魔法少女リリカルなのはstrikers~自称一般局員の少年~ 作:ウェルト
試しに行馬変えてみました。違和感あるようでしたら戻します
現在、機動六課FW陣は先程までの警備とは違い、ホテル・アグスタに向かってきたガジェットドローンと交戦中だ。
八神はやての守護騎士達の活躍によって数が減っていくガジェットだが、守護騎士達だけでは全てのガジェットを殲滅することはできず機動六課FW陣もガジェットと交戦している。
襲いかかってくるガジェットは訓練や前の戦闘のものとは別のもので行動パターンが違っていた。その為、こちらの攻撃が中々当たらず、どちらかというとFW陣はガジェットドローンに押され気味だった。
しかし、元々の任務はホテル・アグスタの護衛。
FW陣が全機を落とす必要はない。厳しい戦いではあるが、守り抜き通せばいいのだ。
『防衛ライン、もう少し持ち堪えて! あと少しでヴィータ副隊長が戻って来るから!』
機動六課のロングアーチもそのように考えていた。
ロングアーチは別にFW陣の実力を信用していない訳ではないが、現場の状況から判断してそう発言した。この場にシュレン・ガルディンはいないが、仮にいたとしたら間違いなくロングアーチと同じことを言う。
戦いにおいて焦りは禁物なのだ。
しかし、そのように考えない者が現場にはいた。
「守ってばっかじゃ行き詰まります! ちゃんと全機落とします!」
オレンジ色の髪をしている少女。ティアナ・ランスターである。
彼女は訓練の時や今までの戦闘では上手くやっていた。実際に隊長達もそのように判断しているが、それはあくまでも客観的に見た場合だ。
ティアナ自身はそのように考えていない。
自分の周りにはスバル、エリオ、キャロと言った才能持ちの魔導師がいる。その者の方が自分よりも上手くやっていた筈だと考えている。とはいえ、ティアナは自分がミスをしたとは思っていない。
ある程度は上手くやっていたと思っている。だが、目立った活躍はしていない。
『ティアナ大丈夫なの!? 無茶しないで!』
「大丈夫です。毎日朝晩、練習してきてんですから……
エリオ、センターに下がって。私とスバルのツートップで行く!」
目立っていないという事実が彼女の心に焦りを生ませている。
ティアナ・ランスターには心に誓っていることがある。それは証明することだ。ティアナの兄であるティーダ・ランスターの……いや、ランスターの弾丸を証明することだ。
かつて憧れていた兄を侮辱した奴等に証明してみせる。
「スバル! クロスシフトA行くわよ!」
「了解っ!」
スバルに指示を出すと同時にティアナは前線に駆け出す。
その間にスバルはガジェットを誘導させて、ティアナの魔法が完成するまでの時間稼ぎをする。
決して余裕がある訳ではないが、自分の相棒を信じての行動だ。
スバルの行動を見てティアナはカートリッジを四発ロードさせ、自分の周りに魔方陣が浮かび次々と魔法弾が構成されていく。
(証明するんだ……特別な才能や、凄い魔力が無くても)
ロングアーチからティアナの行動を止めさせるような言葉があるが、そんなものは今のティアナには聞こえない。
今はただガジェットを破壊するということしか考えていない。
(一流の隊長達がいる部隊でだって……どんな危険な戦いだって!)
クロスミラージュをガジェットドローンに標準を合わせる。
ティアナでは制御しきれない魔力が自分自身の身体に負担を掛け集中力が少し乱れる。しかし、それすらもティアナは無視した。
この判断は間違っていないと判断して。
「私は、ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって!」
ティアナのその言葉と同時に無数の魔法弾が放たれた。
魔法弾はガジェットを貫いて機能を停止、破壊している。しかし、ガジェットの破壊に反比例していくように弾の精密度が落ちていく。それもその筈で、現在のティアナの実力ではカートリッジを四発も使用した状態のクロスミラージュを完全に制御するということができないからだ。
それでもティアナは撃ち続けた。
証明する為に。ランスターの弾丸が的を撃ち抜けることを証明する為だ。だが、精密度を失った状態で放った魔法弾はガジェットから大きく外れて相棒のスバルの背中に向かって進んだ。
「っ!? スバルッ!」
咄嗟の判断で魔法弾を消そうとするが、既に放ってしまった魔法弾はどうすることもできない。仮に、それができたとしても圧倒的に時間が足りなかった。魔法弾はスバルの目の前まで来ていた。
ティアナが何を思ったところで何もできず、ただ見ていることしかできなかった。
しかし、時間が経っても魔法弾はスバルを直撃することはなかった。
スバルに直撃するかと思われていたティアナの魔法弾は何故か二つに分断されていた。分断されたことによって魔法弾は身体の隣を素通りした。
その現実を理解できた時、目の前に純白の刀を持った女性の存在に気づく。
「……え?」
ティアナが驚き、声を上げた理由は二つある。
スバルに直撃すると思われていた魔法弾が切り裂かれたことだ。魔法弾が無力化されるのは考えてもいないことで誰かが助けてくれるとは思わなかった。しかし、正直に言えば、それだけの理由ではここまで驚きはしなかった。
どちらかというと、その場合は驚きよりも感謝の念が出るだろう。
最も、それは魔法弾を切り裂いた者の正体が自分の見知った顔だったという点を除けばの話だ。
「……ふむ」
綺麗に輝いている銀色の髪に、鋭い視線の金色の瞳。
ティアナはその人物の名前を即座に出す。
短い時間ではあったが、色々なことを教えてくれて自分自身を導いた人。
そしてシュレン・ガルディンと同じく、ティアナ・ランスターにとってのもう一人の憧れの人。
「久しぶりじゃな」
その声は背後から聞こえた。
少し前まではスバルの隣にいた筈なのに気付いた時には背後にいる。そのことに驚くが、すぐに冷静になる。
ティアナもまた、彼女のことを“強者”という認識で見ているからだ。
「――久しぶりじゃな、小娘」
シュレン・ガルディンと共に行動をしていた女性――セレンを。
ティアナとしては久しぶりの再会などを喜びたかったところだ。最も、状況がこんな状況ではなかった場合の話だ。
セレンが纏っている雰囲気がそれを許さない。
久しぶりに感じる威圧に膝が震えるが、出会った時に比べればまだマシな方である。
「……お主はそこで見ておれ。正直に言うが、今お主は使い物にならん」
その言葉は否定したかっら。しかし、否定することは許されなかった。
ティアナは彼女の目の前ではやってはいけないことをしてしまったのだから。昔に約束したことを結果的に言えば破ってしまったのだ。
そんな彼女はティアナから視線を外して、ガジェットの方へと向ける。
「妾を倒したいのなら、最低でもこの10倍は持ってこい」
その言葉と同時にガジェットに対して刀を上に投げ飛ばした。
一見すると何をやっているのかと思われる行動だが投げた刀は突然視界から消え、気付いた時にはガジェットに突き刺さっていた。
やったことは単純で、ただ投げた刀をガジェット内部に転移させただけだ。言葉にしてみればそれだけだが、そんなことが実際にできる者など滅多にいないだろう。それこそ天才と言われる程の才能がなければ。
「……案外脆いものじゃな」
貫かれたガジェットは爆発音と共に破壊され、貫いた刀は吸い寄せられるようにセレンの手元に戻った。すぐにガジェットドローンのアームが襲うが、どれも最低限の動きだけで躱す。
そして、刀を再び握ったセレンはガジェットのアームを切り裂いた。
ガジェットの堅い筈のアームをいとも容易く。
「数が多いのに妾一人にやられるとは……これでは眠気覚ましにもならん」
戦闘中であるにも関わらず呑気に呟いた。
油断している訳ではない。しかし、余裕を持っているのは事実だ。
既にガジェットの数は半数を切っている。彼女にとって、この程度の戦力は最早警戒する必要はないのだ。
「……これなら、わざわざ妾が来る必要は無かったかもしれんの」
そう言うが、もしセレンが来なかったらミスショットしたティアナの魔法弾はスバルを直撃していただろう。最悪の場合、魔法弾の直撃により死ぬ可能性もあった。後遺症が残る可能性もあった。
それなのに彼女はそう呟いた。
当然、彼女自身もそのような考えがない訳ではない。しかし、まるでどうでもいいかのように思考を捨てた。
「まぁ、よい。今は鉄屑を破壊することを第一に考えようかの」
鉄屑というのはガジェットのことを指している。
ガジェットを塵と同じように例えるところから考えても、彼女は油断しているようにしか見えないだろう。実際に、今、この戦闘を目撃している者はそう考えていたが、同時に彼女が只者ではないと確信する。
そんな彼女はそう思われていることを知らずにガジェットに対して刀を振るう。しかし、その斬撃は躱された。
「……反応速度を上げたか」
彼女の言うようにガジェットの行動が変わった。
先程までは機械だからこそのワンパターンの動きであったが、今は誰かが操っているような動きをしている。しかし、それでも彼女は警戒のレベルを少しも上げずに、寧ろ相手の戦力が上がるのは退屈凌ぎになると考えていた。
多少の戦力が上がったところで『自分自身に破壊される』という結末は変わらないからだ。
「妾に壊されると言う運命は変わる事はないのじゃ」
彼女にとって完全に破壊するまでの過程などが綺麗で有ってもなくても、どちらでも構わないのだ。ただ彼女には勝利の二文字さえあれば、残りのことはどうでもいい。それまでの過程に『綺麗』という言葉は必要ない。
だからこそ、相手が格下と判断した時には戦闘中でさえ”遊ぶ“。
最初の攻撃で刀を投げたのはそういった理由がある。最も、剣術を習っている彼女にとって刀を投げることはやってはいけないことだ。
「……そう考えたら不味いかもしれんの。このことはあやつの耳にも入るじゃろうし」
冷や汗を垂らしながら言った。
それに加えて少しだけ顔は青ざめて震えているように見える。その表情は普段は見ないようなもので、凛々しい彼女からのギャップもあり可愛らしいと思えるものだった。
とはいえ、それは戦闘中ではなかった場合の話だ。
「それならば遊んでいる場合ではないか」
瞬間。ガジェットドローンに一つの線が浮かび上がり、それに沿っていくようにガジェットは真っ二つに分断された。
やったことは単純なことで、ただ刀を振るっただけだ。
たった一つの行動でも、それは極めれば奥義となる。彼女の斬撃は既にそのレベルにあると言ってもいいだろう。
「……正直に言えばまだ何もやっておらんが、終わりにしようかの」
真っ二つに分断されたガジェットは重力に従って落ちていくが、セレンはそれを足場としてさらに一歩踏み込み跳ぶ。
セレンはシュレンと同じように空を飛ぶことはできる。しかし、今回は飛ばないでガジェットと同じように落ちることにした。
その途中で上段の構えを取り、ガジェットの位置を確認する。
刀に魔力を込めて、魔力が収まり切らずに漏れていくことを確認すると、セレンは力に任せて刀を振るった。
刀に溜められていた魔力が放出され魔力がガジェットを押し潰していく。
圧力に耐え切れなくなったガジェットは潰され、爆発音と同時にガジェットの機能が停止した。
「ま、少しは眠気覚ましにはなったかの?」
着地してガジェットの残骸を見て呟いた。
先程と同じく油断しているように見えるが、完全に油断している訳ではない。彼女にとってこの戦闘は遊びと同じようなものだが、油断して致命的な傷を負うなんて無様は見せる訳にはいかない。
高町なのはが失敗した時のように、怪我を負ってはいけない。
「……さて、と」
一応という形ではあるが自分の戦闘は終わった。
しかし、これからやらなければならないことがある。正直に言えばやらなくてもいいことなのだが、やらなければ気が済まないことだ。
「……ティアナ・ランスターにスバル・ナカジマ二等陸士」
名前を呼ばれて震えるティアナ。
口元は誰もが惚れ惚れする程の良い笑みなのだが、目元はそうではなく纏っている雰囲気は恐ろしいものだった。
とはいえ、スバルはその雰囲気に気づかない。彼女にとってセレンとは初対面で先程始めて顔を見たのだ。それ故にセレンが不機嫌であるということに気づけなかった。寧ろ、先程の戦闘を見て凄い人だと思っていた。
「いや、スバル・ナカジマ二等陸士には用事はないか。まぁ、よい」
とりあえずは標的をティアナだけに絞って歩いていく。
ティアナからしてみれば殺気や敵意がある訳でもないのに恐怖心だけがあった。現にティアナは先程と同じく震えていた。
「ティアナ。先程の行動は何じゃ? どのような目的があった?」
「…………わ、私は、ガジェットを破壊しようと」
「成程。つまり、ガジェットを破壊するついでに仲間まで破壊しようとしたのかの。自分の実力を正確に見積もることも出来ずに」
「ち、違いますっ!」
「何がどう違うのじゃ? 事実だけ言えばその通りじゃろうに。
まぁ、妾は説教をするという気分では無いから見なかったことにするが、次に馬鹿な行動を妾の前でした場合――――潰すよ?」
知らない口調に恐怖心が倍増する。
このまま彼女と会話をしていると殺されてしまうのではないかとさえ考えた時、不幸か幸いか赤いバリアジャケットを纏っているヴィータが到着した。
ロングアーチからティアナの行動を伝えられ急いでこの場に向かってきたが、スバルとティアナの無事を確認できて一安心した。伝えられた情報によると第三者の介入があって二人は無事だったとのこと。自分の部下の暴走を止めてくれたことに感謝しようと思い、ヴィータは彼女のことを見た。
「……っ!?」
八年前、あの病院で一度だけ顔を合わせただけだというのに、ヴィータは彼女の顔をよく覚えている。覚えようと意識したことはなかったが、それでも忘れなかった。否、忘れることができなかった。
この女の言葉でどれだけ自分が悩んでいたことか。
「…………」
できれば今すぐにでも会話がしたい。しかし、それよりも先に自分の部下の失態を叱ることを優先する。ロングアーチと繋がっているのはティアナ達だけではない為、この場で下手に会話をしたらその会話が記録されてしまうからだ。
八年前の出来事はなのはには知られる訳にはいかないのだ。
少しの時間が経ち、ティアナとスバルを叱った後ロングアーチとの通信を切った。
「……で、何でテメェがいるんだ?」
ロングアーチとの通信を切り、ティアナもスバルもなのはの元へ向かわせた。
実質的に二人きりの状況だ。
だから、この状況ならば会話ができるだろう。
「何故、妾がいるのかと聞かれてもな。事情を八神から聞いておらんのか?」
「……何でお前がはやてのこと知ってんだよ」
予想外の名前が出てきて思わず動揺する。
何でコイツがはやてのことを知っているのか。しかも、八神と呼び捨てにするところから二人は知り合いなのか。
「……そう言えば、まだ妾はお主に自己紹介をしてなかったの」
言葉を忘れていたかのように彼女は言う。
その行動が少しだけヴィータを惑わす。そもそも八年前は自己紹介をするつもりすら感じられなかったのだ。それが何故今になって自己紹介をするのだろうか。
しかし、その理由はすぐに理解できた。
「妾は時空管理局本局特命隊所属セルス・ローラルド二等陸佐じゃ。以後よろしく頼むぞ?」
「なっ!? ……お前、シュレンと同じ部隊かよ」
「ああ。驚いたかの?」
セルスはヴィータの反応を見て愉快そうに笑った。
このように自己紹介をしたら彼女はこのように驚くのだろうと考えていたが、自分の予想とまったく同じとは思わなかったのだ。
これが笑わずにいられるか。いや、笑うしかなかった。
「そして妾は部隊長のレルデ・ローラルドの命令で機動六課に異動することになった」
「……そうかよ」
「まぁ、妾に聞きたいことが沢山あるじゃろうが、詳しいことは後日じゃな」
「その時は逃げんなよ?」
「もちろん。正確には機動六課に異動する時点で逃げられないと言った方がいいの」
愉快に笑う彼女の姿を見て若干警戒のレベルが下がったものの、やはり八年前のこともあり完全に信用できる訳ではない。しかし、八年前のことがあったとしても、それ以外のところで彼女に対する警戒心を上げていただろう。
それは彼女の正体に関することだ。
別に彼女が管理局に所属している自分よりも階級の上の者だったとかそのようなことではない。
ヴィータにとって、八年間という時間は長いようで短い。
闇の書、夜天の魔道書として生きてきた時間としては圧倒的に短いが、八神はやてが主となってからの時間としては長いものだ。
そして、人間にとって八年という時間は長く感じて、その間にも様々な出来事が起きるということを理解した。
色々なものが目の前で変わっていくものだと理解した。
それなのにも関わらず目の前の女は。
(……人間なのか? こいつは)
八年という時間が経っているにも関わらず、彼女の容姿は八年前と出会った時とまったく同じだった。
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