ロクでもない魔術世界のニセ《戦車》   作:サイレン

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オリ展開ってむずい……。






こうして私は《戦車》になった ②

 

 

 ミーナと友情を育んだ翌朝。

 

「リィエル、今日はお前、昨日の女の子──ミーナだったか? その子と遊んできていいぞ」

「……なんで? 任務は?」

「今日は俺だけで動く。ぶっちゃけると、子どものお前がいると身動きが取りにくいんだ。悪いな」

「……わかった」

 

 ここに来て子ども扱いを受けて、事実上のお留守番を言い渡されるのは予想外だった。

 まぁその方が気楽でいい。情報収集などPCや文献を用いた方法以外知らないし、仮に人伝いで集めるとしてもこの見た目だ、ごっこ遊びに捉えられるか怪しまれて終わりだろう。……なんの成果も‼︎ 得られませんでした‼︎ と叫ぶこと必定である。

 ならグレンの言う通り大人しくしている方が吉だ。それに、ミーナの生家は地元の孤児院と聞いている。そこなら最近の街の雰囲気とか色々情報が集まるかもしれない。ただ遊んでいるよりかはマシだろう。

 

「門限は陽が沈むまでな」

「ん、……兄さん」

「……なんだ?」

「いってらっしゃい」

「……あぁ、行ってくる」

 

 部屋から出て行くグレンに向かって小さく手を振る。

 

 これが、私がグレンと交わした、最後の言葉だった……。

 

 ……という性質(たち)の悪いモノローグを頭で流しながら、私はせっせと寝巻きから着替えることにする。

 

 手にするのは支給品として与えられた、薄青を基調とした普通のワンピースだ。潜入任務で軍服を着用する馬鹿はいない。それに、軍服はどういう技術か知らないが、超圧縮してブロック状にして常備しているから問題ないのだ。

 赤いリボンで髪をくくって姿見の美少女を見て大きく頷く。キュートなリィエルちゃん爆誕である。

 思わず両頬に手を寄せてしまうほどの可愛さ。

 嘘……これが私……?

 という愉悦ごっこをひとしきり楽しんだ後、私は部屋を出てミーナの住む孤児院へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミーナ」

「あっ、リィエル! 早速来てくれたんだね! お兄さんは一緒じゃないの?」

「兄さんは用事があるからいない。ごめんね、ミーナ」

「ううん全然。リィエルが来てくれただけで嬉しいよ!」

「……よかった」

「それでリィエル、来てくれたのに悪いんだけど、ちょっとチビたちの面倒を見てくれないかな? あたしご飯の準備しなくちゃいけなくて」

「ん、大丈夫、任せて」

「ありがとう!」

 

 旅館から歩くこと十数分、ミーナがお世話になっているというルカイ孤児院に辿り着いた。

 旅館近くの雑木林に整備された一本道を進んだ先にあるこの孤児院は、街からのアクセスも悪くなく、何より景観が素晴らしい。

 温泉を生み出す火山に流れる清涼な川と、それに付随するかのように佇む湖が魅力的である。ある貴族の避暑地の別荘と言われても違和感がない。

 初め孤児院と聞いたときは、創作にありがちな経営も一苦労といった寂れた教会をイメージしてたが、そんな安易な予想が覆されたところだ。

 ……なにここ、私が住みたいくらいなんだけど。ブルジョワ感がいい。私も孤児だし住むくらいいいよね?

 

 と、思ってた時期もありました。

 

「ねぇねぇ! おねえちゃんなまえは⁉︎」

「どこからきたの⁉︎」

「なんさい⁉︎」

「ここにすむの⁉︎」

「わぁ、かみがきれーい!」

「なんでかみがあおいの⁉︎」

「もしかしてきぞくさまなの⁉︎」

 

 ええい、喧しい!

 5、6歳の子どもってこんなに元気なの? 怖いもの知らずというか、好奇心の強いというか、とにかく押しがハンパない。しかも黙ってると急に怯えたような顔になるのがものすごく扱いに困る。チビたち、恐ろしい子っ!

 

「私はリィエル。帝都から来た。年齢は多分11歳とかそのくらい。ここには住まない。髪が青いのは生まれつき。あと貴族ではない」

『おぉーっ‼︎』

「こらっ! リィエルを困らせないの!」

 

 興奮を露わに喝采を上げ群がるチビたちにミーナが怒鳴る。それでも効果は薄く、きゃっきゃきゃっきゃとはしゃぎ回るチビたちはいっそ逞しい。ミーナ、完璧に舐められとるやん。

 だが、私にそのテンションで向かうのならば容赦はしない。力関係はハッキリ自覚させてこそ意味があるのだから! ガキは嫌いよってね。

 要するにまともな対応が面倒になった私は、一際喧しい男の子の首根っこを掴み軽く持ち上げて視線を合わせる。

 

「ミーナの言うことを聞いて」

「うおぉっ! な、なんだよねえちゃん、オレとやる気か⁉︎」

「うるさい」

「へっ、やれるもんならやってみろ!」

「…………そう」

 

 会話が成立しないガキなど猿と同じ。

 そして、猿に必要なのは教育ではなく躾と相場は決まっている!

 酷い偏見を組み立てた私はそれを免罪符に、掴んだ男の子を天井近くまで投げ放った。

 

「へっ? ……うわぁああああああっ⁉︎」

「返事ははい、それ以外認めない」

「ちょ⁉︎ ま、待っ」

「うるさい」

 

 落ちてきた男の子を両手で拾い更に上へと投げ、回数を重ねるごとに天井スレスレまで投げ飛ばし続ける。恐怖を煽って反骨心を完膚無きまでにすり減らすのが躾の近道である。

 ゆとり教育なぞナンセンス!

 やると決めたら徹底的にである!

 

「ミーナの言うことを聞いて」

「わかった! わかったから!」

「バカは嫌い。返事ははい」

「はい! わかりました! だからやめっ⁉︎」

「よく言えましたっ」

「ひぃいいうぐっ⁉︎」

 

 最後に天井に軽くぶつけて躾は完了である。

 突然のバイオレンスな光景に口をポカンと開けるチビたち一同。ガキ大将だっただろう当の男の子は私から十歩は距離を取っていた。

 私はミーナに目配せする。彼女は楽しそうに笑っていた。

 

「はいはーい、みんな! ご飯できたからおいでー!」

 

 

 

 

「いやー、助かったよリィエル! カイを静かにさせるのがホントに大変で」

「あれくらい簡単。それよりいいの? 私も食べて」

「当然だよ! リィエルはお客様だもん!」

「ん、ありがとう。じゃあいただきます」

 

 献立はパン一切れに野菜たっぷりの温かいスープだ。ささやかではあるが十分な食事量であろう。

 味も悪くなく、粗悪品とかそういうのでもなさそうだ。

 

「ん、美味しい」

「それは良かったよ」

「……それにしても驚き」

「なにが?」

「この人数が」

 

 ざっと見回しても三十人はいてどこかの妖精倉庫ばりの人数(ただし男の子もいる)、それ程までに食堂に集まっている孤児は多かった。どれだけの親が子どもを捨てているんだとゾッとする。

 

「あぁー、確かに多いかもね。ここにいる子は私も含めてだけど、ルカイの貧民街(スラム)から拾われてきたんだ」

「……この街に貧民街(スラム)があるの?」

「うん、外れの方にね」

 

 何でもなさそうにミーナは言うが、私は心底驚いた。前世の記憶においてただ私が知らなかっただけかもしれないが、貧民街(スラム)なんて身近にあるようなものじゃなかったからだ。

 観光街という栄えた街にすら貧民街(スラム)はあるのか。

 正直、現実感がない。

 表情には出てないはずだが、ミーナは私の動揺を感じ取ったのか明るい声で笑う。

 

「あたしはこれで結構幸せなんだよ? 血の繋がった家族はいないけど、ここにいるみんなが私にとっての家族だから。親代わりの人もいるしね」

「……そう。親代わりの人って、あの人?」

「えっ? あっ、ナナリーさん!」

「ミーナ、いつもありがとね。……あら、そちらの子は?」

「昨日できたあたしの友達!」

「リィエル=レイフォード」

「あら、それは良かったわね。私はナナリー=ユーシュ。ここの管理者よ、よろしくね、リィエル」

「ん、よろしくナナリー」

 

 腰まで届く薄いブラウンの髪が特徴の優しげな女性。彼女がこの孤児院の管理者であるらしい。

 見た所二十代だろうか。一つの施設を管理する人間としては少し若い気がする。

 それに、この子ども達の数を養うにはかなりの金が必要のはず。ナナリーはどんな立場の人間なのだろうか?

 

「ナナリー、聞きたいことがある」

「ん? なにかな、リィエル」

「ここには貧民街(スラム)の子が集まっているとミーナから聞いた。それはとても素晴らしいこと。そして、ナナリーはここの管理者だと言った。ここは誰かが運営している施設?」

 

 キョトンとするナナリー。どうやら私の予想外の質問に呆けているようだ。

 それでもすぐに気を取り直したナナリーは、感心したように相好を崩した。

 

「えぇ、この孤児院は帝国直轄の施設よ。私はこの子達の面倒を見るために派遣された役所の職員、って言えばなんとなく分かる?」

「ん、理解した」

 

 へぇー、まさか国営の孤児院だとは。意外とこの国は良い国なのかもしれない。原作では天の智慧研究会や正義厨がこき下ろしてた記憶しかないが。

 聞くと、この孤児院の誕生は比較的最近らしい。

 予てよりルカイでは盗難が相次いでおり、その最たる原因が貧民街(スラム)に住む食糧難の子どもたちであった。直接的な被害額としてはそこまで大きくはないが、観光街という側面で見た時、盗難被害が多い街などデメリットでしかない。だからと言って貧民街(スラム)ごと一掃できるわけでもない。ならいっそ、一括で管理した方が結果的に良くなるだろう、という経緯で建設されたのがルカイ孤児院らしい。

 ……まっ、やっぱりそんなもんでしょ。完全なる善意で出来てた方がよほど珍しい。

 いつの時代でも、それが例え異世界であろうと、打算で構成された人間社会、うん、世知辛い。

 

「ナナリーさん、今日は巡回の日だっけ?」

「えぇ、ヴァオさんも喜ぶし、本当はミーナにも付いて来てほしかったのだけれど……」

「ミーナ、巡回ってなに? ヴァオって誰?」

「えーとね、月に二回ぐらいなんだけど、ナナリーさんは貧民街(スラム)に困ってる子がいないか巡回してるんだ。それで、そこで暮らすのは無理があるなと思ったらうちに引き取るの。ヴァオさんは貧民街(スラム)の顔役って感じの人? かな」

「……なるほど」

 

 巡回ね……それでこの多さか。いや、月二というかなりの頻度で行っている巡回と考えるとむしろ少ないのかもしれない。

 普段ミーナはこの巡回に付き添うそうだ。危険じゃね? と思ったけど、大の大人であるナナリー一人より、子どもであるミーナがいると貧民街(スラム)の子も警戒心が薄れて保護し易いとかなんとか。

 納得はしたがそれでも危険だろうと二人に尋ねてみると、ナナリーはこう見えて武闘派らしく、並みの相手なら男であろうと返り討ちに出来るとのこと。ギャップ萌え過ぎるわ。

 

 ただ、今日は私がお客様として来てるからミーナを連れて行くのはちょっと……ということらしい。

 

「じゃあ私も行く。これで解決」

「えっ? でも、それはリィエルに悪いよ。せっかく来てくれたのに」

「私は問題ない。それに、自分の身は自分で守れる」

「……確かに、リィエル凄く力持ちっぽいもんね。さっきカイを天井まで投げ飛ばしてたし」

「そうなの?」

「うん、それにリィエル運動神経もあたしより上だから、連れてっても大丈夫だと思う」

「そう……じゃあお願いしてもいいかしら?」

「ん、わかった」

 

 話し合いの結果、私たちは午後貧民街(スラム)へ巡回することが決定した。

 いざとなれば魔術を解禁して厄介ごとを蹴散らす算段である私は大して気負わずに、なぜか先程の少年を投げ飛ばしてたのを見て高度な高い高いと勘違いしたチビどもを、午前中延々と投げ飛ばし続けることになった。

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

「これで最近起きた事件の資料は全部ですか?」

「はい。では、よろしくお願いします」

 

 頭を下げ去って行く不愛想な職員を見送って、グレンは案内された役所内にある応接室にて最近の事件に関する資料を昼飯を食べながら読み漁っていく。

 

(行方不明者は全員観光客か。……ん? 殺人事件現場と変死体発見場所、随分と場所が偏ってんな。街の外れか俺らが泊まってる旅館近くとか……イヴのやろう、珍しく良い宿取ったと思ったらこういうことかよ。……というより……)

 

「変死体は全員貧民街(スラム)居住者、か……」

 

 この街に貧民街(スラム)があることは知識として知っていたグレンだったが、変死体の詳細については今初めて知った。そして、事件の奥底に澱む闇を感じ取って冷や汗をかく。

 貧民街(スラム)の人間は住民登録が為されていない。何人の人間がいて、どこでどう暮らしているか、殆ど把握していないのが現状である。

 今回のように死体として見つかった場合は消去法で導き出されるが、表に現れなければ役所が情報を手に入れる手段は存在しないのだ。

 

(行方不明者、殺人、変死体、ここにあるのはあくまで役所が把握してる情報だけだ。これは、下手したらもっと根深いぞ……)

 

 グレンの直感とこれまでの経験から、嫌な予感がひしひしと沸き起こっていた。

 調査の方向性を事件から貧民街(スラム)へと転換したグレンは、職員を呼び出して帝国宮廷魔導師の権限を駆使しあるだけの資料を持って来させる。

 

 貧民街(スラム)の成り立ち、内部構成、顔役など、把握している限りの情報を精査した上で、グレンは結論を出す。

 

「当たるならこいつしかいない。貧民街(スラム)の実質的支配者──ヴァオ=ムンド」

 

 行動指針は決まった。

 窓から外を眺めると陽は傾いたころで、空の青が橙色へと変色し始めている。どうやら資料の読み込みでかなり時間を消費してしまったらしい。

 

「そう思えば、リィエルはどうしてっかな……」

 

 本日のノルマを達成したグレンはふと、同行者であり守ると決めた無垢な少女を思う。

 リィエルに年の近い友達が出来たことが家族目線で嬉しくなったグレンは、本日一日はその子と遊んでこいと言ってあった。無表情で人形みたいなリィエルが、少しでも年頃の少女のように振る舞えるよう祈って。

 気になったグレンは遠見の魔術を行使する。

 この魔術は予め把握している魔力の持ち主を俯瞰するように見ることが出来る、ストーカー真っ青の超高度な観察魔術である。

 グレンはこの魔術をリィエルと、昨日挨拶を交わした少女──ミーナに施していた。

 決して、決して疚しい気持ちはない。

 

(さてさて、リィエルは楽しくやってっかな?)

 

 グレンの瞳に魔法陣が浮かび、視界に少女たちの情景を映し出す。

 

 リィエルが大剣を振り回して人間を叩き飛ばしていた。

 

「……はっ?」

 

 グレンは素っ頓狂な声を上げる。

 そして、

 

「な……んだこれはっ⁉︎」

 

 状況理解と共に驚愕を露わにした。

 何処かの路地裏、陽の光も街灯も当たらない暗いそこで、リィエルたちは襲われていたのだ。

 群がるのは老若男女を問わない、等しく見窄らしい姿をした人間である。皆が皆死人のように血色が悪く、瞳からは一切の生気が感じ取れない。

 

(ここは……まさか貧民街(スラム)かっ⁉︎ ……いや、だとしても此奴らの様子は異常過ぎる! それより、なんであいつがそんなところにいるっ⁉︎)

 

 疑問に答えてくれる者はいない。そんなのグレンにだって分かっているが、グレンはそう憤らずにはいられなかった。

 最早一刻の猶予もない。

 憂慮すべきは、リィエルが危機的状況に陥っているという一点のみだ。

 

「くそがっ!」

 

 グレンは迅速に部屋から飛び出し、形振り構わず移動を開始した。

 

「《三界の理・天秤の法則・律の皿は左舷に傾くべし》──!」

 

 二階の窓から魔術を行使して通りの家屋の屋根に着地したグレンは、街の外れにある貧民街(スラム)へと駆けて行く。

 

「頼む、頼むから間に合ってくれっ!」

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 ナナリーの様子がおかしいと気付いたのは、ヴァオとかいう紳士気取ったオッさんと別れてからだ。

 そして、状況が最悪を極めていると判ったのは、日が沈み始める頃であった。

 

「ナナリー、ミーナ、止まって」

「……えっ? どうしたの、リィエル?」

 

 場所は貧民街(スラム)の暗い路地裏。

 私は直感で二人に静止を求めていた。

 背にボロボロの衣服とも言えない布を纏った少女を背負ったミーナは、私の発言に驚いた様子で足を止める。

 

 しかし、ナナリーは歩みを止めなかった。

 

「ナナリーさん?」

 

 此方を一切振り向くことなく歩み続けるナナリーに、ミーナも違和感を感じたようだが、それでもナナリーは一定のペースで歩き続ける。

 疑心が確信へと至り、手を伸ばしてナナリーを止めようと私が動こうとした──その時だった。

 

 先にある入り組んだ脇道から、幾人もの人影が現れたのは。

 

「ナナリー、止まって」

「…………」

「止まれって言ってる!」

 

 声を張り上げてもナナリーは止まらない。

 

「……リィエル、後ろからも……」

 

 怯えたミーナの声に振り向けば、先程まではいなかったはずの人影が続々と出てくるところであった。

 

 これはマズイ。何でかは分からないけどとにかくマズイ。

 

 危機感が募り警戒心を最大に高めた頃、ようやく暗がりで認識しづらかった人影の表情が眼に映る。

 生気の失った血走った瞳、黒に近い顔色、見窄らしい衣服。

 まるで死人──ゾンビのようだ。

 

 ──はて、この世界はロクでなし世界じゃなくて、学校で楽しく暮らす世界だったのかしらん?

 

 と、いつもならこの後ギャグに突っ走る私だが、今だけはそんな余裕は残されていなかった。

 

 ナナリーがその死人の一人に叩き飛ばされたからだ。

 

「…………えっ?」

 

 ミーナには目の前の光景が突飛過ぎたのか、呆けたように声を出した。

 今は呆然としているが、このままではミーナがパニックに陥るのは間違いないだろう。

 

 それは致命的だ。

 ここでミーナに取り乱されては護れるものも護れなくなる。

 

 ミーナには悪いが、少し黙っててもらおう。

 

「《万象に(こいねが)う・我が(かいな)に・剛毅なる刃を》──!」

「きゃっ⁉︎」

 

 ──バチリ!

 

 迸る紫電と共に大地から迫り上がる蒼銀の大剣。

 私はそれを掴み取って左右にビュンビュンっと振り切ると、切っ先を前から迫る群衆へと向ける。

 

「そこで止まれ、さもなければ攻撃する」

 

 死人共は歩みを止めない。

 

「警告は二度まで。次はない、そこで止まれ」

 

 死人共は私の声に反応を示さない。

 

「リ、リィエル……」

「ミーナ、壁際に寄って」

「で、でも……」

「お願い……早くっ!」

 

 ──私のその言葉が、合図だった。

 

 死人共は明白な敵意を持って、私たちに襲い掛かってきた。

 

「はぁあああっ!」

 

 背にミーナを庇った状態で私は大剣を振るう。

 ただ、本能的に殺人を犯すことへの嫌悪が拭えないため、攻撃は専ら大剣の腹を利用した消極的な戦法になってしまう。

 

 死人の人数は眼に見える範囲でも十人は軽く超えている。これを凌ぎきるのは相当骨が折れるだろう。

 

 だから私は、即座にあの感覚に頼った。

 

「──退()け」

 

 空へと跳ね上げられる死人。

 自動で動く身体を用い、ミーナを絶対に護るという私なりの覚悟を言葉に乗せる。

 

「刃向かうのなら容赦しない」

 

 

 

 ミーナだけは、護ってみせる!

 

 

 

 






次で終わらせます。

if:リィエルがギャグに突っ走った場合

 はて、この世界はロクでなし世界じゃなくて、学校で楽しく暮らす世界だったのかしらん?
 別に私はゾンビとふ・れ・ん・ど・し・た・い訳ではないんだけど!
 ゾンビフレンズと狩りごっこするつもりもないんだけど!
 ……あれ、そう思えばリィエルのボイスってくるみちゃんじゃ……。よし、シャベルでも錬成してやろうじゃないの!

 かかってこいやぁあああああああああっ‼︎





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