機動戦士ガンダム K.D.A.   作:apride

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グラナダの記憶

「ジョニー・ライデン? ……」

 

ソフィアの脳裏にはある光景がぼんやりと浮かんできた……

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「キシリア様、何故私を…」

 

 

「貴方が一番この場に馴染めてなかったから‥かしら?」

 

 

二人は盛装に身を包み手を取り合っている。

 

 

その手から肩へ…

 

 

さらに顔へと視線を上げて…

 

 

男の口元が見え…

 

 

 

 

「お…思い出せ‥ っ! 」

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

『 ポーン 』

 

船内放送が流れる

 

『ladies & gentleman ……本日は当LunaLineをご利用頂き有難う御座います。本船は間もなくグラナダ宇宙港に到着致します。フォンブラウンへは到着ロビー左側連絡路からお乗り換えとなります』

 

ジオン共和国との直通便はグラナダ宇宙港との間に結ばれており、さらにフォンブラウン市へはリニアラインが4時間で結んでいる。他にはルート1を月面車でという方法もあるが、両都市間約4000㎞を走破するのは現実的ではない…。月の二大都市として有名なグラナダとフォンブラウンだが、ニューヨーク・ロサンゼルス間くらいに離れているのだ。ちなみに地球との便は全てフォンブラウン宇宙港発着になる。

予定では到着ロビーから直結しているリニアラインに乗り換えてフォンブラウンへ向かうのだが……

 

「大佐‥残念ながら、ジョニー・ライデンなる人物は存じ上げませぬ。いえ、思い出せないと申しておきます」

 

「そうか、…仕方あるまい。君が今も記憶に欠落があることは聞いている」

ここでシャアは…記憶の欠片にキシリア殺害もあるのでは?‥と、ソフィアに対しての警戒は続いている。

 

「大佐…ジョニー・ライデン某については全くですが、本件に関する情報が戻りました。寄り道しても宜しくて?」

 

 

 

 

 

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グラナダ市

 

繁華街の一画に建つ大型商業ビル

入居テナントの企業名が並ぶなかにその会社が名を連ねている。

 

【 character & sound advertising company 】

※(character & sound 広告代理店)

 

ビルの4F-10Fが占有フロアーになっているところからは、それなりの規模の企業の様子だ。もしかすると自社所有ビルなのかもしれない。

シャア大佐一行はエレベーターに乗り当該フロアーへと足を運んだ。扉が開いた正面に全面ガラス張りの入口があり、大きく会社名が掲げられている。

 

「これは…漢字? 中国語か日本語の表記だな」

シャアは英語表記の上に大きく書かれた4文字の漢字に興味を示すが理解はしていないようだ。同行しているレナ中尉は日系スペースノイドだが…。シャアはレナをチラリと見遣る。

 

「大佐っ!? あ・あたしは日系宇宙移民4世だから…さっぱり」

 

「これは……あの馬鹿

 

横で見ていたソフィアが小さく溢すが、誰にも聞こえてはいなかった。

 

 

 

【受付】

 

「ベルナール社長ですか? 失礼ですが‥アポイントメントは御座いますか?」

 

「無い! キシリア・ザビの遣いが来たと伝えていただこう!」

シャアの横から割込みソフィアが仏頂面で受付の女性スタッフに応えた。

 

「どうしたのだ? 随分と機嫌が悪いようだが?」

 

流石にシャアもソフィアの不機嫌な様子を訝しげに聞いてきた。

 

「いえ、機嫌が悪いと言うか呆れて…。と、兎に角!社長に会わないと!」

 

暫くして……

キシリア・ザビの名が効いたのか、社長が面会に応じると返答があり応接間に案内された。

 

 

 

 

「私が社長のベルナールです。…キシリア・ザビの名を出すとは‥君達は誰だね? 」

 

現れたのは髪をきっちりセットし、スリーピースのスーツ姿の質実剛健といった雰囲気の中年男性だ。

 

「お元気そうですね‥ベルクマン少佐」

 

来客用のソファに深く座り脚を組むソフィアが男を一瞥して直ぐに手元に視線を落とすと少々高圧的な態度で話し掛けた。その態度には後ろで見ているレナとファビアンは勿論、横で見ていたシャアも呆気に取られる。

 

「なっ!何故…その名を?」

 

しかし、当の本人が一番驚いたのは云うまでもない。ベルナールことベルクマンは眼を剥き震えているようだ。

 

「言ったでしょう? キシリア・ザビの遣いだと。私は親衛隊のソフィア・メルクロワ中尉です」

 

「親衛隊‥!? 」

 

親衛隊と聞いて真っ青になるベルナール(ベルクマン)

 

「貴方はキシリア様に借りがありますね?」

 

「はっ!?…はいぃっ!! 失態を見逃して頂いた恩がありますっ!」

 

既に彼は極度の緊張状態にあり、まるで尋問を受ける捕虜のようである。

 

「あら? そんなに堅く為さらなくて宜しくてよ? 確か‥命が長らえた恩ですよね? 返して貰いますよ? フフフ」

 

ベルナールことベルクマンは戦前のグラナダ市で諜報活動任務に就いていた。…キシリア配下でだ。グラナダ市長との極秘会談にキシリアが身分を隠して来訪した席で重大な失態を犯し…彼はキシリアのSPの銃で撃たれ処刑された。‥のではなく、罪を不問にする代わりに身分を変えての工作員となっていた。

 

「は‥あの時、胸を撃たれて…死んだと思ったら、まさか模擬弾だったとはね。流石に胸骨骨折で暫く入院する羽目にはなったが生きてる」

 

ベルナールは当時の様子を自嘲気味に語った。

そんな様子をこめかみをひくつかせて聞いていたソフィアが口を開いた。

 

「ところで…あの看板はなんです? 」

 

「おお! 気に入ってもらえましたか!! なかなかクールでしょう? 今流行りの漢字と言うか日本語と掛け合わせて社の看板を掲げてみたのですよ。そもそも‥漢字というものは四文字がとても美しいと聞きます。我ながらとても格好良いと惚れ惚れしておるのです!ハハハ」

 

明らかに不機嫌な様子のソフィアに気づくどころか、逆にに明るい表情になり自画自讃の態度で誇らしげな顔でベルナールは答えた。

 

「…馬鹿か? 」

「‥は?」

「4文字の漢字表記を日本語で読み上げてみろ!」

 

ソフィアの醸し出す居丈高な態度に条件反射的にベルナールはオドオドと狼狽するのがハッキリと見てとれる。

 

「えと…『字音広告』を変換… じおんこうこく…!? ジオン公国!! あぁぁっ!!」

 

漸く気づいたベルナールは素っ頓狂な悲鳴とも言い難い叫びをあげて真っ青になった。

 

「直ぐに片付けて…(殺しておけば良かった…)」

 

 

 

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「いやはや‥私としたことが…。公安に摘発されるところでした。あれではこの会社がジオンの地下組織と宣伝しているようなものですからね! …ハハハ、助かりました」

 

慌てて表の看板を外してきたベルナールは汗だくの額をハンカチで拭いながら恐縮している。

 

「…危うく摘発されるところでしたね(相変わらず間抜けな男だ)」

 

キシリアがベルクマン少佐を生かしておいたのは…

この男‥諜報部員としては落第ものなのだが、真面目な性格なことと生来の人当たりのよさもあって商人としての才には恵まれていると見ていた。事実、このグラナダ市を拠点に月の各都市で手広く繁盛させている。演劇やコンサート等のイベント興業はほぼ独占しているそうだ。

 

「それでは、あらためまして…御用件を伺います。それと、そちらの御仁はどちら様ですかな?」

 

気を取り直し、姿勢を正したベルナールは鋭い視線をソフィアの横へと移した。やはり元諜報部員だけあり、相手の素姓が分からぬ内は気を抜かない様子が伺える。

 

「申し遅れました。私はジオン公国軍大佐のシャア・アズナブルと申します」

 

シャアはサングラスを外し、青い双眼をベルナールに向ける。

 

「シャア・アズナブル… 大佐!? 赤い彗星!! あ、貴方が!? 」

 

ベルナールは赤い彗星まで伴って現れたことに漸く事態の重大さに気づいたようだ。

 

「ベルナールさん! ‥そろそろ本題にはいりましょう。貴方を見込んでに手配を頼みたい」

 

赤い彗星を目の前にまたもあたふたしているベルナールを一喝するようにソフィアが口を開いた。

 

「は‥はい! 手配…とは?」

「我々は地球へのシャトルに乗りたいのだが…」

「地球へですか…? ここまで来れたのなら問題なく定期便に搭乗出来ませんか?」

 

「…問題がありましてね」

 

 

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「EFF47? 」

「アイドルですよ。その名の通り連邦軍の選りすぐり47人で構成された女性グループ! あくまでキャッチで、連邦軍のコスチュームに身を包み歌い踊る女の子集団ですがね」

 

字音広告(・・・・)が興業主として月面二都市でコンサートツアーの最中なのだと…。その集団に潜り込み地球へ渡ろうという手筈なのだ。

「成る程‥紛れるにはちょうど良いな。出入国審査は問題ないのだろうな?」

「大佐の御心配には及びません。芸能界というのは古来ヤクザな稼業でして…裏事情に関しては特に融通が利くのです」

シャアの心配を自信に満ちた態度で両手を掲げて『心配ご無用』とゼスチャーを交えて答えるベルナール社長。横で脚を組み座るソフィアも委細承知とばかりに頷いた。

 

「あれだけの大所帯ですが4人を潜り込ませるのは少々キツイのですが、幸い彼等が地球へ発つのが3日後ですので準備には充分です。大船に乗ったつもりでお任せください!」

 

ベルナール氏は自信満々に胸を張った。

 

 

 

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