ISと無気力な救世主 作:憲彦
時間を少し巻き戻して弾が地下に突入する前の地上に目を向ける。
「さてと。始めますか」
鈴が呟くと、元IS学園組が武装を展開した。カラーリングや形はライオトルーパーに合わせて質素な感じになっているが、何と無く安心する感じがした。
「なんか、久し振りですわね。ですが前と同じ様に、いえ、それ以上に使いこなせそうな気がしますわ!」
「本当。武器なんて久し振りに持ったのに、全然ブランクを感じないよ」
「懐かしいわね~。アンタらとこうして並ぶの。腕が鳴るわ」
「鳴らしてるのは首だろ?」
「ラウラそこツッコまないで」
確かに鈴は腕が鳴ると言いつつ、首を回して鳴らしていた。そこをラウラにツッコまれるのだが、面倒になりそうだったので簪がそれを止める。まるで学園の時と同じ光景だ。
「変わらないな~。コイツらは」
千冬も頭を抱えている。
「大丈夫だよ。人間それくらいがちょうど良いんだから」
「そうだな。じゃあ片付けるぞ」
草加を先頭にIS学園組と黒兎隊が敵陣に向かって走っていく。だが、その後ろには脚を進められない人達がいた。
「パトリック隊長!我々も行きましょう!」
「私達の事は気にしないでください。あれは自分の意思で選んだ行動です。貴方が気に病む必要はありません」
「行きましょう隊長!世界を守る為に」
「分かってる!分かってるけど……」
パトリックはまだ迷っていたのだ。歴史を正しい方向へと修正するべきか、仲間たちを生かすべきかを。
「では。私達は先に行ってます。すぐ来てくださいね」
副隊長のライが隊を率いて、先に草加達を追いかけていく。パトリックはそれを見ていることしかできなかった。
「クソッ!ここに来てなんで悩んでんだよ!」
「あ~。一応聞くけど、行くつもりある?」
「当たり前だ!仲間が戦ってるなら行くだろ!でも!……俺は戦うことを選べない!」
弾の投げ掛けに、戦う決意はあると言い放つ。だが、それでも仲間の死がチラつくのか、戦いを拒絶してしまう所がある。
「なぁ、弾って言ったっけ?お前はどうなんだ?戦えるのか?戦おうと思うのか?この戦いに俺たちが勝っちまえば、歴史は正しい物になる。そうなれば、お前の友人は死ぬことになるんだぞ?それでも戦えるのか?!なぁ教えてくれよ!」
「戦えるよ」
「なんで!」
「アイツが、一夏がそれを選ぶなら、それが一夏の1番したいことだからだ」
「…………」
「昔俺のジィさんに言われたんだよ。仲間のやりたいことを理解できないヤツに、仲間でいる資格はないってな。一夏とは長い付き合いだ。だから、やりたいと思ってる事は何と無く理解できる。アイツが死ぬことになっても、俺は一夏のやることを尊重したい。それに、覚悟を決めたヤツには、涙も哀れみも侮辱になるだろ?」
それを聞いて、パトリックの中で何かが固まった。弾は一通り自分の考えを伝えると、先に行った仲間たちを追いかけて敵陣へと走り出す。そしてパトリックも、全力で走り、戦っている仲間たちの元へと向かっていった。
『『Ready』』
草加はカイザブレイガンを、木場はオーガストランザーを展開し、手当たり次第に敵を切り裂いて行く。後に続くメンバーは2人の届かない位置にいる敵を撃ち抜いていく。
「うっひゃ~。流石村上さん。威力がえげつないわ」
「精度もかなり高いですよ」
「実弾だと身に染みて分かるね」
「切れ味も抜群だぞ」
元IS学園組は、今回の武器の完成度に驚いている。ライフルを含む銃関連の武器は威力、精度共にかなり高い状態で、スコープの中心を相手に向けるとその通りに飛んでいきヒットする。そしてラウラはブレードで戦闘員の頭を綺麗に胴体と切り離していた。それを他のメンバーに見せている。
「なんか感覚おかしくなりそう……」
「言うな。意識したら余計におかしくなる」
木場と草加は気にしないことにした。そこにパトリックと弾が合流し、更に効率よくショッカーを消し飛ばしていく。
「なんかあったか?」
「いや。なにも」
「?」
何故か視線を反らす草加と木場に不信感を覚えつつも、自身の仕事を全うしていく。
「別れるぞ。千冬と木場は俺と正面。パトリック隊と海東は西側。元学園組と黒兎隊、弾は東側を片付けろ。絶対に地下には敵を入れるなよ」
草加の指示で全員広がっていく。正面を担当している3人だが、言うまでもなく圧倒的な強さで敵を縛き上げていく。無双ゲームの様に敵が吹っ飛んでいく様は圧巻だ。
「木場、ブレイク使って良いか?」
「時間内に全部片付けられるなら良いよ」
「怪我はしないでくださいね」
「よし!」
『Ready』
自分の胸アーマーを力任せに破壊して、フォトンブラットを強制解放。ファイズのアクセルフォームと同等もしくはそれ以上のスピードで動き回る。
「草加くんがいる時点で、ここ楽ですね」
「私達のベルトもあそこまでできれば……」
ブレイクモードは30秒間持続する。普通に過ごしていても30秒は少し長く感じる物だが、通常の1000倍以上のスピードで動いている草加からしたら、30秒で敵を殲滅するのは朝めし前だろう。しかし、一夏ほど上手く扱える訳ではないし、更に言えばブレイクモード自体がカイザにとってイレギュラー。安全に使うための補助システムが入っていれば別だが、直線上に動くことしかできない。
それでも敵を片付けるには全く問題はなく、草加が倒せなかった範囲を千冬と木場の2人が始末すれば良いだけの話である。
「ベルトの調子はどう?」
「問題ありません。こんなに使いやすい物だったと初めて知りました」
「それは良かった」
『ENTER』
『Exceed Charge』
「ハァァァア!」
もはやお馴染みとなったフォトンブラッドで派手に刀身を伸ばして敵を一気に凪ぎ払うオーガストラッシュで綺麗に整地。そして千冬もアップグレードされた機動力とスピードを生かし、ブレードとカイザブレイガンであっという間に敵を殲滅。そして草加も、カイザブレイガンが敵を拘束しカイザスラッシュ。そして残った時間でポインターを使い敵に強化されたゴルドスマッシュを決めて終らせた。
パトリック隊だが、特に言うことはない。海東を入れているにも関わらず磨き上げられた連携で敵に反撃を許さず、終始ワンサイドゲームで片付けていくからだ。特殊な兵装があるわけではないが、経験と技術、連携が全て融合し、ショッカーを寄せ付けなかった。
そして元学園組と黒兎隊。こちらも全く問題なかった。実戦身経験者、つまり素人もいるが、それを感じさせない戦いをしている。
「やっぱりセシリアの武器楽だわ~。こう言うところだと。1対1だと使い物にならないのに」
「言い方どうにかなりません?あの時は私が未熟だっただけです」
「あ~、あの時か。そう言えば面白いように先読まれてたね。山田先生に」
「ぐぬぬ……もう昔の事はいいでしょ!皆さんも早く行ってください!」
「はいはい。弾、体支えて」
鈴に言われると、弾は後ろから背中を押すような体勢をとる。そして脚と腰に力を入れた。
「いつでも良いぞ」
「オッケ~。発射!」
全力で衝撃砲を放った。
「うん。やっぱこれに限るわ~。次のチャージ完了まで少し待ってて~」
オルコットは鈴を援護するためにその場に残り、他のメンバーは前へと出ていく。ラウラ達黒兎隊が敵をAICで動けなくし、それを簪やデュノア、弾が攻撃を入れて倒していく感じだ。
「多いし埒が明かないな……」
「こっちは特殊な物が付いてないからね。パトリック達も同じだけど、少し手子摺るのは仕方ないかも」
「どうするか……あ、そうだ」
何かを思い付いたのか、弾がラウラ達へと近寄り相談を持ちかけた。
「ちょっとドイツ軍の方々、あそこの敵を一気にさっきので拘束できない?」
「なんて無茶を言ってくるんだお前は!?」
「いやできるかできないかを教えてほしいんだが」
「その言い方腹立つな……良いだろ!やってやる!黒兎隊各員!聞いてたな!?この一般人の作戦に乗ってやれ!」
『了解!』
「2秒が限界だ。その間になんとかしろ!」
「了~解。鈴!」
AICで動けなくした敵の真上に跳んでいく。ちょうど中心に来た辺りで、鈴に声をかけた。するとやることを理解したのか、オルコットにビットを操作して貰って弾の所までの足場を作って貰う。
「怪我すんじゃないわよ!」
「分かってる!」
弾はグランインパクトの準備に入り、鈴は衝撃砲の照準を弾の足の裏に合わせた。
「行ってらっしゃい!!」
「ンガッ!ングググ!!オラァァア!!!」
衝撃砲の強すぎる威力に体が曲がりそうになったが、狙い通りにスピードを着けて地面に向かっていく。
「おい!そろそろ限界だぞ!早く―」
ズドォォン!!!
「……はあ?」
物凄い衝撃の後に、ラウラから間抜けな声が出てきた。ファイズやカイザに威力的に劣るとは言え、上空から打ち込み、更に鈴の衝撃砲で加速を加えたグランインパクト。それは想定以上の威力を産み出し、敵は完全にこの衝撃波で片付いた。地面にはクレーターもできている。
「拳砕けるかと思った」
「生きてるわね」
「もう少し威力考えて欲しかったよ」
「無茶言わないで。敵を吹っ飛ばす物なのよ。人を撃ち出す用にはできてないの」
「はぁ……まぁいいや。片付いたし」
弾の言うように、もう敵はいない。他のメンバーの担当していた場所も綺麗になっている。
「草加さん。こっちは片付きました。そっちはどうですか?」
『こっちも終わった。パトリック達も終わったそうだ』
「分かりました」
ラウラの通信で他の場所の状況を把握。他の場所も終わったことを確認すると、一度合流しようとした。
「一夏……悪い。ちょっと下に行ってくる」
「ちょっと弾!」
「すぐ戻る!」
そう言って、1人で一夏達が戦っている地下へと走っていった。
「なんだこれ……上より激しいな」
地下に入ってすぐに見たのは、荒れ果てた地下空間だった。一夏から地下の話を聞いたとき、面倒な迷路と聞いていた。特に何かが散らかってるなんて話は聞いていない。
「どんな戦闘したらこんなになるんだよ……」
敵の気配は無いが、見て引く程の酷さだ。恐る恐る道を進んでいき、最深部と思われる場所へと向かっていく。
「スライガー……なんでこんなところに?」
倒れた状態で放置されたスライガーを見付けると、駆け寄って立ち上がらせた。これに乗って進もうとも考えたが、弾はジェットスライガーの操作方法を知らない。少し申し訳なく思ったが、スライガーを置いて先に進んでいく。
「ん?今度はデルタギア。一音のだよな?それにここは……」
入った直後の地点より、更に激しい戦闘の跡がある。ここが中心であることは弾でも簡単に想像することができた。だがデルタギアに関しては想像がつかない。外れたと考えられるが、なら近くに一音がいなくてはおかしい。そう思いながら、更に進んでいく。
途中士と遭遇し2人で進んでいくと、一夏と変身が解除された一音を発見。声をかけたが、何があったかは聞かなかった。状況を見れば、鈍い人間でも大方の予想は付けられるからだ。一夏はそれぞれに一音とスライガーの事を任せ、1人部屋に残る。弾も士も、特に深くは聞かずに離れていった。
『良いのか?私を消せば、歴史は元に戻るぞ』
「ショッカーが居なくなるならそれで良い」
『私を消したところで、ショッカーは消えないぞ』
「なに?」
一夏とゼロだけになった空間には2人の会話しか響かない。一夏はここで全てを終わらせるつもりだった。しかしゼロから放たれた一言は、自身を消してもショッカーは消えないと言う答えだった。
『元々、ショッカーはこの世界に入り込もうとしていた。擬物とは言え、ここもライダーの世界だからな。だが、ヤツらがここに来たら、この世界は簡単に乗っ取られてしまう。その対策を考えている時に、お前の息子が現れた。ヤツの目的は、お前が生存し、全員が笑って暮らしていたあの頃をもう一度作り上げること。それを利用させてもらった』
ゼロと一音が契約を交わした後、ゼロの本来の力を覚醒させるために一音は指定されたISコアを奪取。計画通りにゼロは力を覚醒していき、いよいよそれは時間を操れるレベルにたっした。しかし、そのタイミングでショッカーがこの世界に侵攻を開始。
少し早かったが、歴史改編をスタートさせざるを得なかった。そして一夏たち仮面ライダーを何度もショッカーと衝突させ、相手の戦力を削りこの世界のライダー達の勝率を上げようとした。それがゼロの計画だったのだ。
「何故お前がそこまでする?お前は、全てのISを掌握して世界に戦争を吹っ掛けた。支配するために。ショッカーと目的は同じだった。にも関わらず、お前は今回完全に逆の事をやっている。一体何故なんだ?」
『単純に興味が湧いたからだ。かつて、お前達が命懸けで私から救ったこの世界を、今度は、私が守ってみたくなった』
「成る程。そう言う事だったのか」
「士……スライガーはどうした?」
「上に置いてきたよ。俺も今回の事は気になってたからな。すぐに戻ってきた。ダークライダーや一部の怪人が復活しなかったのは、ショッカーの戦力が減ったからだな?」
『その通り。この数年間の戦いで、ショッカーの戦力を大幅に削ることに成功した。だがまだ完全にこの世界のライダーが勝てると決まった訳ではない。勝率は3割と言うところだ。覆せない訳ではないが、危険であることに変わりはない』
「どうする?ここでコイツを消すか?それともコイツの想定する安全圏に入るまで待つか?」
士に聞かれるが、一夏の中で答えは既に決まっている。
「このまま一緒にあの世に行くぞ」
「良いのか?」
「死んだ俺が、いつまでもこの世界にいて良いわけ無いだろ?俺にできることはもう何もないからな」
「また勝手に託して消えるつもりか?」
「あぁ。もう伝えたからな。まだ届いてないけど。あとどっかにデルタギア転がってるだろ?一音に渡しといてくれ。一音がさっき使ってた新型の方は壊しちまったからよ」
「はぁ…そうか。じゃあな」
呆れ気味に呟くと、銀色のオーロラの中に消えていった。すると今度はゼロの体が発光し、一夏は強い光に包まれて今の空間と隔離された。
『歴史を元に戻す方法は1つ。私とお前が同時に死ぬことだ。だが、その前に話をする相手がいるだろ。触れ合う事はできない。肉体を呼び出してる訳じゃないからな。そこは勘弁しろ』
「イッチー」
ゼロが消えると、一夏の後ろから聞きなれた人の声が聞こえてきた。毎日聞いて、一夏を支えて、一緒に歩んできた大切な人の声が。
「マジかよ。ゼロの野郎余計な事を。逝くに逝けねぇじゃねぇかよ……」
「ねぇ、私も連れていってよ……イッチーと一緒に」
「ダメだ。お前はまだこっちに居ろ」
「なんで……なんでよ!記憶が戻ったから、スゴく嬉しかったんだよ?また、イッチーと一緒に過ごせて、楽しくて、嬉しくて、満たされて……なのになんで、またイッチーだけ犠牲にならないといけないの?!なんでいつもイッチーだけなの?!まだ私、イッチーと一緒にいたいよ……」
「済まない。俺は、お前を一緒には連れていけない。ただ、ずっと見守ってる。そして、ずっと待ち続ける。それは約束するよ」
「私がお婆ちゃんになっても見付けてくれる?」
「あぁ」
「イッチーが先に新しい人生始めて、私が後から始めても?」
「あぁ」
「人間じゃない、全く別の物になっても?」
「どんな姿でも、どんな場所でも、どんな存在でも必ず見付け出すさ。じゃあ、またな」
「うん。行ってらっしゃい。イッチー」
『555 ENTER』
『Awakening』
本音に別れを告げると、背を向けてブラスターフォームに変身。ゼロの元へと歩いていった。それと同時に、本音も姿を消した。
『愛する者との別れは終わったか』
「余計な事しやがって……まぁ感謝はしている。さっさと全部終わらせるぞ」
『143 ENTER』
『Braid Mode』
「同時に。だったな」
『その通りだ。私がお前の心臓を、お前が私のコアを貫く。ただそれだけだ。痛みは一瞬で終わる』
互いにブレードを構え、ゼロは一夏の心臓へ、一夏はゼロのコアへと狙いを定める。
「ハアアアアア!!!」
『フンッ!』
ブレードはそれぞれの心臓を貫き、無事に目的は達成された。同時に、2人が居た場所を中心に緑色の光が広がっていき世界を包み込んだ。そして、世界は正しい歴史へと戻っていった。
時間は巻き戻り、一夏存在しないと言う本来の流れを進んでいた。だがゼロが言っていた通り、ショッカーがこの世界に侵攻を開始。切っ掛けは違えども、村上はライダーズギアの封印を解いて対処に当たっていた。
パトリック達と簪が率いていた大隊を中心としたライオトルーパーの実力者集団と、一夏と一音を除くライダーズギア使用者を中心にショッカーとの戦闘を続けていた。
本来ならここに一音も加わるのだが、歴史が正しい方向に戻った直後から、自分の部屋の中に閉じ籠っている。出てくる気配は無かった。士に渡されたデルタギアが目の前にあるが、ただ視線を向けるだけで使う気配はない。当事者である一音や、この世界にとってのイレギュラーな士と海東は全て覚えている。全てを覚えてる身であれば、使えないのも当然だ。
「一音~」
「……母さん?」
一音の様子を見て、何かを察したのか本音は特に何か声をかける事はしなかった。辛い表情をしている息子にズカズカ声をかけるほど、愚かではないと言う事だろう。
「なに?」
「ちょっと掃除手伝ってくれない?力仕事して欲しくて」
「バジンがいるだろ?」
「良いから良いから!ほら早く!」
嫌々ではあるが、1階の食堂に向かい本音の手伝いを開始する。力仕事と言っていたが、掃除の内容は通常のものと何一つ代わりなく、椅子やテーブルを退かして床を掃いたり磨いたりである。
「次はこれっ!と。ふぅ」
「それって親父の……」
「そ。イッチーの仕事道具。料理のレシピや仕事着、包丁とか入ってるよ」
500ミリのペットボトルを運ぶときに使われる一般的な段ボールを4つ程棚の上から取り出し、1つ1つ開けながら別の箱へと移していった。
「それ、捨てるの?」
「まっさか~。そんなことしないよ。ただ整理して物置に置くだけだよ~」
「別に邪魔じゃないんだから、そのままで良いんじゃないか?」
「私もね、最初はそう思ったよ。でもね、近くにあるとず~っとイッチーのこと考えちゃうんだ~。思い出ってね、最初は元気をくれたり力をくれたりするけど、しだいにそれが重くなって、最後はその人に対してマイナスな思いしか抱かなくなるんだ。だからさ、少し整理して、綺麗な思い出を残す様にするのが大切なんだよ。一音もやってみな」
そう言いながら、段ボールを1つ渡された。かなりの重さがあり、長時間持ち続けるのは難しい。近くのテーブルにそれを置き、中身を1つ1つ確認しながら店の中に入れておく物とそうでない物に分けていく。本音は先に分けた分を物置へと運んでいった。
「……全部料理のレシピかよ」
段ボールの中身はA4ノート。料理のレシピなのだが、病的と言いたくなるまでに細かく色々と書かれている。物によっては2ページ以上に渡って書かれており、茹でる時間は秒単位、切る幅はミリ単位、更には混ぜる回数と道具まで書かれていた。
「いつも目分量とか感覚で作ってるくせに、ちゃんとまとめてたのかよ」
これだと恐らく店のメニュー全部がまとめられてるだろうと思ったが、途中からメニューではなく家で出す料理のレシピに変わり、更に下に行くと一音が子供の時の離乳食のレシピになり、最終的には空白だらけのノートが出てきた。
「親父、途中で飽きたか……」
とは言え、まだ何かが書かれている可能性もある。一通り最後まで目を通すことにした。すると、最後の1冊の中心辺りで、何かの紙切れが落ちてきた。
「ん?…なんで普通に頼めるんたよ。家の親父は…!なんで身勝手な所は死んでも治んねぇんだよ……!」
落ちた紙にはただ一言『頼んだぞ。一音』と、いつもの一夏の筆跡で書かれてた。店の事なのか、世界の事なのか、それは書いた一夏にしか分からない。だが、今の一音にはその一言が前へ進むための力となった。
「あれ?一音~?」
「ごめん!ちょっと出かけてくる!後で片付けるから置いててくれ!」
「気を付けてね~!」
自分の部屋から急いでデルタギアを取ってきて、店を出ていく。向かう先は現在戦闘が起こり草加と木場が絶賛戦っている現場。スライガーに飛び乗り全速力で飛んだ。
「グッ!数が多すぎる!?」
「こんな町中で逃げ遅れた人もいる状況じゃオーガストラッシュもブレイクモードも使えないよ!」
「分かってる!」
町ではショッカーが大軍を率いて盛大に侵略行為を行っていた。草加と木場は2人で相手にしていたが、町中でしかも周りに沢山の人がいると言う非常にやりづらい。木場が整地することも、草加がブレイクになってソニックブームを起こすこともできない。まさに絶体絶命だ。
「我らに勝つことなぞ貴様らには不可能だ!大人しく諦めろ!仮面ライダーども!!」
ショッカー怪人は勝ちを確信したのか、余裕の態度を見せ2人に一斉掃射。それを食らってしまえば生きていられる保証はない。悔しさを噛み締めながら、2人は目を瞑る。だが、爆風の衝撃波は来るが、自分達に攻撃が当たった様な衝撃は来なかった。
「よっと。悪い遅くなった」
「ッ!?」
「一音?」
「それ以外、誰に見えるよ。後は俺がやる。休んでてくれ」
「……頼んだぞ一音!」
「たかが1匹増えた程度で何が変わる!?まとめて捻り潰せ!!」
スライガーから降りベルトを腰に巻いた一音は、やけに落ち着いた様子だ。ショッカー怪人が言うように、状況が最悪であることに変わりはない。だが、何故か強い安心感を覚えた。
(親父、俺は今まで何と無くで仮面ライダーになっていた。ただ戦えば良い。ただテロリストを片付ければ良いそう思ってた。でも違ったんだな。俺たちがやることって、守るって事なんだな。アンタもそうだっあんだろ?親父)
「何をボーッとしてやがる。そんなに死にたいならお望み通りにしてやる!」
「見ててくれ。親父」
(行け。一音!)
「ッ!…フッ」
これからも戦いは続く。確実にISやテロリストを相手にしていた時とは比べ物にならないほどに辛く厳しく酷な戦いが待っている。だが、どんな状況でも自分を強くしてくれる言葉で、仮面ライダー達は戦い続ける。
「変身!!」
『Standingby』
『Complete』
デルタサーガ、これにて完結!リメイク版で会いましょう!
デルタサーガをリメイク版に乗せるか否か
-
乗せる
-
否