機動戦士ガンダム K.D.A.   作:apride

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アクシズへの道 2

ソフィア(キシリア)は艦内中心部にある貴賓室に居る。今は主としてではなく使用人の立場としてだ。

 

「立場が違うと見える景色も変わるものだな…。なんとも贅沢で悪趣味な空間だ! 豪華客船じゃあるまいし… 馬鹿げておるわ! 」

 

立場どころか‥ 全くの別人になったキシリア様は性根まで別人に成りつつある…

 

「メルクロワ少尉! ‥声が大きいです」

 

隣に立つ侍女に注意を受けた…

 

「‥すまぬ。しかし、戦闘艦の貴重な空間を浪費するとはな…そのぶん兵達の生活空間に皺寄せがきてるのは許しがたいな! 」

 

グワジン級戦艦はそもそも… 【御召艦】の色合いが強いのだ。御召艦ということは『ザビ家ご用達』と言う意味を持つのはジオン公国では周知の事実である… 使っていた本人が憤怒するとは呆れたものである。

 

「少尉… お見えになりましたよ。姿勢を正して下さい」

 

 

「その方が…臨時の侍女ですか? 」

 

「ソフィア・メルクロワ少尉であります。此度は大役を仰せ仕り恐悦至極に御座います」

 

「あら、随分と堅苦しいこと…。もっと気楽にしてください。私も元は同じく軍籍にありましたのよ… 」

 

現れたのは【ゼナ・ザビ】 故ドズル・ザビ中将の未亡人である。隣に控え立つ侍女の腕にはミネバ・ザビの姿もある。彼女はシャアや故ガルマ・ザビの士官学校時代の同期だ。

 

「皇室に入ったからには致し方無いのだけれど、侍従に囲まれた生活は窮屈でしてね…。最近は体調が優れないのよね? ミネバのこと頼みますよ」

 

ゼナは傍にやってきて囁くように小声でソフィアに語り掛けた。キシリアはその口振りに少しばかり驚いた… 平民上がりの妃にしては優雅な立ち振舞いが定評であったゼナ・ザビ… ほんの一瞬ではあるが、彼女の心中を垣間見た気がした。

 

「…畏まりました」

 

 

 

 

 

 

 

「ゼナ‥窶れていたな… 。 慣れない生活の上にドズルの死… そこへきて逃避行の長旅だ。無理もない… 誰だ!皇室などと堅苦しいものを……私達ザビ家だったな」

 

「メルクロワ少尉! ブツブツ独り言言ってないでミネバ様のお世話を致しますよ? 」

 

「これは失礼した! ミネバ‥様…… うん? これがミネバかっ!? 」

 

実はキシリアがミネバに対面するのは初めてのことだ!侍女に抱かれた赤子を見て狼狽してしまった!

 

「無礼な! ミネバ様と御呼びしなさい! 」

 

思わず呼捨てにして、侍女に咎められるが聞こえていない。

 

 

 

「こ、この娘…… 誰の子だ?? 」

 

 

 

「メルクロワ少尉!! 口を慎めっ!! 姫様を愚弄するか!! 」

 

ミネバに対してどころか、ザビ家を愚弄する言動に侍女達は狂乱しかねないほどに慌てふためく。

 

 

「全然似てないぞ?? …ドズルに」

 

 

周りでは侍女達が慌てふためくが、キシリアはそれどころではない…… 彼女はそれほどに困惑していた。

 

 

「生まれの不幸を呪うのは… 私だけかい! 」

 

 

この直後、ソフィア(キシリア)は貴賓室から摘まみ出された。

 

 

 

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貴賓室から摘まみ出されたソフィア(キシリア)は侍女に物凄い剣幕で説教されていた。この頃には既にキシリア・ザビとしての威厳は消えつつあり、キシリアはソフィア・メルクロワという【外見に見あった】物腰の弱さが身に付きだしていた。項垂れながらキシリアは感じた……人はすぐ慣れるんだなと。

 

「…ということで、二度と口にしてはなりませんよ! 腹の中で思っていても絶対に! …端から誰もドズル閣下の種とは思ってないわよ。…あんなに可愛い訳ないでしょ? 」

 

「は? はい…。(複雑な気持ちだな)」

 

生前は仲が良かったとは言えないが、ドズルは肉親である… 他人に悪く言われるのは悲しいとキシリアは思い、ちょっと心に痛みを感じた‥気がした。

 

「まぁ、しかしだ…ドズルの娘があんなに可愛いのは納得いかんな! 」

 

 

「メルクロワ少尉! ちょっと来てくださるかしら? 」

 

「…入ってもよろしいので? 」

 

何故かつい今しがた追い出された貴賓室から呼び込む声がする?

 

 

 

 

 

「フギャー! フギャー! 」

 

ミネバが盛大に泣いている?

 

「ミネバ様が泣き止まれないのです…… 貴女が出て入った後から… 」

 

「はぁ? どうしたことで… ちょっ! 」

 

腕を掴まれてミネバの傍に連れてこられ……

 

「キャッ キャッ マヮ 」

泣き止んだ…… しかもご機嫌うるわしい様子では?

 

「…やはり、大佐の御目がね通りですこと」

「大佐? マ・クベが何か? 」

マ・クベ大佐がソフィアを推薦したのは聞いているが、なんらかの尾ヒレが付いていそうな……

 

「シャア大佐ですよ。ミネバ様は少々人見知りが… ところがシャア大佐にはお懐きになられましてね。私どもから是非ミネバ様の御付きにとお願い申し上げましたところ…… 」

 

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『皇女様のお側に男性の私が居るというのは如何なものだろうか? そういえば‥ キシリア閣下のご寵愛を賜った女性士官がいる! 彼女が適任者であろう… 早速私からマ・クベ大佐に頼んでみよう! では失礼する! 』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「…と、颯爽と去ってゆかれまして…… 。流石はシャア大佐、翌日にはマ・クベ大佐から貴女を派遣すると御連絡を戴いた次第でしてね」

 

要するに… シャアに厄介事を押し付けられたのか?

 

「おのれ! はか‥ 」

『姉上‥ その台詞を口にしてはいけない! それは破滅の言葉だ』

 

「う‥ (ガルマ?)」

 

激昂しかけたキシリアにガルマの声が聞こえた気がした。

 

「ええ‥まあ‥子供は大好きですから…(おのれ!謀ったなシャア!)」

 

「マァ マァ キャッキャッ」

 

目の前ではミネバがニコニコと笑いかけていた。

 

 

 

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「マンマ マンマ アー アー 」

先程から何か頻りに訴えかけてきているが?

 

「どうしたのだミネバ? ‥様? 」

 

「ブゥゥ マンマ アー アー エグッ ‥ 」

 

「わからん…… 赤ちゃん言語は如何な私といえど解読不能だ! 」

 

「エグッ ビェェ エーン 」

 

「アワッ いかん! 泣き出してしまった… 」

 

「あらあら、メルクロワ少尉でもお泣きになるなんて? あ、オッパイが欲しいので御座いますね! 」

 

泣き声を聞いて傍にやってきた侍女がミネバの要求を理解した。…流石はベテラン侍女様であるな!

 

「では、メルクロワ少尉お願いします」

 

「うむ、任せろ! 哺乳瓶をくれ! …はやく哺乳瓶!…ん? 」

キシリアはオッパイと聞いたので、早速授乳をと哺乳瓶に入ったミルクを侍女に要求するのだが… 渡してくれない? 否、哺乳瓶など何処にも見当たらないのだ!

 

「メルクロワ少尉… ミネバ様はオッパイを御所望である! 早く差し上げなさい! 」

 

「……オッパイ? まさか…… これか? 」

哺乳瓶に入ったミルクではない【オッパイ】となれば… と、半信半疑で自身の控えめな膨らみを指差す… 侍女は無言で頷き肯定した。

 

 

「イヤイヤ! 待て待て待て! これはオッパイではなくチッパイというもので… 」

 

「冗談を言ってないで早く! 」

 

「うぅ…… はい。 シクシク 」

 

 

「ウンマ ウンマ チュウゥゥ ウマ! 」

 

有無を云わせない侍女の態度に屈して、ソフィア(キシリア)は貧乳を晒して出もしない乳を赤子にムシャブリ吸われるというプレイの真っ最中である。

 

「まさか私が赤ちゃんプレイをさせられるとは… 。しかも公衆の面前で… 屈辱だ」

 

相手が本物の赤ちゃんなので正確には【赤ちゃんプレイ】ではない。しかし、キシリアにとってはかなりショッキングな体験となった…

 

「しかし、赤子に乳を与えるというのは…母性本能をくすぐるそうだが… う、くすぐったい! 痛っ! 噛むなっ! 」

 

 

 

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「ソフィア少尉はミネバ様に気に入られたようだ。私の目に狂いはなかったな! 」

 

「貴様の推挙と言うのが気にくわないが… 同感だ」

 

シャア・アズナブルとマ・クベの二人は報告書に目をやり満足気に薄笑いを浮かべていた。

 

「しかし…これは? 乳を吸われたと書いてある! こうも容易くミネバ様を手懐けるとは… あの小娘、やはりただ者ではないのか? 」

 

マ・クベは報告書の最後の辺りを読み上げていると… 何故かシャアは不機嫌な顔になっている。

 

「キシリア様の身近にいたなら身辺調査は抜かり無いはずですな? …どうも気に懸かる。あの御方は裏工作が趣味でしたしな」

 

 

「キシリア機関……。私とて、その全てを把握してはいないのだが… 特にキシリア様と同じ【女性】の構成員には表と裏の顔があると聞く。ソフィア・メルクロワ少尉は通信士としてブリッジに配属されていた… それはキシリア様と同じ空気を吸うことを許された存在である! ‥とは思わないか? 」

 

マ・クベの言わんとするのは、キシリアが身近に置くに値する立場である可能性だ。ただのブリッジ要員では無いのかもしれない… と。

 

「ふむ、隙だらけに見え… 時折、凄みを感じるのはそのせいかも? 訓練されたエージェントとは寧ろ隙を見せて誘い込むものらしいからな… 」

 

顎に手を当てて思い出すように呟くシャア…

 

「先ずは侍女達の中に放り込んだことで動きは掌握しやすくなった。連邦と繋りが無いことは明白だが、正体を掴まん限りは安心出来ぬな… お互いに? 」

 

目配せするマ・クベにシャアも無言で頷いた。

 

 

 

ソフィアの中身がキシリアとは夢にも思わない二人は疑念を深めているのだった。二人とも大佐の肩書きは伊達では無い…ソフィアとのやり取りで不可思議な感触があったのだ。

 

 

 

――『ソフィア・メルクロワとはキシリア機関の構成員なのでは?』――

 

 

それが、この二人が現時点で可能性として導きだした最有力な答え…… 間違えてるのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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