魔法少女リリカルなのはstrikers~自称一般局員の少年~ 作:ウェルト
今回の話はなのはが微妙に性格が変わってるかもです。
ヴィータとの会話を終えて部屋に戻った僕は設置されているベッドに横になった。
今日一日で色々なことがあった。
レルデから異動命令を出され、なのは達と再会して、ヴィータからセレンのことを聞いた。
こうも沢山の出来事があれば、特命隊にいた時とは違う意味で疲れる。特命隊では隊員達と上手く馴染めていなかったことと書類仕事が多かったということで疲れていた。機動六課では僕の過去に関することで普段なら考えないようなことを考えて疲れている。
別に、機動六課に来るのは失敗だったとは思わない。
いつかはこの問題に対面することになっていた。それが少し……予想よりも早くなっただけのことだと思えば良い。
「……ヴィータはセレンと会話をしたのか」
セレンの責任と言うつもりはないが、そのせいで彼女は僕に関することを知った。
八年前のあの時に彼女を庇ったことで力が扱えなくなったことを。厳密に言えば少し語弊のある言葉だが、それでもなのはが知れば間違いなく自己嫌悪に陥ることだろう。
僕は彼女のその姿を見たくはない。見させない。
「それにしても、セレンは予想以上の行動をしたな」
先程の会話でヴィータがセレンに出会ったことは聞いた。
会話の内容から、彼女がセレンとどのような会話をしたのか大体は想像できる。そして、感想を一言で言うのなら予想以上だ。
そう言えるのは、セレンがなのはを潰そうとしたかもしれないからだ。
ヴィータはセレンに出会って少しの時間だけ会話をして、僕のことを聞いた。
言ってみると少ないのだがセレンという人物を知っている僕からしてみれば、これは悪意あっての行動だと思える。
このように考える理由として、第一にセレンはなのはには事実を言わずヴィータに話したことだ。彼女は「アイツはなのはが自己嫌悪が強い奴って思ったからアタシに言ったみたいだ」と言っていた。
しかし、僕が知っているセレンはそんなことはしない。
「なのはが自己嫌悪の強い奴って思った」それはつまり、言葉から考えれば彼女は最低でも一度はなのはの姿を見たということだ。面倒事が嫌いな彼女はなのはのことを一度は見ている筈なのに、その時になのはには言わなかった。
だから、彼女が言った理由とは違う目的があってセレンはヴィータに接触した。
そして、次に考えられること。
それは僕を病院から連れていったことで、なのはとヴィータから遠ざけたということだ。とはいえ、こちらは先程とは違い見当外れの可能性もある。先程のようにセレンの性格から考えている訳でもなければ、確証を得られるような言葉も聞いていないのだから。
僕の考えでは、僕となのはを遠ざけることで話し合う時間を無くすことが連れていった目的だ。
怪我をさせたということでは和解できたが、なのはは僕の力のことは和解できていないどころか、そもそもこのことを知らない。そしてセレンはヴィータにある期待をしていたと考えられる。
それはヴィータがなのはに事実を伝えるということだ。もし、ヴィータがなのはに事実を伝えたのならなのはは自己嫌悪に陥ることだろう。そして、この件についてなのはから話をしようとするだろうが、その時にはシュレン・ガルディンという存在は病院にはいない。
だから、罪悪感からなのはは精神的に潰れていたかもしれない。
彼女はなのはのことを自己嫌悪の強い者と認識しているのだから。
「……ま、こんなものか」
以上がヴィータから聞いた話で考えられることだ。
繰り返し言うことになるが、これはあくまでも僕の推測で絶対という訳ではない。仮にセレンが本当になのはを潰そうとしていたとしても、ヴィータが事実をなのはに伝える前に僕と再会している時点で、この仮定は意味をなさない筈だ。
事実かどうか確認する為にセレンから聞くこともできるが、生憎と聞いたところで答えてはくれないだろう。
だから、この件に関してはもう何も考えないことにする。
それが、誰もが傷つかないで済む道になるのかもしれないのだから。
――――と、そのように考えていた時、僕宛てに通信が届いた。
「こちらシュレン・ガルディン三等空尉だ」
『よっ! 特命隊のアイドルのレルデ・ローラルドだ』
「……」
通信相手がレルデだと知り無意識で通信を切りそうになっていた。
特命隊ではレルデから呼び出しがあると僕から一方的に通信を切ってレルデのところに向かったり、書類仕事を追加するような事があったからだ。その癖として僕は通信を切りそうになっていた。が、今はそんなことはどうでもいいか。
それよりも個人的にレルデには聞いておきたいことがあった。
「先に、一つ質問するが、お前はわざと機動六課に異動するのが今日だと言ったのか?」
『……? どういう意味だ?』
「だから、僕が異動するのは本来明日だったと八神部隊長が言っていたのだが、お前はわざと今日と言ったのかと聞いている」
『…………あ、テヘ』
「……」
どうやらレルデは本当に僕が機動六課に異動するのが今日だと思っていたようだ。
異動するのが八神部隊長の部隊だったから良いものの、他の部隊では許されない失態だろう。小さなミスと思われるかもしれないが、それでも時空管理局 特命隊の評価は下がってしまう。
とはいえ、特命隊の隊員が他の部隊に異動するというのは今回が初めてのことなので、僕が考えている程悪いことではないのかもしれない。それに、仮に一日早く来てしまっても部隊の観察に来たのだろうと思われる可能性もある。
……やはり、少し考え過ぎだったのだろうか。
「それで、何の用だ?」
考えを誤魔化すようにレルデから通信の理由を聞く。
『おいおい、用がなければ通信しちゃいけねぇのかよ?』
「……切るぞ」
『って、冗談だよ! ……ったく、お前なら問題ないだろうが、初日は無事で終えることができたのかって聞きたかったんだよ』
無事というのは、何も問題を起こさなかったという認識だろうか。だとしたら、別段問題はない筈だ。この機動六課は特命隊より真面目でやる気が満ち溢れている部隊で、そんな部隊で失態を犯すようなことはしない。
「安心しろ。別に、お前の考えている最悪な事態は起こらない」
『だと、良いんだがな』
心配されているようだ。
しかし、特命隊には迷惑を掛けないようにするつもりでいるので安心して欲しい。仮に、僕が何かしらの問題を起こしたとしても、その時は全ての責任を特命隊にではなく僕個人に押し付けられればいいのだから。
簡単に言えば、僕をクビにでもすれば良いだけの話だ。
『あ、そういや、機動六課の女性の隊員は可愛いと聴いてるんだが――――』
「……」
会話が面倒なことになりそうだった為、言葉の途中で強制的に通信を切った。
「今日はもう、寝るか」
明日の早朝訓練から僕は新人達の訓練に参加することになっている。
まだティアナを除いた新人達に自己紹介をしていない為、恐らくそちらが先になるだろう。機動六課の隊長、副隊長と比べて僕には見習うべきところがないかもしれないが、上司としてやるべきことはやるつもりだ。
◇
私にとって、訓練前の準備というのはとても大切な仕事の一つだ。
もちろんスターズ隊の隊長だからという理由も一つだけど、それ以上にあの子達の成長を見届けるという意味の方が大きいと思う。ティアナとスバル、エリオとキャロの四人が機動六課が解散されるまでの期間でどれだけ成長しているのか楽しみだ。
その為になら私は笑顔で頑張れる気がする。まぁ、未来のことなんて私には分からないことなんだけどさ。
「……これでよし、と」
明日行う訓練の準備を終わらせて、ようやく今日の仕事が終わった。
まだ私が魔法に出会ってから時間があまり経っていない時はこんな地味な作業があるとは思わなかったけど、今では日常として受け入れている。
と、そんならしくないことを考えながら私は自分の部屋に向かっていく。
その途中で私は訓練の時のことを考えていた。正確に言うなら、訓練の時のヴィータちゃんとシュレン君の会話のことだ。ヴィータちゃんとシュレン君が何を会話をしたのかは分からないけど、その会話の内容は私には隠しておきたいことみたいだった。そうじゃなければ、わざわざ隠れるようなことをせずに訓練の時にでも聞けば良かったから。
訓練の時の会話はヴィータちゃんが聞きたいことに関係してるんだろうけど、残念ながら私が聞けたのは後半だけだった。
何を隠そうとしているのか知らないけど、そんな行動をされたら大体は想像できる。私に隠しておきたいことなんて、八年前のことしか考えられないから。
――――だから、隠していることも心当たりがない訳じゃない。
そう考えていた時、私の視界の中に丁度ヴィータちゃんが入った。だけど、彼女はさっきまでの彼女ではなくて何か落ち込んでいるようだった。
「ヴィータちゃん?」
「……なのはか」
しかも、私が近づいていることに気付かなかった。
そんなことはいつものヴィータちゃんなら有り得ないことで、余程意識を集中させていなかったか分かる。
「どうしたの? あまり元気がないように見えるけど?」
「……別にいつも通りだ。だけど、ちょっと難しい考えをしてて困ってるところだ」
その言葉が嘘なのはすぐに分かった。
いや、嘘だと決めつけるには早すぎるけど、少なくても彼女が私に心の内を読ませないようにしていることは理解できた。
とは言っても、その内心はシュレン君に関してなんだろうけどね。
何を隠しているのか知りたいけど、私は聞かない。はやてちゃんなら聞くかもしれないけど、私が聞いても意味がないだろうから聞かない。
だって、ヴィータちゃんにとってはやてちゃんは世界で一番大切な人なのに対して、私はそうじゃないから。
「そうなんだ。それじゃあ、あまりしつこく聞かないけど、困った時は私やはやてちゃん達を頼ってね」
「おう」
そうではない私は友達として、そのぐらいのことしか言えない。言うことができない。
その後の私達の会話もシュレン君に関してだった。とは言っても、まだ私達はシュレン君と再会してまだあまり時間が経っていない。
だから、シュレン君のことで話せることはあまり多い訳じゃない。
「……アタシがシュレンと模擬戦をしてアイツの実力を新人達に見せつけてやりたいんだけど良いか?」
不意に、ヴィータちゃんはそう提案してきた。
それは突然の言葉だったから私は少しだけ呆気ない表情をしていた。
「いや、アイツは特命隊にいたらしいが、新人達はあの部隊の名を知っているだけで中身までは詳しく知らないだろ? だから、一番単純な方法で実力を知らせてやりたいんだ。
……まぁ、アタシ自身もアイツの実力を知りたいっていうのもあるけどな」
「ヴィータちゃんはシグナムさんみたいな性格じゃないって思ってたよ」
「アタシはシグナムほどバトルマニアじゃねぇよ」
模擬戦をするなら先程までやってた訓練の準備は無駄になるけど、ヴィータちゃんの言ってることも正しいから良いかな。私としても副隊長同士の模擬戦は参考までに見せたいと思ってたし、目標にさせるという意味でも、技を盗む機会としても役に立つと思う。
だから、ヴィータちゃんには別の目的があって模擬戦を提案したことは“気づかないフリ”をしよう。
「サンキュー。……んじゃ、もうアタシは寝るぞ」
「お休み、ヴィータちゃん」
「おう、お休み。なのは」
最終的な確認をした後、ヴィータちゃんは去っていった。まぁ、去っていったと言っても自分の部屋に戻るだけだけど。
私も部屋に戻るけど、最低限のことだけをしてすぐに部屋を出た。
夜風を当たりに行く為、少しの間だけ機動六課の隊舎を出る為だ。
六顆を出る途中で、隊員達に何人かに会ったけど、全員が簡単な挨拶だけをして与えられた部屋へと戻っていく。
ある意味、それは当然のことだ。今の時間は既に夜中と言うべき時間だから。
外に出て、近くに設けられた休憩所のベンチに私は腰を下ろす。座った後には適度な風が吹いて周りの木がゆらゆらと揺れる。
やっぱり、こういう光景は見ていて落ち着く。
「……良い風」
こうして夜風をあたるようになったのは八年前の怪我が完治できてから。
あの時から私は少し変わった。私は失敗を経験して友達を頼るということはできるようになった。
――だけど、それ以上に私は自分自身のことを信じることが出来なくなった。
要するに自分のことを出来損ないだと思うようになった。
そして、今までそのことを気づかれないようにビクビクしながら過ごしてきた。
人によっては私のことをエースオブエースだなんて呼んでいる人もいるけど、私はそんな風に呼ばれるほどに凄い訳じゃない。そのように言われているのだって、結局は私の外面しか見ていない人だけ。
だから、そんな人が私の内面まできっと落胆されてしまうだろう。
正直なことを言えば、私とあまり親しくない人から何を言われても大して気にすることはないと思う。
だって、所詮は他人で、他人から何を言われても関係のないことだから。
でも、逆に言えばそれは私と親しい人から言われてしまった場合は気にすることになるということだ。
……私は怖い。いつか、私の内面を知った時のフェイトちゃん、はやてちゃん……皆の反応を想像するだけで震えてしまうくらいに。
確かに、友達を頼る、信じることはできるようになった。だけど、それ以上に今度は私自身が駄目な人になってしまった。
時間が経つ度に、その想いは強くなっている。
このままじゃ駄目だと頭では分かっているのに、私は臆病だから何もすることはできない。
「……ホント、駄目な自分だなぁ」
前回の話で矛盾点が指摘されましたが、修正できるのは少し遅れそうです
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