機動戦士ガンダム K.D.A.   作:apride

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Fly Me to the Moon

ソフィアは背中に汗を感じながら座席に座り、徐にヘッドセットを頭に…少々髪が邪魔に感じながら装着した。

 

「……(どうするんだったかな?)」

 

 

『アクシズコントロールよりインゴルシュタット応答せよ』

 

目の前のパネルが〔受信〕を示し、ソフィアの耳に管制官の声が飛び込んできた!

 

「こちらインゴルシュタット‥感度は良好だ! 離陸許可求む! ‥あっ!?」

 

『おいおい! 空港じゃあるまいし離陸(・・)はねーだろ(笑)いつでも出ていいぜ!‥発進を許可する。航海の安全を祈る! 』

 

少々間違いがあったが、管制官との平文通信など然程難しく無いのだ。落ち着いて見れば難解な操作を要する機器類など見当たらない…

そう‥今は宇宙世紀(・・・・)なのだ! 噂ではド素人の少年少女でも連邦軍艦を運用出来たそうだ。しかも、本職の軍人を相手に連戦連勝出来てしまうくらいにとっても簡単なのだ(笑)

 

「ふん、他愛もない。…木馬のガキ共ができるのだ。私にだってヤレるわ! …木馬(・・)って何だ? 」

 

平静を取り戻し、すっかり冷えた汗に不快感を持ちつつもピンチを乗り越えた?ソフィア(キシリア)だったが、自ら発した木馬(・・)という単語に少許の戸惑いを感じた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

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「交代致しますソフィア中尉」

 

もうそんな時間かと声に振り向くと、交代要員のシンディ伍長だった。ミディアムボブの可愛らしい17歳の少女だ。本人も公言して憚らないのだが、シャア大佐に憧れて志願したそうだ……。ブリッジ要員の女子は皆揃いシャア大佐がお目当てらしい。やたらと女性比率が高いのが気になるが、乗員の選定には艦長であるシャアの意向も反映して…… ま、そういうことなのだろう。

 

「では、頼んだよ」

 

ソフィアが交代のために席を立つと、後ろの艦長席でもナタリー中尉が交代が来ていた。ブリッジ要員の大半が現地部隊からの選抜であり、彼女達のチームワークに期待しよう。

 

「「「えぇっ! 交代!? シャア大佐いないんだ」」」

 

「あなた達‥何か言いました? 」

「「「なんでもありません!」」」

 

 

……期待しよう

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

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ブリッジを出たソフィアは一目散にシャワーブースへ飛び込んだ。何故そんなに急ぐか… 全身に嫌な汗をかいたこともあるが、ザンジバル級にはシャワーブースが少ないため早い者勝ちなのだ。しかも、重力ブロックでないので密閉式全方位噴射だ。シャワーを浴びた後は乾燥モードになり、一定基準値まで湿度が下がらないと扉が開かない仕組みだ。女性用は後がつかえやすい…髪が長いと早々には乾かないのだよ!

 

「ふぅ… (マスクが邪魔だが…)」

 

顔も同時に洗いたいが、空気マスクを外すと溺れる可能性があるのでやめておく…

シャワーブースの取扱い説明にも〔caution! 作動中はマスク装着厳守!〕と書いてある。因みに〔caution!〕の記述は守らない場合は生命の危険を生じる恐れがあるという意味だ。

 

 

 

シャワーを浴びさっぱりしたソフィアは娯楽室に居る。ふと気づくと、クラシカルなジュークボックスが備え付けられている。

 

「これは珍しいな? 誰が置いたか知らんが面白い趣向だな。…この曲は!?」

 

宇宙世紀の現在ではアンティーク扱いのジュークボックスは1950年代アメリカを彷彿させる佇まいだ。ソフィアは並んだ曲目リストから目に留まった一曲を選んだ。

 

「行き先に相応しい曲だな… 」

 

流れる曲は20世紀半ばの流行歌だった。

そして、これはアポロ11号により人類が初めて月に持ち込んだ曲なのだ。目を閉じ聞き入るソフィアは向かう先の月に想いを…

誰かがやってきた気配に振り向く。

 

やってきたのはレナとファビアンの二人だ。…この二人はいつも一緒にいるような?

 

「お、ソフィ? あれ…この曲は! ヱ⚫ァンゲ⚫ヲン!! 」

 

「違うわっ!! 」

 

 

 

 

間違いではないが、正解とも言えない…

キシリア閣下はヱ⚫ァンゲ⚫ヲンを知らなかった。

 

 

 

 

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その頃、月のフォンブラウンにある街角ではトワニング准将が複雑な思いで空を眺めている。

先日届いた緊急伝の符号は…『キシリア・ザビ』のものだった。しかし、トワニングの元には『キシリア戦死』の報は既に届いているのだ。届く筈の無い主人(あるじ)からの便りを受け取った彼は疑ったが、その内容とホットラインの秘匿性を考慮すれば…熟考の末に現在の主人であるミハル殿下の耳に入れたのだ。

 

「キシリア様は亡くなったのだ。ソフィア・メルクロワ…何者なのだ?」

 

 

発信者の名が記されていたが、トワニングには聞き覚えが無かった。思いに更け宇宙(そら)を見上げる…

 

 

「どうなさいましたの? …お父様(・・・)

 

声に振り向く先には妻と娘のミハル(・・・・・)が微笑んでいた。

 

 

「いや、なんでもない。買い物は済んだようだな? 家へ帰ろうか…」

 

 

 

願わくは…この仮初めの幸福に浸って居たいと祈ってしまうトワニングだった。

 

 

 

 

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