魔法少女リリカルなのはstrikers~自称一般局員の少年~   作:ウェルト

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更新おせぇー、すみません
今回の話は少し書き方を変えています。


第十話 『無意識の笑み』

 

 シュレンとヴィータの模擬戦の後には予定通り訓練が行われた。

 二人の模擬戦を見てFW陣四名は普段以上に気合を入れて訓練を行い、シュレンのことを尊敬の目で見るようになった。

 模擬戦と言っても短いものだったが、それでも四人とも彼に対して憧れを持てる程のモノだったからだ。今の自分達の実力ではヴィータに勝つことができないにも関わらず、シュレンは一人で勝ったというのが特に大きな理由だ。

 最も、シュレン自身は四人からそのように思われているなどと考えてもいない為、そのような視線を向けられているのに気づくこともなかった。

 そして現在、訓練を終えたシュレンはティアナと会話をしていた。

 会話の内容は訓練のことや先程の模擬戦のことで、ティアナはヴィータとシュレンの模擬戦の中で気になったことを聞く。

 シュレンの戦術から学べることも多いので、聞いた方が良いと考えているからだ。

 

 

「最後にシュレンさんは何をしたんですか?

 ヴィータ副隊長の攻撃で煙が舞って見えなくなりましたけど、煙が晴れた時にはヴィータ副隊長に銃を突きつけていたので」

 

「そうだな。ヴィータは攻撃をした後に追撃をして決着をつけようとしたと思うのだが、僕の作戦によってそれは失敗して逆に僕が勝ったという感じか」

 

「作戦、ですか?」

 

「……いや、作戦と言うと語弊があるな。正確には幻術を行使して勝ったということだ」

 

 

 あの時のヴィータの攻撃は完璧にシュレンを捉えていた。しかし、気づいた時には銃を向けられていて勝負が決まっていた。

 それは、ヴィータが攻撃したのはシュレンが生み出した幻術で、彼女が攻撃している間にシュレンは背後に回り込んだ為に起こったことだ。回り込んだ後は意識をこちらに向けられていない内に、ただ銃を突きつければ良い。

 とはいえ、もし、ヴィータが少しでも違和感を感じて幻術だと気づかれた場合は意味のないことだった。

 

 

「でも、煙が舞ってからすぐにヴィータ副隊長は追撃しようとしたんですよ? そんな短時間で幻術なんて使えますか?」

 

 

 同じ幻術を使いとして気になることだ。

 ティアナは幻術――フェイクシルエットを使うのに長時間ではないが、それでも多少の時間は喰う。それなのにシュレンはAAAランク魔導師をも騙せるほどの幻術をほぼ一瞬で作り上げたのだ。

 少なくても、今の自分ではそんな短時間で精巧な幻術を創り出すという芸当はできない。

 だからこそ気になった。

 

 

「確かに短い時間だった。間に合うかどうか疑問だったが、できたからな」

 

「だからって、そんな短時間じゃ使えないですよ」

 

「そう言われてもな、慣れとしか言いようがない」

 

 

 そもそもティアナとシュレンとでは、場数が圧倒的に違う。

 訓練校で様々なことを学んだのかもしれないが、その間にもシュレンは特命隊の部隊長代理としてやるべきことはやっていた。しかもそれは訓練校で学ぶことよりも遥かに濃密なことばかりだった。

 だからこそ、正直に言えば比べるなと言いたかったが、言ったとしても意味がないので適当な言葉で誤魔化した。

 加えて、彼女に対してはもう一つ言うべきことがある。

 

 

「それに、もうヴィータとの模擬戦では幻術は使えない」

 

 

 ティアナはシュレンの言葉に疑問を持った。

 今回の模擬戦で決定的な勝因となったのは間違いなく幻術の筈だ。それなのに、もう模擬戦では使えないとはどういうことか。

 

 

「正確には使ったとしても対して意味は無いと言った方が正しいな」

 

「……いや、意味はあると思いますよ?」

 

「無いな。そもそも、今回の模擬戦は僕の実力がどの程度なのか知ることを目的としたものだった。しかし、知ることを目的としている為に僕の戦術がどのようなものかは知らない者が多かった。事実として、あの場にいた殆どの者が僕の戦術を知らなかった。

 それに対して、僕はヴィータの戦いを知っていた。この差はかなり大きい。何故なら、ヴィータの攻撃の対処方法を理解できているのに対し、ヴィータは僕の対処方法を理解できていないのだから」

 

 

 シュレンはティアナに丁寧に説明していく。

 丁寧に説明しようとすればするほど言葉が長くなり、そのことに少しだけ自分らしくないと思った。

 

 

「ヴィータも僕が幻術を使えるとは思っていなかったと思う。だからこそ、僕も驚くぐらいに上手くいった。

 しかし、次にやれば対策されるだろうから無意味ということだ」

 

 

 その通りなのかもしれないが、ティアナにはあまりそう思えなかった。

 確かに、ヴィータは勝利が見えたことで油断していたのかもしれない。浮かれていたのかもしれない。

 しかし、それでもヴィータの意識を逸らすことができたのは事実だ。

 もし、次からの模擬戦で意味の無いと言っている幻術を使ったとしたら、少なくても前のようにはならないようにと警戒心が生まれるだろう。同じ戦法は通じないかもしれないが、それでも警戒心という余計なものを生ませることができる。そういった意味でも幻術は有効な手段なのではないのではないだろうか。

 そのように考えるティアナだが、シュレンの考えがよく分からなかった。

 最も、あえてシュレンはそのことを隠しているのかもしれない。いや、実際にはそうなのだろう。

 目の前の人物が、自分が思いつく程度の考えを思いつかない筈がないのだから。

 

 

「後は経験だな。経験を積めば、役に立つことも多くて応用もできる。だから、高町なのは教導官の教導通りに訓練していけばいずれ使えるようになると思う」

 

「……」

 

「幻術も短時間で使用できるようになるだろうな」

 

「……凡人の私にできるでしょうか?」

 

 

 口から出た言葉は自信がないかのように弱いものだった。

 その言葉を聞いてシュレンは数歩近づいてくる。元々、二人の距離は近かった為、彼が数歩近づいてくるということは目の前にシュレンがいるという形になる。

 ティアナも年頃の少女。異性が近くにいるというのは嫌でも色々と意識してしまうもので、頬は熟したリンゴのように赤く染まる。

 

 

(シ、シュレンさんの顔が近い!?)

 

 

 先程までは自信がなく弱々しい顔だったのに、意識してしまうことでそれがなくなる

 一体、何をされるのだろうと想像するティアナ。

 正直に言えば、今の彼女の表情は普段からしてみれば考えられないようなものだが、そのことに気づくことは無く、ただシュレンが自分の顔へと手を伸ばしてくることを見ることしかできなかった。

 

 

「だから、自分の事を過小評価しないことだ」

 

「いたっ!?」

 

 

 言葉と同時に額に来る衝撃。

 それは瞬時に痛みへと変わり、ティアナは額に手を当てた。少し涙目になりながら目の前の人物を見て、恨めしそうにする。

 ティアナがされたこと。それは所謂、デコピンだ。

 

 

「……何するんですか?」

 

「自分のことを過小評価していたからだ。昨日の食事の時に言った筈だ。自分のことは可能な限り過小評価するなと」

 

「確かに、そうですけど。……これじゃあ、変な事を考えた私が馬鹿みたいじゃない」

 

「変なこと? ……何だそれは?」

 

 

 聞かれても、答えられるようなものではない。

 その為、ティアナは慌てるようにシュレンの元から離れようとする。

 

 

「シュレンさんには言っても理解できないことです。失礼しますっ!」

 

 

 シュレンの目から見てみてもティアナは慌てながら、シュレンの元を早足で去っていった。ティアナが慌てているというのは機動六課に来てから一度も見ていなかったので、少し珍しいものを見ているかのような気分になる。

 昔は、あのような一面も多く見られていたので、成長したティアナが慌てているという姿は少しだけ昔を思い出す。

 しかし、ティアナの姿が完全に見えなくなった後、シュレンの表情が変わる。

 

 

「……それで、いつまで隠れているつもりだ?」

 

「何だ、気づいてたのかよ」

 

 

 表情が変わった理由はヴィータが近くにいるということに気づいていたからだ。

 

 

「ランスターは違うことを考えていて気づいていなかったようだが、そのように観察されるように見られるとさすがに気づく。

 それに、僕はそういった視線には昔から敏感でな」

 

 

 その言葉から自分の存在に気づかれていたことを知り、ヴィータはシュレンに近づく。

 ただ、その足取りは重く感じられた。

 ヴィータは先程の模擬戦で手を抜いていたつもりは少しもない。寧ろ、力を失ったことが事実かどうかを確かめる為に本気で叩き潰しに行った。しかし、シュレンの実力は力を失ったかどうかと疑える程までの実力だった。そして互いにリミッターが付いている為に全力とは言い難いが、それでも自分はシュレンに負けた。

 正直に言えば、真実を言われた時も衝撃を受けていて、真実を言われた時よりも惨めな思いをしている。

 

 

「……ヴィータ。先程の模擬戦のことなら気にしなくても良いと思うが、僕から一つ言わせて貰っていいだろうか?」

 

「ん、ああ。いいぞ」

 

 

 一体、こんな自分に対して何を言うのだろうか。

 そう考えるとシュレンは少しだけ間を開けて口を開いた。

 

 

「――僕を舐めるな」

 

「……っ!?」

 

 

 それは言われるとは思っていなかった言葉だった。しかし、心の何処かで言われるとも思っていた言葉でもあった。

 

 

「八年前と比べて強くなっているのは別にヴィータだけではない。

 ヴィータは彼女から話を聞いて僕が弱いと思っているのかもしれないが、それは勘違いだと言わせて貰おう」

 

 

 ――確かに、アタシよりも弱いと感じていた。だけど、模擬戦では勝つことができなかった。

 

 

「確かに、なのはを庇って大怪我はした。だが、八年という時間が経っていることを忘れていないか?」

 

 

 ――忘れていた訳じゃない。ただ、アイツから聞いたことが頭から離れなかった。

 

 

「あの時は僕だけではなくなのはも怪我をして、魔法が使えなくなる可能性もあった。しかし今は何の問題もなく使っているだろう」

 

 

 ――分かってる。だけど、お前みたいに考えられないんだ。

 シュレンの言葉に対してヴィータは内心でそう考えることしかできなかった。

 頭で考えていることを口に出すこともできなかった。

 

 

「……それなら、どうして本当のことを言ったんだよ。お前の言い方から考えたら、言わない方が良かったじゃねーか」

 

 

 こんなことを言う時点で自分は最低なやつだと嫌でも思う。

 力を失ったと聞いて同情して、勝てると思っていたのに実際は自分よりも強かった。そして、真実を聞いたのは自分の筈なのに、今は嘘を貫き通せばよかったと言っている。

 自分自身も何がしたいのかまるで分からない。ただ、自分が最低な奴だと自覚するだけだった。

 

 

「確かに、ヴィータの言う通りかもしれない。だが、あの時のヴィータは僕に嘘を言って欲しかったのか?」

 

「……いや、そんな事はない」

 

 

 シュレンに聞いた時、嘘は言わないで欲しかったと思っている

 ただ事実を知りたかっただけなのかもしれないが、あの時は間違いなくヴィータは嘘のない事実を求めた。

 

 

「その悩みが意味の無いこととは思っていないが、深く考えても考えるだけ無駄だ」

 

 

 考えるだけ無駄。

 それは事実を聞いた時から今に至るまでの悩みの否定だ。そして、否定されて何かを言い返すことはできなかった。

 しかし、それも仕方のないことなのだろう。

 先程のシュレンの言う通り、ただ自分がシュレンのことを甘く見ていただけなのだから。八年前の怪我が原因で後遺症などが残れば違った考えが出ていただろうが、今の彼には後遺症などない。

 模擬戦が始まる前までは力を失ったことを後遺症のように思ったが、八年という時間が経っていれば治っていることだ。

 だから、言い返すことができなかった。

 

 

「僕が言いたいのは、僕のことを特別視しないで欲しいということだ」

 

「……特別視?」

 

「恐らく、ヴィータは僕のことを『力を失った奴』のように思っているだろう。しかし、正直に言うと同情をして欲しい訳ではない。何故なら、今の僕は“力を扱えなくなったからこそ、”この場所に立っている。

 だから、同情されるというのは今の僕に対する否定だ」

 

 

 ヴィータにとって、その言葉は考えてもいないものだった。

 自分は一度でも彼の視点から考えたことがあっただろうか。

 彼の言う通り、八年前のあの時の会話から現在までシュレンのことを同情して見てきた。それはそうすることが当たり前だと感じていたからだ。いや、気付いていたら同情していたと言った方が正しいだろう。

 しかし、それは本人からしてみれば迷惑な行動だったのだろうか。いや、だったのだろう。

 

 

「だから、これからの僕に対する認識を普通の同期と変えてくれると助かる」

 

「…………」

 

 

 言葉と同時に彼は笑みを浮かべたように見えた。

 実際は相変わらずの無表情ではあるが、今は何となくシュレンが笑っているように感じたのだ。

 だからだろうか。

 先程まで、乱されていた心が静かに収まっているように感じるのは。

 そして、それと同時にシュレンはやはり凄い奴だと改めて認識する。とはいえ、彼の何が凄いのかと聞かれれば返答に困るだろう。しかし、それでもヴィータがシュレン・ガルディンという人物を凄いと思っているのは紛れもない事実だ。

 

 

「……君は子供だから、物事を簡単に考えていたら良い」

 

「アタシを子供扱いすんな。アタシは立派な大人だ……!」

 

 

 八年前のように反射的に反抗した。

 それが、その行動が、シュレンと対等な関係になれたように感じられた。別の言い方で言うならば、ようやくシュレンに認められたような気がした。

 今までは会話をしても自分のことを見ていないかのような雰囲気があった。しかし、今の会話からはそのような雰囲気は感じられない。

 そのことも、シュレンに認められたと感じる要因だ。

 

 

「そうか。なら外見的な意味で成長することだ」

 

 

 最後にそう言って、シュレンはこの場所から歩き去る。

 止めることももちろんできたが、ヴィータはそれをせずに彼女自身の部屋へと戻ることにした。

 今はただ、この何とも言えない感情を浸っていたかったから。

 その途中で小さな声で呟く。

 

 

「だから、アタシを子供扱いすんなっつーの」

 

 

 そう呟いたヴィータの表情は無意識に笑みを浮かんでいた。

 

 

 

 

 




んー、少し簡単に和解? しすぎですかね?
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