ISと無気力な救世主 作:憲彦
モンド・グロッソ。ISの操縦者なら誰もが夢見るIS競技の世界大会。織斑千冬が初優勝を飾りブリュンヒルデ、世界最強の座を手にした大会だ。そして、その大会は今年で10回目を迎えることになった。
ISの兵器運用が禁じられてからと言うもの、ISの進歩は少し衰えた。だが、この大会は様々なIS関係者に大会だけは毎年行って欲しいと言うことになり、この大会に限り武器の無制限使用と武器開発が許可されている。
「各員聞こえるか?」
『問題ありません』
「よし。今日の大会は、絶対に怪しい者を通すな。8年前の様な事件は起こさないように細心の注意を払え」
『了解』
モンド・グロッソの会場の正面入り口。と言うか入り口はここしかない。そこに立っているのは、銀髪の長い髪の毛と赤い瞳、そして、左目に付けられている黒い眼帯。ドイツ軍のIS部隊隊長のラウラ・ボーデヴィッヒだ。今年の会場は、8年前一夏が誘拐された2回目と同様に、ドイツで行われているようだ。
だが、妙にラウラは気合いが入っている。昇進してから初の大仕事だからだろうか。はたまたスマートブレインが世界各国に配置したライダー部隊との共同作戦なのだからだろうか。それとも……
「大佐~!」
「ッ!?こらパトリック!持ち場を離れるな!!」
「ガフッ!!」
今ラウラに蹴り飛ばされた赤髪のこの男は、今日ここでドイツ軍と共同で動いているドイツのライダー部隊隊長だ。名前はパトリック・コーラサワーだ。どこの人かは分かる人は分かる。かなりのお調子者で、元軍関係の人間だったとか。まぁ真偽は定かではない。
「何故持ち場を離れたのか説明して貰おうか?コーラサワー」
「ちょっと、ファーストネームで呼んでくださいよ!地味に傷付くんですから~!」
「さっさと答えろ」
「おっと。これ以上はボケられないか……。大佐に会いに来ただけですよ。ただそれだけです!」
「なっ!?///お前は!!」
『あぁ~。またいつもの始まったか』
『この光景に最近慣れてきましたね~……』
『枯れてきてんのかね~』
『まぁ2人の関係だし仕方ないでしょう』
パトリックの発言にラウラは顔をリンゴの様に真っ赤に染めて、照れ隠しのつもりなのだろうかナイフを取り出して構えている。部下たちの会話から大体予想できるだろうが、現在2人は交際中だ。ラウラはいつもパトリックのペースに持っていかれるがな。大体いつもあんな感じだ。パトリックがラウラを赤面させ、ラウラが照れ隠しでパトリックを攻撃する。いつもの光景で、全員慣れている。
「早く持ち場に戻れ!」
「大丈夫です!俺の部下を置いてきたので!」
「大丈夫な訳―」
『あ、大佐。パトリック隊長となら大丈夫ですよね?』
『正面はお2人でお願いします。我々は全体の警備に当たりますので』
大体、黒ウサギ隊とライダー部隊が一緒に仕事をするとこの流れなので、全員冷静に対処してくれる。それに、この2人の実力は部下である彼等彼女等が1番知っている。その為、安心してここを任せられるのだ。
「全く……お前たちと共同で動くといつもこれだ」
「何ででしょうね~ハハハハ!」
何ででしょうね~……(うp主も枯れてきたのかな~)結局2人で正面の警備をしている。が、全く滞りなく行われている。そもそも不審者なんてそうそう来ないからな。
「ん……」
「どうした?」
「……ちょっとそこの貴方。止まってください。所持品検査を行います」
突然歩き出し、1人の男性の前に止まった。そして、所持品の検査を始めようとした。だが、男はそれを渋っている。それで確信したのだろう。無理矢理持っている鞄を奪って中身を確認した。
「ビンゴ!同行願います」
「チッ!……寄るな!!」
鞄の中からは大量の爆薬らしき物が出てきた。大人しく手を上げて投降するかと思ったが、懐から拳銃を取り出して、周りに向けた。無闇に刺激するのは悪いと思い、パトリックは距離を取った。
「おいおい……なんちゅう物持ってんだよ」
「良いか。寄るなよ。それと、俺の鞄を帰して貰う。早く渡せ!!」
周りの客は既に他の連中が安全な位置まで下げていてくれている。そして、ラウラは後ろに回り込んで男を取り押さえようとしている。ラウラが飛び付ける位置まで来ると、そのタイミングで鞄を投げ渡した。そして、受け取る直前に後ろから掴みかかった。
「グッ!?」
「大人しくしろ!―ウワッ!?」
掴みかかった。までは良かったが、余りの力で振り払われてしまった。体格差もあるから押さえきれなかったのだろう。しかもそれで激怒した男から拳銃を向けられた。
「ヤッベ!?」
『Complete』
ライオトルーパーに変身して、男とラウラの間に立った。男は銃を乱射するが、その弾丸を全て受け止めた。弾丸を全て取ると、男との距離を詰めて、鳩尾に一撃入れて意識を刈り取った。
「ふぅ……確保完了。皆さん~!お騒がせしました!どうぞご入場下さい!!」
事態も終わらせたので、再び観客の入場を再び開始した。男はそのまま部下たちに運ばれて何処かへと持っていかれた。一体どこへ連れていかれたのだろうか……
「さっきは助かった。礼を言う」
「いえいえ!大佐が無事で何よりです!」
「この礼はいつかする」
「楽しみに待ってます!大佐!」
その後、会場では先程の不審者の件があり、30分遅れでプログラムを開始することになった。あんなことがあったのに、30分遅れで済んだのは、パトリックや対応の早かった彼等のお陰だろう。
「大佐は、今回の試合で気になる選手とかいるんですか?」
「そうだな……今回の試合には、私の元クラスメイトが2人出場するんだ。2人の試合が楽しみだな」
学園卒業後に国家代表へとなることが出来たオルコットとデュノアの事だ。しかも今日は決勝戦。2人はまだどちらも脱落していない。今日当たるのは容易に想像できる。
試合開始時刻。今日はA~Dブロックの勝者が戦う。最初にAブロックとBブロック。その次にCブロックとDブロック。最後に第1試合と第2試合の勝者が優勝を懸けて戦う。Aブロックにはデュノア、Dブロックにはオルコットがいる。が、恐らくこの2人は勝ち進むだろう。何せ、かつては一緒に過ごした仲だ。戦うのが楽しみに思うのだろう。
「絶対にシャルロットさんと戦いますわ!」
「絶対に決勝に残らないとな~。セシリアには絶対に勝つ!」
この様に、とんでもない気合いが入っている。この2人の相手をすることになった各ブロックの代表が可哀想に思える。絶対に勝てそうに無いからな。何故なら、この2人は今期の新人代表の中で実力が周りより頭1つ飛び抜けてるからだ。その2人の気分が高まっているのだ。勝てと言う方が難しい。
そして案の定、気合いの入った2人の勢いを止められるはずもなく、あっさりと決勝戦進出が決まった。簡単に2人の戦いを説明すると、デュノアは瞬間加速を駆使して相手に一気に迫り、アサルトライフルを2丁持ち相手を蜂の巣に。オルコットは開始早々に目一杯距離を取り、相手の射程圏外より狙撃。捨て身で突き進んできたが、ミサイルビットの餌食になりシールドエネルギーが0となった。あまりにも一方的な試合だった。しかも相手国の選手は、2人よりも長く国家代表をやっているベテランだ。
「お久し振りですわね。シャルロットさん」
「うん。久しぶりだね。元気だった?」
「えぇ。とても元気でしたわよ。そして今日も」
「奇遇だね。僕も今日はすこぶる調子が良いよ」
あ、これヤバいヤツだ。絶対荒れるヤツだ。恐らく、今大会で1番激しい戦いになるだろう。
『それでは両者、規定の位置まで進んで下さい』
放送があると、2人とも規定の位置に進み、試合開始の合図を待つ。この試合は、学生時代の試合の様に『開始!』の言葉があるが、この試合に関してはその様な言葉がなく、ホイッスルの音が鳴るだけだ。
ビー!と言う音が響くと、2人は一気に動き始めた。オルコットは大会で一度も使わなかったビットを展開。デュノアを囲むように配置した。しかもビットを展開しているのに動くことが出来ているのだ。
「ヤバッ!」
360°全ての方角から来るレーザーを避けながら、オルコットに近付こうとしている。だが、ビットが絶妙な位置に来て邪魔をするのだ。
「破壊するしか無いか……」
取り回しのしやすいサブマシンガンを2丁取り出し、ビットめがけて撃ち始めた。銃弾1発1発の攻撃力は大した事は無いが、連続で当たれば十分な驚異となる。正確にビットに当てて、撃ち落としていく。
「ウワッと!操作しながら狙撃も出来るのか~」
「わたくしだって成長しますのよ!!」
オルコットから放たれたレーザー。ビットと違いかなりの威力がある。シールドで防いでもダメージは受けるだろう。そう判断すると、シールドでは防がずに避けることにした。無論ビットを破壊しながらだ。
「ラスト!よし!終わり!!」
「ならこれもどうぞ!!」
今度はミサイルだ。だが距離もある。デュノアは落ち着いて避けようとした。だが、
「そこ!」
「ッ!?」
ミサイルを狙撃して、すぐに爆発させたのだ。これが煙幕の代わりとなり、デュノアの視界を奪う。オルコットは上空からデュノアの影を見て、狙撃をする。
「ック!ビットを破壊しておいて良かった……」
レーザーの通った隙間から、オルコットの次に撃つ場所を予測しながら避ける。確かに、ビットを破壊しておいて良かったと言える。残しておけば、この視界の悪いなか避けなくてはならないからな。
「狙撃は苦手だけど……これくらいなら!」
実弾のスナイパーライフルだ。それを呼び出すと、オルコットのミサイルビットを煙の隙間から狙って破壊。驚いているところに更にオルコットの手元を狙い撃った。
「ッ!?インターセプター!」
ショートブレードを呼び出し、デュノアに迫ってくる。当然デュノアは持っているライフルで狙撃をするわけだが、全部弾丸が斬られた。
「ウソォ!?」
「弾丸のスピードは見慣れてますわ!!」
弾丸を斬りながら進むオルコットを見て、デュノアはライフルを投げ捨てて、自分もショートブレードを構えた。2つのブレードがぶつかると、金属独特の高い音が響いた。だが、オルコットは力任せにデュノアを落としに行った。
「ハァァァァ!!!」
「え?ちょっ!?」
更にスピードを上げる。デュノアも落とされない様にするために、全力で上に上がろうとするが、加速の付いたブルー・ティアーズを止めることが出来なかった。そのまま地面に叩き付けた。
『試合終了。シャルロット・デュノア、戦闘続行不能。よって勝者、セシリア・オルコット』
「か、勝った……」
「まさか、あんな力任せな勝ち方をするとは……」
「戦い方を変えてみましたわ」
随分と変わった戦闘スタイルに、デュノアはかなり驚いていた。確かに学園にいた頃の彼女からは想像できない強引な勝ち方だ。
「また今度お願いね。次は僕が勝つけど」
「構いませんわよ。次もわたくしが勝ちますけど」
戦い方だけではなく、性格も少し変わったようだ。次に戦ったときはどうなることやらな。
次回は何をしようか……
次回もお楽しみに!感想と評価、活動報告もよろしくお願いします!!
モンド・グロッソの回数は、一夏誘拐の段階で2回目と言うのを基準にし、学園卒業後3年間の間は国家代表になるための学習期間として、今回を10回目のモンド・グロッソとしました。