魔法少女リリカルなのはstrikers~自称一般局員の少年~   作:ウェルト

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二ヶ月近くも経つとは思ってなかった。小説ってどうやって書くんだっけ?


第十二話 『一人称』

 

 

 

 

 僕は現在、訓練場が全体的に見える場所でFW陣の訓練を観察している。

 何故訓練を観察しているのかというと、今行なっている訓練は『シュートインベーション』というもので、なのは自身が行なっているからだ。

 機動六課に所属してから見ていない訓練だった為、僕は見学を希望した。

 また、それだけでなく、僕個人としても具体的に今のFW陣のチームワークを確認したいと考えていた。その為に、今の僕ができることと言えばFW陣を観察して、アドバイスできることがあれば伝えるということになる。

 FW陣の姿は僕が機動六課に所属した最初の訓練の時と比べ、より力が入っているように思えた。

 

 

「いや~、やってますね~」

 

 

 そう口にするのはヴァイス・グランセニック。

 機動六課のヘリパイロットで階級は陸曹。機動六課内部でのグランセニックへの評価は頼れる兄貴分らしい。

 グランセニックがそのような評価を貰うのも頷ける。

 レルデ程とは言えないと思うが、グランセニックはムードメイカーとも言える存在だ。

 

 

「お前の存在が良い刺激になったようだな」

 

 

 ヴァイスの隣にいるシグナム副隊長も訓練を見ながら口を開いた。

 

 

「シグナム副隊長は面白いことを言いますね。あれは自分のおかげという訳ではありません」

 

 

 シグナム副隊長は僕の存在がFW陣にとって良い刺激になったと言っているが、さすがにそれは冗談だろう。正確には自分よりも実力が上の者同士の模擬戦を見たことが良い刺激になったというのが合っている筈だ。

 僕如き存在がそのように思われる筈がない。

 

 

「とはいえ、僕に可能なことがあれば最善は尽くしたいと考えています。

 今はまだFW陣は未熟としか言えないかもしれませんが、少しずつ実力を付けさせたいですね」

 

「……そうだな。まぁ、今は個人ではなく団体だがな」

 

「それは仕方のないことです」

 

 

 部隊にいる以上、チームワークというものは重要になると考えている。

 理由としては、個人の能力を上げるよりもチームワークが高ければ、それ以上の力を発揮することができるからだ。

 レルデ曰く、チームでの行動は上手く行けば1+1が2.5になるようなものらしい。

 とはいえ、それはセレンやなのは、フェイト隊長に八神部隊長のような一騎当千の強者は除かれる。彼女達のような強者の個人の能力は凄まじく高いもので、チームを組む必要がないぐらいだ。

 しかし、彼女達のような優秀な魔導師ではない者も当然のようにいる。寧ろ、優秀ではない魔導師の数の方が圧倒的に多いだろう。だからこそ、僕のような弱者にとってはチームワークというのは重要だ。

 確かに、個人の能力を高めるというのも大事だが、チームワークのことも忘れてはいけない。

 

 

「……」

 

 

 とはいえ、だからと言って、機動六課でそこまでのチームワークを上げる必要もないとも考えている。

 何故なら、この機動六課はあくまでも試験運用で期間は一年と少し短い。もし、機動六課が解散された後に最高とも言える相棒と出会えたら、その人との連携は自然に意識しなくとも上がるものだ。

 最も、今のFW陣はそんなことを考える必要もなく実力を上げることをしなければならないので、先のことは言うべきではないのだろうが。

 

 

「良いっすね、若い連中は」

 

「若いだけあって成長も早い。……まだ、しばらくの間は危なっかしいだろうがな」

 

「……」

 

 

 シグナム副隊長とはヴィータを通じて知り合った。

 印象としてはクールで人を惹きつけるものがあり人望も厚いと言ったところだろうか。また、それだけではなくシグナム副隊長は戦闘能力が高い。

 先程言っていた一騎当千できる強者の一人だ。

 いつかはシグナム副隊長のような者になりたいと思える程、優秀な人だ。しかし、シグナム副隊長に関しては一つの問題点がある。

 それは、シグナム副隊長の性格が好戦的であるということだ。

 

 

「……くどいようで悪いが、私と模擬戦をしてくれないか? お前の実力をこの目で見てみたい」

 

「申し訳ありませんが、断らせてもらいます」

 

 

 会うたびに模擬戦を申し込まれるのは、正直に言えば困る。

 元々、特命隊の部隊長代理ということもあって興味があったらしい。それに加えて、数日前のヴィータとの模擬戦で僕が勝ったということで、さらに戦いたいと思うようになったとのこと。

 もちろん申し込まれていたとしても、毎回のように断っている。勝てる筈のない勝負をする程、僕は馬鹿ではない。

 それに、ヴィータに勝つことができたのも、僕が有利だったからだ。今の僕とヴィータが互いに全力で戦ったら、間違いなく負けることだろう。シグナム副隊長にそう伝えているのだが、「それでも勝利したのは事実だ」と言って模擬戦を申し込まれる。

 

 

「力尽くでも、と言ったら?」

 

「全力で逃げます。とはいっても、最終的には追いつかれると思いますが……」

 

「……っふ。まぁ、冗談だ」

 

 

 質の悪い冗談はやめてください、とは言えずに無言になる。

 シグナム副隊長はクールな性格ではあるが、このように冗談を言って人をからかう時があるとのこと。

 最も、言われた僕の身からしてみれば冗談では済ませない言葉ではある。

 

 

「やる気のない状態で戦ったとしても、それでは意味が無い。互いに全力でなくてはな」

 

 

 何とも返答に困る言葉だ。

 しかし、考えようによっては僕が戦う気のないままでいればシグナム副隊長とは模擬戦をすることはないとも言える。

 今のシグナム副隊長を見ていると、自然と出会ったばかりの頃のレルデを思い出す。彼も昔は戦闘狂と言える性格だった。あの時のレルデに比べれば、シグナム副隊長の好戦的な性格は楽とも言えるものだが、それでも戦う気には到底なれない。

 

 

「シグナム姐さんは、訓練に参加しないんで?」

 

「……私は古い騎士だからな。スバルやエリオのようにミッド式と混じった近代ベルカ式とは勝手も違うし、剣を振るうしかない私がバック型のティアナやキャロに教えられるようなこともない」

 

 

 返答を考えている内に、グランセニックが良いように話を逸らした。

 僕とグランセニックは年齢と階級などの違いはあるが、互いに敬語は使っていない。

 機動六課では男女の人数は同数とも言えるが、僕と会話ができる者は特命隊と比べたら少ない。別に、そのことで不満を感じている訳ではないが、少々特命隊と比べて物足りないと感じていた。

 そんな時、グランセニックの方から会話をしてきた。

 僕はヘリパイロットの資格を持っていない為に、知らない知識を身につけるという意味でも会話が成り立ち、次第に敬語は使わないということになった。

 ……と話が逸れたな。

 

 

「ま、それ以前に私は人に物を教えると言う柄ではない。戦法など届く距離まで近づいて斬れ、ぐらいしか言えん」

 

「スゲェ奥義ではあるんですけど……」

 

 

 たった一つの行動でも、それは極めれば奥義となる。

 今のFW陣の中にはそのような奥義を持っている者はいないが、副隊長レベルの実力になると最低でも一つはそのようなモノを持つことになるだろう。

 才能がない僕ですら、奥義とも言えるモノを持っているのだから。とはいえ、現在は理由があって使えない。

 

 

「……シュレン、主はやてがお前のことを呼んでいるぞ」

 

 

 急にシグナム副隊長はそう言った。

 念話で八神部隊長がシグナム副隊長に連絡でもしたのだろう。恐らく、僕を見かけたらそう伝えるようになどと言われたと思える。

 しかし、そんな面倒なことをしなくても僕に直接呼びかければ良いと思うのだが。

 

 

「しかし、急ぎの用事でもないらしいので、訓練が終わった後でも良いそうだ」

 

「分かりました」

 

 

 急ぎではないということは、いつもの会話だろう。

 会話というのは基本的にはレルデに対する不満をお互いに話し合うと言ったものだ。もちろん、それ以外のことも話しているが主な話としてレルデのことが挙げられる。

 機動六課にいる時の日常となりつつあることだ。そのように思える程、八神部隊長と会話をしているのは多い。

 しかし何故、こんな自分と回数を多く会話をしようと思えるのだろうか。

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

「失礼します、八神部隊長。シュレン・ガルディン三等空尉です」

 

 

 何度かこの部屋に入っている為に機動六課に来たばかりの頃とは違い、緊張感のようなものは感じられず部屋に入っている。部屋に入るといつものように仕事に関する書類を見ている八神部隊長がいた。

 僕の声に気づくと視線を書類から僕に変えて口を開く。

 

 

「来たね。……それと、私のことははやてで良いって言ってるよ? 同い年な訳やし」

 

「いえ、なのはとヴィータには呼び捨てですが、八神部隊長を呼び捨てにするのは気が引けます」

 

「そんなん気にせんでもええよ」

 

「……分かりました。改善しようと思います」

 

 

 八神部隊長にもこのように言われているということは、やはり僕は堅い人間なのだろうか。

 正直に言えば、僕は人と会話をするということは得意とは言えない。特命隊に所属する前はこんなことを考えもしなかったが、所属してからは仕事などでコミュニケーションを取る必要がでてきた。言葉を交わすということは重要なことであるので、上手い会話ができるように色々と努力している。しかし、努力したところで不得意であることには変わらず、結果的には僕が堅い人間であると思われるようになった。

 それに僕は一度でも敬語を使って会話をした人には、その後も使わなくてもいいと言われているにも関わらず、敬語を使い続ける傾向がある。

 八神部隊長もその一人だ。

 

 

「それで、僕に話したいこととは何でしょう?」

 

「えっとな、またレルデ先輩から少し頼まれごとをされてな……」

 

「頼まれごとですか?」

 

「そう。ま、とは言っても命令みたいなもんやけど」

 

 

 要するに、レルデは八神部隊長に対して厄介事を押し付けたということだろうか。

 冗談では無くで本当に迷惑な先輩だな。レルデは最悪の先輩と呼ばれることを望んでいるのだろうか。どちらにせよ八神部隊長が可哀想だ。

 とはいえ、恐らく僕は八神部隊長が味わった以上の苦労を体験しているだろう。

 

 

「そんでな『特命隊からもう一人を機動六課へ異動させるけど良いよな?』って、レルデ先輩が言っててな」

 

「成程。相変わらず迷惑な野郎ですね」

 

 

 僕の言葉に八神部隊長は苦笑する。

 何でも、僕の言葉には遠慮というものがなくて、とても言えそうにないことを言っているかららしい。

 

 

「特命隊から誰が来るかは分かっているのですか?」

 

「いや、そんなことは教えてくれへん。でも、シュレン君に聞けばわかるだろうって」

 

 

 それはそうだろう。

 一応、僕は特命隊の部隊長代理だ。特命隊に所属している隊員の名前と顔は勿論だが、それ以外にも様々なことを知っている。例えばそれは出身世界や、魔導師ランク、特命隊の前に所属していた部隊などだ。

 だから、ある程度の特徴を教えて貰えれれば誰が来るのかは理解できる。

 しかし、レルデがこのように誤魔化すような言い方をするということは大抵の場合、面倒事が起きる。最も、レルデの行動の殆どが面倒事ではあるが。

 

 

「えっと、『暇だから会いに行く』って言えば分かるって言ってたよ?」

 

「……」

 

 

 ……予想通りに面倒事を僕に押し付けてくる。

 レルデに対してそんなことを言えるのは特命隊の中でも彼女一人で、仮に来てしまった場合は確実に面倒事が起きる。数日前、僕とヴィータとの間にあったことのように、間違いなく彼女とヴィータとの間かなのはとの間に面倒事が起きるだろう。

 僕とヴィータの間にあった問題は原因を辿れば――セレンが原因なのだから。

 

 

「一応、聞いておきますが、それを拒否することは可能ですか?」

 

「拒否権はないらしいで」

 

「……要するに無理と?」

 

「そうやね。その通りや」

 

 

 とはいえ、別に僕は彼女に来て欲しくないと言いたい訳ではない。寧ろ、会話をしやすい相手なので、来てくれることに感謝したいところではあるが、彼女が来ることによって起きる出来事を考えるとそうも言えない。

 今の心境から考えると溜め息を吐きたいところだ。

 

 

「恐らく、八神部隊長も知っている人物だと思います」

 

 

 八神部隊長はレルデの後輩だ。それならば義理の妹であるセルス・ローラルドに会っていても不思議ではない。

 寧ろ、会っていなければ可笑しいと言える程だ。

 

 

「セルス・ローラルド。レルデの義理の妹です。会ったことありませんか?」

 

「……もしかして、異動してくるのって」

 

「ええ。恐らく彼女です」

 

 

 僕の言葉を聞いて八神部隊長は固まった。

 その反応から考えて良い意味か悪い意味かは分からないが、大変な目に遭うのは確実のようだ。

 しかし、レルデのことを話していても固まることはなかった八神部隊長がこのようになるということは八神部隊長は彼女に会って何かあったらしい。

 

 

「ふ~ん、彼女なんや。異動してくるのって」

 

「……?」

 

 

 固まった状態から元に戻った八神部隊長は何か思うことがあるように呟いた。

 その言い方は八神部隊長と出会ってから初めてのもので、少しだけこのような言い方もするのかと驚いた。

 聞いた感覚では嫌っている訳ではないが、苦手意識のようなものを持っているらしい。

 ……何か、セレンは八神撃長に対して失礼なことをしたのだろうか。

 

 

「彼女が何か八神部隊長に何かやりましたか? 失礼なことでしたら言っておきますが」

 

「……ん、いや、ええよ。そんなことしなくて」

 

「そうですか」

 

 

 セルス・ローラルドという名を聞いただけで、ここまでの変化が出るということは八神部隊長に対して彼女は何かをやってしまったのだろうか。それがくだらないことならば良いが、もし、それが失礼なことならば詳しく話をする必要がでてきた。

 しかし、そんな考えを遮るように八神部隊長が言う。

 

 

「いや、セルスさんはレルデ先輩のようにふざけてる人じゃなくて、真面目な人っちゅーことは知ってる」

 

 

 ……この時点で彼女に対する認識が間違っているが、それは黙っておく。ただ、一つだけ言わせてもらうと彼女は基本的に真面目ではない。

 

 

「ただな、セルスさんが私のことを苦手としてるみたいなんや」

 

「……な」

 

 

 ――ま、そうは言っても初対面の時だけやったけど。と、八神部隊長は付け足す。

 八神部隊長のその言葉は僕を驚かすには十分な物だった。

 セレンが人に対して苦手意識を持つことはありえない話ではないが、そんなことがあるのだろうか。彼女とて人間だから人に対して苦手意識を持つことは普通だが、少なくても僕の知っている彼女は誰にも苦手意識というものを持たない。

 どこまでも天真爛漫で、我侭で、仕事をしない彼女がそのように思われることなど――

 と、そこまで考えた時、僕は納得した。

 

 

(……ああ、そうか。成程な)

 

 

 そうだった。忘れていた。

 先程まで一人称に『妾』を使っているセレンのことを想像していたが、『私』と至って普通に会話をすることも忘れていた。彼女が『私』と一人称を使って会話をしたことなど滅多にないが、八神部隊長と会った時は一人称こそ『妾』だったものの、そちらの性格が現れたのだろう。

 もし、仮にそうならば特に彼女と会話をすることもないか。

 恐らく、彼女はこのことに関して会話をすることは嫌うだろうから。

 

 

「とりあえず、八神部隊長は胃薬の準備をした方がいいかもしれません」

 

「……そうするわ」

 

「まぁ、誰が来たとしても特命隊にいる人は皆個性が強い人達ですからね。大変になると思います」

 

「……お疲れ様や。色々と」

 

「お心使い感謝いたします」

 

 

 何度も言うようだが、八神部隊長はレルデとは違い部下思いな人だ。

 特命隊には八神部隊長のような一般常識を持った人間が一人でも多くいた方が良いだろう。あの部隊は管理局の中でも優秀な部隊であることは知っている。しかし、能力を持っている者の頭が残念というのがある。それに比べて機動六課は一人一人が真面目で一般常識もある。最も、それは八神部隊長や他の隊長達の人選によるものだが。

 

 会話が終わった後は部屋を出て、八神部隊長に伝えられたことを考えていた。

 八神部隊長の異動の件が本当のことならば少しレルデの行動に違和感を覚える。

 僕は能力が低いとはいえ肩書きとして特命隊の部隊長代理で、ある程度は管理局内で動くことはできる。

 しかし、他の部隊に異動すれば、その力は弱くなる。

 セレンの場合は能力が高い為に管理局の中でも階級が高い。能力も認められている。しかし、そんな彼女が機動六課という異常とも言える程の戦力を持った部隊に異動ができるものだろうか。いくらレルデが少将だからとはいえ、そこまでの行動をすれば必然と圧力がかかる筈だ。

 それなのに異動させて来るということは余程八神部隊長のことが可愛いのか、或いは――。

 

 




あ、ファーストアラート編は原作と大して変化ないので飛ばす可能性があります。ご了承を
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