魔法少女リリカルなのはstrikers~自称一般局員の少年~   作:ウェルト

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ありがちな展開になってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします


Prologue

 

 

 瞳を閉じながら歩いている少年――シュレン・ガルディンはある場所へと向う為に時空管理局本局特命隊の隊舎内を歩いていた。

 瞳は閉じているのに、まるで目で見て歩いているかのようなバランス感覚は素直に凄いと言えるだろう。

 大抵は瞳を閉じると視界が閉ざされ、何かにぶつかるかもしれないという恐怖心が出てくるものなのだが、シュレンはそんな恐怖心はないかのように堂々と歩いている。

 少しの時間が経つと、シュレンは目的の場所である部隊長室に辿り着く。

 そこで初めてシュレンは目を開け、朱色の瞳が現れた。それはとても綺麗な色なのだが、前髪が少し目にかかる程度の長さで全体的にみれば少し髪は長い為、あまり目立つこともない。

 シュレンはノックもせずに部隊長室に入った。

 

 

「シュレン・ガルディン三等空尉だ。入るぞ」

 

 

 しかし、シュレンが部隊長という訳ではない。

 彼は特命隊の隊員であり、部隊長から呼び出しがあったからこそ部隊長室に向かっていたのだ。

 最低限の言葉を発してから部屋の中へと入り、部屋の中で退屈そうにしていた男を見た。

 

 

「お、ようやく来たようだな」

 

「緊急時ならばともかく、そうでない時に僕は呼ばれてから二分以内で来たつもりなんだが、二分の時間も待てないのか?」

 

 

 普段のシュレンは時間には厳しいのだが、男の言葉にシュレンはそう切り返す。というのも、この男の性格はシュレンにとって軽蔑したものなので、皮肉を込めてそう切り返したのだ。

 その言葉に男は苦笑いをしながら同意した。自身もそれを否定はできないと考えたからである。

 

 

「呼び出した理由は何だ? いつもと同じならわざわざするな」

 

「それは分かってる。いつもとは違うからお前を呼んだんだ」

 

 

 その言葉にシュレンは黙り、レルデの次の言葉を待った。

 

 

「突然で悪いが、お前には部隊を異動してもらう」

 

「突然過ぎるぞ」

 

 

 シュレンの表情が僅かではあるが曇る。異動という言葉にあまり良いイメージを持っていないからだ。

 もしかして、自分は仕事で何か重要な失敗をしてしまったのだろうか、何か取り返しのつかないことをしでかしてしまったのではないか、とそんな考えが出てくる。

 しかし、その考えを男――レルデ・ローラルドがすぐさま否定した。

 

 

「いやいや、お前は失敗してねぇよ。だから、仕事で失敗したということは無いから安心しろ。つーか、お前が仕事で失敗することなんて有り得ないだろ」

 

「誰でも失敗をする。だから、不安になるのは普通だ」

 

「そうかい。でも、本当にお前に原因は無いから安心しろ」

 

「……なら何故?」

 

「何故って言われてもな……そうだな、俺の後輩で八神はやてっていうのがいるんだが、今度新しく部隊を立ち上げるんだよ。それで八神が人手が欲しいって言ってたからお前を推薦。その部隊のメンバーをざっと見たんだが、どうやらお前の知り合いもいるようだし、丁度良いと思ったんだ」

 

 

 説明を終えると、レルデは付けていた眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げた。

 一見、その姿はとても様になっていて格好良いと言えるのかもしれないのだが、実はレルデが付けているのは伊達眼鏡なので単に格好付けているだけとも言える。

 まぁ、伊達眼鏡と言えど、様になっているのは否定できないところではある。

 

 

「成程。珍しく筋の通っている話で驚いた」

 

「シュレン、それはどういう意味だ。その言い方だと俺が普段真面目に仕事をやっていない奴みたいに思っているだろ? 

 俺はお前の思っているより、仕事はしているんだぞ」

 

 

 その言葉にシュレンと呼ばれた少年は内心で溜息を吐く。その言葉が嘘であることを知っている為だ。

 レルデは部隊長であるにも関わらず仕事をやらない時の方が多い。それどころか、本来レルデが行うべきである仕事をシュレンに押しつけている始末だ。

 だからこそシュレンは呆れるのである。

 しかし、シュレンはできる限り無表情を貫き通す。疲れていることがレルデに気づかれたらからかわれることが容易に想像できたからだ。

 最も、普段からシュレンは表情が無に近いので気づかれにくいが。

 

 

「それで、一体いつから配属だ?」

 

「今日」

 

「……馬鹿だな」

 

 

 レルデの即答にシュレンが思わずそう言ってしまうのも無理はないだろう。

 このような仕事に関することは前もって知らせておくべきで、ましてや異動のことを知らせていないなど言語道断だろう。とはいえ、このような言語道断の行動を問答無用でしてくるのがレルデ・ローラルドという男だ。

 仕方がないと、一言だけで納得できる。

 

 

「それと言っておくが、向こうの集合時間は今日の午後一時だ」

 

 

 シュレンはこの部屋に置かれている時計を確認する。現在、時計が表している時刻は午後二時。それに加え、機動六課の隊舎の場所は分からないが、どれだけ早く着いたとしても二時間以上は経ってしまうだろう。

 言い訳も何も出来ない大遅刻である。いや、言い訳は目の前の男のことを言えば良いかもしれないが、それでも遅刻をしているという事実には変わらない。

 

 

「……一応、確認する。今度新しく設立される部隊の人事不足を八神はやて二等陸佐から聞いてお前は僕を推薦した。そして、その部隊……機動六課には僕の知り合いもいるということで丁度良いと思った。

 今の言葉に間違った点はあるか? ないのなら僕はすぐに行くが」

 

「まぁ、無いな。でも、本当はもう一つの理由があるんだけど、それは言わなくていいよな? 言っても意味のないことだし」

 

「間違っていないというのであれば、これ以上聞くこともない。そのもう一つの理由にも僕は興味の欠片もない」

 

「何だよ、そこは普通一体何だろうって思うところだろうが」

 

 

 レルデがそう言っているが、既にシュレンの興味はレルデの言葉にはない。その為、シュレンは言葉の途中でもレルデに背を向け部隊長室から出ていくところだった。その姿にレルデは抗議しようかとも思ったが、どうせレルデの言葉をシュレンは聞かない。だから、シュレンに抗議するのを止め、その後ろ姿を見送った。

 

 

「……何の別れの挨拶も無しかよ。やっぱり冷たいなぁ」

 

 

 シュレンにはその言葉が聞こえた。確認するまでもなく言ったのはレルデだろうが、自分が誰かに冷たかろうと関係ない為、無視して部隊長室から出た。

 

 

 

 ◇

 

 

 部隊長室を出て自室で異動をする為の準備を行なった後、すぐにシュレンは特命隊から機動六課へと向かうつもりだったが、途中で隊員に声をかけられた。

 無視してもよかったが、急いでいるからとはいえ無視はないだろうと判断し、会話に応じることにした。しかし、どうやら隊員はシュレンが急いでいることを予め知っているかのような言葉を出す。

 

 

「やっとレルデ少将から異動の件を聞いたんですか?」

 

「……その言い方から考えるに、僕を除いた者は全員知っていたということか。成程、道理で最近隊員達の様子が変わっていた訳だ」

 

「シュレンさんに隠し通すのは結構苦労しましたよ」

 

「隠すつもりなら、もう少し意識させないようにしろ。僕に気づけたことだ。優秀な者ならすぐにバレるぞ」

 

「……は、はい。すみません」

 

 

 別に説教という訳ではないのに何故謝られているのだろうかと、シュレンは考えるがそうしたところで理由は分からない。

 

 

「では、失礼しますね」

 

「僕が顔を見せに来た時に隊員達が少しでも緩んでいたら潰すと、そう伝えておいてくれ」

 

「り、了解しました!」

 

 

 最後にそう言いながら隊員は去っていった。

 隊員の姿が完全に視界から消えたところで、一人の女性がシュレンに近づいて来る。

 

 

「あやつ、間違いなくお主のことを苦手としてるようじゃな」

 

 

 銀色の髪に金色の瞳、それに古風的な口調。それが女性の特徴だ。

 シュレンはその姿を一度見た後、すぐに視界をずらし隊員が去っていった方向へと移した。

 

 

「……向けられる感情など僕にとってはどうでもいい」

 

 

 近づいてくる女性の言葉にもシュレンは軽い言葉で返す。女性はそんな様子に困ったような表情をするが、シュレンがこういう性格であることは前から知っているので、あまり強く言うことはできない。

 それに、シュレンに対して苦手意識を持っている隊員は少なくはないことも、強く言えない原因の一つだ。

 シュレンはどこまでも無表情で何も感じさせないので、シュレンが不機嫌だと考えていることが多い。それ故、あまりシュレンとあまり会話をしたことがないものはシュレンのことを苦手としている。

 

 

「知っていると思うが、僕は今日から機動六課という部隊に異動になった」

 

「知っておるよ。じゃが、今回の異動に妾はお主と一緒には行かない」

 

 

 女性は普段、セルス・ローラルドと呼ばれ、レルデ・ローラルドの義理の妹として知られている。

 しかし、本当の名前は違う。

 この名前はあった方が便利だからという理由で作られた偽名だ。

 その為、彼女の名前を知っている者は昔からの付き合いがある者に限ってくる。シュレンは特命隊の中でも最も彼女との関係が長く、彼女の名前を知っている。

 

 

「……僕とセレンは一緒に異動ではないのか」

 

「うむ。今回の異動に妾は呼ばれておらんぞ。だから、シュレンだけが異動ということじゃな」

 

「意外だな。君も機動六課に異動するものかと思っていたが」

 

 

 基本的にシュレンとセレンの二人は共に行動している。仕事などの仕方がない場合などは別行動を取っているが、それ以外の食事の時や、デスクワークを行う時などは二人は一緒にいた。さらには性別が違うのにも関わらず、二人は同じ部屋で過ごしていた。もちろん、シャワーなどは別々だが。

 

 

「つまり、ここにいるのは見送る為ということか?」

 

「まぁ、そうじゃな。妾から離れることで寂しい思いをするじゃろうが、別れる際にはこうした方が良いと思っての」

 

「……言葉だけで考えれば凄い上から目線だな」

 

 

 とは言うものの、長い間共に行動していたセレンと一時的とはいえ別れるのは寂しさのようなものを感じているのかもしれない。しかし、あくまでも“かもしれない”だけで実際には感じていないのかもしれないが。

 

 

「僕は急いでいるからもう向かうぞ」

 

 

 レルデから伝えられたのは異動の件に加え、シュレンが遅刻していることも言っていた。だから、シュレンとしては会話を早い内に切り上げ、可能な限り早く機動六課へと向いたかった。

 それはセレンも了解しているのか、シュレンの言葉に頷く。

 

 

「そうじゃな。

 邪魔しては悪いじゃろうし、ここは素直に向こうの部隊でも元気にやってくれとでも言うべきか。という訳でシュレン、元気にやっていくんじゃぞ」

 

「いらない言葉もあるが、一応受け取っておこう」

 

 

 少なくても前半の言葉はいらないだろうと思った。

 セレンらしいと言えばそうなのかもしれないが、もう少しだけ素直に喋ることはできないのだろうか。

 

 

「また、近い内に」

 

「うむ。……まぁ、本当に近い内に再会するじゃろうが」

 

 

 セレンの最後の言葉は小さな声だった為に聞き逃した。何と言ってたか聞くこともできたが、聞こえる程の声で言わなかったということは伝える必要がなかったのだろう。

 そう判断し、シュレンは背を向け歩きだした。

 先程のレルデと比べると随分と丁寧な別れの仕方だが、シュレンにとってこのような挨拶は普通でレルデの場合は例外だ。

 あのような常識もない人物には適当な扱いで充分だろう。

 

 

「じゃあの、シュレン。元気にしているのじゃぞ? これは約束じゃ」

 

「――約束か」

 

 

 一体、何回目の約束だろうか。もう、何回目かは思い出せない。だけど、シュレンは約束を破ったことは一度もない。

 約束など馬鹿らしいと思う者もいるだろう。

 シュレンは何故セレンが約束というものをそこまで大切にしているかは知らない。だが、セレンが大切にしているのならば自分も大切にすべきと考え、ただ一度も約束を破ったことはない。

 

 

「了解だ」

 

 

 一言。その一言だけが二人にとっての別れの挨拶だった。

 何時からか、シュレンとセレンの間には別れの挨拶を言わないという認識ができていた。長い時間を共に行動していて自然と別れの挨拶をしなくなっていたのだ。

 これもある意味二人の間の約束と言えるだろう。

 しかし、どちらかというと、これは約束というより誓いと言った方が本質的には近いのかもしれない。

 とはいえ、誓いなどと言うと大袈裟な表現だろう。

 シュレンは特命隊の隊舎から出て、少しばかり歩いた所で一度だけ振り返った。しばらくはここを離れるのならば、この光景を一応見ておこうと考えたからだ。しかし、振り返っている時間も短く、すぐにシュレンは歩くことを再開させた。

 

 

「……それにしても、機動六課か」

 

 

 ふとそう呟く。

 レルデから渡された書類では確かに、レルデの言った通りシュレンの知り合いは機動六課に所属しているようだった。

 直接会うのは何年振りだろうか。

 一体、あの出来事から彼女はどう変わったのだろうか。

 前とは違って随分と立派になったようだが、シュレンが気にしているのはそんなことではなく、彼女の本質的なことだ。

 

 

「まぁ、いいか」

 

 

 ここで考えていたとしても、どうせすぐに会うことになるのだろうから、考えてもあまり意味はないのだろう。少なくても、悪い方向に変わってしまったということはないのだから。

 次にシュレンは八神二等陸佐に言うべき言い訳を考えることにした。

 病的に上手い言い訳を思いついたとしても遅刻は遅刻。結果的には怒られるのだろう。それならば、できる限り怒りを短い時間にさせるような言い訳を考えれば良い。

 そんなことを考えながら、シュレンは新しき部隊 機動六課へと向かった。

 

 

 

 

 

 




Side―― 方式は止めにしました。
とはいえ、一人称は止めません。
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