ISと無気力な救世主 作:憲彦
「さてと、休暇明け早々で申し訳ありませんが、今日は助っ人を用意しました」
「急にどうした?そんな余裕がどこにあるんだ?ライオトルーパーとは言え、ライダーズギアだぞ?そう簡単に扱える人がどこにいるんだよ?」
朝からブリーフィングルームと化した社長室に一夏達とパトリック隊が呼ばれ、何事かと思ったが、どうやら前線での人手不足を補うための助っ人の事だった。しかし、草加の言うように量産型とは言えライダーズギアを簡単に扱える人間はいない筈だ。
「まぁ、集めたと言っても数十人一気に集めたと言う訳ではありません。それに、皆さんの顔見知りです。お陰で新にベルトを改造してしばらく徹夜が続いて、現在寝不足です」
確かに、村上の目元にうっすらと隈がある。徹夜するほどベルトを改造したと言うことは、それなりに癖の強い助っ人と言うことだろう。
「じゃあ、入ってきて下さい」
「久しぶり皆」
「お久し振りです」
「こんな状況だけど久しぶり」
「なんで俺まで……」
「すまない。少し遅れた」
「癖が強いとかのレベルじゃねーのが来たな」
出てきたのはかつて一夏と同じ学園で過ごした仲間の鈴、オルコット、デュノア、黒兎隊、そして鈴に引っ張られる形で出てきた弾だった。
「何しに来た?スポーツ大会じゃないんだぞ?」
「分かってるわよそれくらい。ただ、あんたも何故私たちがここに来たのか、分かってる?」
鈴に問われる一夏だったか、答えようとしても声がでなかった。仲間だから?友人だから?顔馴染みだから?世界を守りたいから?頼り無さすぎて見てられないから?何度も失敗してるから?様々な物が頭の中を周り、答えが分からなくなったからだ。
「答えは、アンタ1人で死なせるつもりはないからよ。どうせ、自分は死んでるからって言って、また簡単に懸けるつもりでしょ?冗談じゃないわよ。そんなことされたらこっちは目覚めが悪いだけ。例え結果的にアンタ1人死なせることになっても、そこに私たちがが居ないことが、私たちが頼られなかったって事が、1番ムカつくのよ」
「私も同じ気持ちです。一夏さんが死んでしまわれたISとの戦争で、私は何もできませんでした。それどころか、相手に取り込まれかけてた……余りにも無力過ぎました。そして、気付けば戦争は終わって、戦死者として貴方の名前が……救う。なんて言うつもりはありません。そこまでの実力もありませんから。ですが、足手まといのままで終わる訳には行きません」
「僕は一夏や皆への恩返しかな?あの時、一夏やスマートブレインが助けてくれたから今がある。皆みたいに立派な理由がある訳じゃないけど、僕だって皆と戦いたいんだ」
「はぁ……そうかよ。ここで誰1人文句言わねぇってことは、俺1人がウダウダ言ったって仕方ねぇって事か」
呆れ気味に一夏が言った。全員に目を向けてみると否定する気配は一切ない。一夏は否定することを諦めた。だがここで、何故来た?と言いたくなる人物に視線を向ける。鈴に引っ張られ、締まった襟元に違和感があるのか、喉をさすっている弾だ。
「なんでお前まで来たんだ?現国教師だろ?」
「俺が聞きてぇよ。村上さんに戦ってくれって言われるわ鈴に引っ張られて来られるわ。色々と散々なんだよ。お前のお陰でな。なんで俺まで巻き込まれたんだよ」
「優秀だと聞きましたので。ライオトルーパー教員免許取得試験で、初めて受けたにも関わらず、実技はオール満点。筆記に多少問題がありましたが、最終試験の戦闘では試験官5人を無傷で撃破。そこまでの実力者を呼ばない訳には行きませんからねぇ」
「なんでそんな試験受けたんだよ……」
「資格手当て……なんで受けたんだ俺……」
ため息を吐いて項垂れてる弾。そしてそれを哀れむ目で見る一夏と言う構図が何とも面白い。鈴はそれを見て爆笑していた。
「あの、大佐は良いんですか?ドイツ軍ですよね?」
「今回の件は、長引けばやがて世界に広がる。我々部隊の被害は自己責任を条件に、この事件は私の裁量で作戦行動を取ることが許可された。これが許可証だ。村上さん、サインお願いします。それと、私の裁量で動かすため、ドイツから日本、もしくはスマートブレインに対して何か要求する真似はしない。色々と手を回したからな」
何かしらの要求をした場合は上層部の恥ずかしい過去をネットを通じて世界中にばら蒔き、更にその証拠のコピーをドイツ軍基地や町中でばら蒔くと脅しをかけたようだ。黒兎隊のメンバーの手の中には何かのSDカードやUSBメモリが覗いている。
「さてと。では、皆さんの使うベルトの説明に入りますが……千冬さんはどうしたんですか?来ると言っていましたが?」
「すまない。途中で真耶と本音に止められて遅れた」
「そうですか。でその2人は?」
「避難所に送りました。2人はライダーズギアの扱いには慣れてないので、危険かと思いまして」
「賢明な判断です。じゃ、説明に入りますね。まず、かつて専用機を与えられていた皆さんのベルトには、各々の使っていた武器を入れています。鈴さんは衝撃砲、オルコットさんはスナイパーライフルとビット兵器、ラウラさんにはAICを。デュノアさんに関しては、専用武装かありませんので、大量に武器を詰め込んで高速切り替えを可能にしました」
つまるところ、専用機のライオトルーパー版と言うことになる。各々が使っていた専用機の特性をライオトルーパーに移行し、扱いやすいようにしたのが今回のベルトだ。
「次に千冬さんのベルトですが、こちらは武器をアクセレイガンからカイザブレイガンに変更。他に日本刀タイプのブレードを1本付けました。機動力を強化してますので、扱いには気を付けてください」
こちらは暮桜ベースと言うことになるのかもしれない。武装こそはバランスが良いが、基本接近戦と言うことになる。が、千冬にはそれがちょうど良いだろう。
「で弾さんのベルトは、基本的に全体の出力を上げています」
「ぁ何故!?」
「試験時の映像を見せてもらったんですが、それくらいがベストかと思いまして。武装は特に変更ありません。簡易版のファイズショットが付いてる位です」
「俺だけ適当じゃね?呼ばれる意味無かったよね!?」
1人だけ喧嘩スタイルで行け。と言う事だった。
「コイツら使えんのか?俺はそこのブリュンヒルデと先生の実力しか知らないんだが」
「他のメンバーが戦ってる所、見たこと無いからね」
「安心しろ。大体鈴と同じ強さだから保証はしてやる。弾以外はな」
「あ?どう言う意味かな一夏くん?」
「おめぇの実力は俺も知らねぇんだよ」
「なら見せてやるよ。覚悟しろよ?」
鈴と千冬の実力は知っている士と海東だが、他のメンバーに対しては少し不安に思っていた様だ。しかし一夏の言うように、他の3人の実力は鈴と大体同じくらい。それを聞いただけでも不安は拭える。1人を除いては。
「本当に大丈夫か?」
「止めたまえ士。考えるだけ疲れる」
「喧嘩してないでとっとと行くわよ~」
場所は変わって何度も訪れたショッカーが使っている廃工業地帯。別に潜入と言う訳ではないので、正面から突入しようとする。
「本当に多いわね。ゾンビ映画みたい。廃れた館からゾロゾロゾロゾロゾロゾロ」
「気持ち悪い例えかたしないでください!夢に出てきそうですわ!」
「おかしいな……数が減ってる」
「え?これで減ってるの?十分多いけど」
「いやシャル。よく見てみろ。資料に乗ってる筈の敵がいない」
ラウラに言われよく見てみると、確かに敵が数種類減っている。士が面倒だと説明していたワームや前回の戦闘で叩きのめしたダークライダー。更に一夏が相手をしたアポロガイストが所属するGOD機関。その他にも何種類かが消えていた。
「恐らく、時間の巻き戻しが上手く行かなかったんだね。かなりの回数時間を巻き戻してたから、変な影響が出始めたのかも」
「なんにしろ、俺達にとってはありがたい状況だ。上を抑えて数人で地下に居る本丸を叩くぞ」
草加が状況を見て決めた作戦に全員が乗った。敵の数を見ると、上を片付けてからと言いたくなるが、既に異変の元凶と居場所を掴んでいる。ならばチマチマ敵を倒しながら進む理由はない。
「一夏と士、海東がゼロを叩け。俺達が上をやる」
「待て。俺が下に行く。海東は上に残ってくれ」
草加が人員を決め、早速向かおうとしたが、一音がそれを止めて自分と海東を交換するように言い出した。
「何故だい?戦力的には僕が適任だと思うけど。それに君にはジェットスライガーがある。こっちで敵を殲滅した方が良いはずだよ?」
「スライガーは置いていく。俺自身の武装が拳銃1丁。お前と違って変則的な射撃もできない。なら海東は上に残った方がマシだ」
「成る程ね。一理ある。ならジェットスライガーは借りるよ」
「傷は着けるなよ」
海東をスライガーに乗せると、3人は地下へと突っ切って行き、それを捕らえようと津波の様に迫り来る怪人達を地上に残ったメンバーが抑えにかかった。
「一夏。道は覚えてるか?」
「あの後、ゼロが改造してないなら一本道の筈だ。無駄な道が多いから離れるなよ」
辺りを警戒しながら慎重に進んでいく一夏たち。特に道が変わってる様子が無いことに安堵するが、それでもズカズカ進んでいく様な真似はしない。
「ッ!敵がいた。オルフェノクだ……」
角を曲がろうとした所で、オルフェノクを発見。3体が道を塞ぐように立っていた。
「どうする?全員でやるか?」
「ダメだ。戦力を無駄に消耗することになる。俺が3体引き付けるから、親父と士はゼロを頼む」
「死ぬなよ」
「アンタの負の遺伝子受け継いでんだ。簡単に死ねるかよ」
一音が引き受けると、デルタムーバーをベルトから外して構え、オルフェノクに向かって射撃。そのまま一夏達が向かう道の反対側へと走っていった。オルフェノクも一音の後を追ってその場から離れていく。
「上手くいったな」
「あぁ。行くぞ」
その後、ゼロが待ち構えている部屋へと向かうのだが、どう言う訳か敵が1人も現れなかった。不審に思うも待っていても仕方ないと考え、一気に進んでいく。
「この角を曲がればゼロの居る部屋だ」
「ッ!?ウオッ!」
「さっきのオルフェノク!?」
一音が引き付けた筈のオルフェノク3体が突然現れ、士にしがみつき一夏と孤立させようとした。
「士!」
「先に行ってろ!すぐに合流する!」
士の言葉を信じ、1人でゼロの元へと向かっていく。色々と違和感があるが、ゼロとの戦闘に意識を向け、扉の前に立った。
(ブラスターを使って一気に勝負を決めるか……いや。何かがおかしい。世界征服くらい、ゼロならショッカーを使わずに1人でやれた筈だ。手が回りくどい……目的は他にあるのか?だとしたら一体……今になって考えれば他にもおかしい事が沢山ある。ゼロの存在を確認する前から結構……待てよ。まさか……いやあり得ない。でも……)
この戦いが始まった直後から感じていた違和感。そしてゼロを見つけてから感じていた違和感。一夏はその正体に近付いていた。そして1つの、1番望まなかった、外れてくれと願っていた答えに辿り着いてしまった。
「……お前だけな筈の無いよな。ゼロ」
扉を開けて中に入る。そこには当然ゼロが座っていた。だが、もう1人居る事に、一夏は既に気付いている。変身を解除して、隠れている人の名を呼んだ。
「早く出てこいよ。一音」
その直後、扉の影に隠れていた一音が、デルタムーバーを一夏に構えながら出てきた。1番外れてほしかった答えが、現実のものとなり、一夏の前に現れてしまった。
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