陰に潜む者は   作:烏鷺烏鷺

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第19話 オーク鬼退治とコボルト退治?

『トルテュ』号で、廃村の上空から見ているが、

 

「コボルトって、村をこういう壊し方をしないよな?」

 

始めてこの『トルテュ』号を見た時には「変なの」って言っていた、ヒルダことヒルデガルドは、

 

「これって、オーク鬼の仕業よね。家の中に何か残っていると思ったのかしら? マクシミリアンはどう思う?」

 

「私もオーク鬼の仕業だと思います。近くに行かないとはっきりしないのですが、壊されたのは最近のような感じはするのですが」

 

「最近か。もし、近くにいるとなるとやっかいだな。よかったら、追加契約でオーク鬼の退治もしてくれないか」

 

「えっ! それも有りなのー」

 

「おい、ヒルダ待つんだ」

 

「何よー」

 

「大抵のオーク鬼は群れをくんでいて、俺たちが受けるのは何匹かはっきりしている時だけだろう」

 

「……そうだったわね」

 

残念そうにヒルダが言うのを見て俺は、

 

「オーク鬼の方は、俺たちと一緒に相手をしないか?」

 

「ひっじょーに残念だけど、他とは組まないことにしてるのよ。マクシミリオンが」

 

普通、風のトライアングルクラスのメイジと剣士なら、メイジの方の意見が優先されると思っていたが、この二人の関係は異なるらしい。

 

「うーん。そうなると、今回のコボルト退治の仕事の依頼は受けられないということになるのか?」

 

「なんでよ」

 

「コボルト・シャーマンが中にいた場合、ヒルダとマクシミリアンで戦った直後に、オーク鬼が外にいたら、だまっているつもりか? それなら俺は見過ごして『トルテュ』号にフライでもどるだけだが、そっちはマクシミリアンをつれてここへもどってこれるだけの自信はあるのかな」

 

「どう? マクシミリアン」

 

ヒルダがマクシミリアンに聞くのは、マクシミリアンの方がこういうのをなれているからなのか、それともメイジ殺しクラスの腕をもっているからか。

マクシミリアンの装備は軽めにつくられているようにみえるから、速度が信条なのだろう。通常はオーク鬼1匹に鍛えられた平民の戦士が5人と考えると、オーク鬼とは相性が悪いはずだ。

 

「個人的には遠慮しておきたいね。オーク鬼が退治されるか、オーク鬼の数がわかれば、それの頭数よっては引き受けて、その2日後にコボルト退治といったところかな」

 

「ふーん。オーク鬼の討伐をしない可能性はあるんだな」

 

「まあ、俺たち2人だとオーク鬼は10匹までを相手としているからな」

 

「なら、10匹を超えたオーク鬼がいた場合は、それは受けないんだな」

 

「ああ」

 

「そうか。まずはオーク鬼の群れを探してみるか。ただし、10匹をこえていた場合は本当にオーク鬼退治をしないんだな?」

 

マクシミリアンはそうだとばかりに首を盾に振る。

 

「だとすると言っておくが、その時点でコボルト退治の依頼もキャンセルとさせてもらう。当然ながら契約期間とギルドへ戻れるまでの分は支払うが、支度金として渡した30エキューはコボルト退治用として用立てたものだから、その分はひかせてもらうがな」

 

「それって、うちらの手持ちじゃ……」

 

「言うな、ヒルダ!」

 

「ふーん。まあ、オーク鬼が10匹を超えているというのが確定しているわけじゃないから、10匹以下であることを願うことだな。それからオーク鬼1匹あたりはコボルト7匹相当でどうだ?」

 

「トリステインではそうかもしれないけれど、7匹じゃなくて8匹ぐらいがこっちでの相場よ」

 

「そうか。それでいいとして、オーク鬼3匹も倒せばコボルトだけだった場合より、もうかるのにな」

 

俺はそういった後に、

 

「アレン、悪いが日が昇っている間はまずここより北方面を中心にオーク鬼を探して、日が沈んだらこの廃村に戻ってあの樹へロープを結んで係留する。ロックはなるべくなら早めに一晩の係留中に消費量される風石を計算しておくのと、オーク鬼がいる前提で風石を途中で足す時間とかも計算しておいてくれ」

 

俺はそう指示すると、この船で一番見晴らしの良い、上部のマストにある見張り台まであがっていった。途中に遮蔽物が存在しない、この場所は遠見の魔法も使いやすいからな。

 

見張り台でオーク鬼を探しながら、ここ数日のことを考えてみた。

 

 

 

ヤンとの仮契約書がラウテルン町長のところに着くのは俺がいないときだったので、代理人としてマチルダに受け取りに行ってもらったのだが、馬鹿丁寧な様子で調子がくるったって言っていた。新しい領主になるかもしれないとでも聞かされていたのだろう。仮契約書はラウテルン近くにある廃村からの、風石の購入価格を他の地方も含めて書いていやがる。しかも参考資料として、各地での想定人件費までつけているしな。

あとはこのラウテルンの街を含むプファルツ地方での領地の購入に関しての契約書も送ってきやがるしな。あとは俺が日付とサインをヤンと俺用の2枚にすれば終わる程度だ。これだけ手間をかけているのは、風石そのものがかなりの確率で浅い層にもあることを、ほぼ確証しているのだろう。それとも深い層にある話の説明を信じたのか?

まあ、いい。風石が実際に採掘できるならとてもいい条件だしな。

 

 

 

考え事をしていると、オーク鬼の集団が休憩している場所がわかった。北東に約1リーグといったところか。数ははっきりしないが、15匹ぐらいか。

ざっと確認したところで、空船の中に戻ってオーク鬼のことを告げると、ヒルダが意外な申し出をしてきた。

 

「私が、そっちと組んでオーク鬼を退治するっていうのはどう?」

 

「あー、時間が短縮できるし、次にオーク鬼を退治する前の発見する課程がはぶけるから助かるが、なんで気が変わった?」

 

「今回のオーク鬼退治はあたしだけが参加で、マクシミリアンは不参加ということなら、こちらはそれならうけても良いってなったのよ」

 

ふーん。確かに剣士が一人いようがいまいが、普通ならあまり関係ないからな。ただ、それだとちょっとひっかかる感じはするが、

 

「幸いここは風下だから匂いでオーク鬼に気づかれる心配もなかろう。だから、ここで空船からおりて、徒歩で近づいていく。メンバーは、ヒルダ、マチルダ、レアに俺ってところで、異存は?」

 

「土と火と風ね。あたしは異存ないわ」

 

「いいけど、オーク鬼は退治した経験は無いよ」

 

ふーん。マチルダはそっち方面の経験になかったから盗賊になったのか。

 

「そのあたりは降りた後に、歩きながら説明していく。他には?」

 

なさそうだったので、レアにはいったん子ぎつねの状態になってもらってから、俺は念力で降りていく。ヒルダと、マチルダはフライだな。

 

歩きながら基本的な作戦を話していきプロであるヒルダも納得して、最悪はフライで逃げるという方向でいくことになった。

 

 

 

集団でいるオーク鬼の風下に俺はいる。その中で一番手直にいたオーク鬼へ、右手にもっているサーベル状の杖でマジックアローを放った。一発では仕留められなくて、そのオーク鬼がなにやら声を上げながら俺の方に咆哮をあげた。他のオーク鬼も俺に気がつき、こちらに向かい始める。

そう、誘い出すのが今回の俺の最初の役割だ。ここで『火山弾』の魔法を使っても、3匹ぐらいしかたおせないだろう。あとはやけどをおったとしても半数近くは、何もない状態だ。精神力を半分近く減らしてしまう『火山弾』の魔法は、防御力の高い相手には向かない。

俺は逃げるふりをしながら、オーク鬼がしっかりついてくるのを確認する。一匹だけ早めにくるのがいるな。走りながら『フレイムボール』の魔法を一発、そいつに放った。俊敏力はあるだけにさけていたが、こいつはホーミングするからそのまま頭にあたって絶命したようだ。

これで先頭集団がほぼかたまってやってきた。狙いはあの場所。軽くフライを使ってオーク鬼との間をあけて、着地したところで後ろを振り返り確認すると15匹いる。『遠見』の魔法では1匹見落としていたのか。それよりも、ここでとまって、魔法の詠唱をしているふりをする。そのままオーク鬼は俺を襲いにきたが、先頭集団があっさりと消えた。

そうみえるほど鮮やかに落とし穴へ落ちてくれたものだ。そこには油がすでに用意してあるのだが、それに俺は左手のタクト状の杖で発火の魔法で油に引火させる。

先頭集団は7頭だったから、残りは8頭か。もう1頭ぐらい減っていてほしかったがな。

 

オーク鬼たちは一瞬ちゅうちょしていたが、全滅させられていないと気がつくと、火がついている穴の両脇からシモンを襲おうとする。火の穴の右手側には、マチルダの錬金の魔法でつくった真鍮のゴーレムがゆく手をはばんでいた。そこをレアの先住っぽい火が相手の頭を狙って倒していっている。

反対側ではヒルダが、不可視であるエアカッターでオーク鬼の首を切り落とすとともに、後続の鬼にも傷を負わせている。そして直後にフライで移動して、距離をとってからエアカッターを放っている。

残りの中で俺の方にむかってきたのは2匹。距離がはなれている方は、火のムチをそのまま首に巻きつけて焼き落とし、近づいてきたもう1匹はオーク鬼の棍棒をサーベル状の杖で受け流しながて、たいをかわしながら、やはり火のムチを首に巻きつけて焼き落とした。

 

俺は近くにオーク鬼がいないことを確認してから、マチルダとレアの方へ向かった。

 

「そっちはどうだった?」

 

「1匹目をとめている間にレアが火でしとめてくれたから、あと1匹をしとめた以外は反対側へ向かったわよ」

 

「おお、レアよくやったな」

 

「えへ。けど、できたらシモンと一緒がよかったな」

 

「今回はメンバー的にこれが最適だったと思うんだよ。機会はそのうちあるから、それまで待っていてくれな」

 

「うん」

 

「それで、ヒルダはどうしているかな?」

 

まだ火が燃え盛っているので、反対側の状況はよくわからない。集団で穴の反対側へ移動していくと、ヒルダが歩いてこちらに来るところだった。

 

「首尾はどうだったかな?」

 

「あたしは4匹よ。そっちは怪我とかしなかった?」

 

「大丈夫。穴に落ちなかった半分をひきつけてくれて助かったよ」

 

「ふーん。まあ素人としてはよかったんじゃない」

 

「おほめに預かって何よりで」

 

その後は、穴の火が消えないように倒したオーク鬼と油を足して行った。これが目印で『トルテュ』号もどってきたところに、フライで『トルテュ』号へもどった。

 

 

 

翌日、俺は廃村で風石探査装置を動かしていたら、浅い層にも、深い層にも風石があるのを確認できた。『遠隔操作』の魔法を使えないと、特に深い層はさぐれないが、この魔法装置は、母親の日記からひもといてつくった特注品だ。アカデミーでもこの記録が残っているかどうかあやしいもんだよな。多数で行うのが普通である『遠隔操作』の魔法だが、この装置は一人でも可能にしている。これが母親の研究成果のひとつだったのだろう。深く潜らせることを思いつかなければこの地が空に浮かび上がるという恐怖に、おそわれることもなかっただろうが過剰反応しすぎか、研究つかれだったのかなぁ。母親が狂っていたころしか記憶が無い俺にとっては、その前がどうだったかはっきり思い出せない。まあ、アカデミーにいきっぱなしで、ワルド子爵領にもどってくる方が珍しかったからな。

 

 

 

これで、あとはコボルトか。コボルト・シャーマンがいないのを願いたいが、いた場合にマクシミリアンがどう働くのかも興味はある。

 

そしてヒルダの方は、廃村にいっぱなしだから「暇だー」っと言い続けているぐらいだ。それにたいして、マクシミリアンは「無駄遣いしなくていい」と答えているぐらいだ。

 

 

 

『トルテュ』号から俺は念力で降りて、ヒルダとマクシミリアンは、マチルダにレビテーションで降ろしてもらっている。降りた地点は、廃村の南西側にある土石採掘場跡の洞窟前だ。ヒルダが暗視の魔法を、マクシミリアンと自身にかけている。俺に対しては、

 

「あら、暗視の魔法は?」

 

「夜目には自信があるんでね。実際に戦わなければいけないようなことになりそうだったらかけるけど」

 

後半はともかく、前半は実際にはそうじゃない。前を行く二人の熱と、足から感じ取る地形をもとに歩くつもりでいる。

 

「そう」

 

「じゃあ行こう」

 

そうマクシミリアンが洞窟に入っていき、数メイルもあるかないうちに、両刃の大剣を抜いた。マクシミリアンが剣を抜くのを見るのは初めてだが、よくできた良さそうな感じの剣だと思ったら、

 

「ようやっと、出番か」

 

「インテリジェンス・ソードか」

 

「こいつは口が悪いから、滅多なことでは他の人間と組めない。口が悪いのが気になるならついてこない方が良いな」

 

「そうだな。坊主」

 

「そういえば、知ってるインテリジェンス・ソードも口が悪かったな。そのインテリジェンス・ソードの名前は?」

 

「ドヴェルグ」

 

「なんだよ坊主。俺の名前が気に食わないのか」

 

「いや、作ったのは誰なのかなと思ってな」

 

「覚えてねさ。小僧」

 

インテリジェンス・ソードは作成者がすべて不明だ。唯一わかっているのは、デルフリンガーが始祖ブリミルの使い魔にならされてしまったエルフというぐらいまでだ。多分エルフが作成したんだろう。そんなことを思いながら、ドヴェルグが一人でしゃべっているのを聞き流していると、突然前の二人が止まったので、

 

「どうした?」

 

「今のドヴェルグの注意を聞いていなかったのか?」

 

「悪い。聞き流していたわ」

 

「だから、小僧は」

 

「ここに、先住の感知用の魔法装置らしきものがあるらしい」

 

「魔法装置?」

 

「実際は魔法装置じゃないのだろうが、他に人間にわかる言葉がないらしい」

 

「魔法装置に似たものがあるということは、単にコボルトがいるというわけじゃないんだな」

 

「ああ。コボルト・シャーマンがいると思っていいだろう」

 

「それで、ここは、どうやってぬけるんだ?」

 

「フライで、上ぎりぎりを通ることだ」

 

「じゃあ、先行して目標になってほしいな。その前に暗視の魔法を使うのでちょっとまってくれ」

 

さすがに洞窟の上部まではわからないし、この魔法装置に似たものがあると言われてもわからなかったからな。

 

ドヴェルグの言う経路でヒルダがマクシミリアンをフライで先行させて、同じコースをヒルダが飛んでいる。そのすぐ後ろを俺は同じくフライでついていくだけだ。

 

この先にコボルト・シャーマンがいるというのに、ドヴェルグの口の悪い独り言はとまらないので、

 

「奥のコボルト・シャーマンやコボルトは気にしなくていいのか?」

 

「ケツの穴の小さな奴だな」

 

「そういう問題か?」

 

「自信が無い奴はじゃまだ。帰れよ、小僧」

 

ヒルダとマクシミリアンはしかたがなさそうに肩をすくめているので、俺もだまってついていくことにした。

 

奥の方に明かりが見えてくるが、ドヴェルグの一向におしゃべりがとまらない。

 

「もしかして、ドヴェルグにはサイレントに相当する効果があるのか?」

 

「今さら気がついたのか。頭の回転が遅い小僧だ」

 

ヒルダが苦笑しているところをみるとそうなのだろう。だが、説明はしてくれないな。まあ、見ているのが契約内容だから、それにそっているだけだろう。

 

そして、通路の奥は少々広くなった場所だった。そこにコボルトと見受けられる小さ目な亜人と、変わった服を着飾って仮面をしているコボルト・シャーマンとおぼしき亜人がいる。まだこちらに気がついていないが、そこでヒルダが『アイスストーム』の魔法を唱えだす。

その最中に気がついたのか、中のコボルトがあわただしくこちらにむかってくるのと、コボルト・シャーマンの方から大量の石つぶてが来た。

まずいっと思ったところで、入り口にもどろうとしたところで、全ての石つぶては、跳ね返されていた。エアシールドか?

エアシールドをはってあるのなら、中から外へも『アイスストーム』の魔法は通らない。だが、それもこちらの魔法の常識をあざわらうかのように、氷の粒がまじったストームが広場の中をとびまわっている。空中にういたり、身体に穴をあけていくコボルト達をみていると、四系統魔法では実現できていない一方通行のエアシールドができていたわけだ。

 

ヒルダはそのまま、広場へ入ってコボルトの数を数えているようだ。

マクシミリアンは、そのままドヴェルグを鞘へ納めようとしているところだが、

 

「マクシミリアン、ちょっとドヴェルグをしまうのはまった」

 

「この口の悪いのと話したいのか?」

 

「質問が一つあるだけだ」

 

「それなら」

 

そういって、マクシミリアンが鞘へ入れかけるのをやめて、土にさしたところで俺は、

 

「ドヴェルグ。デルフリンガーって知っているか?」

 

返答は知っているのか、知らないのか。

 




亜人との対戦2連チャンでおくってみました。

2013.09.22:初出
2013.09.25:改版
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