二刀は舞い、弾丸は貫く   作:[Schwarznegger]

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ここ難しいですね……戦場が分かれてるので、場面転換が多くなります……。
まあ、よかったらどうぞ。




Battaglia di orgoglio

 

 

 市街地に響く爆音。またしても嵐山が放ったメテオラが粉塵を巻き上げる。その背後から、時枝と木虎はアステロイドを放って牽制。距離を詰める相手に対して一定の距離を保つように行動する。

 

「うひゃー、マジで射線通んねぇな。相変わらずのやらしさだぜ、迅さん」

 

 取り敢えず民家の屋根から狙撃したが、その銃弾が掠る気配もない。迅のサイドエフェクトもあるだろうが、攻撃手陣が邪魔で射線が更に制限される。隙間を通そうにも、射線が絞られてるのだ。余程のイレギュラーが起きない限り当たらない。

 

「ちょこまかと……ウザイなぁ」

 

「俺も菊地原に同感だ。さっさと迅とやり合いたいが、手間がかかりそうだ」

 

「太刀川、目的を忘れるなよ」

 

「分かってるって、風間さん」

 

 だが、不可解だ。風刃の能力と迅の予知があれば、ここへ至る途中に仕込んでいてもおかしくなかった筈だ。それをしなかったということは——

 

「……直接、聞くしかないか」

 

 予知によって導き出された最適解に誘導しようとしているのだろう。どのような結末を望んでいるのかは、ちょっとやそっと考えたところで、あの男が悟らせる筈がない。ならば、それに乗った上で斬る。

 

「何の話だ?」

 

「いや、独り言だ。桐ヶ谷、お前らも嵐山たちを潰してこい。朝田は自分の判断で動いていい。基本こっちのヘルプで」

 

「……了解です」

 

「了解」

 

『朝田、了解』

 

 

 

 

 

「……向こうはこっちを分断するみたいだな」

 

「だろうな。一対一の剣比べなら太刀川さんの方が上だ」

 

「おい」

 

「それ、能力使わなかったらただのブレードでしょう? 予知があっても負けてたんだから、無謀じゃないですか?」

 

 黒トリガーとはいえ、木虎の言う通りそのままでは孤月よりも丈夫で斬れ味鋭く、とても軽いだけの超高性能ブレードである。さらに、嵐山の分析通り太刀川と迅の実力は剣比べという土俵の上では大幅に太刀川の方が上。

 そもそも遠征部隊に選ばれるトップチームは黒トリガーに対抗しうると判断された部隊なのだ。正直、勝てるのか甚だ疑問である。

 

「おい」

 

「……まあまあ。プランAは勝つ必要はないんだから。負けなければいい。ですよね、迅さん」

 

「……ああ」

 

 全ての指摘が的を得ているので、言い返しようがない。それを年下の時枝の絶妙なフォローで助けられるという何ともいえない微妙な感じ。

 

「で、どうする?」

 

「向こうが分断しに来るなら、それに乗ったと見せて誘い込みましょう」

 

「だな。賢、そっちに誘き寄せるから頼むぞ」

 

『了解!』

 

 どこかに隠れ潜んでいる嵐山隊狙撃手、佐鳥賢。嵐山からの通信に元気に答えた。

 

「じゃあ、頼むぞ嵐山」

 

「ああ」

 

「迅さんも自分の仕事はこなして下さいよ」

 

「……信用ないな」

 

 

 

 

 

「迅、お前の目的は何だ?」

 

 迅と嵐山たちを分断——もちろん、相手の作戦だが誘い込みの戦術など常識中の常識。向こうには三輪たちに加え、桐ヶ谷たちも居るのだ。数に頼りすぎるのも危険だが、遅れは取るまい。

 

「さっきも言ったでしょ? 後輩たちを——」

 

「俺たちの襲撃も予知で視えていた筈だ。なら、なぜその途中で斬撃を仕込んでおかなかった? 時間は十分にあった筈だ」

 

「…………」

 

「だんまりか……まあいい。俺はお前を捩じ伏せる。さあ、楽しもうぜ」

 

「相変わらずだね、太刀川さん」

 

 先程の気の抜けたような態度とは違い、幾分かやる気を感じさせる。あそこまで太刀川と比べられてこけにされたのだ。ここで名誉回復といこうではないか。

 

「おい、太刀川——聞いてないな」

 

 またしても飛び出した任務をすっぽかす様な発言を諌めようとするも、既に太刀川は迅に斬りかかっていた。

 

「行くぞ。アレではいつ死ぬか分かったもんじゃない」

 

「了解!」

 

「はぁ、めんどくさ」

 

 狙撃、風間隊の三人による緻密な連携攻撃、太刀川の二刀による剣技を以ってしても、迅の身体を掠めることはなく、逆に僅かに削られている。

 

『あ、当たんないです、奈良坂先輩!』

 

『いいから、撃て。躱されるのは仕方ない。攻撃の密度を上げて迅の対処能力を上回るんだ』

 

『…………』

 

『くあ……』

 

 無反応な二人。当真に至ってはマンションの上で欠伸をする始末。詩乃もスコープを覗いてはいるが、初撃以外撃っていない。

 

『当真さん、朝田。アンタらも少しは撃ったらどうだ?』

 

『流石にやられそうならフォローしますけど、平気そうですし。同士討ち(フレンドリーファイア)しそうなので』

 

 迅があからさまな隙を作る時があるが、そこに僅かな間を置かずに太刀川たちが入ってくるのだ。明らかに誘っている。味方ごと撃ち抜くのはランク戦でも良く使う手だが、失敗した時のリスクが高い。

 

『おいおい、躱されるのは仕方ない? そんなこと言ってっからオメーはいつまで経ってもNo.2なんだよ』

 

『……何だと?』

 

『外れる弾を撃つのは俺のプライドが許さねー。てな訳で俺は出水達の方に行くぜ』

 

 はあ、と聞いている側は頭を抱えたくなる。なぜ煽って仲間割れのようなことをするのか。当真の判断も正しいが、これではこの後でしこりが残るだろう。

 

『おい!』

 

『いや、それでいい。向こうを手早く始末した方がこっちも楽になる。だが、お前も居なくなると困るぞ』

 

『…………はい』

 

 やりきれない気持ちを抑えて太刀川に従う奈良坂。

 その後も数合、太刀川は剣を交えるも違和感を感じて仕方ない。

 

「…………?」

 

「どうした太刀川」

 

「うん? いや……なんでもない」

 

 どこか腑に落ちない表情で、太刀川は迅を見つめる。この男は本当に自分たちを倒すつもりがあるのだろうか。風刃を使う気もないようだし、そこまでの圧力(プレッシャー)もない。

 

「めんどうだなー。玉狛行きましょうよ」

 

 そう提言するのは菊地原。そもそもの目的は(ブラック)トリガーの奪取。迅を相手に正面戦闘することではない。

 

「戦力を分断している今、玉狛に向かうのは拙い。木崎たちはもちろん(ブラック)トリガーもいる。最悪挟撃されるぞ」

 

「はあ……回りくどい」

 

 最後の一言は誰にも届かず、空に掻き消えた。なぜ、風間たちがあそこ迄警戒するのかわからない。迅とは遠征訓練で何度か手合わせしたが、そこまでの強さを感じなかった。

 

 

 

 

 僅かばかり、時を遡った別の戦場では——

 

 

「嵐山さん、玉狛の狙いは何だ!」

 

「さあ、よく知らないな」

 

「ていうか、企みはそう簡単に教えるものでもないでしょう」

 

 実際、木虎もよく知らないが、バカなんですか、と言いたげな視線を送っておく。

 

「うっわ、可愛くねー」

 

 そう言うのは出水。このクソ生意気な後輩は相変わらずの様子だ。バカにされた三輪は怒りが収まらないようだ。射殺さんとばかりに睨み付け、拳を握り、奥歯を噛み締める。

 

「無駄話をする暇はないので、さっさと倒しましょう」

 

 二刀を抜き放ち、臨戦態勢に入る和人。それに応じて明日奈も細剣を構える。まぁそうだな、と頷いた出水もトリオンキューブを出して攻撃態勢に入る。

 

『……佐鳥先輩、撃たないで下さいよ』

 

『いやいや、なんで——』

 

『誘いに決まってるじゃないですか。フォローするの私たちなんですから、考えて下さい』

 

『しかし、数的不利の状況は変わらないぞ』

 

「来ないならこっちから行くぞ」

 

 言うや否や弾丸を雨霰と飛ばしてくる出水。木虎がシールドを張り、嵐山と時枝が応戦。火力も防御も足りていない。ほぼ二チームを相手取っているようなものだ。

 

「このままじゃジリ貧ですね」

 

「まあ、なんとかなるさ。賢」

 

『了解でーす。っと』

 

 バッグワームを解除。もう一本のイーグレットを生成し、二丁同時に引き鉄を引く。その二条の弾丸は出水の脚と三輪の拳銃を持った腕を撃ち抜いた。そして得意のドヤ顔と共にその場から離脱する。

 

「あの野郎〜」

 

 シューターは腕が無くても弾丸を扱える。だから脚を撃ち抜いた。出水も頭と心臓は警戒していたが、これは予想外。一方の三輪は攻撃手(アタッカー)の寄りの万能手(オールラウンダー)なので、武器を扱える腕——しかも利き腕が無くなるのは後々辛くなってくる。

 

「チッ——陽介」

 

「ほいほいー、っと」

 

「木虎、フォローを頼む」

 

 一発で仕留めろ、と言いたいが止むを得ない。確実な手段を選んだのだ。ダメージを与えられずに居場所がバレるよりは余程マシだ。

 

 

 

 佐鳥を追撃する米屋と援護に回った木虎。今のところ完全な一対一だが、下のより一層深刻になった数的不利の状況を考えると、手早く終わらせるか、多少のダメージを与えて合流するか。木虎の役目は佐鳥が離脱するまでの時間稼ぎだが、相手にしてみれば好都合。A級五位とはいえ、たかが二人。この有利な状況で出水の高火力攻撃と数で圧殺し、始末する。

 そこまで考えて、木虎のやるべき事は決まった。あとはどうするかだ。

 

「おいおい、不法浸入だろ」

 

「……米屋先輩、不法浸入って言葉知ってたんですね」

 

「お前なぁ、流石に俺でも『DANGER(デンジャー)』を『ダンガー』とは読まないぜ?」

 

 ま、と石突で床をトントンと叩いて構える。

 

「行くぜ」

 

 風車のように槍を振り回す米屋。対して狭い室内を利用して逃げ回る木虎。

 

「つーか、狭えな……『旋空孤月』」

 

「なぁっ⁉︎」

 

 壁を切り刻み、床と天井も破壊する。死角からの斬撃に反応したが、多少の手傷を負った。

 しかし捨てられてるとは言え、元は人の家。そのような蛮行に優等生が黙ってはいない。

 

「人の家ですよ?」

 

「固いこと言うなって。この方が全力でやり合えるじゃん?」

 

 不敵な笑みを浮かべて槍を構える。この距離は相手の間合だ。視界はオペレーターの支援で問題ないが、遮蔽物がない。かつ、切り崩した瓦礫などで足場が悪い。そして屋内の狭さを利用するつもりがそれも無くなってしまった。

 だが、それは言い訳にならない。彼女はエリート。与えられた仕事に期待以上の結果をもって答える。

 

「私に全力を出させたことを後悔させてやるわ」

 

 木虎VS米屋、開幕。

 

 






今回もイタリア語。意味は『プライドをかけた戦い』。
適当です、ハイ。最初は違ったんですけど、展開が変わったので適当に捻り出しました。



それじゃあまた次回とか。
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