「今‥何と? 」
ジョニー・ライデンの口から語られた名に驚愕の表情を浮かべるシャアが聞き返した。
「ソフィア・ザビ・メルクロワ‥あいつの本当の名だ。やはり知らなかったようだな‥? 」
「ザビ一族だとっ!? 」
ーーソフィアがザビ家の次女なのか? ミドルネームにザビ‥メルクロワ家には養子縁組なのか? デギンの隠し子? ーー
この一瞬にシャアは考えを巡らせているとジョニーは予想外の話を進める。
「‥ザビ一族と言うのは正解ではない。これから話すことは他言無用だ… 」
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UC0079
グラナダ
キシリアに呼ばれたジョニー・ライデンは入港したグワジン級戦艦の貴賓室へとやってきた。部屋の中央ではキシリア・ザビが椅子に腰掛ける。その横にひとりの若い女性士官が立っている。
他には護衛の姿もなく、室内には自分を含む三人だけである。招いたのが他の者でなく、ジョニー・ライデンであることに全幅の信頼の現れともとれた。…否、横に静かに佇む少女からは強者が纏うオーラのような? ジョニーが此までの幾多の戦場で感じたモノとは異質の何かを肌で感じる。…つい最近も似た感じの二人に出会ったばかりだ。
ーーこの女もか?ーー
「突然呼び出してすまんな。あの二人はどうだ? 」
キシリアの言う二人とは、つい最近配属された新兵‥年端も行かない少年と少女のことだ。…やはりか?
「はっ、彼奴らは順調に仕上がりつつあります! 予想に反しまして… 」
ジョニーは少しばかり動揺を隠せず‥予想外と漏らす。
最初、精鋭部隊に新兵‥それもガキを押し付けられたことに戸惑うどころか怒りさえ抱いたのだが、彼・彼女は驚異的身体能力を見せつけた。 抜群の戦闘センスを持ち、最新のモビルスーツを難無く操ると部隊の腕は良いが少々癖のある猛者達と互角に渡り合ってみせた。
「ククク‥子守を押し付けられたと思ったのであろう? あの二人は実戦投入はまだ早い段階だが、お前なら使いこなせるだろう…引き続き訓練を頼む。ところで、ついでに頼まれてくれるか? 」
キシリアはほくそ笑みながら言うと横に立つ女性‥いや、少女を見る。年の頃は10代後半‥長く艶やかなプラチナブロンドの髪とターコイズブルーの瞳が目を引く美少女。どことなく、先ほどの二人と同様に…ジョニーは胃が痛くなりそうだった。
「‥閣下の御命令とあらば」
「うむ、この娘はメルクロワ家の令嬢でソフィアという。先日、特例で採用した新米士官ではあるが私の下に就ける予定だ。その前に現場を体験させたいと思ってな…ジョニー? 」
この時期に新米士官を配属? しかも貴族階級の令嬢をキマイラ隊に? それにメルクロワ家は…
「お前の察しの通り、ソフィアもあの二人と同様だ。ただし! …この娘は私だと思って扱えよ? 」
やはりそういう…だが、この娘をキシリア様と思うようになどとは? 『自分のように』扱えとの言葉に強い違和感を覚える。いや、名家の令嬢であるから相応の配慮をということだな。
「お前には話して於くべき…か。これから話すことは他言無用…誓える‥な? 」
「…勿論です」
キシリアの口から語られた事実
ソフィア・ザビ・メルクロワ…
ザビ家の御落胤…
没落寸前のメルクロワ家に有無を言わさず押し付けたようだが、確かトト家にも養子縁組の噂があったな。しかし何故にミドルネームにザビ? 正式な届には記載が無いそうだが…
…胃に穴が開きそうだ
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「ユーマ!! 」
模擬戦開始とともに僚機が狙撃を受けた! 一撃で頭部が吹き飛び‥!!
咄嗟に機体を滑らすと左肩付近を閃光が突き抜けていった! …躱せたのは偶然。
見えない‥感じない‥
何処に…!!
「くっ! 」
真上!
予想外の行動に対処出来ずにライフルで受けた!
当然ライフルは容易く真っ二つに切り裂かれ、その勢いのまま我が身を屠ろうと迫り来る光の刃!
しかし、僅かながらもライフルが緩衝となったことで間一髪で躱すことが成った…が、こちらがビームサーベルを抜き構えると二の太刀が繰り出され受け太刀するだけで精一杯だ。
《 ドガッ 》
「ギャフッ! クソッ」
足蹴りを喰らい衝撃が身体全体を襲う!
常人ならば昏倒したであろう衝撃を受けても戦闘力は喪失することなく悪態をつく。突き出してきたサーベルを機体を捻るように華麗に躱すと、勢いそのままに回し蹴りを奴の腰へ喰らわした!
奴がバランスを崩した一瞬に形勢逆転! ビームサーベルを振るい降ろした‥(もらった)!?
《 ズブォォッー 》
刹那、機体を揺るがす衝撃と破壊音に身体全体が硬直した…一瞬、何が起こったのか判らなかった。
コクピット内を赤く染める程の警告表示…あぁ、核融合炉が破壊されたらこうなるのか…漠然と思った。
警報が止み静かになったコクピット…モニター正面には大きく『 you lost 』
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「あんなのインチキよ!! 」
「戦場でインチキも糞もない」
「接近せずに撃滅したほうが合理的」
「なんですって! 」
模擬戦の結果に不満一杯な少女は上官に食いかかってくるが、横で対戦相手の無表情な少女が溢した抑揚のない言葉が少女を逆なでした。
「ユーマ! あんたもなんか言ったら! この女、陰からコソコソ狙い撃ちなんて! 卑怯よ! 」
「卑怯って‥喧嘩じゃないんだし」
「いい加減にしろ! お前らは遠距離狙撃でやられる程に鈍感なのか? 悔しいのはわかるが、負けは負けだ! 」
「ジョニー…… 」
少女が悔しがるのは当然なのかもしれない。この二人にとっては初めての完敗だったのだ。しかも、相手の姿を見ること無く狙撃で仕留められてしまった…屈辱的だった。
「ああ、それからソフィア…射撃の腕前は良く分かった。次からは僚機を捲き込むなよ? いいな? 」
「了解」
ソフィアと呼ばれた少女は無表情のまま短い返事をした。「捲き込むな」とは‥撃墜された機体の融合炉爆発で巻き添えを喰らわしたからだ。勿論、巻き添え食う羽目になったのはジョニーである。
「ふん! 次はコテンパンにやっつけてやるんだから! 覚悟しなさい! 」
「了解‥覚悟した」
敵意丸出しでソフィアを指差す少女を一瞥すると抑揚のない声で応えた。
「キイィ! 馬鹿にして! 」
翌日
「嘘っ! ……あ…うぅ… 」
目の前の漆黒の宇宙空間を切断され飛び去る両腕…それをモニター越しに見つめ嗚咽を溢す。望んだ接近戦だった…はず。それなのに彼女は一撃を加えることも叶わず撃破判定されていた。またも赤い光に包まれたコクピット内では警報が煩い。
背後の気配に戦慄きながら振りかぶった瞬間、逆袈裟斬りにライフルを持つ右腕、そのまま振り下ろされたビームサーベルは咄嗟に突き出した左腕を切断して脇腹へ深々と斬り込まれた。間髪を入れず腰下を蹴りつけるとバーニア全開で退避行動に奴は移る…流れるような動きだった。正面から対峙していた筈だった…ロストしたことも驚いたが、問題は次の動きだ。どんな機動を行えばあの位置に現れることが可能なのだ!?
予想外の惨敗に打ちひしがれてコクピットから這い出た彼女は異様な光景を目にした。確かめるように悔し涙で霞む目を袖口で拭い、鮮明になった目に映ったのは…何故? 何故お前が跪き呻いている??
負けたのはこっちだぞ??
対戦を終え、コクピットから出た二人はともに涙を流していた。一人は悔し涙、もう一人は……嘔吐に苦しむ涙を流していた。
「なんなのよ…なんであいつ吐いてるのよ? 」
「あんな高機動をやりゃ‥いや、常人の限界超えるな。お前らも常識外れだが、あいつは…あれじゃ身体が持たないぞ。非常識すぎる! 」
「ど、どういう‥? 」
『
あの女に皆がつけた渾名……
元々腕に自信のあるエース級パイロットを集めた部隊なのだ。二人の後に続き挑んだ荒くれ共が雁首揃えて撃破されていった。しかも、全員が背後をとられあっさりとだ!
振り返った時には終わっているか、それ以前に狙撃により負けている。姿を見ることが出来ない『亡霊』のようだと誰彼が言った。
「次は……俺がやるんだよな? 」
ジョニーは周りに聞こえない程の小声で呟く。
皆の視線が訴えている……
ーー隊長! 頼んます! ーー
無理…… 全く勝てる気がしなかった。しかし、隊長が逃げると示しがつかない。かといって、負けたら面子丸潰れ……これはもう…なんというか…詰んでいた。
キシリア様もとんでもない姫を押し付けてくれた。
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「転属ですか? このタイミングで!? 」
「…? ククク‥随分と嬉しそうに聞こえるぞ? 」
予定より早い転属にジョニーは内心ホッとしたのがあからさまに顔に出ていたようだ。キシリアは一瞬怪訝な顔になったが直ぐに察した様子で含み笑いを浮かべる。
「いっいえ! 有望なパイロットが手許から居なくなるのは非常に残念でありますが…御命令とあらば致し方ありません! 」
残念だ! 残念でならない! うんうん‥ホッ。
ところで…キシリア閣下の隣に控えるオッサンは誰だ?
スーツ姿からして軍関係者には見えない初老男性。初めて見る顔だ…な?
「その様子だとソフィアはしっかりやっていたのだな。我が娘ながら末恐ろしいものよ……」
「娘…!? 」
聞かされた話ではデギン公王の隠し子だと? 馬鹿なっ! 娘は年齢的にありえんだろ!
「ある意味に於いて私の娘に違いない。なぁ? ‥博士」
ジョニーはキシリアの『我が娘』との言葉に酷く驚いた。即座にそれが比喩であることは二人の年齢差からして理解した…が。しかし、キシリアが自身の娘とまで形容する程にソフィアに対する期待の大きさが窺えた。しかし、その後に隣に控えていた博士と呼ばれた男が発した言葉に凍り付いた!
「娘とはまた‥ 当たらずも遠からずですが」
ど、どういう意味だ…!?
それに博士…?
狼狽するジョニーを余所に二人はそれ以上語らず切り上げる。
「私はアレを連れてア・バオア・クーへ赴く。貴様達キマイラは手筈通り…任せたぞ? 」
「は! 此の身を賭して御期待に応えます!」
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ア・バオア・クー
キシリアは重要区画にある工廠へやってきていた。
格納庫に鎮座する巨大なモビルスーツ…? 腰から下に有るはずの脚が無い。同様の機体が三機並んでいる…各々塗装が異なるのはそれらが試作機であることを示してした。胸部と肩部が青紫・赤紫・赤の三色に塗り分けられた試作初号機~三号機である。
「80%と聞いたが…? 」
「お、畏れながら…! 現状に於いても実戦投入可能であります。元々、近接戦闘を考慮しておりませんので…所謂、モビルアーマーとしては100%完成しております」
工廠の技官からの説明を受けるキシリアは並んだ試作機【ジオング】を眺めていた視線を横に居るソフィアに向ける。
「……出撃は可能なのだな? 」
「二号機はまだ調整に時間を要しますが、初号機なら最終チェックが済み次第可能です! 」
「ふむ…まあ、初陣に丁度良いか…!? どうした? …シャアが? 」
二号機はソフィア用に調整を行っていたのだが、どうやら間に合わない。初号機…性能実証確認機として用意されていたものではあるがソフィアなら……
その時、幕僚の一人が耳打ちしたことによりキシリアは技官に確認する。
「ジオングのサイコミュシステム…有線誘導だったな? 」
「はい、エルメスと違いケーブルにて安定化を図っております。ただし、サイコミュシステム操作にはニュータイプの素質が前提条件ですが? 」
「ニュータイプ……シャアに使わせてみるか… 」
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「80%? 冗談ではありません! 現状でジオングの性能は100%出せます! 」
格納庫内を下降するエレベーターに立つシャアの横で技官が自信満々で胸を張る。
「サイコミュ……か。出来ると思うか‥私に? 」
「大佐のニュータイプ能力は未知数ですから保障はできません! ですが、大佐なら上手くやれますよ! 気休めですけどね? 」
技官はカカカと笑いながら言い放つ……
随分と馴れ馴れしい態度の男の様子に半ば呆れながら見下ろす機体の姿に気づいたシャアが一言溢す。
「ん‥? 脚が無いな? 」
「脚なんて飾りです! エライひとにはそれがわからんとです! 」
技官の男は腰に手をあてふんぞり返る勢いで笑った。先程キシリアの前で萎縮していた人物とは思えない大物っぷりである。
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その頃『エライひと』であるキシリアはソフィアを連れギレン総帥が指揮を執る中央司令室へやってきていた。
「総帥閣下‥グレートデギンを何処に配備なさったのですか? 」
「……沈んだよ。先行しすぎて……な」
二人の会話が進むにつれソフィアはギレン総帥からは困惑を感じ取る。キシリアからは強い憎悪の念が…殺意を帯びていくのを感じて吐きそうになっていく。
「しつこいぞ! キシリア!! 」
キシリアの殺気が頂点に達する! 彼女の手が腰の銃に伸び…!? その瞬間、ソフィアは背後に殺気を感じ、反射的にキシリアの腕と肩を掴み引き寄せた!
《 バシュッ 》
無機質な貫通音を立てギレンの頭に風穴が空いていた。
放たれた凶弾はギレンの後頭部から眉間を抜けて前方のモニターを穿っていた。ソフィアに抱きかかえられた姿勢のキシリアが首を捻る先には銃を構えた男が立っており、キシリアと一瞬目が合うが彼は構わず即座に立ち去る。
「!?(マツナガ) …ッ! ……ギレン総帥を成敗した!! 父殺しの罪はたとえ総帥であろと免れることは出来ないのだ!!! 」
キシリアは即座に姿勢を正して総帥を殺害したのは自分であるとばかりに宣言した。この場を速やかに掌握することが先決であると瞬時に判断した結果だ。
はたしてシン・マツナガはどちらを狙ったのだ…?
・
・
・
ギレン総帥を失ったことによる幕僚達の動揺はそのまま指揮の乱れを生じさせていた。殺意は抱いたが…あの場で直接手を下す程キシリアは愚かでない。最高司令官を失ったことが戦局に与える影響は計り知れない……
優勢の内に要塞の放棄と撤退を決めたキシリアは幕僚達に指示を矢継ぎ早に飛ばすと脱出準備を始めた。
***
キシリア閣下の表情は覗えないが、総帥の言葉に激昂していく感覚が手に取るように伝わる……腰に下げた銃に手が!?
《 キュイン 》
瞬間、キシリア閣下の肩と腕を掴み引き寄せた!
間髪入れず弾道が二人を掠めてギレン総帥の後頭部を貫いた…!
あの男が狙ったのは……総帥!
射線にキシリア閣下が重なり苛ついたのが分かった。
***
脱出を急ぐキシリアは発進ベイへ向かっていた。
「ガンダムに執着するあまり自滅するとはな! シャアの愚か者め…! 」
ジオングで出撃したシャアはガンダムと交戦…その後要塞内で識別信号が途絶していた。内部であったことから監視カメラの映像に映った機体の有様はシャアの戦死を確信するに充分であった。脱出の際に最も危険な発進ベイのゲート周辺へジオングを盾にと考えていたキシリアは舌打ちしながらシャアへの失望を吐き捨てた。
ブリッジへ入ったキシリアはキャプテンシートに座る。開いてゆくゲートから先行離脱する赤黒塗装のゲルググをチラリと一瞥すると即座に発進命令を下す。シートから横に立つソフィアに気づく‥!?
「何をしておる? お前も席に‥!? 」
その時、キシリアは視界の隅‥ブリッジの窓越しに浮遊物に視線を向けた。‥!
「ん?‥シャアか? 生きて…!! 」
赤いノーマルスーツ姿からひと目でシャアと判る。彼は携帯火器を携え此方に敬礼している。‥が、次の瞬間に此方に向け構えた!!
「ヒッ!! 」
キシリアの顔は恐怖に引き攣るが逃げようが無い! 彼女は死を覚悟した。
***
ブリッジに入ったキシリア閣下は発進命令を下すとキャプテンシートに深く座り溜息を吐いたようだ。ブリッジの窓越しにライデン隊長のゲルググが発進して行ったのを見送ると、ふと此方に目を向け席に座れと言われた。
‥ん?
キシリア閣下が視線を変えた…!?
あれはシャア・アズナブル…いけない!!
シートに飛びつきキシリア閣下の身体を引っ張る‥!?
シートベルトが!
ソフィアはキシリアの身体を引っ張り逃そうとしたがシートベルトによって固定されている。ベルトを解放する僅かな時間が生死を分ける!
咄嗟にキシリアの身体に自身を被せようとしたソフィアをキシリアの手が伸び押し退けた…!
何故??
刹那、ブリッジ前面ガラスに放たれた弾が直撃して炸裂の光が溢れる…キシリアと目が合う。
ー my sweet ー
ソフィアの頭に流れてきたキシリアの感情だった。
***
この期に及んで…まさか私に母性とは。
私を庇おうと身を挺してきたソフィアを咄嗟に突き飛ばす………愛しい娘。
キシリアの意識は真っ暗な闇へ落ちて消えた……
***
「イヤァァ! お母様ぁぁ! 」
突き飛ばされたソフィアは更にメインエンジン点火の衝撃も加わりブリッジ後方へ吹っ飛ばされる。無意識に身体は防御体勢をとり他のブリッジ要員を緩衝材代わりにその身を守る。しかし、流石に船体大破の衝撃は凄まじく身体中を強打した彼女の意識は薄れてゆく……
お母様……
キシリア閣下……
キシリア・ザビ………
……………私は……………
ー 私は誰 ー
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「ソフィアはキシリア閣下のクローンだ」
高速培養液の容器から出されてからまだ日が浅い為、90%の仕上がりだったらしい…
戦局の悪化から予定を繰り上げたため、特に精神面が成長しきっていないのか自我の形成が遅れていた。
フラナガン機関
一年戦争時にニュータイプ研究に於いて紛れもなく世界一であった。しかし、その本来の研究目的を知る者はいない。
フラナガン・ロム博士は戦争前に某大手企業研究所からキシリア・ザビが直々に招聘したのだが、当初彼に求めた研究目的は……
ーー 不老不死 ーー
「馬鹿げている! 古代の王じゃあるまいし……!? まさか? 可能なのか? しかし、キシリアのクローンとは… 」
「実年齢は現在3歳くらいだ。不老不死と言うのもそのままの意味じゃあない。結果的にそうなる…と言う研究だったそうだ。その研究過程で発見されたのが… 」
戦争が始まったことにより博士の研究は方向性を変えざるを得なかった。研究過程で副産物的に発見する事になった…後に『ニュータイプ』と呼ばれる能力者。ソフィアの育成過程に於いて時折見られた脳波の特異性から何らかの特殊能力を感じたフラナガン博士は脳機能に興味を持ち始めた。
「昔から勘が鋭いとか虫の知らせとかと言うやつを科学的に立証しようとした博士は大量の生体サンプルを使い研究に没頭したようだ… 」
生体サンプル…確かハマーンも?
「そういった特性を持つ子供達を集めてデータ収集したとは聞いたが… 」
「データ収集? そんな生易しいもんじゃない! 奴のやっていたのは人体実験だ! ある程度の出自の者はそうだったろうが、奴は孤児を集めてやりたい放題…… 」
ジョニーも戦後漸く知り得た事実だが、戦時中にフラナガン博士は戦争孤児を人体実験の素材として大量に集めていたのだ。表向きは慈善事業の仮面を被ってだ……
「…成る程。あの男なら有り得る話だ」
シャアにとっても因縁のある話に頷いた。
「あのマッドサイエンティストめが…キシリア様を利用しやがった! 俺は絶対に許さん! 」
「キシリアを利用? 利害関係なのだからお互い様だろう? それとも何か裏話がある…か? 」
キシリアとフラナガンは互いの利害が一致したからこそ、キシリアは資金と場を提供した。
フラナガン博士はキシリアの要望通りに研究を進めるうちにある特異な塩基配列に気づく。
「この反応…なんだこれは? 」
超人計画(仮称)
人為的に造り出した特殊能力者を兵士として戦線に投入。
後に『強化人間』と呼ばれる外道の始まりである。
数年後のUC0085
アクシズ
Dr.マガニーに手を引かれて退出する少女を見送るハマーン・カーンはふと想う…
「あの娘…何処かで…」
フラナガン機関の極秘研究資料から再現したというクローン人間。クローンであるからにはオリジナルが存在した筈だが……
「そうか……似ているな」
嘗てこのアクシズで思い人の側にいた女
プラチナブロンドの髪とターコイズブルーの瞳…