魔法少女リリカルなのはstrikers~自称一般局員の少年~   作:ウェルト

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正直、何言っちゃってんだコイツ? って思うかもです


第十一話 『無駄な考え』

 

 

 ヴィータとの会話を終えた後は、すぐに自室に戻った。

 正確に言うのならば、特にやることが無かった為に自室に戻る以外のことができなかったというのが正しい。

 特命隊に所属していた時は、書類仕事などが関係して自室に戻るのは睡眠を取る時のみというものだった。その為、やることがないからといって自室に戻るというのは少々違和感を覚える行動だ。

 

 

「……」

 

 

 ベッドに腰を下ろしながら、先程のヴィータとの会話を振り変える。

 そもそもの事の発端はセレンが余計なことをヴィータに話してしまったということだろう。ヴィータからの話の限りでは彼女はヴィータに『シュレン・ガルディンの力が高町なのはを庇ったせいで失った』と伝えた。

 そのことを確認する為に僕に急いで会いに来たらしいが、その時には既に僕は病室からは消えていて確認することは叶わなかった。

 しかし、それから八年という時間が経った時に機動六課に異動することになったシュレン・ガルディンと再会した。そして、八年前にセレンから聞いたことが事実かどうかの確認をする。

 そこで返ってきた言葉は、そのことが事実であるということだった。

 

 

「……分からないな」

 

 

 僕はヴィータの行動から、彼女がどのように思って行動したのかを考えている。

 しかし、先程の返答が事実であったというところまでしか僕にはヴィータの思考が理解できない。

 八年前に聞いたことが気になっていることであれば、それをすぐに確認しようとすることは不思議なことではない。

 だからこそ、そこまでの行動は何を考えていたのか想像することはできる。

 だが、正直に言えば、ここからのヴィータの行動は僕には理解することができなかった。

 

 

「……」

 

 

 それは事実を聞いたヴィータが取った行動だ。

 八年前にセレンから聞いたことが事実だと確認できた後に、僕はこのことはなのは達には黙っていて欲しいと言った。別にスキャンダルという訳でも、問題がある訳でもないが、それでも彼女の経歴に泥を塗る可能性があったからだ。

 また、それだけでなく、なのは自身が事実を聞いて傷ついてしまう可能性があった。

 だからこそ、僕はヴィータに対してこの事実を隠しておいて欲しいと言った。

 それなのにも関わらず彼女はあの時、この事実を話してしまうかのような行動を取った。それは隠しておいて欲しいと言った僕に対して、どういう意味かと聞いたことだ。

 意味など考えるまでもなく理解できている筈なのにだ。

 そして、何を考えてなのはに模擬戦を提案したのかは分からないが、僕とヴィータは模擬戦を行なった。

 結果は僕の戦術を理解できていなかった為に僕の勝利という形で終わった。

 前提条件からヴィータ自身が不利なのに勝てると考えられていたのだ。

 いくら僕がヴィータと比べて才能がないとはいえ、それはあまりにも僕を舐めすぎている。だから、僕は模擬戦が終わった後の会話でヴィータに対して舐めるなと言ったのだ。

 僕は他人に対して『舐めるな』などという強い言葉を使うことは殆どないが、それでも僕にそう言わせるには十分な理由だった。

 

 

「……最も、僕が彼女にとって最初から認められている存在ならば舐められずには済んでいただろうが」

 

 

 それと、これは別にヴィータの行動に違和感を感じた訳ではない。どちらかというと、僕自身の言葉に違和感を感じた。

 それはヴィータに対して、僕のことを『普通の同期として見てくれると助かる』と言ったことだ。別に、誰かがこの言葉を言ったとしても、その時は何も感じないだろう。しかし、その言葉を言ったのは僕だ。

 僕如き存在が、まるでヴィータと関係が対等と思えるような言葉には違和感しか感じることができなかった。

 自分で言った言葉だが、何を馬鹿なと思える。

 僕がヴィータに勝っている所など一つもないというのに。

 彼女は魔法の才能も、戦術も、考え方も、全てが僕よりも優秀な魔導師だ。

 それなのに、まるで対等な関係のような言葉を言った。正直に言えば、自分自身に嫌気が差す。

 関係は対等ではなく、比べるまでもなく僕の方が低い。

 

 

「まぁ、あの場では、ああ言った方が早くヴィータが納得すると思ったから仕方がないと言えば仕方ないか」

 

 

 そう。

 余計な会話を生ませない為にも、ヴィータが納得するような言葉を並べた。

 もちろん、あの時の言葉は心にも無い言葉で、全てが嘘だ。

 それから、これは先程の会話から分かったことなのだが、ヴィータは一つの勘違いをしているようだ。

 どうやら彼女は僕の全体的な能力が落ちてしまったと考えていることだ。例えば、リンカーコアや身体に後遺症が残っていると言った、八年前の出来事が致命的に残っているということ。

 しかし、実際はそんな大袈裟なものではない。

 実際に、ヴィータとの会話でもそのことは否定させて貰った。

 

 

「……別に、魔力量やリンカーコアが消失した訳ではない」

 

 

 言った通り、魔力量などには変化がない。

 寧ろ、八年前と比べたら全体的な魔力量は増えた方だろう。八年前はBランク程だったのに、今で少なくてもAAランク程の魔力量がある。

 ヴィータがリンカーコアに関して聞いてきた時、僕の言葉が嘘であると言ってきたが、正直に言えば、本当のことを言うのなら、本当に僕はBランク相当の魔導師だったのだ。

 しかし、当時の僕はそれ以上の実力を持っていたと言ってもいいだろう。

 誤解のないように先に言っておくが、別に相手を罠に陥れるといった不意を突くようなことをしないで、戦いに勝利できていた。

 どのように、僕が勝利することができたのか。

 

 

「ランクが低くても、それさえ圧倒できる能力さえあれば高ランク魔導師にも勝てる」

 

 

 圧倒する能力。

 別に、高ランクでなくても、低ランク魔導師でも|希少能力(レアスキル)があれば、高ランク魔導師に勝つことが可能になる。

 キャロ・ル・ルシエ三等陸士はその良い例ではないのだろうか。

 彼女が持っている竜召喚という才能。

 今はまだ完璧に制御できている訳ではないらしいが、もし完璧に制御できるようになった場合――魔力量などの関係上、少ない時間だったとしても――高ランク魔導師を圧倒できるだろう。

 このような言い方は彼女を傷つけるかもしれないが、彼女が部族から追放されたのは竜を制御できないからだ。その才能のせいで恐れられて、部族を追放されてしまった。

 しかし、もし、彼女の周りの誰かが竜を力尽くで抑えることができたのであれば、キャロ・ル・ルシエ三等陸士は恐れることはなかっただろう。

 仮に暴走したとしても、竜を抑えることができるのだから。

 しかし、結果として彼女は恐れられ、部族を追放された。周りに竜を抑えることができる程の強者が居なかったからだ。とはいえ、ある程度は腕の立つ者もいたのだろうが、竜には勝つことはできない。

 

 

「まぁ、生半可な腕では無理だろうな」

 

 

 このようにランクが低い場合でも――最も、あの年齢を考えるとランクは高い――希少能力、または圧倒できる能力さえあれば、高ランク魔導師に勝ててしまうのだ。

 それも、高ランクの魔導師が恐れる程に。

 そして、今のはキャロ・ル・ルシエ三等陸士の話だったが、今度は僕の話だ。

 僕、シュレン・ガルディンも希少能力を持っている。正確には希少能力に似た、特殊な能力だが、少々特殊とも言えるものを持っていた。先程の言葉とは矛盾してしまうが、この能力を使用している間は余程のことがない限り、負けない自信がある。

 とはいえ、僕の場合はルシエ三等陸士とは違って副作用のようなものがある。彼女とは違って制御はできているが、代償を払わなければ使用することはできない。

 この言葉で気づくだろうが、僕が扱えなくなった力というのはこの希少能力のことだ。

 そして、この能力には代償がある。そのような意味で考えれば、別にこれはあってもなくてもどちらでも構わない。

 この代償というのは僕が傷つき苦しむ訳ではない。

 セレン曰く、僕ではなく、僕に親しい人が傷つく代償らしい。さらに厄介なことに代償の詳細について僕は知らない。

 つまり、使っていた時期には代償を払っているという自覚がなかったということだ。

 そもそも代償のこともセレンに言われるまで気付かなかったこと。いや、正確には今もまだ詳細は知らない。

 

 

「……止めだ」

 

 

 これ以上、無駄な考えはしない方が良いだろう。

 ヴィータは既に納得している上に、なのはもこのことは知らない。仮になのはが知ったところで彼女が悪い訳ではない。

 だから、これ以上考えるのは止めておく。

 この件に関して言えば、少しだけ辛い気持ちになる。

 これ以上考えたら、あの時の、あの人の、泣いている顔を思い出してしまうから。

 

 




センター試験まであと一ヶ月と少し。
やべー(棒

あと、今回で一章終了です
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