていく私に視線が集まる。こんな時間に走っている人間なんて珍しい。しかもそれが、両目で色の違う少女だったらなおさらだ。

 右目は赤、左目は青。おまけに髪は金髪なので、三原色をコンプリートしたこの見た目。

 ……何だか少し気恥ずかしくなって、私は目線を下げたまま走り続けた。

 

「……あった!海馬ランド!」

 

 私が受験するのはデュエル・アカデミア。攻撃力が3000くらいありそうなドラゴンのモニュメントが人々を見下ろしている。入学試験の会場は、この海馬ランドの中にあるデュエルドーム。そこで試験官とデュエルを行い、自分の実力を示すのだ。

 ……実はデュエルを始めてから1ヶ月も経ってないけど。

 

「すみません!まだ受け付けてますか!?」

 

 会場の入り口に居た、試験を手伝っているらしい女子生徒に声をかける。

 

「はい。受験番号を見せていただけますか?」

 

 優しげな笑みを浮かべた女子生徒に、100番と書かれた受験票を見せる。

 女子生徒はパソコンを操作して、受験番号と私を見比べる。

 

「受験番号100番ですね。この扉から入って右側の通路を使って会場に向かってください」

「ありがとうございます!」

 

 会場では受験番号2番のデュエルが終了したようで、かなりの熱気に包まれていた。

 

『それでは、受験番号1番と受験番号100番の方は、デュエルフィールドへお越しください』

 

 そして席に着く間もなく呼ばれる。私は両腕で小さくガッツポーズを作り気合いを入れると、観戦席を降りてデュエルフィールドに向かう。

 

「あらあら、入学試験当日に遅刻だなんて度胸ありますのね、貴女」

 

 気づけば隣には銀色のツインテールが特徴的な1人の少女が居た。デュエルフィールドにいる受験生は私と彼女の2人だけ。つまりこの子が、受験番号1番……!

 

「本来ならわたくし1人が注目を集める筈でしたのに。貴女のお陰で台無しですわ。何でわたくしが受験番号3桁(ドロップアウト・ガール)なんかと……」

「あ、あはは。目覚ましが3つも壊れてなければ私も遅刻しなかったんだけどね……」

「……貴女もしかして、相当運が悪いのかしら?」

「そんなことはないと思うんだけど……」

 

 自分で言うのもあれだが、私は相当運の良い方だ。だから受験日に、3つもかけた目覚ましが同時に動かないなんてあり得ない。……きっと、誰かが勝手に目覚ましを止めたのだ。

 

「……そんな貴女にこれ以上文句を言うのは可哀想ですわね。まぁ頑張りなさいな。注目を集めるのはわたくしですけど」

「うん!頑張ろうね、受験番号1番さん!」

「リゼで構いませんわ」

「じゃあ、リゼさん!私の名前はね」

「貴女の名前には微塵も興味はありませんわ。それでは、そろそろ試験が始まりますので」

 

 リゼさんと話しながら歩くうちに、デュエルフィールドに到着していた。私を待っていたのは、少し暑苦しそうな男性の教師。

 

「まったく。大事な実技試験の日に遅刻とは。君は何を考えているのだね」

「ご、ごめんなさい……」

「いいか?今後遅刻は許されないと思え。……それでは、入学試験を行おう。デュエルディスクを構えたまえ」

「は、はい!」

 

 デュエルディスクを構え、試験官と相対する。

 

「では始めるぞ」

 

「「――デュエル!」」

 

 

試験官 VS 少女

 

 

 ライフポイントはお互いに4000。このデュエルでは、受験生であるあたしに先攻のターンが譲られる。

 

「いきます!私のターン、ドロー!」

 

 私の手札は【磁石の戦士γ】、【磁石の戦士β】【マグネット・フィールド】【磁石の戦士マグネット・バルキリオン】【ユニオン・アタック】……そして、『お気に入りのモンスター』。

 試験官は、トリッキーな動きををあまり使用しない力押しのデッキを使ってくることが多い……らしい。なら、守備力の高いモンスターで様子を見ようかな。

 

「私は、【磁石の戦士γ】を守備表示で召喚!」

 

DEF1800 LV4

 

 私のフィールドに現れたのは、今手札にいるマグネット・ウォリアーの中では最も高い守備力を持つモンスター。1800の守備力は易々と越えられるものじゃない。

 

「でも、油断はしないよ。フィールド魔法、【マグネット・フィールド】を発動!」

 

 私の足元から磁場が広がり、それがデュエルフィールドを覆っていく。

 

「なるほど、【磁石の戦士】デッキか」

「あたしはこれでターンエンド!」

 

 

少女 LP4000 手札4

モンスター:

磁石の戦士γ

魔法・罠:

マグネット・フィールド

 

 

「それでは私のターンだ。ドロー!私は、【ラヴァルのマグマ砲兵】を召喚」

 

ATK1700 LV4

 

 地面が赤熱し、ドロドロに溶けた床からモンスターが這い出す。その攻撃力は1700。磁石の戦士γの守備力には100ポイント届かない。

 

「【ラヴァルのマグマ砲兵】の効果を発動。手札の炎属性モンスターを墓地へ送ることで、相手に500ポイントのダメージを与える。この効果は1ターンに2回まで発動出来る。私は【ラヴァル・ガンナー】と【ラヴァル・キャノン】を捨て、君に1000ポイントのダメージを与える!」

 

 マグマ砲兵から放たれた2発の火炎弾が私を襲う。

 

「きゃっ!」

 

LP4000→3000

 

「さらに魔法カード【炎熱伝導場】を発動。デッキから【ラヴァル】と名のつくモンスターを2体墓地へ送る。そして私が墓地に送った【ラヴァル・フロギス】の効果を発動。このカードが墓地へ送られたとき、自分フィールド上の【ラヴァル】と名のついたモンスターの攻撃力は300ポイントアップする」

 

ATK1700→2000 LV4

 

「【マグマ砲兵】の攻撃力が、【磁石の戦士γ】の守備力を越えた……!」

「それだけではないぞ!墓地に存在する【ラヴァル】が3種類以上の時、手札の【ラヴァルバーナー】は特殊召喚出来る!」

 

ATK2100 LV5

 

「攻撃力2000以上が、2体も……!」

 

 僅か1ターンの間に、上級モンスター並みのステータスか2体並んだ。

 デュエルを観戦していた中等部の生徒や他の受験生の視線のほとんどは、隣でデュエルを行っているリゼさんに向けられている。でも、少ないながらも私のデュエルを観ていた生徒達が可愛そうなものを見る目でこちらを見つめている気がした。

 

「あれは……無理だな」

「攻撃力が高い訳じゃないけど、あのモンスターは効果ダメージを与えられるんだろう?」

「ま、中等部組の俺達には関係のないことだけどな!こんなのよりもあっちのデュエル見よーぜ、何てったって受験番号1番だからな!」

 

 彼らは私の事を笑いながら、もう1つのデュエルを見に向かっていった。それにつられたのか、元々少なかった観戦者はどんどん減っていく。

 

「行くぞ!【ラヴァルのマグマ砲兵】で、【磁石の戦士γ】を攻撃!」

 

 攻撃力が上昇したマグマ砲兵の攻撃を受け、磁石の戦士が砕け散った。

 

「っ!でもこの瞬間、【マグネット・フィールド】の効果を発動!【マグネット・ウォリアー】との戦闘で破壊されなかったモンスターを手札に戻します!反発障壁(マグナ・ウォール)!」

 

 この磁場の中では全てのモンスターが磁力を持つ。同極の磁力は反発しあい、互いに吹き飛ぶ。

 

「ほう、この効果で私のフィールドをがら空きにするつもりだったんだね」

「いやぁ、そのつもりだったんですけど……」

「そう、私のフィールドにはもう一体のモンスターがいる。行け、ラヴァルバーナー!相手プレイヤーにダイレクトアタックだ!」

 

 燃え盛る炎を纏う岩肌の巨人が、私を殴り付けた。

 

「ぅぁっ……!」

 

LP3000→900

 

 残りライフは900ポイント。マグマ砲兵の効果を使われれば一瞬で消え去ってしまう風前の灯だ。

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

 

試験官 LP4000 手札2

モンスター:

ラヴァルバーナー

魔法・罠:

無し

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 私はドローしたカードを確認すると、笑顔で頷く。

 

「【磁石の戦士β】を攻撃表示で召喚!」

 

ATK1700 LV4

 

「フィールド魔法、【マグネット・フィールド】の効果を発動!自分フィールド上にレベル4以下の地属性・岩石族モンスターが存在している場合、1ターンに1度だけ、墓地から【マグネット・ウォリアー】を特殊召喚出来る!おいで、【磁石の戦士γ】!」

 

 βの発する磁力が強化され、墓地から磁石の戦士γが引き上げられる。

 

ATK1500 LV4

 

「そしてこれがマグネット・コンビネーション!私は魔法カード、【ユニオン・アタック】を発動!自分フィールド上のモンスター1体の攻撃力は、他のモンスターの攻撃力の合計分アップするよ!【磁石の戦士γ】との連携で、【磁石の戦士β】の攻撃力は急上昇する!」

 

ATK1700→3200

 

「攻撃力、3200……!?」

「いっけー!【磁石の戦士β】で、ラヴァルバーナーを攻撃!」

 

 2体のモンスターのコンボにより、炎の巨人が破壊された。

 

「【ユニオン・アタック】の効果を受けたモンスターは相手にダメージを与えられず、自分の他のモンスターは攻撃宣言を行うことができない。私はカードを1枚セットして、ターンエンドだよ」

 

 

少女 LP900 手札2

モンスター:

磁石の戦士β、磁石の戦士γ

魔法・罠:

マグネット・フィールド、セット1

 

 

「中々やるじゃないか。私のターン!」

 

 試験官はドローしたカードを確認すると、そのカードをそのままデュエルディスクに叩きつけた。

 

「来い、【爆炎集合体 ガイヤ・ソウル】!」

 

ATK2000 LV4

 

 現れたのは、今にも爆発してしまいそうな炎の塊。レベル4にしては高い攻撃力を持つモンスターだ。

 

「そして魔法カード、【紅蓮の炎壁】を発動!墓地の【ラヴァル】と名のつくモンスターを任意の数ゲームから除外することで、【ラヴァル・トークン】をその数だけ特殊召喚出来る!墓地の【ガンナー】【キャノン】【フロギス】【バーナー】をゲームから除外し、現れろ、4体の【ラヴァル・トークン】!」

 

 4つの火柱が試験官のフィールドを覆い、炎の壁を作り出す。その中から、可愛らしい火種の様なモンスターが現れる。

 

DEF0 LV1 ×4

 

「【ガイヤ・ソウル】の効果を発動。自分フィールドの炎族モンスターを2体まで生け贄に捧げる事で、生け贄にしたモンスター1体につき1000ポイント攻撃力をアップさせる!【ラヴァル・トークン】1体を生け贄に捧げ、その攻撃力を1000ポイントアップだ!」

 

 火種を飲み込んだガイヤ・ソウルは、膨大なエネルギーをはち切れんばかりに充満させ、巨大化する。

 

ATK2000→3000

 

「この攻撃力で攻撃されたら……!」

「君とのデュエル、中々興味深かったよ。【ガイヤ・ソウル】で【磁石の戦士γ】を攻撃!」

 

 爆炎の塊が磁石の戦士を飲み込もうとしたその時。

 

「お願い!」

『クリクリィー!』

 

 小さな虹が、ガイヤ・ソウルを包み込んだ。

 

「これは……一体……?」

「ありがと!【虹クリボー】!」

 

 ガイヤ・ソウルを包み込んだ虹。それを作り出していたのは、球状の体を持つ小さなモンスター。

 

「【虹クリボー】の効果。相手モンスターの攻撃宣言時に、手札のこのカードを装備魔法扱いとして攻撃したモンスターに装備できる。そして【虹クリボー】を装備されたモンスターは、攻撃を行えない!」

「あの【クリボー】と似たモンスター……始めて見るカードだな。攻撃が止められてしまっては仕方がない。私はこれでターンエンド。【ガイヤ・ソウル】はその効果と攻撃力の代償に、エンドフェイズに自壊する」

 

 虹のベールを突き破るように。ガイヤ・ソウルが大爆発を起こした。

 

 

試験官 LP4000 手札1

モンスター:

ラヴァル・トークン×3

魔法・罠:

無し

 

 

「……私のターン、ドロー!」

 

 きっと来てくれる。私はそう信じてる。目をつむって祈るように、デッキからカードを引き抜いた。

 

「――来たっ!先ずはリバースカードオープン、【岩投げアタック】!デッキから岩石族モンスター……【磁石の戦士α】を墓地へ送り、相手に500ポイントのダメージを与える!」

「500ポイントのダメージ、か」

 

LP4000→3500

 

「だがこのライフを、どのように削るつもりだね?」

「今から見せてあげますよ!私の最高の相棒を!【マグネット・フィールド】の効果を発動!蘇れ、【磁石の戦士α】!」

 

ATK1400 LV4

 

「この3体のモンスターは……まさか!」

「そのまさかですよ!フィールド上の【α】【β】【γ】を墓地へ送り、変形合体!」

 

 3体のモンスターがバラバラのパーツになり、互いに引き寄せあって合体し、巨大なモンスターを造り出す。

 

「磁力纏いし剣を掲げ、我が眼前の敵を薙げ!これが私の切り札だっ!【磁石の戦士マグネット・バルキリオン】!」

 

 α、β、γ。ステータスは高くなく、何の効果も持たないモンスター達。だけど彼らには秘められた力がある。

 マグネット・バルキリオンは全てを守る要塞のごとく、私を背に立ちはだかる。

 

ATK3500 LV8

 

 そのステータスは、伝説の白竜をも超える。マグネット・バルキリオンは伝説のデュエリストが使用したカードの1種。α、β、γの3体はノーマルカードであり入手は容易だが、このカードは易々と手に入れられる物ではない。

 でも、その伝説のカードの降臨にも会場が沸き上がることはなかった。もう私のデュエルを見ている人なんて居ない。居たとしても、よっぽどの物好きだけだ。

 

「あの決闘王の使ったモンスターと、同じカード……!」

「行きますよ!私は【マグネット・バルキリオン】の効果を発動!このカードを墓地へ送り、【α】【β】【γ】の3体を呼び戻す!」

「何!?」

 

 合体した磁力の戦士が分離して、元の3体へと戻る。

 

ATK1400 LV4

ATK1700 LV4

ATK1500 LV4

 

「何を考えているんだ?」

「今にわかります!3体の【マグネット・ウォリアー】で、【ラヴァル・トークン】達を攻撃!」

 

 火の粉達は磁石の戦士達に掃滅され、試験官のフィールドはがら空きになる。

 そして私は、このターンにドローしたカードをデュエルディスクに置く。

 

「これで終わりです!手札から速攻魔法、【マグネット・リバース】を発動!私の墓地、またはゲームから除外されている私のモンスターの中から、岩石族又は機械族で通常召喚できないモンスター1体を選択して特殊召喚する!」

「君の墓地にいる、通常召喚できないモンスターは……!」

「再び現れろ、私の切り札!【磁石の戦士マグネット・バルキリオン】!」

 

ATK3500 LV8

 

「いっけー!【マグネット・バルキリオン】でダイレクトアタック!マグネット・ソード!」

 

 バルキリオンの攻撃力は3500。そして試験官のライフも……3500。

 

LP3500→0

 

 磁力を持った剣は、試験官のライフポイントを残すことなく消し去った。

 

「……見事なデュエルだ。合否判定は1週間後に封筒で送られる。このデュエルなら、期待しておけば良いだろう」

 

 私は試験官を打ち破った。でもその光景を、殆どの人は見ていなかった。見ていたのは1人だけ。中等部の制服を着た赤紫色の長い髪の少女。

 

「そう言えば、君の名前を聞いていなかったな」

「あ、はい!私の名前は」

 

 出会いは何時だって突然で。

 

 出会いとも言えない出会いの中で。

 2人の少女は、やがて引き寄せ合い、触れ合っていく。

 

「牧音マキナです!」

 

 それはまるで磁石のように。




牧音マキナ
明るくポジティブな性格をしている。戦術はだいたいゴリ押しでプレイングはお世辞にも上手いとは言えないが、それを圧倒的な引きでカバーする運特化型。また直感も鋭く、色々なことに気づいて対応できる。入学試験では遅刻してきた。
デュエルを始めて1ヶ月弱の初心者。
金髪のショート。瞳は右が赤色、左が青色のオッドアイ。
使用デッキは『磁石の戦士』。



投稿ペースは遅めですが、また次回もお会いできたら嬉しいです。
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