「1・2‥いや3機だ! 」
向こうも気づいた! ひと塊になって突っ込んで来る! まだ遠い… が、ビームマシンガンを構えたと同時に発砲!
その瞬間! 3機は散開するが‥その内の1機に吸い込まれるようにビームの閃光が貫いた!
「お見通しなんだよっ! ド素人が! 」
少数の敵に対してひと塊で突入するなど‥散開するのは予測出来た。あらぬ方向に撃ったと見え、わざと射線をずらしていたのだ。
これはプロペラ機の時代が終わった頃から久しく途絶えていたのだが、ミノフスキー粒子とモビルスーツの出現により復活した。高速で動いている的に非誘導で弾を当てるには未来予想位置に向け撃つのだ。予め何も居ない空間へ射撃する‥『見越し射撃』だ。
間髪入れずにさらにもう1機に向け撃つ! 連射! 当たらない! 相手も必死に躱すが、その間隙を突いて別の1機が此方に狙いを定める!?
だが、既にこちらの銃口は最後の1機を捉えていた‥
「待ってたよ! 堕ちな! 」
《 ズドォゥゥゥン 》
真正面胸部にビームの直撃を受けて爆発四散するジム。
「ラスト! ‥うっ」
爆発を直視したためモニターが一瞬ホワイトアウトした! 直後、眼前にビームサーベルを構え迫り来るジムの姿!
「近いっ! くっ! だらぁ!」
迫り来るジムを背部スラスターを吹かして迎え撃つべく白いゲルググが正立状態のまま突進すると同時に頭部バルカンと腕部ビームを喰らわす! 空間戦闘に特化したゲルググJ(
《 ブォゥゥ 》
微かに低音ノイズを唸らせてビームサーベルが鈍く光り、手放したビームマシンガンに換えて持ち構え一閃!
すれ違い様に逆袈裟斬りに両断されたジムが爆発する!
《 ズドォォォン 》
至近距離で爆発するジムに『被せ蓋』をする如くシールドを叩きつけ足蹴! その反動を利用して自らは爆発から逃れる!
見事に3機のジムを全滅させた!
モニターに終了を告げる文字が浮かんだ。
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「シャア大佐! どうでした? 」
ヘルメットを外してやって来るレナ少尉の額には汗が光る。シミュレータとは言え、あれだけの機動を行えば体力面では相当キツイ筈だ。仮想Gも架かる為に身体は実際の戦闘と違わない負担を強いられる。華奢な身体からは想像に難い動きは強化人間のそれを彷彿させる…
「見せてもらったよ。いい動きをする‥ 機体の持ち味を活かしてのアウトレンジから1機撃墜したのは見事だった。あれで3対1の状況から優位に持ち込み、次の一撃は墜とすことに拘らなかったのも潔い。咄嗟の判断力も優れている… 君はとても優秀なパイロットだ! 」
「有難う御座います!! 『赤い彗星』のシャア大佐からお褒めいただき光栄です! 」
憧れの『赤い彗星』シャア・アズナブルに誉められたレナは満面の笑みを浮かべ敬礼する。
「但し! 最後は的確な判断で切り抜けたが、接近され過ぎたな? あそこでひとつミスを犯せば命を落としかねん… 実戦ではなるべく避けたいものだな」
シャアはトレードマークの大振りのサングラスを外してレナに微笑みかけた。
「はい! ご指導有難う御座います! 」
「素晴らしい戦い振りだった… 驚いたぞ! レナがこれ程の腕前だったとはな!(あのシャアが誉める程の腕だからな)」
「フフン! エースの称号は伊達じゃないのだよソフィア君! 」
レナは平たい胸を張り上機嫌だ。鼻を鳴らしているようにも見えるのはやはり『白狼』の縁者所以か… 狼でなくマルチーズあたりが勝ち誇っている姿が浮かぶのはご愛嬌だ。
「…(しかしこれは… 真剣に命名してやらねばいかんな)」
白に絡むネーム……
白い悪魔…はガンダムだし、白い恋人…お菓子じゃないか!
「あ? オオトリ家… オオトリは『凰』や『鷲』だな?
これもまた本人とイメージギャップが…… 」
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「鷲の紋章か… 使用に問題は無い。構わんぞ? シャア大佐が腕前を認めておるなら名前負けではあるまい? 」
ソフィアはレナに連れ添って上官のマ・クベ大佐のもとにいる。正式に白のパーソナルカラーと『鷲』の紋章を使用する申請をするためだ。
「私はシミュレーターでの動きを見ただけだが、レナ少尉はエースの称号に恥じない優秀なパイロットであることは間違いないと認識した」
このようにシャアが認めているだけあり、レナの腕は優れているのだろう。単に撃墜スコアだけなら見劣りするが、その戦績はア・バオア・クー攻防戦だけで挙げているのだ。
「初陣で7機撃墜は大したものだ。本来ならば‥キシリア閣下の裁可が必要なのだが、このマ・クベが名代として功績を認め『
「有り難き幸せ! キシリア閣下の名に恥じぬ働きを誓います! 」
『白鷲』をキシリアの名のもとに許されたレナは厳格な雰囲気を纏い中世騎士の如く亡き主に誓った。
ジオン公国軍士官は機体や軍服のカスタマイズが許されているのだが、称号やそれに附帯する紋章に関しては申請が必要なのだ。但し‥これには明確な審査基準があるわけではなく、既出でなければ使用許可が総帥府(事実上のザビ家)から下りる。…申請する者の自由ともとれるが、プロパカンダに成りうる程の『功績』『家柄』等が無いと貴族社会的なジオンに於いては厚顔無恥な行為である。
「レナ少尉おめでとう! 此にて正式に『白狼』シン・マツナガ殿の機体の継承が成った。『白鷲』レナ・オオトリの名に恥じぬ働きを期待するぞ! 」
「はっ! 御期待に添うべく精進致します! …て、あんたはキシリア閣下かっ!! 」
ソフィアは感極まり無意識にキシリア・ザビとして祝辞の言葉を掛けてしまった……
「……と、キシリア閣下も草葉の陰から仰るであろう。コホン! 」
「そ、そうかな? キシリア様から期待されるかな? ヘヘヘ…。でも、今日び『草葉の陰から』って(笑)」
「レナ・オオトリ少尉! 自信を持て! (期待しているよ)」
「フフ‥ 私、レナ・オオトリ少尉は『
その後……
アクシズ宙域に進攻した連邦軍将兵は白いゲルググに遭遇することになる…
だが、その機体の肩に描かれた『鷲』の紋章に気づく者はなかった…