使い魔召喚の日の午前中。召喚した者から召喚された獣へ声がかけられる。
「我が名はシモン・トレ・ビュルガー・ド・ワルド。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
無事に『コントラクト・サーヴァント』をなしとげた。
『コントラクト・サーヴァント』で言われる「この者」に疑問を持つ者はいない。
もはや伝統だから、人などが召喚されるとは、考えずに使われているのだろう。
それにしても、あとは、明日にでもルイズと同じクラスにでもなれば、俺にたっていた死亡フラグの人生から、回避できるだろう。
すでに夕刻も近づいているのだが、窓の外からは、1分毎ほどに「ぼかーん」っという音が鳴り響いてくる。
『遠見』の魔法で、ルイズをみているが、爆発がして1秒ほど遅れて音がしているので、ルイズが『サモン・サーヴァント』を続けているのだろう。
窓を閉めれば良いというのもあるが、夏になったら年中行事かもしれないし、俺の使い魔に、この音をならさせる意味もある。
『コントラクト・サーヴァント』をなしとげた今は、召喚した獣と一緒に過ごす時間なので、使い魔にした『レア』と名付けた子ぎつねと過ごしている。
この『レア』だが、子ぎつねなのになぜか九尾の狐だ。
前世の記憶だと、年老いたきつねの中には、尾の数が増えていく妖狐がでてくるとのオカルトの話が残っているが、こいつは子ぎつねだから、こちらの世界では俺が覚えているのとは少し違うのだろう。
ただし、この部屋で見せてくれたのは人間への変身と、その指先からの狐火をうかせているところ。
12才ぐらいの少女に見えるが、この狐火を見る限り、ドットのメイジと少なくとも良い勝負をするだろう。
ただし、『レア』には「人前で人間の姿になるな!」と言い含めた。
周りがどう動くかわからないからな。
俗に流れている「調査研究にまわされる」という話をしておいた。
実際、そういうこともあるみたいだから、決して脅しではない。
子ぎつねの状態でも刻まれたルーンである『話す』で話せるので、そちらでコミュニケーションをとるようにする。
狐火は、人間形態の方が出しやすいらしいが、子ぎつねの形態でもだせるとのことだ。
結局、俺の使い魔は、子ぎつねであったならば土系統ではあるが、狐火をもっていることから火系統として、魔法学院に申請して、明日からは火系統の専門課程に進んでいくのだろう。
土も火も両方の系統魔法を同じくらいの強さ、ラインとして使えるので、どちらの系統かというところに不安はあったが、火の系統ならほぼ確実にルイズと同じクラスになるだろう。
水が一番に多くて次に土、風、火の系統の多さの順に見受けられる生徒たちだから、土系統と分類されたら、ルイズと同じクラスになれるかはわからない、っというか、だいたいは、専門課程が受けやすいように教室の分類はされている。
今日、現在は、ルイズと違うクラスだから土系統のままだと判断されたら、明日も違うクラスだろう。
火が扱えるし、火系統の使い魔だと申請すれば、明日はルイズと同じクラスになって、当面の死亡フラグは回避だ。
ジャン・ジャック兄さん、兄であるワルド子爵がレコン・キスタに組しないよう裏工作をしているが、そのためにやることは増えているんだよな。
『遠見』の魔法は片目でおこなっていたのと、ちょっと考え事をしていたので、気が付くのに遅れた。ルイズは人を召喚したようだ。『コントラクト・サーヴァント』の後に、手で押さえているのは、胸ではなく左手だ。『ガンダールブ』だろうとは思うが、ルイズの使い魔が、黒髪で、ジーンズに、上着の種類はパーカーだと思ったが、そういう種類や服装の特徴を覚えてから、遠見の魔法の中断をした。
夜の食事は使い魔と一緒にということで、俺には、パンとワインで、子ぎつねの『レア』には小動物の皮をはいで、切ったと思われるものが皿にのってやってきた。
その時に運んできたメイドに、
「今日は、ルイズがどんな使い魔を召喚したか知っているかい?」
そう言って、ちょっと小銭を手に持たせる。そのメイドは、俺が学院内の動きを知りたがるのに慣れてきているので、そのまま受け取り、
「ミス・ラ・ヴァリエールは、平民を使い魔にされたようです」
「そうか、ありがとう」
遠見の魔法では声などが聞こえないので、もう少し確証を得ておきたかった。
メイドが帰ったあとに、『レア』との話はワインを飲みながら続いた。
そして、夜になって寝る時に俺はベッドで、子ぎつねの『レア』もベッドの上で寝るらしい。ふかふかなのが気に入ったみたいだ。
翌朝、起きると『レア』は少女の姿で、ベッドにもぐりこんでいた。
なんで、服をきていないんだよー
確かに寝る前に、ワインは飲んでいたが、これぐらいの少女に興味は無いぞ!!!
そう思いながら、布団からぬけだそうとすると、腕をつかまれて離れない。
そうして、『レア』が目を開いてそこから聞きたくない言葉が、
「昨晩はとっても、よかった。また一緒に夜をともにしてね」
おーい!!
俺の趣味は年上のお姉さまだぞ~~
可能なら、学院長の秘書をおこなっている、ミス・ロングビルがいいわーー、っと半分混乱していたら、
「冗談よ、じょ・う・だ・ん」
「冗談も大概にせい!! 許可なく人間形態とったりするなら、王室直属のアカデミーに送るぞ!! その後は知らん!!」
「うー……わかったわよ」
不承不承ながら子ぎつねにもどったが、朝食前に、一度、使い魔の面倒をしてくれる使い魔預り所へ預けて、朝食をとらせる。
そして、俺はこの学院にいる貴族がほぼ一斉に朝食をとる『アルヴィーズの食堂』に向かって、2年生になってからついているいつもの席へ座った。
1年、2年、3年生と学年の単位で席が別れているが、結局のところは、その学年の中で気に入った席順に座っている。
それで、俺が座っているとルイズが多少不機嫌そうにしながらも、黒髪でこちらでは見慣れない服装の少年を従えて隣の席にやってきた。
ルイズがその少年に椅子をひかせている。
その少年の左手の甲に刻まれているのは、読みづらいが古ルーンで『ガンダールブ』と書かれていた。
さて、どのような物語がつづられるだろうか。
2013.06.23:初出