陰に潜む者は   作:烏鷺烏鷺

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第3話 伝説はあっさりと

シモンが、レアを頭の上に乗せてのんびり歩いてヴェストリの広場のところまでくると、ギーシュが頬に赤い手形を残しながら、まわりの友人と話していた。広場には、他の生徒も集まりだしているが、サイトとルイズの姿はまだ見えない。

 

普段の昼休み、人気のないヴェストリの広場には人が少ないから、状況からいってギーシュとサイトの決闘……ともいえない一方的な展開が、それぞれ始まるのだろう。

 

シモンは近くの樹の下まで歩いていって、左手に持ったタクト状の杖を使って、レビテーションの魔法で浮き上がり、適当な枝につかまって座った。

俺以外に、樹の上で見学する行う生徒もいないので、どの枝でも好きに選べる。その分、気が付いた生徒からは、『何やっているんだ?』と小馬鹿にされたような目つきをされるが、こういう決闘の時の特等席だから、さほど気にはしていない。

 

 

 

それでサイトがきて、ギーシュとの決闘は始まったが、決闘だ! なんてものじゃない。ギーシュが、一方的に青銅製のゴーレムであるワルキューレで、なぶっているだけだ。ルイズは泣いているが、普段のプライドが邪魔をするのか、俺に仲裁を頼んでこない、って俺が樹の上で見物しているなんて、気が付く余裕もないのだろう。それに、仲裁を頼まないとか、自分から頭を下げることは極端に少ないので、それゆえにルイズは孤立していっているんだけどな。

そして、そのうち、ギーシュがサイトに青銅製の剣を握らせることになったが、サイトが剣を握って、左手の『ガンダールヴ』のルーンが光っているようにみえたら、数秒とたたずに、ギーシュが出した7体のワルキューレは切り裂かれて、ギーシュの横にサイトが剣を刺している。サイトの動きは確かに早いが、直線的で単調だから少々距離をとれれば、俺の力量でも、サーベル状の杖での牽制もできるか。

そう思っていると、レアが

 

「あれって、人間?」

 

「あれって、今ぶったおれて運ばれている奴か?」

 

「そうよ」

 

「あー、あれは純粋な人間だけど、刻まれたルーンの効果だな。レアに刻まれた『話す』のルーンと同じようなもので、動きが速くなったようだ」

 

「ふーん」

 

それっきり、レアは興味をなくしたようだが、あとでルイズとサイトの様子でも見にいくか。サイトの方は、多少、骨は折れているが、死ぬことはなさそうに見えたから後でもよかろう。

 

 

 

午後の授業を受け終わったところで、一度、自分の部屋に戻ってから、レアと一緒にルイズの部屋へ向かう。以前は、女子寮へ入ることにうるさい女生徒もいたが、ルイズと俺が幼馴染であることと、それでも騒がしい相手のために、女子寮への入寮許可証を書いてもらった。

 

まあ、俺がこの魔法学院にきたのは、ルイズの状態がうまくまわっているかの確認もあるが、ラ・ヴァリエール公爵からの個人的な依頼という名目の要請もあった。

それで、1カ月に1回ぐらい、丁寧な内容で手紙をしたためているが、ぶっちゃけ、ルイズの魔法……爆発に進捗は無いと書くだけなんだが。

けれど、今回のサイトの召喚はどう書こうか迷っている。場合によっては、夏休み以降の未来と思われる事項が変わってくるからな。

 

女子寮の方はうるさいのも、もう何も言ってこないし、1年生も2年生である俺に文句を言ってくることもない。

 

まあ、良い方向で言いよられることもないんだけどな……って、せめてキュルケ程度の色気は欲しいところだが、ここはトリステイン王国。女性の貴族にそんなのは求めちゃいかんよな。

 

ルイズの部屋の前に立ちノックをしたら、「誰?」とルイズの声が聞こえたので「シモンだ」と答える。少し間が空いてから「入っていいわよ」と返事がかえってきたので、鍵がかかっていないルイズの部屋に入る。

 

ルイズが自分のベッドにサイトを寝かせて、ルイズ自身はベッドの横から少し離れた椅子に座っているが、ベッドのすぐ横にいたのをずらしたのだろうでは? という気がする。

 

「ルイズが召喚した使い魔……サイトだったよな? ギーシュとの決闘に勝ったが、負傷したと聞いている。どんな塩梅なんだ?」

 

実際に決闘のところを見て知ってはいるが、死ぬほどではなくとも、かなりのダメージだっただろう。

 

「どうってことはないわよ。」

 

「その割にはルイズ自身のベッドでねかせているんだな? そのサイト用のベッドか平民用の部屋はないのか?」

 

「いいでしょ! そんなこと」

 

まあ、確かにこれ以上つっこむと、変な方向にすすみかねない。

 

「そうだな。それよりも、少しだけだがサイトの治療をしてみようか?」

 

「ほ、ほ、ほんと?」

 

本音が思わず漏れるルイズだが、気が付いていないようだ。俺は火と土を得意としているが、水系統の魔法もラインの下位程度の能力は持っている。ルイズも知っているから、少しでも早く治るように心配しているのを、隠せないのであろう。

 

「ああ。ルイズの使い魔だしな。それに、こいつの左手のルーンにも興味があるしなぁ」

 

「サイトのルーン?」

 

「ああ、どうも武器を持つと、身体能力が上がるらしいからな」

 

「えっ? サイトは剣の使い手じゃないの?」

 

「かもしれないが、聞いた話から推測する限り剣は素人だろう。剣技に通じているなら、すくなくとも剣をもっていなくたって、たった数回でギーシュのワルキューレに殴り倒されるほど、身体の動きは遅くないはずだ」

 

俺は右手にサーベル状の杖と、左手にタクト状の杖を使用するタイプなので、剣技についてもなれなりの自信はある。ジャン・ジャック兄さんには、まともな方法ではかなわないだろうが、そこは多分、心配しなくても良いだろう。

 

「まあ、それよりも、サイトの様子を見て、重症のところを中心に治癒の魔法をかけていこう」

 

魔法学院の先生による治療で、かなり治しているが、治るまでにはまだまだ時間がかかりそうなところはある。こうして、サイトが起きだすまでの3日間、シモンはルイズの部屋へ珍しく通うことにした。

 




さて、サイトが起きる時にシモンはいるか?

2013.06.26:初出
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