魔法少女リリカルなのはstrikers~自称一般局員の少年~   作:ウェルト

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一週間で更新とか、どれだけ久しぶりだろうか・・・


第十四話 『密談』

 

 

 

 正直に言えば、この男が何を言ったのか理解するのに時間がかかった。

 この男――レルデ・ローラルドも機動六課に行くことになったと言ったのか? だとしたら、僕に言えるのはこれだけだ。

 

 

「……相変わらず、馬鹿なのかお前は」

 

 

 僕にはそう言うことしかできなかった。

 レルデ・ローラルドという男が馬鹿であることは出会った時から知っていたが、ここまで馬鹿なのは知らなかったとでも言うべきだろう。少しばかりレルデに対する認識を改めた方が良いだろう。

 これは一種の諦めというやつだが、事実なのだから仕方のないことだろう。

 

 

「オイオイ、俺から馬鹿を取ったら何が残るんだよ?」

 

「何も無いな。強いて言うなら、迷惑すぎる動く生ゴミと言ったところだな」

 

「……お前、今日は本当に毒舌だな」

 

 

 ああ、もう、本当に、レルデ・ローラルドという男と会話をするのはとても疲れる行動だ。

 この男が存在するだけで、どれだけの人間が迷惑をしているのか。この男のことを無視できたら、どれだけの人間が救われるのか。軽く一時間程度は考えたい話題だが、考えるだけ無駄なことか。

 どちらにせよ、この男は無視することができない存在なのだから。

 それよりも、一体何を考えているのだろうか。

 

 

「お前は何を考えてる? ……ただでさえ、セレンが来るというのに」

 

「単なる暇つぶしですけど何か文句でも?」

 

「即答で嘘を言うな。単なる暇つぶし程度の理由で特命隊から離れることなどできる筈がないだろう」

 

 

 ただでさえ、時空管理局本局特命隊は管理局の中でも有名な部隊だ。その有名な部隊の部隊長が他の部隊……ましてや知り合いが創り上げた部隊になど来れる筈がない。

 そんなことをしてしまえば。特命隊が批難され解散する可能性があるからだ。仮に、解散されることがなかったとしても、あまりいいように思われないのは深く考えなくても分かることだ。

 幸いなのはレルデ・ローラルドという名前は陸の部隊の方でも尊敬されている者が多いと言ったところか。

 それ故に、この男は有名人でもある。

 

 

「まぁ、珍しく仕事の話だよ。マジで」

 

「……聞いておくが、どのような仕事だ?」

 

「簡単に言ってしまえば、お前ら機動六課の|監察(・・)だな」

 

 

 その言葉の意味はすぐに理解できた。

 僕が前から機動六課という部隊に対して疑問に思っていたことがあった。それは機動六課の異常とも言える戦力だ。その中でも八神部隊長、フェイト隊長、なのはの三人はレルデ程ではないにしろ管理局の中でも有名で、少なくてもリミッターを付けてまで三人を一緒にする必要はない。

 それに加えて、機動六課を創った際の後兼任も気になるところだ。リンディ・ハラオウン総務統括官。クロノ・ハラオウン艦長。カリム・グラシア少将。

 ただの試験部隊にしては用意され過ぎている。

 そんな部隊を不審に思わない人間がいるのも当たり前と言っても良いだろう。そして命令だか何だか知らないし興味もないが、結果的に言えばレルデがその観察役を引き受けたということだろう。

 

 

「おぉ、監察と言っただけで、そこまで考察できるのか。凄いな」

 

「何故、そんなことをする?」

 

 

 目の前にいるこの男を機動六課にとっての障害だと判断して、威圧ある声を発する。

 低く、重く、暗い声に。

 少なくても僕は監視されると言われて今までのように接することができる程、変わっている者ではない。

 だが、レルデはそんな声を受けても表情一つ動かさない。ランクの差というのもあるにはあるのだろうが、この場合はこのような威圧には慣れているというのが一番の理由だろう。最も、殺気ではないというのも理由の一つだ。

 

 

「それはもちろん、俺が機動六課を不審に思ってる訳じゃないさ。だけどな、管理局という組織は不審に思っている。組織で動くにあたって組織の意見は従わなければならないんだよ。それがどんなものでもな」

 

 

 この男が言っていることは間違ってはいない。寧ろ、正論だろう。

 組織というものは人の集団ではあるが、一つの考えの元に集まっている。例えば、時空管理局であれば平和の為などだ。そして、組織にいる異常はその考えに背くことはできない。仮に背いたとしても、それは裏切りもしくは反逆として扱われて組織に追われることになるだろう。

 いくらレルデ・ローラルドが凄まじい能力を持っていようとも、一つの組織そのものを敵に回したら相手にできない筈だ。

 ……――しかし

 

 

「……で、本音は?」

 

「監察役になることで特命隊の仕事を合理的にサボれるからだ!」

 

 

 この男、レルデ・ローラルドという存在はそんなことを考えていない大馬鹿者だ。

 先程まで威圧のある声や障害などと言っていたが、僕はそこまで本気でこの男を障害とは思っていなかった。

 元より、このようなオチがあることは分かり切っていたからだ。

 それでも念の為という形で色々と考えたのだが、やはり先程までの考えは無駄になったようだ。

 結局のところ、僕が特命隊から異動してしまったことで特命隊の仕事が終わらないのだろう。自慢する訳ではないが、僕がいない特命隊は仕事が終わらない。いや、ある意味では始まらないと言った方がいいか。

 特命隊の中でも優秀な者はいるが、部隊長がレルデという時点で仕事が始まる訳がない。

 

 

「まったくだ、お前さんがいなくなったせいで部下達に文句ばっか言われてんだよ」

 

「その言葉だけを聞くと、まるで僕が悪いようだな」

 

「……え? 違うのか?」

 

 

 まるで当然のことのように言ってくるこの男に若干の苛立ちを覚える。

 どうやらこの動く生ゴミは大変な目に合っていかなければ、どれだけ僕に迷惑をかけているのか理解できないのだろう。

 最も、このゴミに対しては一言だけで十分だ。

 

 

 

「……今後一切、貴様の仕事はやらない」

 

 

 この一言を。

 特命隊に所属していた時はこの一言だけで、少しの時間とはいえレルデは仕事をするようになる。先程も言ったように僕がいない特命隊は仕事が終わらない為、僕が仕事をしないということは仕事が終わらないということを意味する。

 その為、仕事面のみだがレルデに対して強く出ることができる。

 実際に特命隊にいた時のこの言葉は絶大的な効果を発揮していた。だから、正直に言えば、この一言でこの話は終わるだろうと考えていた。

 

 

「おう、いいぜ」

 

 

 そう考えていたからこそ、この男の言葉は想定外で僕にしては珍しく一度思考が完全に止まった。

 何だ、どうした?

 この男がそんなことを言うなど明日には槍……いや、隕石でも降ってくるのだろうか。

 

 

「隕石って、それはもう世界崩壊レベルじゃねーかよ。そんなに珍しくねーよ。俺はただ単にお前には頼まないって言ってんだよ」

 

「……“お前には?”」

 

「ああ。どうやら、可愛い後輩が俺の仕事をやってくれるそうだからな」

 

 

 ……何が『可愛い後輩が俺の仕事をやってくれるそうだからな』だ。それが意味するのはお前が僕の代わりに八神部隊長などの知り合いに仕事を押し付けるという意味だろうが。仕事をやらないと言った後の肯定の言葉でレルデに感心するところだったというのに、それどころか面倒な方向に話を持っていこうとしていることに落胆する。

 しかし何故だろうか。不思議なことに今のこの男の言葉を馬鹿だとは思っていない。

 ただ純粋に今の僕が感じているのはこの男を葬らなければならないという使命感のようなものだけだ。

 

 

「シュレンさ~ん? どうして、デバイスを俺の頭に向けているのでしょうか?」

 

「わからないか。それは――貴様を葬る為だ」

 

 

 カチャン! という音がレルデの頭部のすぐ近くから発生する。

 原因、というよりも理由は単純で僕は展開した銃型デバイスの引き金を引いたからだ。もちろん、空撃ちなどではなく魔力を込めての一撃だ。

 反応が鈍い者ならば回避などできず、そのまま銃弾を受ける。しかし、この男はそのような弱者ではない。回避はできないと判断した後に片手を銃先の方へ向けて放たれた魔法弾を相殺させた。

 相変わらずの才能に少しばかり呆れつつ次の攻撃をする。とはいえ、既に仕掛けている。相殺しきれずに残った魔力を操作させ再びレルデを目標として攻撃することだ。

 

 

「……っ!」

 

 

 それに気付いたレルデは身体を横にずらして躱す。

 しかし、そうされるのは予想できていた。僕の目的は移動した後の少しの隙を突くことなのだから。

 既に構えていたデバイスの引き金を引く。

 さすがに身体が崩されている状態では魔法弾を相殺することはできないようで、レルデは障壁を張ることしかできなかった。

 

 

「……っと、さすがに焦ったぜ」

 

 

 とはいえ、障壁は壊れる気配すらなく魔法弾を完全に消し去った。

 やはり、リミッター付きとはいえAAランク魔導師程度の攻撃はSSSランク魔導師には通じないということだろう。

 

 

「マジで殺す気かよ」

 

「安心しろ。殺傷設定ではないということはないからな」

 

「……結局は殺傷設定じゃないか。ったく、相変わらず怖いな」

 

 

 どうやら、この場でこの男を葬ることはできないようだ。

 最も、この程度で死なれてもらっては困るとも言える。少なくても、僕が今までに味わった苦労の三倍分を苦痛としてぶつけなければ。

 最低でも精神を壊して自分から殺してくれと頼まれる程度には痛めつけないと気が済まないな。いや、殺してくれと頼まれたとしても聞いてやる義理はないか。寧ろ、頼まれたことを実戦することなど救いではないか。

 この男には色々と世話になっているから、その程度では申し訳ないぐらいだ。

 きちんと問題がないように実戦するさ。

 

 

「いやいや、何が問題なくなんだよっ!? 怖すぎるぞ、その発想!」

 

「……何を言っている?」

 

「そんな風に首を傾げてもダメだ! 可愛らしいけど、ダメだ!」

 

「僕は男だ。可愛らしいと言われても嬉しくない」

 

「それ以前にお前は毒舌キャラだから可愛いってイメージは崩れる筈……いや、でも、可愛らしい容姿で毒舌っ娘。……新種の良いキャラだ! これで勝つる!」

 

 

 この動く生ゴミは一体何に勝つというのだろうか。とはいえ、大方、僕にとってはくだらないことで部下達と競い合っているのだろう。そんなことをしている暇があれば仕事をしろと何度言ったことか。

 せめて部下達と競い合っているのなら負け犬になればいいさ。

 

 

「オイオイ、俺には応援してくれねーのかよ。何年もの付き合いだって言うのに」

 

「僕にとってはどうでもいいことだからな」

 

「する意味がないってか? まぁ、正論だな」

 

 

 ああ、お前は負け犬にでもなっていろ。

 ……ところで、自然と会話の内容が変な方向に変わっているのは何故だろうか。少し前まではレルデが機動六課に来るという題だった筈だが、何故今はこうも変な題でくだらない時間を過ごしているのだろうか。

 そう言えば、最初に話を逸らしたのはレルデの方だったか。

 

 

「違うぜ。お前が『……で、本音は?』と聞いてきたから話が逸れたんだ」

 

「言っておくが、それはまだ貴様の考えていることを聞いていただけで、関係のない話ではなかった筈だ。寧ろ、貴様が『まったくだ、お前さんがいなくなったせいで部下達に文句ばっか言われてんだよ』と言ったから話が変わったんだ」

 

 

 勘違いの言い掛かりは止めて欲しいものだ。

 さて、この男が無駄な話ばかりをするから時間を大幅に喰ってしまったが、そろそろホテル・アグスタに戻らなければいけないだろう。

 八神部隊長がレルデの存在に気づく可能性があるからな。が、その前に聞いておきたいことがあった。

 

 

「ところでセレンはホテル・アグスタには来ていないのか?」

 

「アグスタに着いてから『少しばかり別行動を取らせて貰うぞ?』とだけ言ってどっか行った」

 

 

 大分、省略されている部分があるが、とにかく来るまでは一緒だったということだろう。

 機動六課に異動してからは会話をしていなければ、顔を見ていないので、少しばかり会って話がしたいと考えていた。しかし、こうしてホテル・アグスタを抜けることはもうできないだろうから、会話ができるのは何かが起こらない限り会話ができるのは彼女が異動をしてからだろう。

 まぁ、どちらにしろ早い内にホテル・アグスタに戻るべきか。

 

 

「会話が終わったんだ。戻るぞ」

 

「へいへい。仰せの――……来たか」

 

 

 突然、視界に入っている木がなぎ倒された。

 木が倒された音と共に少しばかり聞き慣れた機械音も僕達に届く。

 先程まであった雰囲気から一変させて戦闘ができるように周りを警戒する。レルデも同じようで少しだけ真剣な表情をしている。

 機械音の原因――ガジェットドローンは僕達に気づいていないものの、本格的に遊んでいる場合ではないようだ。

 予想よりも早くガジェットがホテル・アグスタに向かっている。

 しかし、いくらなんでもこれは早過ぎる登場だ。

 話によればレリックと誤認してホテル・アグスタに向かう可能性があったと聞いている。だが、これではまるで誤認などではなく目的地がこの場所であるかのように思えた。もちろん、誤認して向かって来ているだけかもしれないが、僕にはそうは思えなかった。

 とはいえ、考えるのは後にして今はガジェットを破壊することを優先させる。

 

 

 

「今ここで数を減らしておいた方が効率がいいか……」

 

「俺はすぐに中に戻ることをお勧めするぜ」

 

 

 僕の言葉をレルデは却下した。

 レルデの言葉にしては珍しく、目の前に戦闘ができる相手と場所があるにも関わらずそう言った。

 この男はシグナム副隊長と同じく好戦的な性格をしている。しかも、シグナム副隊長よりも重症で戦闘狂と言っても過言ではない程だ。そんな男が戦闘ができる条件が揃っているにも関わらず戦闘をしないとは。

 ある意味、仕事をするよりも珍しいことだ。

 

 

「お前は俺をバトルマニアと思うな。毎回潰す訳じゃないさ」

 

「……成程」

 

「それにお前の仕事は内部の警備だろうが。だからお前は自分が言ったようにとっとと戻れ」

 

 

 僕としてはここでガジェットドローンを破壊した方がFW陣の負担が軽くなる上に効率が良いと思ったのだが、確かにここでの行動は僕の任務外である為にやらなくてもいいことだろう。仮にFW陣が何かしらの失態を犯しても、シグナム副隊長とヴィータの二人が庇ってくれることだろう。

 レルデの転移魔法によりホテル・アグスタ内部に戻った後、すぐに通信でガジェットドローンが出現したことを伝えられた。どうやら、僕達が見たところだけにガジェットドローンがいたという訳ではないようだ。

 

 

「僕は八神部隊長のところに戻る」

 

「ま、頑張れ。俺はニートしてるから」

 

 

 レルデとの最低限の会話をして別れる。

 いつもとは違う服装である為、少しばかり動き辛いというのがあるが、与えられた仕事はミスすることなく遂行する。 

 誰にも負担を掛けず、迷惑を掛けず、失敗をせず、完璧に遂行させる。

 とはいえ、今回の任務でも僕は目立ったことはしないのだろう。

 外部の防衛ラインが破られる可能性など万が一にもないのだから。だからといって油断はしていない。油断をした瞬間に失態を犯す可能性があるからだ。敵がいるのなら最後の一機が破壊されるまで油断はしていけない。

 

 

「おっしゃぁ! オラ、ワクワクっすぞ!」

 

 

 …………最も、それが当てはまらないような人物がいるのも事実だ。

 

 

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