機動戦士ガンダム K.D.A.   作:apride

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キシリアの遺産【前編】

「ザビ家の遺産‥否、キシリア様の遺産を引き継いでいただきます」

 

「姉上の遺産‥それは如何様のものなのだ? 」

 

キシリアの遺産と聞いたミハルは物騒なモノを想像した。が‥直後にソフィアの口から語れたのは至極当たり前の遺産である。

 

「モノ? 普通に財産だが? うん、ざっと‥公国の国家予算に換算すると5年から10年分くらいですかね? 」

『普通』と云うには途方もない財産。それ故にキシリア自身も把握出来ないレベルに膨れ上がっていたためにかなりアバウトな例えになる。

 

「10年だと!! よくもまあ、国家存亡の危機という状況下でそれ程の莫大な資産を隠し持つとはな… よくもまあ… 」

 

ミハルは遺産のスケールに驚くとともに呆れた。個人が持つには莫大過ぎる資産であるだけでなく、デギン公王やギレン総帥の目を盗んでの蓄財である。さらにミハルは確信したのだ…

 

――キシリアは戦後を見据えていた――

 

「キシリア様はあの戦争を‥人類の革新の為の聖戦などとは考えておられませんでした。さらにスペースノイドの自治権獲得も大義名分でした。戦争特需により急伸する分野へ手を伸ばしておられましてな…」

事実‥ミハルの後見人となっているトワニングは月モルガン家当主の肩書を与えられAE(アナハイムエレクトロニクス社)大株主であると同時に非常勤役員の立場に就いている。勿論、キシリア・ザビの資産を任されている名目上の当主である。

 

「アナハイムだけに留まる訳…は無いな? 地球連邦の経済界へキシリア機関が戦前から暗躍していたことは私も噂程度には聞いていたが…」

キシリアは学生時代には既に投資ビジネスで一財産を築く程であったのだが、さらには自ら相場をコントロールすべく情報分野への造詣も深いのだった…

 

「主な資産は地球に…管理は所謂、スイス銀行です」

スイス銀行という銀行は存在しない。ここでいうスイス銀行とはスイスにあるプライベートバンクであるのだが、高い秘匿性を誇るが故にキシリアの匿名口座を引き継ぐにはミハル本人が赴く必要がある。

 

「地球へ降りる‥のか」

ミハルはスイス銀行と聞いて理解した。古くから富豪や独裁者らの資産管理を請け負ってきた歴史は宇宙世紀に於いても健在である。口座を持つ本人でさえ来訪の際には事前連絡が必要とされ、対応窓口も個別担当者が充てられる。相続手続きに於いても法定相続人本人が赴くことが絶対条件のひとつとされる。

 

「ところで…ライデン少佐は今どちらに? 」

 

話が一段落して途切れたところでソフィアはミハルに訊ねた。あの後…ア・バオア・クーから離脱したキマイラ隊が向かう筈の場所はグラナダだ。キシリアは攻防戦の頃合を計ってグラナダへの帰路をキマイラ隊の護衛を受けて行う段取りをしていた。予めザンジバル級機動巡洋艦を用意していたのも脱出を見越してのことなのだ。航路の露払いをすべく先行したキマイラはキシリア戦死の報を受けたとしても他に往くべき場所は無い筈である。

 

 

「……キマイラは解散、ジョニー・ライデンはもうここには居らぬ。あの男が主人と仰ぐのはキシリア・ザビ唯一人なのだ」

 

 

 

「そうか… ならば仕方ありませんな」

 

何か重大なことを忘れているような気がした…が、思い出さないなら些細な事であろう。

 

「…落胆すると思った私が肩透かしだな? ライデン少佐が居なくとも問題が無いのか? 」

 

ミハルは素っ気なく納得したソフィアに釈然としない様子で疑問を口にする。

 

「ええ、全く以てノープロブレムです。あやつは美的感覚に少々問題あるしな…」

今の自分にジョニーは興味を示さないだろう…何せ彼はキシリアのような年増風のドギツイ女が好みなのだ。…ミハルやソフィアの可愛い系女子には乗りこなせない荒馬といったところだ。使えない駒ならさっさと見切るキシリアさんである。しかしながら、『ユニコーン』の紋章を掲げるナイト気取りの男が年増好み?

 

「最後の方が聞き取れないが… もしかして仲悪いのか? 」

「えっ! イヤ‥赤なら彗星がおりますから問題ないと! 」

 

稲妻が居ないなら彗星がなどとあまりにも適当に誤魔化すソフィアだが、真顔でミハルは問いかけてくる。

 

「その赤い彗星のシャアのことについて確認する。あの男… キャスバル・レム・ダイクンは信用出来るのか? 」

 

「知っていた‥のか!? 」

 

ソフィアはミハルの問いに驚く。

 

「私を誰だと思う? ザビ家末席ではあるが、独自のコネクションは持っておる。一部ではあるがキシリア機関を引き継いでもいるのだ。あの男はザビ家を恨んでいるのではないのか? 」

 

ミハルは集めた情報からシャア・アズナブルがキャスバル・レム・ダイクンであることを知った。更には彼が幼少期にザビ家により迫害を受け…結果、母アストレイアを死に貶めた恨みを晴らすべくジオン公国軍人として身分を隠してザビ家に近づいていたのでは? ‥と考察している。

 

「兄ガルマの戦死に際してはシャアが関わっていたのではないかと思うのだが… 姉上も疑っていた節がある」

 

ガルマ・ザビ戦死の直接の原因はペガサス級連邦軍艦ホワイトベース隊からの攻撃なのだが、そうなるべく謀ったのはシャアである。戦闘詳報に於いてはシャア少佐(当時)の索敵ミスによるものと記されている。

 

「シャアのミスです。有能と誉れの高い軍人であっても間違いは犯すものです。キシリア様もそれは確認されました上で配下に…」

 

――――――――――

 

 

――――――――――――――

 

 

「ガルマ、聞こえていたら‥ 生まれの不幸を呪うがいい。‥(さあ、歯噛み悔しみながら逃げるがいい)」

 

 

 

「謀ったなシャア! 謀ったな…しかし、私もザビ家の男だ。生き恥を晒すものか! ジオン公国に栄光あれ! うおぉぅぅっ!!!」

 

《 ドォーン 》

 

「…え? ガルマ? マゼ‥じゃない!カミカゼアタックって…お前何してんだよっ!! 」

 

 

 

 

『ガルマは死んだ! 何故だ!? 』

 

テレビからはジオン公国総帥ギレンの演説が聞こえてきた。

 

「坊やだからさ… 」

 

既に飲み干した空のグラスに氷を転がし呟くシャア。

 

事実、シャア自身もまさかガルマが大和魂全開で機体ごと特攻するとは予想出来なかったようだ。尻尾を巻いて逃げてくるガルマ坊っちゃんを慰めてさらに懐柔するつもりでいたらしい。ガルマの負けず嫌いな気性を見誤ったシャアの誤算である。後日、ドズルから散々叱られた上で辺境に左遷を喰らった彼は一人寂しく亡き友人を偲び場末のバーで酔い潰れ泣いているところを私に拾われたのだ。私(キシリア)は存分に調べあげていたのだよ! 抜りはない‥フフフ。

 

―――――

 

―――――――

 

―――――――――――

 

 

「ならば姉上殺害の嫌疑はどうだ? 」

「!!… 」

 

キシリア殺害の嫌疑まで飛び出し、一瞬ソフィアは言葉に詰まる!

 

「答えられぬか? やはりシャアが… 」

 

不味い! ソフィア(キシリア)は自身を殺害‥否、結果的には未遂なのだが、殺害すべく行動したシャアを擁護することに戸惑いを感じていた。しかし、ここでの沈黙は肯定に等しい。

シャアは利用価値がある…

レナが言っていた日本の格言とやらを思い出す…

 

『死して屍拾うものなし』

 

 

違う!!

 

 

『罪を憎んで人を憎まず』

 

うむ、これだ。あやつには傍にいて真綿で首を絞めるようにちょっとずつ仕返ししてやろう…

 

 

「シャア‥いえ、キャスバルはキシリア閣下に手を下しておりません」

 

嘘は言ってない。間接的には奴の所為で死んだが、運が悪かったと思うとしよう…

 

 

「それは‥本当に? 間違いなく? シャアは姉上を殺害していないと断言出来るのか? 」

 

「断言します。あの事故の直前、退路を確保すべく飛び立つライデン少佐と入れ違いに現れたシャア大佐の姿を発進間際のブリッジから見ました。彼は此方に向け敬礼し見送る様子が伺えました」

 

その直後にバズーカを構えたことは内緒にしておく。

 

「そうか…。現場で見ていたソフィアが言うなら間違いない! 実は報告書にも死因は損壊した艦橋構造物による頭部強打となっていたのだ。これで納得することができた…有難う、ソフィア」

 

「は…」

 

「それから、まだ口調が堅苦しいから‥もう少し崩せ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

────────────────

 

翌日、コンサートツアー中の楽屋裏に用意された控室ではソフィアがミハルと一緒に着替えの最中である。

 

 

「どうだ! 似合ってるか? 」

 

颯爽と現れたソフィアは何処で覚えたのかEFF47のヒット曲サビのシーンで使われる決めポーズで立つ。

 

「はいはい‥とぉーってもお似合いですわ! あんた急にイメチェンしたのはこのためだろ!? 」

 

 

EFF47の衣装に身を包み鏡の前でポーズを取り御満悦なソフィアにレナは呆れ顔で応える。この時になりレナは月に着いてソフィアが髪形からメイクまで変えた理由を勘繰ったのだ。

 

「いや‥任務遂行のため‥スタイリストに相談したら…こうしたほうが良いと… 」

 

「ほほう? 姫様ならいざ知らず‥あんたがなんでスタイリストに相談? 言い訳が苦しいぞソフィ? 」

 

 

グラナダでベルナール社長との会談を終えた後で所用があると単独行動を取ったソフィアは市内にある美容院へ赴いていた。社長に紹介状を書かせて強引に予約を入れて有名カリスマ美容師の手によりイメチェンを行ったのである。…勿論、この日の為にである。

 

―――――――――――――――――――――

 

 

―――――――――――――

 

 

 

《 グラナダ市内某所にある美容院 》

 

「いらっしゃいませ。貴女が? ベルナール社長から連絡を頂いております。早速ですが、どのように…」

 

サングラスを外すとギラギラした目で睨みをきかせた女腹1枚のチラシを懐から取り出す。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「うむ、このアイドルグループでセンターになれるように頼む! 」

 

 

ブラックのパンツスーツにライトベージュのステンカラーコートを羽織って入ってきたソフィアを見て値踏みするかのような視線を投げるカリスマ美容師の眼前に興行用ポスターを掲げ見せる。来店していきなり問答無用とばかりに簡潔に要望を伝える姿は在りし日のキシリアを彷彿させ…

 

彼は直感的にヤバい人物だと悟った…

 

落ち着いて目の前に立つ人物を観察する。ストレートロングのプラチナブロンドの髪、そしてターコイズブルーの瞳…北欧系だろうか? 美しい‥ゾッとするその美貌は『支配者』を連想させる。年の頃は20歳過ぎ‥いや、濃いめのメイクにより妖艶さを醸してはいるが、まだ10代かもしれないな?

 

しかし‥ゾッとするのはメイクの所為ではない。彼はその道のプロである故に外見よりも素地に対する見識が高いのだ。目の前の女が内から発する得体の知れないプレッシャーにゴクリと生唾を呑み込み、空調が保たれた店内にも関わらず頬を冷汗がつたり落ちた。

 

「‥私の顔に何か付いているのか?(目線が恐いぞ‥)」

 

当のソフィアはソフィアで、頭から爪先まで舐めるように観察したかと思えば、恐ろしい形相で此方を見据えたまま微動だにしなくなった男に少々動揺していた。いまではすっかり毒気が抜けて、意識しないと『キシリアmode』にはならなくなった気弱なソフィアさんなのだ。

 

「あっ? あっ! こ、これは大変失礼しました! どうぞ奥へ‥ 」

 

 

 

 

 

 

「ベルク‥ゎ、ベルナールによるとグラナダ一の腕前だそうだな? 全て任せる故、存分に腕を奮ってくれ」

 

「畏れ入ります‥。お任せと仰るからには大きくイメージが変わりますが? 」

 

アイドルグループでセンターなどと、普段ならば腹の中で一笑に伏してしまうところである。彼もプロであるから、そんな内心などおくびにも出すことなく客を満足させるべく最善を尽くすのだが…

この相手には… 彼女は外見に限れば満更でもなさそうな予感がする。しかし、この只ならぬ雰囲気を纏う女に手を入れて良いのか? 事前承諾を得ておくのが肝心だろう。

 

「望っ‥望むところだ! 存分に頼む!」

 

ソフィアの心は高揚していたために声は上擦っている。それまでの意識的に押し殺すような声色が本来のソプラノトーンを響かせた。

 

「おぉ‥お任せ下さい! 」

 

ソフィアの透き通るような声に鼓舞されるかの如く、男の心に火が入った!

 

――ヤってやる‥ヤってやるぞぉ!!――

 

ソフィアの顔を覆っていたキツい悪女系メイクを落としてゆく…

「…!? (なんと! やはりそうか! )」

描かれていた眉とアイラインが消えると、美少女の素顔が現れた。やはり若い… 黒に見えたシャドウはディープパープルだった。‥何故、素材を潰すようなドギツい化粧を? はっ! そうか、先程感じたプレッシャーはそういうことか! その筋の… 恐い某組織の御令嬢なのかも?

 

「ど、どうかしましたか? (ガキ臭い顔で驚いたのか?)」

 

素顔を晒した途端、鏡の中で複雑な表情で考えるような姿にソフィアは自分の幼顔が気になった。

 

「い、いえ‥ちょっと気になりましてね。何故キツいメイクを‥まるで仮面を被るかのように思えましてね」

 

「仮面か…フフフ。虚勢だったのかもしれぬな… (デギン公王)(ギレン総帥)‥そして‥いかんな、少々軽口になりそうだ」

 

仮面と言われてソフィアの脳裏には嘗ての覆面姿の自分‥と仮面の男シャア・アズナブルの姿が浮かんだ。

 

「そうでしたか‥その若さで随分ご苦労があったのですね。お察しします…」

 

恐らく父親はギャングの大ボス‥もしかすると跡目を巡り兄妹ら身内で骨肉の争いとか? 可憐な外見を持つ彼女は組織内でも求心力を失わないように般若の如く振る舞う必要があったのかもしれない。舐められないように彼女は仮面を被っていた…きっとそうだ!

 

「これから貴女は本来の姿を解き放つのですね! お任せ下さい! さぁ始めましょう~今日貴女は生まれ変わるのです! 」

 

「…(三度は勘弁してほしい)」

 

 

 

 

 

 

「いかがですか? 我ながら会心の出来映えと…良い仕事をさせていただきました」

 

鏡に映る姿は‥

緩くウェーブが掛かったミディアムボブの髪形に変り、メイクは素材を存分に生かすナチュラルスタイルに…

暗く魔性を感じさせた深紫から明るく華やいだ桜色ベースへと変わっている。しかし、衣服迄替えるとは‥

 

「うむ、悪くない‥な」

 

鏡の中ではにかむ可憐な美少女に満更でないキシリア様だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

―――――――――――――――――

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

「…まあ、否定はせぬ。それよりも、早く着替えたらどうだ? ミハルも終わったようだ」

 

「え? お‥お嬢様!! 」

 

 

二人の前にはアイドルグループ『EFF47』の月コンサートツアー用衣装に着替えたミハル・ザビが立つ。レナはザビ家の姫君がレプリカとは言え地球連邦の軍装を身に纏うことに否定的だったのだが、さらには腰から下へ目線を落とし戦慄した。なんと連邦軍の軍服を模したミニのワンピースコスチュームからはミハルの白く艶やかな太股があられもなく剥き出しに晒されていたのだから。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「お待たせ‥あら? レナはどうして着替えていないの? 」

 

「おっ、お嬢様! なんてお姿を! はわわ…」

 

姫様と呼ぶのは流石に不味いので、レナはミハルをお嬢様と呼ぶことにしている。

 

「人前で肌を晒すな‥と? レナはトワニングみたいだな? 」

 

トワニングからは常々『姫様におかれましては無闇に肌を晒されませぬよう』と‥露出の少ない服ばかりで面白くなかったのだ。

 

「おお、良く似合ってる! ミハルはスタイルが良いから羨ましいな。特に…」

 

ソフィアは横にやって来たミハルの姿を見て感想を洩らすが、その視線は胸の盛り上がりに注がれている。同じ衣装を着るソフィアとミハルが並ぶと揃って素晴らしい脚線美が映える。スタイルが良い姉妹のようでもあるが、ただ1ヶ所…バストサイズは大きく異なっており、ミハルの豊かな膨らみに対してソフィアのそれは微かな曲線を描く程度に平坦である。羨ましいと口で言いながら、目は嫉妬に染まっている。

 

「ウフフ、そうか? 私も一度このような恰好をしてみたかったのだ。ソフィアは平坦な胸だが、それはそれで慎ましくて可愛いと思うぞ?」

 

モデルのように脚を軽くクロスし、豊かな胸を強調するように腕組みしてミハルはドヤ顔でソフィアを見る。

 

「それは‥誉められてはいないな? まあ、古来から貴婦人の乳は慎ましい微乳と決まっておるからな。乳がデカイと… おっと、これは言わずもがなか?」

 

貧乳を弄られムッとなったソフィアは負けじとやり返す。乳がデカイ女はなんとやらと…

 

「‥聞き捨てならんな? 貴様、私を誰と… 」

 

貴婦人は胸が小さいのが美しいともてはやされた中世の社交界のならわしを突きつけられ、これまたムッとなるミハルは思わず主従関係に言及しかける…が。

 

「友人として接しろと言ったではないか? 」

 

知れっとした顔で応えるソフィアの態度に我に帰る。

 

「そうであった。‥フフフ」

「吐いた唾を飲むところだったな。‥フフフ」

 

二人とも笑ってはいるが‥眼光は鋭いままである。こういった場面で生まれの本性が垣間見えるのはザビ家ならではだろう…

 

しかし、二人のやり取りを見ていたレナは心臓が止まりそうであった…

 

「ソフィ…あんた恐ろし過ぎる。姫‥お嬢様に対してなんちゅう…」

 

この後、レナもお揃いの衣装に着替えさせられて三人揃って生足を晒すことになる。

 

 

 

「お嬢様方のお着替えはお済みですかな? おおぅ‥とてもお似合いです! 貴女がモルガン家の‥ お初に御目にかかります。CS社のベルナールと申します」

 

女性陣の着替えを見計らって現れたのはベルナールとシャア達男性陣。

 

「この度の地球往きの手配をしてくださった字音広告のベルナール社長だ」

「ジオン公国!! ‥だと?」

『ジオン公国』と聞いた途端にミハルの顔が強張る。

 

「いやっはった! 公安がぁ~! ‥よ、よしてくださいよ! 」

ソフィアに以前の看板騒ぎを弄られ慌てふためくベルナールことベルクマン元公国軍少佐はそれまでの威厳ある表情が一変してイヂラレ芸人風に…

 

「冗談だ。‥と、このように気さくな御仁である」

相変わらず弄り甲斐のある男だと内心ほくそ笑むソフィアこと元キシリアさん。

 

「そうですか、此度の御尽力‥心より感謝します」

 

「はっ、ははぁー! 有り難き幸せに存じまするぅ…? ハハハ‥それにしましても、良家のお嬢様がお忍びでアイドル体験をご所望とは驚きました」

良家のお嬢様と言うより、王公貴族の風格で涼やかに言葉を掛けるミハルの姿にベルナールは直立不動の姿勢となり感極まる。‥なかなか勘が鋭い御仁でもあるようだ。しかし‥相変わらず一言余計でもある。

 

 

「何? ‥私がアイドル体験を望んだと? 」

 

そういう話なのか‥とソフィアを見るミハル。

 

「このように一言余計な男で… 」

 

自身の願望実現にミハルを出汁に使った後ろめたさからか、ベルナールのお喋りに眉間に皺を寄せるソフィアである。またも‥一言余計である。

 

 

そんなやり取りを隅っこで大人しく見守るレナにファビアンが気づいた。

 

「レナ‥さん? どうしたんですか? 」

 

「えっ!? あ‥いや…ちょっと短すぎてさ。なんでアタシまで… 」

明らかにサイズが小さいのが丸わかりな程に短い裾を必死に引っ張る姿が滑稽でファビアンは笑いを堪えることに必死だ。笑ったらぶん殴られる…

 

 

【挿絵表示】

 

 

「レナは先程からショーツが見えるかと気になって仕方無いようだな? 見えないものに履き替えたでしょ? 」

着なれないミニスカの裾を引っ張りモジモジする様子にミハルが口を挟むと横に来てスッと椅子に腰掛ける。その華麗な振舞いにより、短いスカートの裾からは素肌が露になるものの‥下着の布地は全く晒されない。流石はジオンの姫君である。

 

「履かなければ良い。さすればこの様に何事もなく」

 

今度はソフィアが片足をスッと上げ‥内股が露に!?

「「「オォッ!?」」」

男性陣の視線が釘付けになる‥が、何事も無く椅子に腰掛ける。見えそうで見えないギリギリラインを絶妙に繰り出してソフィアの両脚は椅子の上で綺麗に組まれていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

二人は露出の高い衣装を身に付けるにあたり、予めショーツはTバックを着用するのだ。ミハルは兎も角、キシリア様はシースルーのドレスを着る時はノーブラが定番であるのだが、下着が見えては気品が無いとされるのが社交界である‥ならば逸そ着けないのが彼女の流儀であった。そう、見える筈がない…履いて無いのだから。

 

「履かない‥っ!? それってノーパンじゃん!!」

 

 

 

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