陰に潜む者は   作:烏鷺烏鷺

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第2話 平民の使い魔はやはりヒラガ・サイト?

俺はシモン・トレ・ビュルガー・ド・ワルドで、ワルド子爵の弟。

死亡フラグが立ちまくっている人生を、ここまで何とか生きてきたぜ。

 

 

 

さて、『アルヴィーズの食堂』での朝食だが、ルイズが不機嫌なようなので普段とちょっと違う。俺があいさつしなければ、ルイズからあいさつぐらいはしてくるはずなのに、今日はしてこないんだよな~

平民を召喚したことがそんなに気に入らなかったのか。まあ、不機嫌なところにあいさつするのもなんだから、後にでもしよう。

 

 

 

朝食を終えて、立ち上がって入口の方へ向かう。ルイズの横にいる平民との話になっている人物は、黒髪で前世の記憶によれば東洋系の顔立ちだろう。あとはジーンズに、上着はパーカーというのでよかったかな。

駄目だな、前世の記憶が少しとんでいるようだ。靴もランニング系のシューズといったところだろう。ヒラガ・サイトかどうかは、まだ判断保留といったところだな。

 

 

 

いったん、部屋にもどって、学習用具を入れたカバンを用意して、昨日召喚した九尾の子ぎつねである『レア』を、使い魔預かり所から、教室へ連れていく。どうも、自分で歩くよりも、俺の頭にのって横着していやがるな。子ぎつねでいるうちだけだろうけどな。頭の上にのっていられるのも。

 

教室に入るとレアが言う。

 

「やっぱり知らないモノノケが多いわね。」

 

「だろうな。どうもレアも、もともとは東方に居たのだろうからな~」

 

昨晩、レアと話していたのは、ここらあたりだ。

以前、何者かに追われていたらしいのだが、それは教えてくれなかった。ただし、それで死んだと思ったら、この子狐の姿になっていたということだ。

それは受け入れたが、周りの森林の植物類は判別も不明だし、見慣れない獣も多いところに、鏡のようなものが目の前に現れて、そこが安全そうだと勘で入ったらしい。

突然変異なのか二尾の狐はこちらでもいるので、九尾は初めてだが、二尾の狐と同じ土系統としてコルベール先生も判断したようだ。

どうも、この九尾の子狐は転生体のようだが、さて、俺がいた世界で伝説となっていた九尾の妖孤の転生体にあたるのだろうか?

 

 

 

教室では、ルイズをつかまえるために、教室の入り口の席に座って、レアを机の上に座らせた。皆が通りすぎて、召喚した使い魔について簡単な説明をレアにしながら待っている。

待っていたルイズと平民の使い魔がやってきた。

 

「おはよう。ルイズ」

 

「シオン、食堂でもあったでしょう」

 

「その時には、あいさつしそこねたからね。俺の方は火を扱う子ぎつねを召喚したけれど、ルイズは人を召喚したんだって? 紹介してくれないかな?」

 

ルイズは嫌そうにしながらも、

 

「こちら、ヒラガ・サイト。どうも東方の出らしいのよ……変な行動したら、止めに入ってね」

 

「ルイズ、わかった。それでヒラガ・サイトというのかい? 東方で、二音節ということは、もしかして家名があるのかい?」

 

「家名? 名字のことだね。うん、ヒラガが家名で、サイトが個人名になるよ」

 

「そうか、じゃあ、サイトと呼ばしてもらおうか。ルイズとは幼なじみなんだ。よろしくな」

 

「あっ、うん。よろしく」

 

シオンのあっさりとしたあいさつに思わず返事をしたサイトだが、今朝あったキュルケやシオンを見ていると、自分の主人だと言ってきかないルイズがちょっと硬いんじゃないか? と思ってきだした。

 

「これ以上、何かある?」

 

ルイズが問うと、シオンは

 

「いや、特に」

 

「それじゃあ、席につくから」

 

そう言って中央のあたりの方に進んでいった。

 

離れていったルイズとサイトを観察していようと思っていたが、レアが結構話かけてくる。いろいろな獣や幻獣を見慣れないのだろう。まあ、確かに俺も最初はいろいろと面白かったよなと思いだすが、タバサがきてすぐ目の前に座った。そういえば、今日は窓が割れるのもありそうだから、窓と反対側になる出入口にきたのだが、この出入口付近の席のあたりにタバサがよく座っているらしいというのを忘れていたな。

そう考えていた直後に、本日1時限目の教師であるミス・シュヴルーズがきて、土系統の授業を開始する。

 

授業の最中に、ルイズがマリコルヌと口論をしだしたのが収められた中で、まわりでくすくすと笑っていた生徒たちの口に、ミス・シュヴルーズが赤土の粘土を張り付けたところで、レアが

 

「今のは?」

 

「魔法の一種だよ。これから先、しばらく話すなよ」

 

と互いに小声でやりとりをする。

そうしてすすんでいった授業の中で、ルイズが『錬金』の実習を指名されたところで、キュルケが蒼白な顔色で、

 

「ルイズ。やめて」

 

と訴えるが逆効果だろう。

ルイズが立ち上がったところで、目の前の席にいるタバサも立ち上がった。

それ、いいなと俺もレアをかかえあげて、タバサの後ろについて教室を抜け出すことにした。教室をでたところでレアが、

 

「どうして、今の教室っていうところを出るの?」

 

「爆発さ。爆発音がするから少し離れたからといってびっくりするなよ?」

 

「えっ? 爆発? さっきは、『錬金』の魔法で物質を変化させていたみたいだけど?」

 

「まあ、それが爆発してしまうのが、ルイズの魔法の特性なんだよ。それで、まわりの使い魔が驚いて、暴れまくるだろうから、抜け出したわけだ」

 

「ふーん。変なの」

 

っと、言ったところで、ちょうど爆発音が響いてきた。レアが一瞬ビクッとするが、

 

「あら。昨日の音と一緒?」

 

「そう。昨日、部屋の外から響いていた音は、ルイズが『サモン・サーヴァント』……使い魔を召喚する魔法を失敗し続けていた音だったんだよ」

 

「そうね。事前に聞かされていても、そばにいたら驚いていたかもねー」

 

そんな会話をしながら、昼食まで図書館に向かうことにした。タバサが向かう先も一緒だったが、図書館ではさぼりに来たときに、時々見かけるから驚くことでもない。

 

 

昼食も間直になったところで、レアを使い魔預かり所へ預けてから『アルヴィーズの食堂』で朝と同じ席につく。すでに大部分の生徒は集まっている。

そこへ少し遅れて、ルイズとサイトがきたのはいいのだが、サイトがルイズの椅子をひいた後に、

 

「はいお嬢様。料理に魔法をかけてはいけませんよ。爆発したら、大変ですからね」

 

と言ってるが、ルイズの怒りがたまっていくのがよくわかる。

サイトが、適当な食事開始前のあいさつをしたところで、ルイズがサイトから食事を取り上げたが、そうだろうな。

これだけ、堂々と貴族を馬鹿にしたら、多少は温厚な貴族でも、魔法で対処するぞ。ルイズが、自分の魔法が爆発しかしないから、抑えているだけだろうが。

 

昼食は隣にいるルイズの雰囲気が多少悪いのを気にしなければ、あいかわらず美味いよな。はしばみ草のサラダを気にしなければだが。気に入って食べているのは、タバサぐらいしかいないのにな。コック長であるマルトーの腕はたしかだが、このはしばみ草のサラダだけは、味覚がおかしいんじゃないかと思うぞ。

 

昼食は食べ終わったが、デザートがまだきていない。

順番から考えると今日の2年生のところにはシエスタがくばる順番らしいから、やはりサイトも一緒にくるだろう。デザートは俺のところまでこないかな?

ギーシュとのやりとりも見てみたい気もするが、ギーシュのうっかり癖からいって、多分、モンモンの香水を落とすだろうし、1年生のケティとデートしたらしいとの話も聞こえているので、サイトと事はおこるだろう。サイトとギーシュの件は、なかったらなくても特にかまわないしなぁ。だから、ここは影響を与えないように、レアを迎えに行くか。

 

 

 

レアも昼食はとりおわっていて、他の使い魔と話しているようだ。使い魔たち同士で意思疎通できるのは知っている。しかし、まことに残念ではあるが、言語解析ができねぇ。まあ、もともと、文系は苦手だったしな。

 

レアは、俺が来たことにようやく気が付いたのか、こちらに向かってきた。

 

「うん? 他の使い魔との交流はいいのか?」

 

「すでに使い魔になって長い幻獣が、主人となった者と一緒にいた方が良いといったのよ」

 

「ふーん。そうなのか。他には?」

 

「……あら。しゃべっちゃった。内緒よ。な・い・しょ」

 

「そうか」

 

俺は、あまり気にしないふうにして、レアとともに、日中でも日がささなくて、決闘に向いている場所である、魔法学院内での西側方向にあるヴェストリの広場に向かうことにした。

 




タバサが教室を出るのは、アニメ版からです。

2013.06.24:初出
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