ISと無気力な救世主 作:憲彦
あ、このエピソードは何故か10000文字越えてるので、読んでるとしんどくなると思います。休みながら気軽に読んでくださいね笑
『Time Vent』
突如として辺りに響いた電子音。音のした方向に顔を向けるが、突風にでも吹き飛ばされたかの様に後方へと倒れこんだ。一瞬だが意識も失ってしまった様だ。
「っ……なんだ今の?」
「待て織斑一夏!」
「ッ!?なんだ!?」
「私たちから逃げられると思うな!!」
(IS!?封印されてる筈だぞ!なんで!…ん?)
意識が戻ると、いきなりISに追いかけ回されていた。そして気付いた。自分の容姿が幼くなっていることに。
(待て……これって確か……誘拐された時!?)
見覚えのある古い倉庫。2機の量産型IS。今までのループとは違うが、この状況から過去に飛んだことが理解できた。
「どうなってんだよ!」
ベルトも無ければこの頃の一夏には大して体力もない。そろそろヤバい。そんな時だった。自分がよく知っている仮面ライダーが倉庫に飛び込んできた。
「オーガ……木場か。そうだ。俺は確かこの時初めて変身したんだ。仮面ライダーに」
そう。一夏はこのあと、倉庫の外で待機していたバジンからファイズギアを投げ渡される。そして変身して木場と共にISを倒すのだが、いざ冷静になりバジンを待つと結構な時間があることに気付いた。しかも気付けば木場は防戦一方だ。
「この時代のライダーズギアじゃこうなるか。仕方ね。木場!少し待ってろ!」
「え?なんで俺の名前を!?」
「あ!待て!!」
木場が突き破った壁の穴から脱出し、表に停めてあるバジンに近付く。ISが1機迫ってくるが、リーチは十分にある。慣れた手付きでベルトを腰に巻き、ISと向き合った。
「観念した様ね!大人しく死になさい!!」
『555 ENTER』
『Standingby』
「変身!」
『complete』
「なっ!?ガァ!」
変身直後、追ってきたISを殴り飛ばし倉庫へと押し戻した。そしてミッションメモリをファイズフォンから外し、バジンのハンドルにさす。
『ready』
いつでもファイズエッジとして使える状態にし、エンジンをかけて倉庫内に向けて走っていった。
「あんのクソガキ…!殺す!!」
「誰がクソガキだ?」
「うわっ!?」
入るのと同時に、バイクで轢き飛ばした。そして木場を押さえ付けていた方もファイズエッジで殴り飛ばす。
「立てるか?」
「まさか、変身したのか…!?なんて危険な事を……」
「目の前を見ろ。んな事言ってる場合か?」
その後はあっという間に片付いてしまった。時間が戻り子供の体になったとはいえ、中身は戦い慣れた状態だ。変身すれば体力を含む身体能力はベルトでカバーされる。つまり、この頃の木場と比べて一夏は圧倒的にその先に居ることになるのだ。手子摺る理由も敗北する理由もない。
「ふぅ。終わったな。グッ……!意識が……」
ベルトを外して返そうとしたときだ。再び意識が薄れていき、倒れそうになる。感覚的には地面とそろそろ触れ合う頃だ。だが地面の感触がくる前に、意識が戻り別の場所に移動したことに気付いた。
「……今度はIS学園。第1アリーナのピットか」
着けているのはデルタギア。状況やタイミング的に、クラス代表決定戦の試合開始直前だろう。このあとの事は知っている。オルコットとの試合だ。終始一夏のワンサイドゲームで終わる。
「こんな過去見せてなんになるってんだよ……変身」
『Standingby』
ブツブツと文句を言いながらも、デルタに変身した。
『complete』
電子音と共に、一夏の体に白いラインが回り、光に包まれると、そこにはオレンジの複眼に、黒い体のスーツを纏った一夏が立っていた。
「さてと、行くか」
右腕を軽くスナップさせるように振り、アリーナへと降りていく。
「ようやく来ましたわね。あら?男にはお似合いの欠陥機ではありませんか。飛行能力もない、武装は腰に付いている拳銃1丁とは……随分と情けない機体ですわね!そんな粗末な機体でわたくしに勝てるとでも!?」
聞いた事のある台詞である。だが、申し訳ないが答えを知った上でその台詞を聞くと虚しいものがある。
「貴方に最後のチャンスを与えますわ。織斑先生がなんと言おうとも、わたくしが一方的な勝利を納めるのは自明の理。ボロボロで惨めな姿を晒したくなかったら、今ここで謝りなさい。そしたら、許してあげない事もなくってよ」
「…………」
流石の一夏でも、この後の展開を考えると少し可哀想に思ってしまう。どうせ巻き戻った時間だし負けてやろうかと思ったのだが、それもそれで癪に障る。結果、可哀想だがあの時と同じ様にすることを決めた。
「黙りですか……なら、死になさい!」
その台詞の直後に試合開始の合図が流れる。そしてライフルでレーザーを撃たれ直撃すると爆発したのだが、当然一夏にダメージはない。
「な!?ッ!さあ、踊りなさい!わたくしとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲で!!」
「その台詞、自分が舐めても勝てるような相手以外には使わない方が良いぞ」
ここからは記憶と同じ。オルコットはビット兵器を展開する事ができずに一夏に沈められてしまった。
「さてと……タイミング的にはそろそろだな」
「確かこの辺りだったな」
変身した状態で壁に触りながらそう呟いた。そして腕に力を込め、全力で殴り付ける。
「遅くなった。後は俺がやる(やっぱりこの場面か)」
「本当よ。どれだけ待たせる気?」
「遅すぎですわ!」
「そんだけ騒げるなら大丈夫か。一気に片を付けさせてもらう!」
そう言うと、手首に巻いている腕時計の様なもの、ファイズアクセルからメモリーを抜き取り、携帯のメモリーと差し替えた。
『Complete』
「無人機相手ならこれくらいが丁度良いよな!」
そう。ここはクラス対抗戦で無人機が乱入してきた所だ。この後一夏は無人機を撃破するのだが、その前に大きな問題があることを思い出した。
『一夏!!男なら……男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!!』
「「な!?」」
「昔はバカだと思ったが、たったそれだけの為にここに来た根性は認めてやるよ。篠ノ之」
そのバカデカイ放送が流れると、正体不明のISは放送室に狙いを定め、アリーナに突っ込んだ時と同じレーザーを放った。
「次は撃ち落とされるつもりはないぞ!」
『startup』
『ready ENTER』
『Exceed Charge』
抜き取ったメモリをファイズショットに差し込み、加速を付けてレーザーへと突っ込んでいく。ファイズアクセルの超加速でグランインパクトは名刀の如く鋭くなり、無人機の強力無比なレーザーを真っ二つに切り裂きながら進んでいった。
「ハァァァァア!!」
直撃を受けた無人機は、見事に頭部が消し飛び機能を停止した。少し未来が変わるが、この場にいる人達を救えたことに違いはない。そして一夏自身、自分の成長を実感することになる。悪いことではないのは確かだ。
「よし!この流れだと次は……」
「やっぱりここか。ラウラ」
次の時間はVTシステムに乗っ取られているラウラの場面だった。
「デュノア。とっととここから離れろ」
「え?」
いくら中身が成長した一夏とは言え、体は学生の状態。VTシステムに完全に支配されているラウラの攻撃はそう易々と受け止められる物ではない。
「やっぱキツい……!なぁラウラ、昔も言ったけどよ、なにシステムごときに乗っ取られてんだ!おい!」
初めて相手にしたときと同様に声をかけた。もしかしたら反応を示してくれると期待したからだ。だがそう簡単に変わってくれる筈もなく、容赦のない攻撃を受けることになった。
「無理か……なら、また耐えてくれよ!」
『complete』
『Startup』
アクセルのスピードを駆使して装甲を少しずつ剥がしていく。これも冷静になって見てみると、削った所は時間が経つにつれて回復して行っている。
「昔の俺、よく助けられたな。よっと!」
ラウラが乗っている場所に腕を突っ込み、中から無理矢理引きずり出した。
「あっぶね。力加減間違えちまった……大丈夫そうで良かった~」
(今度はどこだ?体が重い……でも嫌な感じじゃない。それにこの匂いは……なんか安心できる。抱き枕?にしては柔らかいし温かいな……布団の中か?)
再び時間が飛んだ。だが今度は状況が分からない。何故か辺りは薄暗く、更に体のダルさを感じていた。しかし不快感は一切ない。
(時間を確認しないと……)
時計を取るために布団から手を伸ばすと、ようやく状況に気付いた。
「本音……じゃあ初めてコイツと会ったときか」
そう。この時間は初めて一夏が本音と繋がりを持った時間だ。正確に言えば、千冬が一夏を起こすために本音を部屋に向かわせるが、本音も一夏と一緒に寝てしまったあの時だ。
「こんなに温かくて、安心できる存在だったんだな。俺にとって……」
今まで忘れていた何かが自分の中に出てきた気がする。それを噛み締めるように、本音を抱く腕に力を僅かに入れた。表に出さないが、一夏は本音を誰よりも好きに思っている。不器用故にそれを表に出せず、尚且つ忘れかけてしまった。そしてショッカーとの戦闘で、その感情は限り無く0に近付き、ショッカーへの憎しみ以外の感情が薄れていっていた。だが、一連の流れが一夏の中にある感情を呼び覚ましてくれた。そしてそれが溢れ出ている。
「ゴメンな。本音。忘れててゴメン。俺はお前が好きだ。誰よりも好きだ。なんでこうして、出会う所からやり直さないと気づかねーかな……お前は俺にとって大切な人だ。大切な恋人だ。大切な家族だ。誰よりも愛おしい、俺の妻だ」
本音はぐっすりと眠っている。恐らく一夏が言っていたことには気付いていないだろう。一夏本人も結構小さい声で呟いている。それに聞いてもなんの事か理解できないだろう。
ここからは無意識に2人の距離が縮まっていった。速度としては速かったが、一夏の言った通り安心できると言うのが大きな理由だろう。この時から無意識に2人は安心しあえる仲だったのだ。鈴からは距離縮まるのが早すぎないかとツッコミを受けたが、だからと言って障害があったと言うわけではない。問題なく2人の仲は深まっていった。
が、それはあくまで直接2人の間と言うだけで、その他の外野が色々と問題を起こしてくれていたのは言うまでもない。特に本音、布仏と言う家柄が原因だ。布仏は所謂従者。主である更識に仕える存在だ。そしてその更識と言うのが暗部と言う厄介で迷惑な組織だ。珍しくスマートブレインが救済処置なしの敵と認定したのがここである。なお、組織の壊滅や苦痛なき死が救済処置の項目にあるのはここだけの話だ。
「お断りします!」
「それは無理よ。貴女にも分かるでしょ?ライダーズギアを作り、それを多数保有しているスマートブレインの危険性は。織斑一夏はスマートブレインと深い関わりのある人間よ。もう一度言うわ。本音、織斑一夏からスマートブレインの機密情報とライダーズギアを奪ってきなさい。これは更識の決定事項です。貴女に拒否権はありません」
「楯無さま……何度言われても私の考えは変わりません!私には!イッチーを、大切な人を裏切る真似はできません!」
「大切な人を裏切る?まさか本当に恋仲になってたなんて……確か、一緒に寝ちゃってそれから仲良くなったんだっけ?いい?それは恋心で今の関係になった訳じゃないわ。ただお互いに意識しちゃってそれがズルズルここまで続いただけよ。それに、学生時代の恋愛なんて所詮はお遊び。布仏の人間である貴女はいずれそれ相応の人と結婚するのよ?たかが子供の惚れた惚れたなんて、すぐに過去の事になるわ。だから辛くないのよ。早く任務を実行しなさい。同室の貴女が適任なのは分かってるわよね?これは、命令よ。違反は布仏一族全体の事だって、忘れた訳じゃないでしょ?」
「ッ…………」
一族全体。それを言われてしまえばぐうの音もでない。苦虫を噛み潰したような顔をして、無言で部屋から出ていくしかなかった。
「本音……大丈夫?」
「かんちゃん……」
「な訳ないか…ゴメンね。変なこと聞いて」
「かんちゃん、私はどうすれば良いの……!イッチーを裏切りたくない!でも!家族には…迷惑かけたくないよ!」
愛する人間と愛する家族を天秤にかけられ、尚且つどちらに転んでも更識にはダメージはなく、必ずどちらかを選んで片方を捨てなくてはならない。実質、両方とも人質に取られてるような物。選ぶには辛すぎる。
因みにこの事件は高校3年生。つまりIS学園の生活最後の年の出来事だ。
「この時間は……何かあったか?」
一夏の意識がようやく到着した。が、一夏はこの時間で何が起こったかは覚えていない様だ。
「何をボーっとしてるんだ?もう放課後だ。部活がないならさっさと寮にもどれ」
「姉貴?」
「学校では織斑先生だと何度言ったら分かるんだ?」
出席簿を構えている姿がゴゴゴゴ!と言う効果音が入りそうな佇まいだ。
「そんなに怒るなよ。じゃ」
色々と理解できてないが、取り敢えず寮の部屋に向かっていった。
「あ、イッチーおかえり~」
「あぁ。ただいま」
「私明日は早くから用事あるから、先にシャワー浴びるね」
「分かった。じゃあ飯作ってるぞ」
「うん。お願いね~」
少な目の会話の後に、本音はシャワーを浴びに、一夏は料理を作るために調理台の前に立った。数分後には食事が始まるのだが、妙にチクチクと肌に刺さるような感覚が空間に漂っていた。
気不味い空気のあと、すぐに眠りに付いた。事件が起きたのは次の日の朝である。この日は休日で早くに起きる人は少ない。本音は部屋を出たあとだ。別に焦る必要も無いため、のんびりと身嗜みを整えて軽く朝食を取ろうとしたのだが……
「ん~?ん!?」
普段ベルトを置いてある机の上になにもないのだ。ツールボックスごと無くなっていた。すぐに千冬の部屋に駆け込み、携帯を奪い取るように借りると村上に電話を急いでかけた。
「村上!今すぐファイズギアを追え!」
『はい?』
「GPS起動させるんだよ!速く!ベルトを盗まれた!」
『は!?分かりました。今すぐ調べます』
「おい一夏。一体だれに盗まれたんだ?」
「疑いたくはないが、本音しかいないな。昨日はなんか妙な様子だったからよ」
「妙?」
「なんか余所余所しいと言うか殺気だってたと言うか、兎に角変だった」
「はぁ……まさかアイツが裏切るとは……世の中なにが起きるか分からないもんだな」
千冬は呆れ気味に愚痴を言っている。しかし一夏は疑問に思っていた。この事件はあったような気はするが、かなりふわふわしている。その後の人生も大味と言うか印象深いと言うか、かなりブッ飛んだ凄絶な人生を送ってきた。記憶の果てに消えるのは分からなくもない。
「あの少し良いですか?」
一夏が頭を悩ませ、千冬がイライラしているなか、ドアをノックして簪が入ってきた。
「更識妹か。どうした?見ての通り今私たちは取り込み中なのだのが?」
「その事についてです。まずこれを聞いてください」
取り出したのはボイスレコーダー。再生ボタンを押すと、数日前の本音と楯無の会話が録音されていた。それを聞いて2人は察した。そして簪を除く更識家に強い殺意を覚えた。
「更識妹。いや簪。それを聞かせてくれたことを感謝する。因みに、私たち以外にそれを知っている人間はいるか?会話の当事者を抜かしてな」
「ま、まだ誰も知りませんが?」
「そうか。布仏姉とご両親にも聞かせてやれ。あとスマートブレインの村上社長と雅人さんと木場さんにもな。名前が分かりにくかったらカイザとオーガを出せと受け付けに言え。すぐに繋いでくれる。さてと、更識家に乗り込んで久し振りに祭りを楽しむとするか。何年ぶりだろうな?こんなに楽しい祭りにありつけたのは……フハハハハハ」
完全に千冬がバグった。
「ね、ねぇ、なんか織斑先生おかしくない?」
「安心しろ。少しストレスで頭のネジが1本飛んだだけだ。1日経てば治る。もっとも、ヤバいネジじゃない場合に限りだがな」
「そ、そうなんだ……(家、消滅しないかな?)」
それからは速かった。村上、草加、木場と合流し本音の向かった先である更識家へと向かっていった。
「言い付け通り、ファイズギアとスマートブレインのデータを持ってきました……」
「そう。よくやったわね。どう?大したこと無かったでしょ?この世界で生きるからにはこれが日常になるわ。肝に命じなさい」
「はい……」
「そんなに気負う必要はないわ~。すぐに過去の事になるんだから。下がって良いわよ」
冷たいやり取りだった。本音は後悔している。この選択肢を選んだことに。何より、これしか選べなかったことに。
(ごめんなさい……イッチー……!)
声に出せない懺悔だった。そして悟った。もう一夏達の元に戻れない事を。が、それは本音の勝手な思い込みだった。何故なら、一夏たちはあれでも底抜けのお人好しだ。自分から離れても、見捨てなければ何度でも助けに来て引っ張り出す様な強引な連中。
「なんか表が騒がしいわね」
「楯無さま!大変です!ぶ、ブリュンヒルデとスマートブレインの連中が乗り込んできました!」
「何ですって!?」
急いで表に飛び出すと、時代劇かと聞きたくなるような光景が目の前に広がっていた。門を無理矢理バジンで破壊し、対応に当たっていた更識の人間を次々に投げ飛ばし、中へと入っていこうとしていた。
「い、いきなりどういうつもりですか!?」
「おっと失礼。お邪魔しますよ?更識当主」
「全く、よくも色々と舐めた真似してくれましたね。更識の方々?」
「なんの事かしら?村上社長」
「心当たりがありすぎて何の事か分からない様ですね。草加さん。あれを」
「はいはい。これが目に入らないか?」
突き出したのはスマホの様な端末だった。画面にはファイズギアに付いているGPSの表示を見せた。指していたのは更識家のど真ん中。乗り込むだけでも十分な理由である。
「俺たちはこれを取り返しに来た。これ以上争いたくはない。できれば平和的に解決したいんだが?」
「平和的に?勝手に乗り込んで勝手に大立ち回りをしておいて、今更何を言ってるの?それに千冬さん。貴女はそこに立っていて良いんですか?ブリュンヒルデともあろう人が、スマートブレインの連中なんかと」
「一緒にいたら何が問題なんだ?貴様らが勝手にスマートブレインと敵対しているだけだ。私は更識の人間では無いんだぞ?それにあんなふざけた事を本音に吹いて操って、今度は私の立場を使って操るのか?」
懐からボイスレコーダーを取り出し、簪から貰った音声を流した。如何なる言い訳を封じ込める為に。
『それは無理よ。貴女にも分かるでしょ?ライダーズギアを作り、それを多数保有しているスマートブレインの危険性は。織斑一夏はスマートブレインと深い関わりのある人間よ。もう一度言うわ。本音、織斑一夏からスマートブレインの機密情報とライダーズギアを奪ってきなさい。これは更識の決定事項です。貴女に拒否権はありません』
『楯無さま……何度言われても私の考えは変わりません!私には!イッチーを、大切な人を裏切る真似はできません!』
『大切な人を裏切る?まさか本当に恋仲になってたなんて……確か、一緒に寝ちゃってそれから仲良くなったんだっけ?いい?それは恋心で今の関係になった訳じゃないわ。ただお互いに意識しちゃってそれがズルズルここまで続いただけよ。それに、学生時代の恋愛なんて所詮はお遊び。布仏の人間である貴女はいずれそれ相応の人と結婚するのよ?たかが子供の惚れた惚れたなんて、すぐに過去の事になるわ。だから辛くないのよ。早く任務を実行しなさい。同室の貴女が適任なのは分かってるわよね?これは、命令よ。違反は布仏一族全体の事だって、忘れた訳じゃないでしょ?』
『ッ…………』
「で何か言うことはあるか?現楯無と先代楯無よ。私達が大立ち回りをしたことにも文句は言えんぞ?ライダーズギアを盗んだんだからな。あと私は教師としてここに来ている。教え子を泣かせた罪は重いぞ…!」
本音が自ら勝手にやったと言う言い訳はできない。かと言ってここで返却するのは楯無としてのプライドが許さない。
「フフフ……確かに文句は言えませんね。ですが、あなた達も随分なミスを犯してますよ?ここは楯無の敷地。私達があなた方を実力を持って叩き潰しても、文句は言えませんよ?数はこちらが圧倒的に上。ベルト持ちは2人だけ。こちらは100人以上の暗部と私の専用機。戦力差はかなりの物ですよ?」
「それはどうですかね。楯無お嬢様」
「ッ!?虚ちゃん……!」
「話は全て簪お嬢様から聞きました。良くもまぁやってくれましたね」
「本音。よく耐えましたね。でも、もう安心してください。今回の事で私も踏み切りを着けることができました」
「お父さん……」
布仏一家の登場である。因みに中に控えていた更識の暗部たちは既に叩き潰されている。
「先代。私達布仏と更識の関係は今日までです!今、この時を以て、我らの関係は終わりです!」
「なッ!?貴様、更識に受けた恩を忘れたのか!?」
「忘れていませんよ。しかし、娘を泣かせた相手に対して払う義はありません。これ以上娘を利用させないためにも、ハッキリとさせておきます。我々は更識への協力はもうしません。一夏さん。これをお返しします」
奪われたスマートブレインのデータとファイズギア、ファイズブラスターを投げ渡した。
「一夏、ちゃんと全部揃ってるな?」
「あぁ。問題ない」
「それは良かった。私としてはこのまま本音と簪を連れて学園に帰っても良いのだが、少々腹の虫が収まらん。ここを叩き潰して二度こんなこと出来ないようにしてやりたいのだが……ここで全面的にぶつかっては双方痛い目を見る。何か良い案はありませんかね。木場さん?」
「何で俺に振るかな……じゃあ、ここは公平に代表者の一騎討ちで決めたらどうかな?シンプルで分かりやすい」
「俺は構わんぞ」
「私たち更識もそれで良いわ。ただし、敗者は勝者の望み全てを受け入れる事が条件よ」
「当たり前だろ。じゃなきゃ一騎討ちの意味がない。木場、説明を続けろ」
「はいはい。敗者は勝者の望み全てを受け入れる。ただし望みは今ここで提示した物のみ。後付け禁止。回りくどい表現・分かりにくい表現・どちらとも取れる表現の物も禁止。途中で変える事も禁止。特別期間を設けないなら永久的に持続する。破った場合は判明ししだい報復に行く。こんなもので良いかな?勝敗はどちらかが戦闘不能になるまで。戦いのルールは特になし」
「あぁ。分かりやすくて良い。シンプルで俺好みだ」
「望みがこの場で提示した物だけってのが気に入らないけど、それで良いわよ。あの時みたいには行かないわよ?」
「そうか。それは楽しみだ」
更識の要求
・ライダーズギアの提出
・ライダーズギア技術の提出
・スマートブレインの解体
・織斑一夏の監視・管理
・布仏家を永久に更識の従者にすること
・白騎士事件の真相を知る者の口封じ
一夏達の要求
・布仏家を解放しろ
・二度とスマートブレインと布仏家に関わるな。近付くな
「随分と欲張られましたね」
「そっちが少ないだけでしょ」
場所は変わって広い所に移った。派手に暴れても問題ない様な場所にだ。
「バジン。ハンドル貸せ」
バジンが自分で抜いて渡す光景にも慣れてきた。一夏は投げ渡されると同時にベルトにファイズフォンを射し込んでファイズに変身した。それと同時に楯無も自身の専用機ミステリアス・レディーをまとう。
「行くわよ!」
見覚えのある分身を大量に作り出された。
「またそれか……同じ手に引っ掛かると思うか?しかも開始早々に作って……」
「あなた用にチューニングしたのよ?あの屈辱的な敗北の後にね。悪いけど手を抜けるとは思ってないの。最初から飛ばしていくわよ!」
「あぁ。そう言うことか」
動き出すと何が変化したのかすぐに分かった。分身も自立して稼動できる様になっている。前に見たときは本体と同じ動きをするか単調な動きをするか程度だったが、今回は本体とそう変りない動きをしている。それが10体も居ると思うと少し面倒だ。
「アクセルで一気に蹴散らすか…ッ!?」
突然体が一切動かなくなった。どうやら複数の分身が一斉に一夏に向けてワンオフを発動している様だ。しかもいつの間にか専用パッケージで高出力状態になっていた。
「ヤベ……こりゃ少し苦労しそうだな」
「ここで選択肢よ」
「なに?」
「今ここで爆発に飲まれて敗北するか、仲間を失うか。選びなさい?降参するなら止めてあげるわ。因みに、時間経過でも爆発するわよ」
この場にはシールドと言うものがない。もし分身10体と本体の計11機がクリア・パッションで爆破を起こせばここら一帯はただではすまない。当然観戦している人達も巻き込まれてしまう。更には逃げられないように、武器を持った暗部の人間が千冬達の背後に立って動きを封じていた。
「随分とやってくれるな。ルール無用とは言ったが、ここまで来ると逆に清々しいぜ」
「ありがとう。誉め言葉として受け取っとくわ。さぁ、仲間の命か敗北か、今すぐ選びなさい!」
「……選択肢の変更だ」
「なに?」
「お前の仲間の命か、俺の敗北だ」
「ッ!?」
急いで千冬達の方角に目を向けるが、動きを押さえていた暗部達はコテンパンにやられており、気を失ってのびていた。
「(よし!緩んだ)よっと!」
『complete』
『startup』
「ナッ!?」
『ENTER』
『Exceed Charge』
「ハァァア!!」
一瞬の隙を突いて拘束から抜け出し、分身を全て破壊。一夏に有利な状況になった。
「何で……!?」
「お前の分身、ブルーティアーズのビットと同じ脳波制御だろ?10体を同時に制御して尚且つ自分も動けた事は流石だと思ったけど、動揺して拘束を緩めてくれたんで抜けられた。まだオルコットの方が制御上手いぞ」
「ッ!……フ。ならこれはどう?」
「ん?危ね!?何だ?」
分身は破壊した。だが破壊された分身がたっていた場所には水溜まりができており、そこから紐の様に水が伸びて一夏を捕まえようとしていた。元々分身を作っていたナノマシンで脳波制御可能に改造されている。こんな芸当ができるのは当然と言えば当然だ。
「とんでもねぇ改造してくれたな!」
「こんなこともできるわよ?」
「ッ!?ウワッ!」
飛び散った水が小規模な爆発を起こした。威力的には小さいが、動きを制限する分には十分だ。そこにランスで攻撃されれば受け流しきれない。
「ウグッ!威力も上がってやがる……!」
「言ったでしょ?あなた用にチューニングしたって!」
「チッ。ブラスターになりたいが……」
生憎、ファイズブラスターは手元にない。バジンが投げ渡してくれれば使用可能だが、暗部4、5人を両脇に抱えてる状態だ。投げ渡してくれそうもない。
「だぁ!畜生!メンドクセーな!!」
『ready』
ハンドルにミッションメモリを入れてファイズエッジを作り出し一直線に突っ込んで行った。
「バカね。そんなの私にとって的よ!」
「んなの百も承知だよ!」
自分の致命傷になりうる攻撃のみをいなし、後の攻撃は無視して突き進んでいく。
「ハァァァア!!」
『ENTER』
『Exceed Charge』
「オリャア!」
「ッ!?」
「ウォォォア!!」
ファイズエッジから放たれたエネルギー波は楯無を拘束して動きを封じ込めた。一夏は更に加速して楯無に接近し、間合いに入った所で荒々しくファイズエッジを振り回した。
完璧に決まったが、まだシールドエネルギーは残っていた。防御面もかなり向上しているようだ。それを確認すると、ファイズエッジからメモリを抜き取って投げ捨て、変わりにポインターに射し込む。
『ENTER』
『Exceed Charge』
「これで、終わりだァア!!」
「グッ!グァァァァァア!!!」
「勝負ありですね。要求は飲んで貰いますよ。良いですね」
先代楯無は悔しそうな顔をするが、勝負前に決めたことだ。それに当事者同士が勝手に決めた訳ではなく、一同同意の元だ。言い訳をして勝負を無かったことにするのは不可能。完全に更識の詰みである。
「はぁ、はぁ、はぁ、ウオオオオオオオ!!!はぁ!スッキリした!本音!」
「は、はい!」
「帰るぞ~。今日の飯当番お前な」
「え?えっと……その……」
「遊びじゃないんだよ」
「何が?」
「お前との関係。遊びで終わらせるつもりはねぇよ。来月まで待て。27日に市役所行くぞ」
「何で?」
「婚姻届。貰って出す」
「はえ///!?わ、私たち未成年だよ!」
「だから来月の27なんだよ。俺が18になるから法律上問題は無くなる」
「で、でも親が……」
「私は構わないよ。彼なら任せられる」
「私もよ~」
「本音。来月から姉妹だな」
「で、でも……」
「お前が嫌ならそれでも良いが―」
「嫌じゃない!でも、私は!」
「俺は気にしねぇ。だからお前も気にすんな。結婚したいのか、したくないのか、それだけ聞ければ良い」
「したい……イッチーと結婚したい!」
「ならそれで良いだろ。さっさと帰るぞ」
「はい!」
「草加さん。木場さん。やることは分かってますね」
「資金繰りと式場の準備だな?」
「余興やプランの手配ですね?」
「来客リストも作ります。全社員に通達して必ず2人の結婚式を成功させますよ!」
「なにやってんだ?何年後の話をしてんだよ……そう言や、こんなこともあったな~」
「え?なに?」
「いや。早く帰るぞ(確か、このあと簪が勘当されたとかで転がり込んで来るはずだったな……そりゃ忘れるか)」
因みに、簪はIS学園卒業後スマートブレインに就職するのだが、名字の更識を見て何人かの社員が「あの更識?」と言っていたのだが、
「いや待てよ?確かあの人、一夏さんの婚約者の本音さんが楯無に無茶な任務を無理矢理押し付けられた時に唯一味方になった人じゃなかったっけ?布仏家全部救ったとか……」
「えマジで?あの中で?スッゲ!カッケー!」
「まさにヒーローじゃん!?トルーパー隊に入ってくれないかな~。隊長になったら同じ班でやりたいな~」
「でも科学者としての腕も良いって聞いたぜ?専用機を学園の整備室で組んでたって」
「マジかよ。じゃあ開発部も行けんのか~」
「一緒に仕事やってみたいよな~」
なんの問題もなかった。この後、簪はトルーパー隊になり隊長に昇格した。
次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録もよろしくお願いします
デルタサーガをリメイク版に乗せるか否か
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乗せる
-
否