シャア・アズナブル大佐の活躍によって連邦艦隊は壊滅し、僅かな生存者が捕虜としてアクシズに収容された。
無事救助されたハマーン・カーンは極限状態による精神的ダメージが大きく、静養のために入院中である。
アクシズの防衛線が易々と突破された責任を問われたエンツォ・ベルニーニ大佐は兵力統括顧問の職を解かれ、腹心のダリオ少佐・マルコ少佐らと共に更迭された。
これにより、戦争継続派は求心力を失うという…自らの謀略により呼び寄せた連邦軍への失態により大きな墓穴を掘る結果に終わった。
■■■マハラジャ提督執務室■■■
「大佐の働きによってアクシズへ直接被害が及ばずに済んだ。娘‥ハマーンのことも含めて感謝する。ありがとう! 」
「御息女の救出に関しては優秀な部下の働きがあったからです。マハラジャ提督から労いのひと言でも掛けて頂けたらよろしいかと?」
「レナ・オオトリ中尉とファビアン・フリシュクネヒト曹長だな? 後程二人に会うとしよう! 」
「マ・クベ少将には後始末を押し付けるようで心苦しいが、エンツォ大佐に代わってアクシズの軍事部門をお任せする」
「武闘派でない私は些か門外漢ではありますが、ザビ家に仕える身なれば‥謹んでお請け致します」
文官出のマハラジャには戦争継続派を抑えることに苦慮していたのだが、マ・クベとシャアが加わったことは渡りに船だったのだ。そこへ来て連邦軍の襲来に対するエンツォ大佐らの不手際は願ってもない戦争継続派一掃の機会であった。
マハラジャ提督と向かい合いシャア・アズナブル大佐とマ・クベ少将…そして、何故かその二人に挟まれてソフィア・メルクロワ中尉が三人掛けのソファに座っている。
この場に喚ばれる前に上官のイリーナ中佐に叱られたソフィアは内心…(提督からも説教か?)と身構えている。
叱られた理由? それは……
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1時間程前のこと
「ソフィア・メルクロワ中尉‥貴様は何時から
「申し訳ありません! ……釈明の言葉も御座いません」
「貴女に裏方の任務があろうと詮索は致しません…が、ミネバ様の親衛隊員という立場を忘れては困ります。以後、気をつけるように! 私からはこのくらいで…提督が御呼びですよ」
「気をつけます…… 提督が私を? 」
表はまだしも裏など知らんわ! ‥と叫びたいところだが、キシリア・ザビが裏の自分なのだからイリーナの言うことは強ち間違いでもない。しかし、マハラジャが呼びつけるとは…ミネバの世話を投げ出すことは単に職務怠慢レベルでない程の不始末なのだな…
「…
始末書というものを提出されたことはあれど、まさか自分が書くことになるとは…… 足取りが重い
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「…‥? ‥ィア中尉! 」
「メルクロワ中尉!! 」
「!? はい! ‥私ですか? 」
隣に座るマ・クベ少将に怒鳴られ我に返るソフィア。
どうやらマハラジャ提督が話し掛けていたらしいが?
確かエンツォ・ベルニーニ大佐更迭により、兵力統括顧問をマ・クベ少将が引き継ぐことになった。このため、ミハル・ザビ殿下お迎えはシャア・アズナブル大佐が司令官兼艦長と…話をしていたところだ。
「ソフィア・メルクロワ中尉には副長として大佐を補佐してもらいたいのだ。まあ、最初から本作戦の鍵を握るのは君だ。航海中も女房役を頼むことになるが、期待しておるぞ」
「は‥了解致しました」
本作戦の簡単な流れは…
地球圏到達後は民間ルートで月面都市フォンブラウン市へ潜入する予定だ。シャアとソフィアは夫婦を装い行動するべくジオン共和国の市民IDを用意してある。
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格納庫に佇む二機の
「いやぁ、緊張しましたよ!提督から感状貰うなんて初めてですからね! 」
「あたしも感状は初めてだな? 勲章は2個目だけどさ♪ 」
つい今しがたマハラジャ提督の元から戻った二人(レナとファビアン)はご機嫌だ。ファビアンは敵モビルスーツ3機撃墜。レナは5機撃墜した。二人には感状がだされ、レナは勲章も授かった。アンディも格闘戦にて2機撃破と劣勢なザクで奮戦した。
「二人とも初陣から間もないのに大したものだなぁ! 全く羨ましいものだぜ! 」
アンディはそう言ってはいるが、羨みや妬みなどは微塵もない微笑ましげな表情である。
「いえいえ、アンディ隊長殿のご指導のお蔭です。それに‥この機体」
ファビアンは姿勢をただしてアンディに向き合い敬礼する。然り気無く目上の者へ気遣いが出来る抜け目のなさが窺える。
「今気づいたけど‥ファービィはどうしてイェーガーに乗ってんだ? 」
今更ながら気づいたレナであるが、ゲルググJは配備が始まって間もない新鋭機だ‥本来ならファビアンのような実績の無い若い下士官に貸与されることは
「そういえば不思議だな? 俺なんてザクのままだぜ(笑)」
アンディは
「元々、僕はこの新鋭機をアクシズへ運ぶ輸送任務を命じられただけなんです。途中で敗戦となり、なんというか‥棚ボタで正式パイロットをやってるって感じです」
ファビアンは敗戦間際にアクシズへの輸送艦に乗り込みやってきたそうだ。本来の任務は新鋭機体を降ろしたら戻る筈が敗戦の混乱で居残った。青い塗装もパーソナルカラーではなく、
「なあんだ! 棚ボタかよ! それじゃあたしと変わんないな~ 仲間だ! ナ・カ・マ♪ 」
「…よく言うぜ。うちのお嬢ちゃんも
アンディは知っている…レナは棚ボタと言うが、彼女の場合はア・バオア・クー要塞陥落のどさくさに紛れて強奪同然に乗り込んだことを……
棚に置いてあるぼた餅を鷲掴みしたようなものだ…
乗機だったリックドムⅡが損傷し、やむ無く帰投した先に白いゲルググが鎮座しているのを躊躇せず強奪? 予てよりの統合整備計画に基づいた設計で操縦系統が似通っていたのも幸運したこともあり、レナは初めて操縦する新鋭機に乗り陥落寸前のア・バオア・クー要塞から連邦軍モビルスーツの追撃を振り切り脱出に成功したのだった。
ともあれ…あの戦争を生き延びこの場に居合わせる三人は強運を持ち合せているのだろう。
「しかし…なんでツノ付いてんだ? 」
アンディはちらりとゲルググの頭に装備された指揮官を示すツノを見て不満げに呟いた。末期に極小数が生産されたゲルググJはエースパイロットや指揮官向けに優先的に配備された。頭の
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「暫しの別れだ…ミネバ。‥戻る頃には話も出来よう」
お昼寝中の健やかな寝顔を片膝をつき見つめるソフィア…。親衛隊の赤い軍服に黒いケープを羽織る姿は遠目には赤い彗星のようである。
「あらあら、母上様よりも叔母上様のようですね」
傍にやってきたのは親衛隊のカミーラ中尉と侍従のラミアだ。
「私が… キシリアのようだと? 」
「勿論‥冗談よ。でも、主従の関係には見えないわねぇ」
イリーナ・レスコ中佐の右腕だけあり、なかなかの洞察力だ…冗談と嘯くその眼光は鋭い。
「フフフ‥私は未だキシリア閣下の影を引摺っているのかもしれませぬな? …後のこと宜しく頼みます。ラミア殿、カミーラ中尉」
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「総員整列!」
司令兼艦長のシャア大佐が号令
見送るマハラジャ提督とラミアに抱かれたミネバ。そして主だった幹部の顔ぶれが居並ぶ。
「シャア・アズナブル大佐以下59名。月フォン・ブラウン市に向け出発致します! 」
「貴官らの航海の安全を祈る! 是非とも無事‥ミハル・ザビ殿下をこのアクシズにお連れしてくれ! 」
「ミネバ皇女、マハラジャ提督‥見送りの方々に対し敬礼!!」
シャア大佐の号令に合せ乗員全員が敬礼した。
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乗艦した乗組員は各々持ち場に就いて行く。ソフィアは当たり前にブリッジへと上り……戸惑った!
「副長というのは…何処へ? 」
「ソフィア中尉どうした? 君の持ち場はそこだろう? 」
戸惑って周りを見回しているソフィアに気づいたシャアが一段高いキャプテンシートから声を掛けた。
シャアに促され座るシートの前には通信機器類が並んでいる。
「そうか、私としたことが… 」
ソフィア・メルクロワ中尉は
「使い方がわからん」