ロクでなしで最弱の機竜講師と神装機竜(バハムート)   作:最弱氏

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ロクでなしの機竜講師

アーカディア帝国

 

かつて世界の5分の1を支配した世界最大の大国だ。その時代は数百年まで続いた。

だが………。

 

五年前

吸い込まれそうな深い夜空は、とても綺麗だった。

が、空の下はゆらゆらと揺らめく、赤い炎。

その空には竜が舞っていた。

人の身に、鈍色の古代兵器を纏った、機竜使い《ドラグナイト》たちの死闘。

数百の竜が、炎で照らされた空に舞い、咆哮上げ、翼をもがれ、落ちてゆく。

 

空に舞う数百の竜たちを、縦横無尽で空を駆け、帝国の機竜使いを地に落としていく、たった一機の漆黒の暴竜。

 

この時、アーカディア帝国は滅びた。

 

 

アーカディア帝国滅亡後、のちに人々はこう語った。

 

『五年前、数百年もの間

 

圧政をしいていたアーカディア帝国はクーデターによって滅ぼされた

 

それを成し遂げたのはたった一機の漆黒の機竜

 

その正体は今も謎のまま

 

人々は恐れと敬意を込めて、その機竜使いをこう呼んだ。

 

 

【黒き英雄】と』

 

 

 

第1話 ロクでなしの機竜講師

 

 

 

"装甲機竜《ドラグライド》"……数百年前に遺跡から見つかった古代兵器。それの対となる機攻殼剣《ソードデバイス》があり、抜剣することで召喚される。

そして、装甲機竜を見に纏い、使いこなせる人を……"機竜使い《ドラグナイト》"と呼んだ。

 

ここは王国ーーアティスマータ新王国。

アーカディア帝国滅亡後に建国された国だ。

この国には有数の機竜使いがおり、他の国からは"機竜使いの国"と呼ばれている。

そして、ここは城壁都市ーークロスフィード。

 

クロスフィードの道路を走っている金髪の少女はある少女を探していた。腰に赤と金色の機攻殼剣をつけている。

 

「全く、何処にいる………あっ、いた」

 

金髪の少女は雑貨の屋台を眺めている水色の髪を少女を見つけ、声をかけた。

 

「クルルーッ!」

 

「ん?」

 

水色の髪の少女ーークルル・エインは後ろには振り返った。彼女も腰に髪と同じ色の機攻殼剣が付いている。

 

「あら、リーシャ」

 

「はぁ、はぁ。遅くなってすまない。それじゃあ行こうか?」

 

金髪の少女ーーリーズシャルテ・アティスマータは息を整えながらそう言った。

 

「はぁ〜、先に行ってろっと言ったのだが?」

 

リーシャはため息を吐き、クルルにそう言った。

 

「あら?私がお姫様を置いて行くわけなんてないでしょう?私が奥様に怒られてしまうわ」

 

クルルはリーシャに向かって笑いながら言った。

 

「ちょ!?やめろ、クルル!?私達は対等な家族なんだからなあ!」

 

リーシャは顔を真っ赤にさせながらクルルにそう言った。クルルがなぜ、リーシャにお姫様といったのかというと、リーシャはこのアティスマータ新王国の第一王女なのだ。だが、リーシャはお姫様と呼ばれるのを好まないためそういっている。

五年前のある日、突然リーシャの家にクルルがやって来て、最初は警戒していたリーシャも、クルルと打ち解けリーシャの家族共々と幸せに暮らしている。

 

「うふふっ、ごめんなさい」

 

クスクスと笑うクルル。

 

「でも、あなたが忘れ物なんて珍しいわね?そんなにベルベット先生が辞めたことがショックだったのかしら?」

 

クルルはそう言うと、リーシャはピクッとした。

 

「ベルベット先生、なんでやめてしまったのだろうか?」

 

リーシャはそういった。

 

「……そうね。だって、貴方は『講師泣かせ』のリーシャですものね」

 

「その呼び方はやめろ言ったろう」

 

クルルが言う、『講師泣かせ』のリーシャとは、難なく掴みかかっていくリーシャを意味し、講師たちの授業でも、間違っているところを指摘したりと何かもいいたい放題で、講師たちを泣かせて来たと学園で噂されるようになった。

 

「そういえば、ベルベット先生の代わりの講師が来るそうよ。どんな人なのかしら?」

 

クルルはそういった。

 

「さぁな、あんまり期待していない」

 

リーシャはやれやれと首を振りながら言う。

 

っと、その時……

 

ドドドドドドドッ!!

 

「うおおおおぉ!!どけえぇぇガキ共ーーッ!」

 

突然、リーシャたちの目の前に白髪の男がパンをくわえたまま、迫って来ていたのだ。

 

「えっ?」

 

「きゃああぁあーーっ!」

 

クルルは驚き、リーシャは叫んだ。

すると、リーシャは腰に下げている派手な装飾の剣を抜剣せずに白髪の男の顔面目掛けて、フルスイングした。

 

「ぐへっ!!」

 

男はリーシャの剣に顔面がクリンヒットし、飛ばされ、噴水に落ちた。

 

「ハァ…ハァ……」

 

リーシャはゼェゼェと息を吐いた。

 

「リ、リーシャ?」

 

「し、しまった……つい」

 

リーシャはハッと気づき、ぶつけた人を心配した。

 

「えーと、あの」

 

ザパーアっと音がし、噴水に落ちた人は起き上がった。

 

「ああ、大丈夫かい?君達?」

 

起き上がった男性は少し格好つけかのように2人を心配した。外見はリーシャたちの2つ上くらいの男性だった。そして、腰には二本の機攻殼剣を携えていた。

 

「いや?貴方が大丈夫かしら?」

 

「ダメよ、リーシャ。いきなり人を殴るなんて……」

 

クルルはリーシャに言った。

 

「そ、そうだな……。あのごめんなー」

 

リーシャが先程のことを謝ろうとしたら、

 

「全く!どんな教育受けてんだ!?あ!?親の顔が見てみたいぜ!」

 

急に態度が変わり、リーシャに対して文句を言った。

 

「い……って!?ええぇ!?」

 

リーシャは驚いた。

 

「まー完全にお前らが100%一方的に悪いのは明白だ。俺は優しいから許してやる」

 

白髪の男はそう言うと、リーシャはカチーンと来ていた。

 

(な、なんなんだこいつは……!?)

 

「すいません。私からも謝りま……」

 

クルルと謝ろうとした瞬間、白髪の男性はクルルをじぃーと見つめ、

 

むにっ

 

「!?」

 

突然、頰をつねった。

 

「あ…あにょ……何にゃか??」

 

さらに身体をペタペタと触りだした。

 

「うーーーん?お前、どっかで」

 

男性はそう言うと、

 

「何をしんてるんじゃあ〜!!この痴れ者がぁー!!!」

 

「ぐはっ!」

 

リーシャに蹴りを食らわされた。

 

「クルル!今すぐこの痴漢を警備兵にに突き出すぞ!」

 

リーシャはビシっと指を男性に突きつけ言った。

 

「ええっ!?」

 

白髪の男性は驚き、リーシャに擦り寄った。

 

「ちょっと待ってくれ!?仕事、初日からそんなの殺されちまう!?」

 

「知るかぁー!」

 

リーシャは叫んだ。

 

「私は気にしないからいいのよ、リーシャ」

 

クルルはリーシャの肩に手を置き、そう言った。

 

「ええっ!?……いいのか?」

 

リーシャはクルルの言葉に驚きつつ、下がった。

 

「ところでその制服、アカデミーの生徒だな?早くしないと遅刻するぞ」

 

白髪の男性は時計を出し、そう言った。時計の針は8時40分だった。

 

「えっ?遅刻なんて……って、その時計の針進んでいませんか?」

 

クルルは時計の針が進んでいることを伝えた。

 

「はっ?」

 

白髪の男性は冷汗をかいた。

 

「だって、今8時なのだけど」

 

クルルはそう言った。

 

「チッ、そう言うことかよ……あのクソババアが」

 

白髪の男性はプルプルと震え、ボソっと何かを呟き、

 

「あ、俺急用、思い出したからじゃあな」

 

白髪の男性はそう言うと、人混みの中に消えて言った。

 

「な、なんだったのかしら?」

 

「ほっとけ。それより私たちも行くぞ、クルル」

 

リーシャはそう言うと、学園へと急いだ。

 

「……」

 

クルルはリーシャの後に続いている時に先程の男性を思い返していた。

 

男性の特徴は白髪の髪。服は白いカッターシャツに手袋。だぼだぼのネクタイ、腰には二本の機攻殼剣。そして、首に黒い首輪。

 

「ま、まさか……あの人の正体って……!?」

 

クルルは何か思い出した様に驚いた。

先程の男性のことを。

 

「ルクス・アーカディア。旧帝国の元第七皇子……」

 

クルルは小声でそう呟いた。

 

 

 

ここはアカデミー。

一流の機竜使いを目指す者たちが通う学園だ。

しかし、この学園は女子しかいないのだ。

 

その理由はアーカディア帝国の政治は腐敗し、圧倒的な軍事力を背景に圧制が敷かれていた。男尊女卑の考えが浸透しており、平民の女性は扱いはひどく、貴族の女性でも政略結婚の道具となることが一般的だった旧帝国の政治。

つまり、この時代は男の機竜使いが多かったが近年の研究では機体制御の適正は男性より女性の方が高いことが判明していることがわかった為、ここは旧帝国が滅びだ後に建造され、今は多くの女性機竜使いを配しつしているのだ。

 

 

『今日はこのクラスにベルベット先生の代わりの講師が来るのじゃが。一か月の非常勤講師としての。まあ、なかなか優秀な奴じゃよ…』

 

そう言う若い女性の声、しかし口調が少しおかしいが、まあいいとしよう。

彼女の名前は、マギアルカ・ゼン・ヴァンフリーク。このアカデミーの教授をしている人だ。

 

 

「……って、ヴァンフリーク教授がHRの時に言っていたけど……遅いじゃないか!?もう授業時間半分を過ぎてんだぞ!?」

 

「落ち着きなさい」

 

リーシャは叫び、クルルはリーシャを宥めた。

 

実は今朝のHRにマギアルカ教授が言っていた非番講師が来ていないのだ。

 

「ひょっとしたら、何かあったのかもしれないよ?」

 

そう言うのは、クラスのムードメーカー的なティルファー・リミット。

 

「関係ない。どんな理由があろうと遅刻っていうのは、意識が低い証拠だ」

 

リーシャはそういう。

 

「それにここは近隣国にも名高い機竜使いの学園だぞ!そこの講師たる者が許される訳がない。とにかく、私が文句を…」

 

リーシャがそういようとした時……

 

ガチャと教室のドアが開き、男の声がした。

 

「あー悪い悪い、遅れたわー」

 

リーシャはその声を聞いた瞬間、席を立ち、言い放った。

 

「やっと来たな!!おい、お前!!この学園の講師として自覚が……って、あーーーーーーッ!?」

 

が、途中で言葉が途切れ、教室に入って来た人物を指差した。入って来た人物は今朝、ぶつかった白髪の男性だった。

 

「お前は今朝の……!?」

 

リーシャはそういうが、

 

「……違います。人違いです」

 

っと否定されたが、

 

「ンなわけないだろう!!」

 

リーシャはそう言った。

 

「というか、お前は……」

 

リーシャは白髪の男性を見て言った。

クラスの女子も同じだ。

 

「なんで、旧帝国の生き残りがここの講師なんだ………ッ!?」

 

リーシャは声を震わせながら言った。

この男が何故、旧帝国の生き残りのかというと、黒い首輪がその証なのだ。旧帝国が滅びだ後、アティスマータ新王国に恩赦として、釈放され、国民からあらゆる雑用を引き受けるという契約のもと、国家予算の5分の1に相当する借金を返済しているのだ。

 

「あー、なんだ。色々あってな」

 

白髪の男性はめんどくさそうにいった。

 

「あー、ルクス・アーカディアだ。これから一ヶ月間、皆さんの勉学をお手伝いをさせて頂きます」

 

白髪の男性ーールクスは教壇に立ち、自己紹介をした。

 

「……挨拶はいいから、さっさと授業を始めないか?」

 

リーシャはルクスにそう言った。

 

「ん?あー、そうだな。かったるいが、始めるか」

 

ルクスはチョークを取り、黒板に文字を書いた。

 

「はい」

 

黒板の内容……『自習』

 

「……………ん?」

 

リーシャは目を点にした。

 

「今日の授業は自習にします」

 

ルクスはそういうと、教壇にある椅子を引き、腰掛けた。そして……

 

「……眠いから」

 

と言い、寝た。

 

ルクスの行動にクラスのみんなは唖然とするしかなかった。

 

 

「ちょっと待てーーーっ!!」

 

 

 

 

これがロクでなしで最弱の機竜講師の始まりだった。


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