魔法少女リリカルなのはstrikers~自称一般局員の少年~ 作:ウェルト
久しぶりということもあって文章がぐちゃぐちゃです
セレンが今日から正式に機動六課に所属することになる。
ホテル・アグスタとの戦闘の後、正式に八神部隊長からそう伝えられた。ホテル・アグスタでレルデと別れた後に八神部隊長とレルデが出会いそのように伝えられたらしい。
戦闘は特に何事もなく終わった。僕が行なったことと言えばただの後片付けと言っていいだろう。
FW陣と副隊長の活躍によりガジェットはホテル・アグスタ内部には侵入することはなかった。仕事を忠実にこなしたとはいえ、彼女達の実力を考えるとそのぐらいのことは大したものではないのかもしれない。
しかし、話によればホテル・アグスタでの戦闘でランスターがミスショットをしたとのこと。幸運なことにミスショットが原因で何かが起きたということもなかったと聞いているが、あの時第三者の介入がなかったらどうなっていたかは不明とのこと。
「……狙ってたかのようなタイミングだな」
特に、第三者――セルス・ローラルドの介入によりFW陣が担当していた場所のガジェットは破壊され尽くされた。
ミスショットが起きた時に登場するといい、その後の戦闘といい、彼女の登場はレルデなどが仕組んだものなのかとさえ思える。レルデが戦闘できる場面を目の当たりにしても戦闘をしなかったのは実はそうのような理由があるのではないのか、と。
まぁ、一々そんなことを気にするべきではないか。
それよりも気にすることはランスターのミスショットだ。
詳しいことは聞いていないが過信のようなものが原因だと聞いている。しかし、正直に言わせてもらえばそんなことは論外だ。過信するのは別に構わないが、それが原因で暴走気味の行動を取るということは指揮する価値がない。
直接見ていた訳ではないが、ロングアーチからはヴィータが到着するのを待てと伝令があった。それならば最優先にやることはランスターが指揮を取り、トップ二人の能力を生かして運がよければ破壊、悪くても時間稼ぎができるような状況を作るというのがランスターのできることだった筈だ。
それなのにも関わらず、ランスターが先頭に立ちガジェットを破壊しようとした。
……少し前にランスターに指揮の訓練を受けさせるという話があったが、どうやらそれはまだまだ先のことになりそうだ。
原因である過信のことも心当たりがないと言えば嘘になる。
「……理由は前に言ってたことだろう」
ランスターと機動六課で会ってから彼女は『凡人な自分がこんなエリート部隊にいてもいいのか?』とそんなことを聞いてきた。そのことから察するに、今回のミスショットはそのことを意識したものかもしれない。
例え、凡人であろうと、才能を持っている者と同等に戦えるのだと思えるように。
正直に言えば、ランスターがこのような考え方だけをしているのなら、彼女の考え方を理解できる。僕も特命隊や機動六課の中ではそこまでの才能を持っているという訳ではないからだ。
客観的に見れば僕がランスターに何かを言った方が良いのかもしれないが、実際のところ効果は全くない。何故ならば、ランスターからしてみれば僕は“非凡人のエリート”のような存在らしいからだ。
「僕など普通にいる一般局員Aという存在位置だというのに」
特命隊の部隊長代理になったことも、機動六課のスターズ副隊長になったことも、管理局に関しての全ての出来事は僕の知人が存在したからこそ成り立っていてる。部隊長代理に関して言えばレルデ・ローラルド。スターズ副隊長に関して言えば高町なのは。
そのように僕が今の立ち位置にいるというのは実力のみで決められている訳ではなく、僕の知人を通して見ているに過ぎない。僕の知人には優秀な魔導師が多いということから起きた偶然の結果だ。
しかし、ランスターはそれを純粋な実力だと勘違いしている。
「……本当に摩訶不思議だな」
本当に不思議に思う。
しかし、それは仕方のないことだろう。人間というのは自分にはないものを特別と思い込み欲する。今のランスターが欲している物。それは“才能”や“実力”だ。彼女が人間である限り、そう考えるのは当然と言っていいかもしれないが、僕からしてみれば無意味なことだ。
人には人の価値観があり、一人一人の世界がある。
例えば、僕は辛い食べ物は好物だが、甘い食べ物というのは苦手だ。しかし、僕とは逆に甘い物が好物で、辛い物が苦手というものもいるだろう。これは単なる味覚の違いだが、これだけでも価値観の違いが生まれる。大抵の人間は好みのモノを価値のあるものと認識するからだ。逆に嫌いなモノは価値の薄いものと考える。
もちろん例外も存在するが、それでも一般論で言うのなら大体は当てはまるだろう。
結局は僕が正しいと思うことを言ったとしても、それは他人からしてみれば必ず同意してくれるとは限らないということだ。ランスターに言うつもりだったことも、ランスターからすればただの迷惑なのだろう。
だからこそ、僕が言ったところで大した意味を持たない。
とはいえ、言わないという訳ではない。とある事情から言わなければならないのだ。
「……」
無駄なことを考えていると仕事の効率が少し落ちるもので、いつもよりも時間が経っているように感じられた。書類仕事の一部が終わり一段落を付ける為にまとめた書類を部隊長室に向かうことにする。
部隊長室に向かう最中にランスターのことを考えていたが、彼女に伝えるべき言葉が決まらないまま部隊長室に着いてしまった。
『――――』
部隊長室からセレンの声が聞こえた。
先程も言ったようにセレンは今日から正式に機動六課に異動することになっている。その為、彼女は機動六課の隊長陣にでも挨拶をしていたのだろう。
僕はデスクワークややるべきことがあり彼女を迎えることはしていなかったが、問題なく機動六課に来ることができたようだ。
『まぁ、シュレンにでも頼めばいいじゃろ』
今度ははっきりと彼女の声が聞こえた。
話しているのは恐らく特命隊の時と同じく書類関係のことだろう。
別に少し前と変わらない程度の量だろうから問題なくこなせる。特命隊の元凶とも言えるレルデがいないだけ随分と面倒がないものだ。
部隊長室に入り、八神部隊長などが僕に視線を向けるよりも先に僕は答えた。
「……別に構わないが、時間がかかるぞ?」
まだ仕事が終わった訳でもない上に考えておかなければならないこともあるからな。
と、そのように思った時だった。
「――シュレン君ってそこまでできるの?」
なのはが驚いたようにそう聞いてきた。
……別に疑問に思うようなことだろうか。
確かに、デスクワークというのは量があると片付けるのには苦労する。しかし、慣れてしまえば量が多かったとしても片付けることは可能だろう。
最も、本来はそこまでの量を僕個人に行わせるというのはおかしいことなのだが……。
「できるも何も、時間があれば誰でもできるだろう?」
別になのはもデスクワークの処理速度は遅い方ではない。寧ろ、教導と両立させているわりには速い方だと考えている。もしかしたら、なのはは僕と比べているのかもしれないが、それは特命隊でデスクワークを片付けていた結果だけあって速いだけだ。別に特別と思われるようなことでもあるまい。
しかし、そのような考えを無視するかのように驚いたような反応をされた。
「わ、私にはちょっとできないかな?」
「だから言ったじゃろう? こやつは自分で自分の能力を理解できていないだけなんじゃよ」
「シュレン君は常識人やと思ってたんやけどなぁー」
…………いや、別に驚かれるだけならいいのかもしれないが、何もここまでの反応はしなくてもいい筈だろう。八神部隊長に至っては僕が作業を効率よく行えるだけなのに非常識人扱いされた。
それに僕から正直なことを言ってしまえば、部隊長室にいる者全員は非常識人だと思っているのだがこれは言わない方がいいだろうか。ここにいるのは八神部隊長、高町なのは、フェイト隊長、セルスの四人だ。シグナム副隊長とヴィータは仕事の関係でここにはいないが、あの二人も僕は非常識人だと思っている。
少なくても、ここにいる者は全員一般人ではないと考えている。
何せ、ここにいるのは全員(僕の事は除く)が管理局の中でも特に優秀な魔導師だ。そんな者達が常識人である訳がない。
「それよりもセルス。僕のことを非常識人だと思っていたのか?」
「何を今更。妾がお主のことを常識人と思ったことはないぞ?」
「……成程。少しばかり話の必要があるとみた」
長い時間の付き合いだったが、そのように思われていることなど知りもしなかった。
セルスやレルデより僕は常識人だと思っていたんだが、彼女の考えは違うらしい。それなら疑問に思うのだが、Sランク以上の魔導師で仕事は気分でしか行わず、自分勝手な行動ばかりを起こし、起こした迷惑を僕に擦り付ける者を常識人だと思えるだろうか?
少なくても、僕はそんな者を常識人と認めたくない。というより、認めていないから非常識人だと思っている。
「生憎じゃが、そう思われたところでお主が非常識人であることは覆らん」
……もしかしたら、特命隊の者達にもそのように思われたいたのだろうか。今度、特命隊に行く時はそのことを聞いておこう。
セルスと会話をしていると時間が予想よりも経っていたことに気づく。
久しぶりの会話で気分でも高まっていたのだろうか。少しばかり慣れないことだったので驚いた。
この後にもやるべきことが多くある為、この辺りで退出しなければならない。
「それでは八神部隊長。この後にもやるべきことがあるので失礼します」
まだやるべき書類仕事などが残っている為に部隊長室でそこまでの時間を潰す訳にはいかない。書類は機動六課の他にも何故か特命隊のものが混じっていたが、気にするようなことではない。
やるべきことと言っても、書類仕事の他にももう一つある。
正直に言えば、僕はこんな面倒なことをしたくはないし、僕のやるべきことではないのだろうが、それでもやらなければならない理由がある。
本当は例外を除く他人がどうなろうとも僕にとってはどうでもいいことだ。
僕は今までそのような考えで生きてきて、これからも変えることはないだろう。しかし、今回ばかりは例外で動く。
そう。約束してしまったものは仕方のないことだ。
「……まったくあの人も面倒な約束を残してくれたものだな」
◇
「時空管理局特命隊から来たセルス・ローラルド二等陸佐じゃ。敬語は使わんで良い。普通に話してくれ」
特に緊張した様子もなく機動六課の隊長陣に自己紹介をするセルス。
特命隊にいた時と何も変わらないような口調と態度で、知らない者なら失礼と思う者もいるのかもしれないが、セルス・ローラルドの階級は八神はやてと同じということもあり気に障るようなことではない。
寧ろ、シュレンと同じ部隊でレルデ・ローラルドの義理の妹という肩書きを持つだけあって気を締める者が多い。
特に高町なのはは緊張した様子でセレスのことを見ている。
「セルスさんは私が昔からお世話になってる人で、先輩……じゃなくて、レルデ・ローラルド少将の義理の妹なんよ」
「八神の言う通りレルデの妹じゃが、できれば妾をそのような認識で見て欲しくはない。妾をただの同僚のようなものと思って普通に接してくれ」
「いやいや、セルスさんをただの同僚と見るのは無理やって」
「……そんなものかの? ここはエリート部隊じゃろうに」
はやてとセルスの会話を聞いて、なのははよくそこまで親密に会話ができるものだと思った。昔からの付き合いということもあり初対面に比べれば緊張する要素もないと思うのだが、少なくてもここまでの会話ができるようになるにはそれなりの時間がかかるだろう。伝えられている情報はシュレンと同じ部隊でレルデの義妹であるということ以外には、相当優秀な魔導師とだけしか伝えられていない。
容姿も伝えられていない為、なのはがセルスを見たのは初めてだ。
シュレンは特命隊に所属していた時はいつもこんな美人と行動を共にしていたのかと少しだけ思うことがある。
シュレンと会話をしてセルスという人物は伝えられていたが、少なくても話に聞いていたセルス・ローラルドという人物がここまで美人だとは聞いていない。
「ん……妾に何か言いたいことでもあるのか? 高町なのは一等空尉殿?」
「え、えっと、シュレン君とはどれくらい行動を一緒にしていたのですか?」
思考を誤魔化すようなことしか言えなかった。
「そうじゃな。妾はシュレンよりも階級は高いが、特命隊での扱いはシュレンの部下のようなものじゃったし、お主が考えているよりも行動を共にしていたとも思うぞ」
それと――と彼女は付け足す。
「先程も言ったが階級が上だから、年上だからという理由で敬語を使うという概念は排除しろ。仮に敬語を使うのであれば、先に妾自身が尊敬に値できる人物かどうかを判断してからじゃな。形だけの敬語など無意味だ」
確かに、出会った人物が年上であろうと何の疑問も持たずに普通に会話するような雰囲気を持っていた。レルデ・ローラルドが持っているように、彼女も一種のカリスマ性のようなモノを持っているのだろうか。
「ふむ。少し上から目線で喋り過ぎたか? いやいや、済まぬな」
「謝らなくても平気やよ? セルスさんの言ってることは間違ってない訳やし」
「そうか。そう言ってくれると助かるぞ」
そう言って彼女は笑った。
正直に言えば、シュレンと同じように行動していたと聞いて、このような表情を見せることはないと思い込んでいた。シュレンが表情を見せたことはないと言っても良い程なので、必然的にセルスもあまり笑わないような人物だと思っていたのだ。
最も、最初の自己紹介の時からシュレンとは違うタイプの人であることは理解できていた。
「部隊の案内とかしてもらいたいと思うが、その前に少しばかり身体を動かしたいと思うぞ」
それが意味するのはつまり訓練もしくは模擬戦のようなものをしたいということだろう。
この場にシグナムがいれば彼女が自ら挙手した可能性があるが、シグナムはここにはいない。
なのはは自らセルスと模擬戦をやろうとは思えなかった。
実力がどのぐらいのものなのか知らないが、少なくても緊張している自分ではあまり意味がないと思えたのだ。
「……まぁ、シュレンにでも頼めばいいじゃろ」
それに気付いたのか、セルスは短い溜め息をついて言った。
「――別に構わないが、時間がかかるぞ?」
突然出てきた声の方向を向くと、そこには書類を持ったシュレンがいた。
相変わらずの感情を感じさせない瞳だったが、少しだけ退屈そうなものを感じられた。
何時から聞いていたのかは分からなかったが、即答で答えたところから考えるとほぼ最初から聞いていたと考えていいだろう。つまり、聞いていた上でそのような返事をしたということになる。
それが意味するのはセルス・ローラルドとの模擬戦ができるということだ。SSSランク魔導師の義理の妹という肩書きだけあって弱い筈がないというのに、シュレンはそのように答えた。
もしかしたらシュレンの実力の秘密はそこにあるのではないだろうか。
魔力量こそ多くないものの、判断能力や反射能力は特命隊の中で過ごした濃密な時間があったからではないか。
それに加えて特命隊にはレルデ・ローラルド少将というSSSランク魔導師もいる。寧ろ、そのような濃密な時間を過ごさない訳がないのだろう。
もしかして自分は思っていたよりも凄い人物と一緒にいたのではないだろうかとさえ思えてきた。
「シュレン君ってそこまでできるの?」
だとしたら本当に自分よりも優秀な魔導師ではないのだろうか。
とはいえ、なのははシュレンよりも能力で勝っていると思ったことはない。八年前のこともあり、どちらかという自分の方が劣っていると考えているくらいだが、この言葉はそれを確信させるようなもののように感じられた。
再会してから気づいたことだが、シュレンという男は自分の能力の高さに気づいていない。普通ではできないこともやれば誰でもできるといったように認めようとしたことはなかった。
「できるも何も、時間があれば誰でもできるだろう?」
そう。このような言葉ばかり言う。
その事実がどれだけ驚くべきことなのか理解できていないかのように。いや、実際に理解できていないのだろう。
彼は、自分のことには無関心過ぎる。
「わ、私にはちょっとできないかな?」
「だから言ったじゃろう? こやつは自分で自分の能力を理解できていないだけなんじゃよ」
「シュレン君は常識人やと思ってたんやけどなぁー」
常識がないというよりは自分が普通であると思い込んでいると言った方が正しいだろう。そう考えれば非常識であるというイメージは少しは変わるのだろうが、少なくてもこの部隊長室にいる者は全員そう考えられなかった。
元よりシュレン・ガルディンという人物は機動六課において変わった者として見られているというのも原因の一つだ。
「それでは八神部隊長。この後にもやるべきことがあるので失礼します」
その後もシュレンは少しズレている人であることに関しての会話が続いたが、まだやるべきことが残っているということでシュレンは先に退出した。
あれだけの量を処理していたというのにまだやるべきことがあるというのだろうか。自分もスターズ隊隊長ということもあり、他の隊員に比べれば多い方だがシュレンの量は異常とも言える。それに加えて八年前の自分とは違い無理をしているようには見えない。最も、自分が無茶をしたのはデスクワークではなかったが。
しかし、それでもシュレンが自分よりも凄い人物であるという考えは否定できなかった。
ほんの少し勘違い要素を入れてみましたが、シュレンみたいに思考がズレてるやつにはあまり意味ないかなー?
次回も遅れます。