陰に潜む者は   作:烏鷺烏鷺

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第24話 夜の戦いに解除薬と

ラグドリアン湖へ向かう途中で、今までどうしていたんだ? という話はサイトからでてきたが、「ルイズが解除薬を飲み終わってからな」っというところで言葉をにごしておいた。

モンモランシーは興味をもっていないし、ギーシュは俺が退学していたのを忘れているぐらいだし、サイトは質問をしてきたは良いが、惚れ薬を飲んでしまったルイズに手を焼いていて、こちらへの関心はそれ以上持たれなかった。

 

 

 

ラグドリアン湖へついて早々にギーシュが、湖に落っこちるのはお約束なのだろう。

このあと、農民がラグドリアン湖の水かさが2年ほど前から増えていったことで、愚痴を言っていたが、ここから少々離れた風石採掘場跡の調査に来た時に、そのあたりの話は調べてある。ちなみに風石採掘場跡は、風石がラグドリアン湖をさけるようにして伸びていたので、水の精霊の力が強いところでは風石はでてこないのであろう。例えば海底の地下とかのように。

 

モンモランシーが水の精霊と話すのにカエルの使い魔を出したところで、カエルを嫌いなルイズはサイトの影に隠れたが、まあ、惚れ薬がなくてもこのあたりの反応はかわらないだろう。

水の精霊が来て、モンモランシーはすぐに交渉をあきらめたが、サイトが土下座をしてまで粘ったのが功をそうしたのか、水の精霊が「自身への襲撃者の退治」をするならば、身体の一部である水の精霊の涙を分けてくれることを約束してくれた。

 

このあたりの性格は、サイトだなぁって気はするが、さて水の精霊の襲撃者はどのような方法をとるかということで、水の精霊に関して一番詳しいモンモランシーが、

 

「たぶん、風の使い手ね。空気の玉をつくって、その中に入って湖底を歩いてくるんじゃないかしら。水の使い手だったら水中で呼吸ができる魔法を使うだろうけど、水の精霊を相手にするっていうのに、水に触れていったら自殺行為だわ。だから、風ね。空気を操り、水に触れずにやってくるに違いないわ」

 

俺はそれを聞いて補足をする。

 

「風のメイジに、多分水の精霊を蒸発させるのに火のメイジが一人ずつだとして、ともに最低でもラインの力量はあるなぁ」

 

「えっ? なぜわかるんだ?」

 

サイトが疑問を口にだしたので、

 

「水の中で、空気の玉を作れるのはラインの力量が必要なんだよ。ちなみに俺も風はラインの下位程度にいるが、そこまでの力量は無い。そして、水の精霊を相手にするのは火のメイジだ。水の精霊を削りつつ、空気の玉の中で窒息しないのは、空気を媒介としないで、魔法によって直接けずっているのだろう。俺は火のメイジだがそこまで純粋に魔法のみで水の精霊を削れるのは1日2回ぐらいが限度だ。ラインでもそういうのが得意なやつはいるだろうが、ドットではまず無理なレベルだろう」

 

「ふーん」

 

とりあえずは、水の精霊から聞いた襲撃者が水に入ってくるあたりに陣取って、夕食をとりながら襲撃者へのプランをたてていくが、モンモランシーは攻撃に加わらず誰かに守ってもらう気が満々だし、ギーシュは事の重大さを認識していないのか酔っぱらっていやがる。ルイズは夕食をとったら、眠りについてしまった。実質戦力になるのはサイト、レアに俺の2人と1匹だ。俺も本来なら指揮をとるのは得意な方でないのだが、7人以下のチームならなんとかなるだろう。

 

 

 

そして闇夜の中で1時間あまり待っていると2人ばかりの熱源を感知したのでそちらを見ると人影が岸辺によっている。俺は『暗視』の呪文を密かに唱える。2人の人影以外はやはり見当たらないが、漆黒のロープを着込んでいる。なんでそんなのをしているのかはわからないが、とりあえずは、深くフードをかぶっているので、男か女かもわからないのと、小さい方の影はタバサがいつも持っている大きい木の杖だ。タバサが北花壇騎士団の仕事の場合は、単独任務のはずだからやはりキュルケだろう。

水の精霊への襲撃者かどうかを見極めるのは俺の役割としていたので、タバサと思われる人物が空気の玉を作るための『エアーシールド』の呪文を唱え始めたのが聞こえてきたので、サイトやレアとつながっている糸の内、右手もしくは前方にいる方の糸をひっぱり合図を送る。

風のメイジを相手にするにはレアで、火のメイジを相手にするのはサイトとして、俺は他にメイジがいた場合にそっちの相手とするか、いなければサイトとレアのサポートにまわるのが役割だ。

風が見切れないサイトには火である相手、ほぼキュルケであることを確信もちながら、その役割を割り振った。レアの火の実力はメイジでいえばラインの下位相当だが、先住と同等ということもあり、詠唱をせずに火を連続して飛ばせるためにタバサでも苦戦するだろうとの読みだ。

もうひとつあるのは、タバサがレアの火からレア自身を見ても人間の形態をとっているレアをみたことがないであろうから、気がつかないだろうとの計算もある。そして俺は後方からのサポートだから、火をつかっても俺だと気がいつかれにくいだろうというのもある。まあ、ワルド子爵領にいたころの二つ名のひとつに“長距離”というのがある。その一形態が普通のメイジでは魔法が届かない長距離での“火山弾”の魔法だ。元々は“遠隔操作”の魔法をずっと続けた副産物なんだけどな。

 

ちなみにギーシュはモンモランシーとルイズの護衛役にまわっている。

 

「モンモランシーを守るのも立派な戦術だ」

 

と言っておいたが、ギーシュの酔っ払い具合じゃ役に立たなそうだしな。

 

俺は、土のマジックアローで、キュルケとタバサにけん制を入れる。キュルケはサイトの動きにかろうじてついていっているが、詠唱量が少なくてすむドットの魔法をつかって、間合いをつくっている。そこに俺の土のマジックアローがたまにはいるので、サイトに集中しきれていない感じだ。サイトとキュルケは多少サイトに有利だが、タバサとレアでは、踏んでいる場数が違うためか、レアがはっきりと押されている。レアがそろそろ危なさそうなので、左手の杖で火のムチで、右手にサーベル状の杖で向かうことにした。火のムチを放った後に、こちらの明るさで気付いたのであろう。タバサは後方にさがりながら、

 

「もしかして、シモン?」

 

「そうだが、そっちは何者だ?」

 

俺は白々しく聞いてみる。

 

「タバサ。風のメイジはキュルケ。その相手は誰?」

 

「サイトだ」

 

「キュルケ。相手はサイト!」

 

俺がサイトに声をかけようと思う前に、タバサの方が言うのは早い。

サイトとキュルケの方をみると、キュルケも火のムチをだしていて、反撃を開始しようとしているタイミングだったようだ。

 

っという具合で収まろうとしていたところで、派手にサイトとキュルケのあたりが爆発した。ルイズがおきて、認識しきれなかったのだろう。

 

「サイトをいじめないで――ッ!」

 

タバサの声とルイズのエクスプロージョンで、互いに戦っている相手として気がついたキュルケとサイトはそれぞれ、

 

「あなたたちなの? どうしてこんなところにいるのよ」

 

「なんだよ! お前らだったのかよ!」

 

サイトは初めてのメイジとの本当の一戦で疲れたのか、地面に膝をついた。しかし、ルイズの割り込みが思ったより遅かったのには泣けるなぁ。

 

 

 

お互いに確認をして、陣取っている場所でサイトとキュルケがお互いの強さ談義や水の精霊の襲撃について話を始めると、ルイズがサイトに

 

「キュルケがいいの?」

 

「あー! もう! 違うよ! 事情を聞くだけ! お前はとりあえず寝てろ。な?」

 

そんなサイトにルイズがキスをせがんで実際にほほや額にキスをしてたりすると、クスクスとギーシュとモンモランシーがわらっていたり、キュルケがすでにサイトに対して本気でなくなっているのか、ルイズの様子をみてサイトのことを実は女ったらしだったのかと感心していたのは、微妙に変な感じがする。

 

こちらはルイズが惚れ薬を飲んでしまったという事情を話したのに対して、タバサたちの方は、困ったふうにキュルケが事情をはなしてきた。

 

「そ、その、タバサのご実家に頼まれたのよ。ほら、水の精霊のせいで、水かさがあがっているじゃない? おかげでタバサの実家の領地が被害にあっているらしいの。それであたしたちが退治を頼まれたってわけ」

 

キュルケは気がつかずに、隣は旧オルレオン家で現在は王家の直轄領だって言ってしまったことに気がついていないようだ。タバサも気にしていないようではあるが。今のキュルケの話を聞いていて途中サイトが考え込んでいたが、

 

「襲撃者をやっつけるのと引き換えに、身体の一部をもらうって約束したんだ」

 

その言葉にキュルケがこまった顔をしたが、ひらめいたかのように

 

「結局は、水浸しになった土地が、元に戻ればいいわけなんでしょ?」

 

キュルケがタバサにたずねると頷く。

 

「よし決まり! じゃ、明日になったら交渉してみましょ!」

 

 

 

翌朝、水の精霊を呼んで、襲撃者がいなくなったために、約束どおり『水の精霊の涙』を受け取れることになった。それで、用事は済んだとばかりに水の精霊が湖面に戻ろうとしたところで、サイトが呼び止めた。

タバサの仕事のかわりに、交渉によって水かさを増やす理由を聞くためだ。そして水かさを増やす理由が『アンドバリ』の指輪を取り戻すためなのと、指輪を奪った人物の一人として「クロムウェル」というのが判明した。

俺は各種状況からそうだろうと思っていたが、ふと疑問に思ったことがあったので、水の精霊にきいてみた。

 

「その『アンドバリ』の指輪が盗まれたことを、誰か聞いた者がいるのか教えてほしい」

 

「単なる者よ。たしかに聞いていった者はいるが、『アンドバリ』の指輪はとりかえせるかどうか自信が無いとのことで、我は水を増やしつづけることにした」

 

一応、トリステイン側の領主か王家がここの調査に入ったのだが、真正直に答えすぎて、って正直にこたえないと水の流れで水の精霊にわかってしまうだろうからしかたがないか。まあ、それで兄はウェールズ皇太子が『アンドバリ』の指輪で生き返らせるという話を知っていたのか。

 

そのあとタバサが水の精霊に『契約』の精霊と呼ばれていることに聞いてみたり、モンモランシーとギーシュのどたばた劇があったりしたのはよかろう。

 

うーん。多分生き返らされたウェールズ皇太子が、アンリエッタ女王をつれていくんだろうが、ルイズのディスペルが無いと無理があるかな。兄が知っているから、むざむざと連れ去られることは無いと思うんだけど、『アンドバリ』の指輪で生き返らされた者の弱点が火だって気がつくかな。

多少の心配はあったが、惚れ薬の解除薬を作ってルイズに飲ますために、結局は魔法学院にもどることにした。

 

帰り道は、キュルケが俺に対して

 

「どこに隠れていたの?」

 

「うーん。ルイズが正気にもどったら答える」

 

キュルケもそれほど興味は無いのか特に追及はしてこなかった。まあ俺が消えていた間に送った手紙はタルブ村の『竜の羽衣』の地図を送って、何だったら買うことも検討するってだけだったからな。

 

 

 

そして、魔法学院についたらモンモランシーの部屋で、解除薬の調合を見守ることにした。俺の場合、風石や魔法装置と戦闘方面の方に興味がいってたから、水系統の場合は、治癒に関するもの以外は比較的おざなりなところがあるから、手伝うこともできない。

 

もう日も落ちようとしてくる時間にようやっと、解除薬の調合は終わったが、ミスタ・コルベールの研究室よりも匂う薬だな。飲むようにサイトがルイズに言うが嫌がるのは当然だよな。あのままなら、俺ものみたくねぇ。

けれど、ルイズがサイトにキスをせがんだら、その飲み物を飲んだらキスをするというところで、ルイズはつぼに入った解除薬を飲んでいる。その間に俺はサイトへ

 

「廊下にでていた方がいいぞ」

 

「なんで?」

 

「惚れ薬を飲んだ後のルイズに一般的に覚えていられる記憶は残っているはずだ。そうならば、ルイズのことだからあっという間にサイトへやつあたりがくるぞ」

 

「えっと、俺は悪いことをしてないんだけど」

 

そう言っている間に、ルイズは解除薬を飲みほして、「ふにゃ」っと言ったあとに顔がみるみるうちに赤くなっていくとともに、身体が震えだしているのは羞恥心が怒りにかわっているところだろうか。

 

俺は、サイトに言うのはあきらめてある呪文を唱えていると、ようやっと逃げ出しにかかろうとしたサイトへルイズが

 

「待ちなさい」

 

「いや、ハトに餌を……」

 

「あんた、ハトなんか飼ってないでしょうがぁあああッ!」

 

サイトは逃げ出そうとドアをあけて、追いかけていこうとするルイズの足もとに俺は杖を変形させたムチからませて転ばしてした。

 

「シモン。何するのよ」

 

「ルイズ。ゆっくりとまずは深呼吸だ」

 

「そんな、サイトに……」

 

「落ち着いてから、もう一回サイトと話してみればいい。それでも、変わらないかもしれないがな」

 

俺が行った魔法は、ルイズの姉であるエレオノールが得意としている、杖をムチに変える魔法だ。ルイズの場合、現状では負の感情をため込んでおいた方が、虚無を使うのにはよさそうだから、感情を発散させないようにして精神力を少しでも試させようというのもあるのだけどな。

 

そして落ち着いてきたルイズと、逃げ出しかけたサイトがもどってきたところで、あることを話すことにした。

 




話す内容はだいたい予想はつくかな。

2013.10.31:初出
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