No likeness and Sameness   作:細胞男

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生存報告がてら更新です。急ぎだったので後々修正があるかもです。


4.銀色の海―マーメイドステージ―

「中でも魔法の筒(マジック・シリンダー)はかなり強力よ。マキナのバルキリオンの攻撃を反射されれば、3500ものダメージを受けてしまうわ」

「へぇー。効果ダメージへの対策も大切なんだね」

 

 デュエル・アカデミアへ向かう飛行機の中で、遊里ちゃんに効果ダメージについて教わっている。火の粉やファイアーボールと言った分かりやすいものから、魔法の筒のように実際のデュエルで重要なカードについて。

 

「これら効果ダメージを与える効果をバーンと言うことが多いわ」

「バーン!……鉄砲?」

バーン(擬音)じゃなくてBurn。燃えるって意味よ」

「たしかに炎属性ってそんな効果多いかも!」

「そうね。炎属性に限らずダメージを与える効果は多いけど、昼夜の大火事って言う魔法カードのように炎=ダメージとされている節もあるわね」

 

 飛行機は段々と高度を下げ、雲の下へと降りていく。

 

「おい!あれがアカデミアじゃねぇか?」

 

 そんな男子の声が聞こえる。窓から外を見下ろすと、白亜期や中生代のような、鬱蒼とした森に包まれた孤島が見えてくる。

 勿論森だらけという訳じゃない。赤青黄色、それぞれの寮や、最先端のテクノロジーを感じさせる校舎。おそらく火山なのだろう、草木の影すら見えないような大きな山も見える。

 

「うわぁ!凄いね、遊里ちゃん!」

「……えぇ」

 

 語気は大人しく、小さい声だったけど、彼女の表情は明るかった。

 私も楽しみだ。あの島でどんなことを学ぶのだろう、どんな先輩に出会うのだろう、どんな先生に出会うのだろう。

 

 私達を乗せた飛行機は今、決闘者の聖地へと降り立った。

 

 

「ふぁぁぁ……っ。やっぱり校長先生の話は長いよぉ」

「そうね。私も途中から聞いてなかったわ」

「そうなの?遊里ちゃんも居眠り?」

「考え事、とだけ言っておくわ」

 

 上手くはぐらかされてしまった。遊里ちゃんって思ってたより真面目じゃないのかな?

 入学式を終えた私達は、これから私達が住むオベリスク・ブルー女子寮に向けて歩いていた。

 

「生意気、生意気生意気生意気よっ!」

「あら、先輩が相手でも手加減はいけませんわ。だってそれが決闘。わたくしはそう考えておりますわ」

 

 オベリスク・ブルーの寮の目の前で、言い争うような声が聞こえる。背の高い女子生徒と、あの入学試験の日に出会った女の子、リゼさんだ。

 

 

先輩女子 LP4000 手札0

モンスター:

複数の頭を持つ蛇のモンスター

魔法・罠:

なし

 

リゼ LP4000 手札 2

モンスター:

人魚のようなモンスターが5体

魔法・罠:

セット1

 

 

「……フン!でも有利なのはアタシ!いくらモンスターを並べようと、アタシの【邪龍アナンタ】の前には無力!さぁ【アナンタ】、あの醜い人魚共を噛み殺せ!」

 

ATK3600 LV8

 

 攻撃力3600。私のバルキリオンの攻撃力を上回る大型モンスターが、5体の人魚にその牙を向ける。

 

「モンスターの攻撃力だけは貴女の方が上だけれども、それ以外で有利なのはわたくしですわ」

「何ですって!?」

「カードは可能性。1枚のカードから他の何枚ものカードを呼ぶこともある。つまりは……戦いは数なのですわ!リバースカード、オープン!」

 

 リゼさんが発動した罠カードから、それはもう膨大な水流が現れる。それは渦潮のようにアナンタを取り込み先輩までも飲み込んでいく。

 

「そんな、何が起こって……」

 

LP4000→0

 

 満タンだったライフポイントが一瞬にして消え去る。

 渦潮が消え去りデュエルが終わると、先輩はリゼさんを睨み付け何処かへ走り去っていく。

 

「……ふぅ」

 

 デュエルで乱れた髪を整え、一息ついているリゼさんに話し掛ける。

 

「おーい、リゼさーん」

「貴女は……そう、合格できた様ですわね。受験番号3桁(ドロップアウト・ガール)

「もう!私の名前は――」

「貴女のような弱者の名前に興味ありませんわ」

 

 また遮られてしまった。

 

「……その言い方は無いんじゃないかしら。貴女が想像しているよりずっと、マキナは強い子よ」

「……そういう貴女はどなたでして?」

「私は」

「……いえ結構。聞いたことありますわ。アカデミア中等部の化け物とは貴女の事でしょう?」

「化け物とは随分な物言いね?」

 

 ……あれれ?

 何やら2人の間に火花が散っている。

 

「ちょ、ちょっと遊里ちゃん、リゼさん!喧嘩は……」

「「ちょっと黙ってて!」」

「えー……」

 

 余程相性が悪いのか、言い争いはさらに激化していく。

 

「ふん、わたくしは事実を言ったまでですわ。受験番号は100番台、試験には遅刻してくる。そんなドロップアウト・ガールの名前なんて覚える必要もありませんわ」

「受験番号=強さじゃないわ。あくまでも受験番号は筆記試験の順位。そんな数字で人を見下す貴女より、マキナはずっと強いわよ」

「……貴女、自分が中等部で負けなしだったからって、調子に乗るんじゃ無いですわよ……!」

「調子に乗ったつもりはないわ。事実を言ったまでよ」

「この……っ!」

 

 怒りで顔を真っ赤にしたリゼさんが、私を睨み付けて啖呵を切る。

 

「なら見せてもらいましょうか、貴女の強さとやらを。明日はデュエルの実技授業があると聞きましたわ。その時に決着をつけましょう?」

「えっ、ちょっと」

「それではわたくしはこれで。生憎と今日は忙しいんですの」

 

 それだけ言い残して、リゼさんは森の中へと消えていった。

 

「ちょ、ちょっと遊里ちゃん……」

「……その、言い過ぎたと思ってるわ」

 

 相手がいなくなったことで冷静になったのか、遊里ちゃんは目を伏せながら謝った。

 

「これって、デュエルの誘いなんだよね……」

「誘い、なんて生易しいものなら良いのだけど」

「遊里ちゃん?」

「ご、ごめんなさい……」

 

 そう。お誘いなんて生易しいものじゃない。これは所謂果たし状だ。

 

「私を庇ってくれたのは嬉しいけど……遊里ちゃん、ちょっと怖かった」

「……そう。ごめんなさい」

 

 それにしても。大変なことになってしまった。

 さっきのデュエルでも見たけど、4000あったライフポイントが一瞬で消えてしまう。最後に発動したカードの効果だと思うんだけど……。

 

「あのカード、どんな効果なんだろう」

「あのカード……最後に発動してた、あの罠カード?」

「うん。デュエルするからには勝ちたいからね。あんまりメタ戦法は好きじゃないんだけど、対策はしていきたいんだ」

「……あのカード、攻撃宣言時に発動していたわね」

「うん。じゃあ魔法の筒みたいに攻撃反応系なのかなぁ?いつでも発動できるカードをあのタイミングで使っただけなんじゃないかな?」

「それは考えにくいわ」

 

 遊里ちゃんは真面目な顔で腕を組み、呟く。

 

「フリーチェーン……いつでも発動できるカードなら、それこそ相手のターンに回った瞬間に発動すれば良い。攻撃したときにカードの発動を封じるモンスターもいるから、そっちの方が確実よ。でもわざわざあのタイミングで発動したのは、それが条件だったからじゃないかしら」

「なるほど……でも、攻撃したらあんなダメージ与えられるなんて、怖くて攻撃宣言できないよ……」

 

 そして攻撃しなければいつまで経っても勝てない。効果ダメージを防ぐ方法は……。

 

「……そうだ!確か……」

 

 鞄の中からカードケースを取り出し、デッキに入っていなかった1枚のカードを取り出す。

 磁石の戦士デッキを作るために集めた、汎用性の高い岩石族モンスター。

 

「遊里ちゃん!この子なら行けると思わない?」

「……?」

 

 遊里ちゃんは受け取ったカードをよく読み、頷く。

 

「えぇ。あのカードが効果ダメージを与えるカードなら、このモンスターで何とか出来ると思うわ」

 

 

 

 翌日。デュエルの実技授業の前に講義が行われていた。この講義を担当しているのはアカデミアの実技指導最高責任者、クロノス・デ・メディチ。

 

「……と、言うことで攻めるだけでなく、守る戦い方も重要ナノーネ。とくにこだわりがないのなら、攻撃から身を守る罠カードはデッキに入れておくべき、というのが一般的な考え方デスーノ」

 

 変な語尾が付くことを除けば、とても分かりやすい授業だ。実技指導最高責任者というだけあって、凄い先生なんだろう。

 

「それデーハ、攻撃反応系のカードにはどんなカードがあるのかを聞きたいのですが……えー、シニョーラキャン――」

「リゼとお呼びください!」

 

 バン!と机を叩き、リゼさんが立ち上がる。突然の音に皆驚き、リゼさんに視線が集まる。

 『キャン』までしか聞こえなかったけど、それがリゼさんの名前なのかな。

 

「え、えー、ではシニョーラリゼ。攻撃反応系の罠カードにはどんなカードがあるのか、3つほど挙げて欲しいノーネ」

「魔法の筒、くず鉄のかかし、聖なるバリア-ミラーフォース-ですわ」

「ふむ。素晴らしいノーネ。他にも炸裂装甲や万能地雷グレイモヤなどが挙げられるノーネ。諸君らには是非、自分のデッキにあった防御カードを見つけて欲しいノーネ」

 

 それからも授業は続く。一通りカードの種類について話し終わった後、クロノス先生が言う。

 

「それでは早速デスーガ、これから皆さんにはデュエルしていただきたいんデスーノ。お互いの実力を知り、親睦を深める為に。またアカデミアとはどんな場所かを知るために。お互い気に入った相手とデュエルしてくださイーノ」

 

 でた。伝説の『二人組つくってー』。殆どの生徒達はだらだらと回りの人間に話し掛け、対戦相手を探す。そんなざわめきの中、コツコツと足音を響かせながらリゼさんがやってきた。

 

「それでは昨日の約束通り、デュエルいたしましょう?受験番号3桁(ドロップアウト・ガール)

「……むぅ。私が勝ったら、私の名前を覚えてもらうからね!」

「万が一にもあり得ませんわ。そもそも貴女、わたくしにダメージを与えられるのかしら?」

「な、何を……!」

「ならマキナがダメージを与えたら、貴女の名前を聞かせてもらえる?キャン……何とやらさん?」

 

 キャン、と呼ばれただけであの反応。リゼさんは自分の名前が嫌いなのかな。ちょっと私も気になるけど、嫌なことを無理やり聞くのは……。

 

「ふ、ふん!構いませんわ。1ダメージでも与えられたら、わたくしの名前を教えて差し上げますわ」

「え、良いの?」

「良いですわ。結果には報酬を与えるべきですもの」

「それじゃあ頑張ってね、マキナ」

「うん!」

 

 遊里ちゃんを席に残して2人でデュエルコートに向かう。教室を出る時にチラリと、筋肉もりもりのマッチョマンに話し掛けられる遊里ちゃんが見えた。

 

「……さて、この辺りで勝負しましょうか」

 

 リゼさんとやって来たのは体育館。床には線が引いてあり、いくつかのデュエルコートに別れている。他にもこういったデュエル出来る場所が各地に用意されているようで、そこは流石デュエルアカデミアといったところだ。

 

「さて、覚悟は良いですの?」

「うん!負けないよ、リゼさん!」

 

「「デュエル!!」」

 

 

マキナ VS リゼ

 

 

「先攻は譲りますわ」

「いいの?なら遠慮なく!私のターン!」

 

 手札にはαとβの磁石の戦士、そして私の相棒バルキリオン。

 昨日のデュエルから考えるに、リゼさんに対して何の考えもなしに攻撃はしにくい。まずは一旦様子を見てみよう。

 

「私は、【磁石の戦士α】を守備表示で召喚」

 

DEF1700 LV4

 

 私の手札に罠カードは2枚ある。1枚はピンポイント・ガード、もう1枚はマグネット・コンバージョン。コンバージョンはデュエル中盤以降に使って行きたいから、温存しておこうかな。

 

「カードを1枚セット。ターンエンドだよ」

 

 

マキナ LP4000 手札4

モンスター:

磁石の戦士α

魔法・罠:

セット1

 

 

「わたくしのターン、ですわ!」

 

 リゼさんは、まるでダンスでも踊るかのように軽やかな足取りでカードを引く。

 

「貴女は悪く無い。けれども貴女のお友だちが悪いのですわ。わたくしを愚弄した罪に、貴女の敗北と言う刑を下しましょう。わたくしはフィールド魔法を発動しますわ!」

 

 リゼさんが魔法カードを発動すると、地鳴りと共に体育館が姿を変えていく。

 辺りは一面の青。屋内だった筈なのに空には燦々と太陽が輝き、海を照らしている。

 そして私達が立っている場所は、その海にぽつりと浮かんだ古代神殿。リゼさんはその中心に移動すると、両腕を広げ芝居がかった口調で言う。

 

「そう。ここは忘れ去られた都市。かつて深き水の底にて繁栄し、やがて滅びた古代の神殿。そして、わたくしの人魚(モンスター)達の舞い踊る舞台。フィールド魔法、【忘却の都 レミューリア】!」




デュエルもほんのちょっとだけで申し訳ないです。
デュエル構成は出来てるので今回よりは早く投稿できると思いますが、次回も気長にお待ちしていただけたら幸いです。
……こんなタイトルにした手前レミューリア発動しましたけど、今回はそんなに活躍しません。残念ながら。
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