陰に潜む者は   作:烏鷺烏鷺

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第20話 嫌だってばよー、契約につぐ契約の話だなんて

俺はマクシミリアンが土の上に刺した両刃のインテリジェンス・ソードに聞いてみた、

 

「ドヴェルグ。デルフリンガーって知っているか?」

 

「……ああ、あのできそこないか」

 

「出来損ない?」

 

「魔法を吸収するだけしか能のないやつだったな。あんなのと同じなんて思うなよ」

 

「そのデルフリンガーというのが何かよくわからないが、ドヴェルグの言うことはあまり聞かなくていい」

 

「いや、もう少し聞きたい」

 

「小僧と出来損ないか。いいコンビだな」

 

「デルフリンガーは俺がもっているわけじゃなくて、他の者が持っている。そのデルフリンガーだが、錆びた状態に……」

 

「やっぱり出来損ないだろう」

 

「いや、錆だらけの状態に擬態しているみたいなんだ」

 

「あんな出来損ないが、さらに擬態だって。わらわせてくれるじゃないか」

 

「参考になった。ありがとう、ドヴェルグ」

 

「ああ、なんだっ……」

 

言い切り終わらないうちにドヴェルグは鞘の中へと、マクシミリアンによってしまわれた。そして、俺はマクシミリアンに問う。

 

「ここの中のことを言わないならついてきても良いという条件だったのは、そのドヴェルグの口の悪さか? それともドヴェルグに風系統の防御系の魔法が付加されているからか?」

 

「後者だ」

 

「そうか。まだ俺の中で全体像がまとまっていないので、くわしくは後に話すが、トリステイン王国へ少々ばかり行く気はあるか?」

 

「……条件しだいだ」

 

「ふむ。わかった」

 

マクシミリオンと話がおわったところに、ヒルダが戻ってきて

 

「コボルト・シャーッマンと、さらにコボルトは18匹よ」

 

「ああ。契約通りギルド経由で支払うから安心しろ。場合によっては、しょっちゅう依頼することになるかもしれない」

 

「えっ、本当?」

 

「まあ。今は確実とはいえないけどな」

 

俺はヒルダからチラッとマクシミリアンを見てから言った。実際はこの洞窟と近くの廃村から北の国有地へと独自の道を作る計画をたてている。廃村が多く、亜人や幻獣が多いことは予想されるが、ヤンのところばかりをあてにしていたらヤンが死んだときに、領地からの輸出入の生命線を立たれる可能性があるからな。

そんなことを考えているとマクシミリアンが、

 

「長居は無用だろう?」

 

「そうだな」

 

俺は洞窟の帰りも二人の後についていきながら、先ほどのドヴェルグとの話を思い返しながら、考えをまとめていた。

 

 

 

『トルテュ』号に戻り、オーク鬼とコボルトの退治分とギルドに預けてある小切手の差額をまた小切手にしてマクシミリアンに渡した。ヒルダは

 

「それで、こんど美味しいところへ行こうよ」

 

「無駄使いにならないところで」

 

そう念を押すマクシミリアンが金使いの荒い領主に対する執事のようにみえたが、ちょっと違う感じもする。

 

「ところで、マクシミリアン。洞窟の中でトリステイン王国へ行く話は覚えているかな?」

 

「ああ」

 

「実はトリステイン魔法学院のサイトという使い魔になっている剣士がもっているデルフリンガーと対面してもらいたいのだが」

 

「トリステイン魔法学院?」

 

「ああ。ほんの10日前までは、そこに行っていた」

 

「ふーん。それでトリステインなまりだったのか。今の時期ならまだ卒業シーズンとかじゃないだろうに」

 

「まあな。そっちもここで詳しい話をするのに差支えがあるようだったら、場所をかえるがどうする?」

 

「そうだな。場所を変えた方が良いかもしれないな」

 

「それじゃ、少々狭いが船長室でもいくか」

 

この反応から、マクシミリアンはのらないかなと思いつつ、『トルテュ』号で寝泊りしている船長室に向かった。ついてきたのは、マクシミリアンにヒルダだ。

 

俺がトリステイン魔法学院でやりのこしたことといえば、直近ではサイトがスクウェアクラスのメイジに勝つこともできるという自信を持たせることと、デルフリンガーを覚醒させれなかったことだ。こればっかりは、近くにいればなんとかなったかもしれないが、トリステイン王国から亡命したこの身では、もう直接にはなんともならない。間をはさんでなんとかしないと、アルビオンがせめおりてくる時か、ガリアのジョゼフ王の方から最終的にこのプファルツ地方も戦争に巻き込まれる可能性は高いからな。

 

船長室に入るとヒルダがサイレントの魔法をかけたのが、ドヴェルグを抜いた方がはやいんじゃないかと一瞬思ったが、よく考えると交渉時に邪魔はされたくないよなと思いながら二人へむかい、

 

「今度、依頼したいのは、トリステイン魔法学院にいるサイトという剣士がもっているデルフリンガーにドヴェルグとあわせてみてほしい。それも無理だろうか?」

 

「うーん」

 

「えーと、報酬はどれくらいかしら」

 

「契約期間1ケ月分の通常の費用に、デルフリンガーとドヴェルグに話をさせられたならば、500エキューを追加。さらにデルフリンガーが見かけの錆びた状態からもどったら、さらに500エキューを渡そう」

 

「うーん。仕事の詳しい内容はどんなものかな?」

 

「まずはトリステイン魔法学院へ行って、サイトと会うために教師である学院長のオスマン氏にあってほしい。オスマン氏がいなかったら、教師であるミスタ・コルベールとしてほしい。そこからサイトを呼んでもらって会ってもらいたい」

 

「直接あえないのか?」

 

「ああ、魔法学院の生徒の使い魔として召喚されているから、直接は難しいだろう。なにせ、ゲルマニア嫌いのヴァリエール公爵家の三女だからな」

 

「ふん。そうか」

 

「それで、居ないと言われる可能性も実はある。いない理由は知らされないかもしれないが、その場合はタルブ村へ行ってほしい。そうすれば、来ているか、来ていなかったらそこで10日間もまっていればいい。ただ、来たあとにトリステイン魔法学院にもどっているようなら、入れ違いの可能性があるからまたトリステイン魔法学院にもどってほしい」

 

「結構面倒だな」

 

「だからデルフリンガーとドヴェルグと会わせるのに500エキューをだすって言っているんだって。これでも多いはずだが」

 

「話の腰を折ってすまなかった」

 

「それで、サイトとあえたらデルフリンガーとドヴェルグを会わせてもらうようにしてほしい。それだけでも、デルフリンガーが錆びた状態から本来の姿になるかもしれない。ただ、錆びたままなら、軽く手合わせをしてほしい」

 

「手合わせか」

 

「ああ。デルフリンガーにドヴェルグのエアシールドの魔法を吸わせてみるのが目的だ」

 

「魔法を吸う? どれくらいの力量なんだ?」

 

「多分としかいえないが、ラインの上位程度のクラスまで、高くみつもってもトライアングルの中程度の威力は吸いきれないと思う」

 

「そうか」

 

俺がはなせるところは、とりあえずこんなところだが、それでもマクシミリアンはまよっているようだ。そんなにドヴェルグの能力とか、口の悪さを隠しておきたいものなのかな?

 

「そういえば、さっきヒルダは美味しいところにいきたいと言っていたよな?」

 

「そうだけど、何か関係するの?」

 

「ああ。トリステイン魔法学院はトリステイン王国の王都トリステニアの近くにある。そこにはゲルマニアの貴族も良くたちよるほど美味いと評判の『洞窟の松明』亭があるぞ」

 

「あー。いいなー、それ~」

 

「1回分だけだがそこの食事代も、もつ」

 

ヒルダの目がマクシミリアンに行きたいとうったえかけているが、なかなかマクシミリアンは決断を下さない。

 

「今回契約の終了日は明日のラウテルンの街を離れる時までだ。そこまでに考えておいてくれないかな?」

 

「それなら。考えてみましょう」

 

もう、こうなればマクシミリアンの判断しだいか。他の方策も考える必要があるかな。

あと、このプファルツ地方を俺自身が領主としてまとめるよりも、最初はゲルマニアになれている執事をやとって、まとめてもらうことになるだろう。そして、アルビオンとの戦争には領主になったばかりとして、なるべく免責を多くしてもらう算段をとるとともに、『トルテュ』号を最前線にもっていっても耐えられるほどに実用性を高めないといけないよな。まずは人集めからだが。どちらにしても、サイトに7万人につっこませることは考えていないが、ゲルマニアだとつてが少ないからなぁ。

 

 

 

『トルテュ』号でラウテルンの街によって、『三連星』亭に泊まった翌朝、朝食後にヒルダとマクシミリアンの部屋を訪ねた。俺の部屋だと使い魔とはいえ、レアがいるからな。部屋に入って簡単にあいさつをすると、ヒルダが、

 

「マクシミリアンもOKだって」

 

「いいのか?」

 

俺は予想外だったので、思わず聞き返した。

 

「ヒルダが『洞窟の松明』亭でどうしても食事をしたいんだって」

 

俺はそのあたりは追及しないで、

 

「サイトと話すときの詳しい説明は今から行う。そのあとに契約書を目の前で書くがそれでいいかな?」

 

「かまわないがこちらから1つだけ、条件がある」

 

「何だ?」

 

「今回の件はギルドを通さないでくれ」

 

「そうすると、現金でのやりとりになるから、少なくともこのラウテルンの街へ戻ってもらうことになるがいいのか?」

 

「ああ。アムリッツァの街から、このラウテルンの街までの移動費は考えてもらわなくてもいい」

 

ふーん。マクシミリアン個人の問題より詳しくはわからないがギルドとの関係を重要視していたのか。

 

「じゃあ、詳しいのは一般的な契約書の他に補足資料という形にするな」

 

「それで」

 

詳しく話したが、キュルケこと、ミス・フォン・アンハルツ・ツェルプストーの長女の話になるとさすがに驚いていた。

 

「なんで、ゲルマニアの魔法学院じゃなくて、トリステインにわざわざかよっているんだ?」

 

「さあ? それは本人に聞いてみてくれ。そこまで親しいわけでもないから」

 

とはいっても、タルブ村に『竜の羽衣』という宝があって、魔法学院まで運べば、少なくとも運送費はミスタ・コルベールがたてかえてくれるように手紙を送っているし、ミスタ・コルベールには本人がどこまで興味を示すかは不明だが空気を清浄する魔法装置の設計図は送ってある。これですくなくとも、研究施設から漏れる匂いの苦情は無くなるはずだと手紙をおくっているし、これから『竜の羽衣』の件で伝書ふくろう屋を経由して手紙を再度送るつもりだ。

 

まあ、キュルケのことだから、最初に『竜の羽衣』もあるタルブ村に行く可能性もあるが、俺が買い取る価格は先に書いてあることから、サイトがゲルマニアである一定の地位に着くには金額がかなり足りないことには気がついているだろう。

 

 

 

さて、ヒルダとマクシミリアンの件は、このラウテルンの街から伝書ふくろうでアムリッツァのギルドに預けてある小切手から換金した金額を渡すようにした契約書を送ったから、それとヒルダか、マクシミリアンが同じ契約書の写しをみせれば、コボルトの件での金額は支払われるだろう。

この街ではとりあえず、30日分の契約金だけマクシミリアンは受けとっていった。どうもヒルダの無駄遣い癖を直させたいらしいところまではわかるが、ヒルダってどこかの貴族の娘か?

 

ゲルマニアのメイジの貴族のシステムを細かくは把握していないからなぁ。

 

こちらはラウテルンの街を含むプファルツ地方での領地の購入をヤンと正式にとりかわさないとな。首府ヴィンドボナで。

 

それで、領地購入の契約が無事に終了すれば風石採掘場と『トルテュ』号に各1名はコックが必要だろうし、執事にメイドや、風石採掘場での風石を洗って保管したり、採掘場周辺の環境整備も必要だろう。

風石採掘場を最終的に本拠地にするから名前は、前世の自身の名前からとってサトシ城にでもするか。

 




多分、サトシ城にはしません。

2013.10.02:初出
2013.10.03:改版
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